【寄稿文飯田さんの『秋の鳳来2005』】
(2006年1月4開設)

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新年早々、飯田さんよりレポートをいただいた。
すばらしい内容である。
昨年秋の鳳来レポート。
読んでモチが出ること間違いなし!
byたきやん

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                       秋の鳳来2005by飯田


カーニバル 下部の核心部 

 
スペイン・ロデジャから帰国した私は,9月になって,鳳来を訪れた。
ロデジャでの夢のような日々がよみがえり,クライミングに対するモチベーションは下降ぎみ。
取りあえず鳳来でも・・・という気分で。

 最初にトライしたのは,枯れ木(12.d)だ。
今年の鳳来は,
9月になっても気温が高く,ホールドがぬめっている。
とにかく長いルートで持久力が要求される。
3日間ほどトライしたが,上部のガバ地帯に達した時,前腕がパンパンになってフォール。
ムーブは解決しているのに,持久力不足だ。前進するどころか,後退しはじめた。

こんな時は,気分転換。21世紀のエリアへ。
ここは,うすかぶりで細かいホールドが多い。
12aあたりをトライした。
終了点近くに核心部がある。気温が高く,保持できない。二日間ほど遊んだ。
でも,モチベーションが全く上がってこない。

そこで,今度は,がっかりエリアのジェットシューター(12c)へ。
このルートは,四年ほど前にトライしたが,ひざフックの苦手な僕は,門前払いだった。
このルートは,アンダーホールドを多用して登る,おもしろい一本だ。
4年前に比較して成長したのだろうか?手ごたえがあるではないか。
何と,2日間5トライで
RPしてしまった。

ジェットシューター(12c)のRPで,モチベーションが急上昇。
10月になってカーニバル(
13b)のトライを開始した。
このルートはメインウォールの中心にあり,持久力を要求される。
中間部で
4級程度?,最後に3級程度?のボルダームーブをこなさなくてはならない。
中間部はランナウトが怖く最後は細かいので,全然歯が立ちそうになかった。
10月の下旬には,下部のムーブは何とかこなせるようになった。
でも,鳳来のシーズンは,もうすぐ終わりを告げようとしていた。
「寒さとの戦いだ。」
「カーニバル(
13b)も枯れ木(12.d)も年内に登る。」
「登れるまで来る。」と公言した。でも・・・自信はなかった。

岩の条件が良い季節が来たと言うのに,週末(土曜)になれば雨が降る。
家の用事で,一日鳳来の日もあった。
そんな中でも必死にがんばり,11月中旬には1テンにこぎつけた。
最後のトラバースも完璧になり,終了点ガバまであと1手に迫った。
「何でそんなとこで落ちるんじゃ。もう,おわっとるじゃろ。」と言う声がとんできた。
なぜだ!実は,11月初め頃,最後のガバホールド(チョークべたつき)が欠けたのだ。
僕は,欠けたホールドを探しに行き,取り付きの根っこのあたりに保管しておいた。
悔しい!ガバがあれば!最後の1手で落ちる失態を3回も繰り返した。
「もう無理かもしれない。」寒さに凍える手をあたためながら,悲観的になった。
僕を救ってくれたのは,あるクライマーの言葉だった。
「絶対に否定的になってはいけない。イメージトレーニングをしっかりして!」

11月27日(日),ミラクルの日がやってきた。
26日は仕事。27日は夕方から用事のため早く帰宅しなければならなかった。
その日の計画はこうだ。8時アップを兼ねてヌンチャク掛け。11時,1時半と2回のトライ。
太陽は出ていたが,岩が冷たい。アップの時は,ヌンチャクを
3本かけてテンション。
手がかじかんで痛い。アップ終了後,軽いウオーキング・ストレッチを繰り返す。
いよいよトライ。
「12月に持ち越しになってもまた来たらいい。」とリラックスしながら登り始める。
岩は,冷たい。手がかじかむ。中間部と上部のボルダーも無事にこなし,最後の終了点ガバへ。
「ガンバ,ガンバ。」の温かい声援に後押しされながら終了点ガバへ。
クリップ後,上まで乗越して歓喜の
RP.
あたたかい握手に迎えられ感激で涙が出そうになる。

11時,枯れ木(12.d)のムーブを固めて来週につなげようとトライを開始。
2ヶ月ほどこのルートには触っていなかった。
でも,カーニバルと下部が同じため,正確には上部に触っていなかった事になる。
枯れ木も持久力を要求され,最後に核心が待っている。
いつの間にか最後のクリップまで来た。
思い切って突撃だ。
ためらうことなくガバへデッド。止まった。
上部は一回しかぬけたことが無かったので落ちそうになってしました。
1日に2本も
RP
人生最高の日になった。

「絶好調だね。」こんな声を時々かけられる。
自分でも不思議である。
トレーニングは?と聞かれると,週末のクライミングと週1回のジム。
忙しい時には行けない事もしばしば。
でも,25年間続けている事が一つある。それは,ジョギング。
どんなに仕事が忙しくとも双子の子どもが生まれて育児が大変でも続けてきた。
今は,通勤の途中から自転車を押しながら走っている。
道行く人からは,変人に思われている事でしょう。
みんな,じっと見ているから・・・。
筋肉は無いけれど,体が軽いのはジョギング効果にちがいない。


来年は,ステロイド(13c)にトライしたい。 


カーニバル 上部の核心  最後は細かい