【iidaさんの二子報告】(2008年11月16日開設)


新たな挑戦

    〜二子のクライミング〜  
2008年11月1日〜3日

  by飯田

 
悪夢は,2006年5月4日,二子山東岳SVP(12b)トライ中に発生した。
その年のツアーは3日〜7日の5日間で,第一目標はSVP(
12b)だった。
前日(3日)にムーブを固め,1便目の本気トライを開始。
下部の核心部を楽にクリアーした後コルネ帯に悲劇が待ちかまえていた。
ランナウトしたコルネ帯でクリップ体勢が見つからず,右往左往して粘りに粘った後フォール。
その時悲劇が起った。右足のふくらはぎに激痛が走った。
地上に降りたときは片足歩行の状態で,まともに歩行することすら出来なかった。
夕方小鹿野病院にて診察。肉離れだった。翌日京都に帰ることも考えたが,
秩父から東京に行き京都に帰る時間と費用,帰京してからの暗い生活を考えると,
残る3日間を小鹿野山荘で過ごすことに決めた。
長くてつらい日々だった。
朝,二子に行くクライマーを見送り,
TVを見たり昼寝をしたり・・・。
夕方仲間が帰って来るまでは,本当に長い1日だった。
1日のクライミングの様子を聞き笑顔でうなずいていたが,心の中では泣いていた。
長い3日間が終わり帰京した。待っていたのは,更に辛い日々だった。
まともに歩けない中仕事をしていたが,元気な左足にも負担が増大し,更に状況は悪化していった。
もちろんクライミングも3ヶ月あまり休業となった。つらい日々だった。


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あの日から2年半。
再び二子山に帰ってきた。
SVP(
12b)の下に立ったとき「リベンジしてやる。」という気持ちと
「また怪我をしたらどうしよう。」気持ちが同居した。
怪我の悪夢から解放されることなく,初日は火の鳥(
12a)にトライ。
3年前のトライ時には門前払いだったが,ムーブも完成し2回目で
RPできた。
次は
SVP・・・。
迷った。迷いに迷った。
でもこのルートを克服することで,2年前に止まった時間を再び動かせるのでは・・・と考えた。

いよいよトライ開始。
「元気に帰って来ました。」というあいさつだった。
無理はしなかった。
怪我をした部分は2年の歳月を経ても難しいままだった。
自分自身の実力もその時とあまり変化がないのか?
当然だ50歳を越えたらクライミング技術を向上させることは容易ではない。
ただ前回との大きな違いは気温だ。
前回は5月だったから少し暑かった。
今回は11月なので気温も低くぬめらない。
1日目の最終便でムーブを確認し,翌日のトライにかける。

翌日本気トライ。
核心部を突破し,悪夢のスペースに身を置いた時,はかりしれない恐怖心がおそってきた。
怪我をした時の悪夢が走馬燈のようによみがえった。
しかしその時の恐怖心を克服しRPを勝ち取った。
古い自分を脱皮した瞬間だった。
このルートのRPは,SVP(
12b)というルート登っただけでなく自分を乗り越えた素晴らしい1本だった。
「何のためにクライミングをしているのか。」他人に勝つためではない。
まさに,新しい自分を見つける旅なのだ。
1つ1つの試練を克服し,更に前進を続けたい。


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    今回RPしたルート

      火の鳥(12a)・SVP(12b)・モダンラブ(12a

    RPを逃したルート

      おいしいよ(12c