【氷室冴子さんのページ】

                【著者略歴とコメント】
1957年、北海道岩見沢市に生まれる。
1975年、藤女子大国文科入学(関係ないけど中島みゆきと同じ大学)
       3回生の夏「さようならアルルカン」で小説ジュニア(懐かしい)
       青春小説新人賞佳作入選
1980年、「クララ白書」
1981年、「恋する女たち」
1982年、「雑居時代」
1983年、「ざ・ちぇんじ」
1984年、「なんて素敵にジャパネスク」
1992年、「銀の海 金の大地」
1993年、「海がきこえる」

★これほど相性の好い作家はいない。
どの作品も秀逸である。レベルが高い。
普通の作家だと、作品により出来不出来がある。
(出来がよくても合わない場合もあるし)
氷室冴子作品は、どれもおもしろい。
最近、新刊が出ないのが残念。
(結構辛抱強く、新作を待っている人は多いんじゃないか?)
書名 オススメ度 内容
「クララ白書」パート(1)(2) ★★★★★ 読み返し回数ナンバーワン。最初に読んだ氷室作品。1980年、春のことである。
「アグネス白書」パート(1)(2) ★★★★★ 上記続編。マンネリ化しないところがすごい。
「恋する女たち」 ★★★★★ シリアスでハードなラブコメディ、『氷室冴子只者にあらず』と認識した作品。
「雑居時代」 ★★★★★ 「小説ジュニア」連載段階で読んだ。単行本が待てなかったのである。
「ざ・ちぇんじ」 ★★★★★ 「ジャパネスク」シリーズの前身。「とりかえばや物語」の冴子式リメイク。
「なんて素敵にジャパネスク」 ★★★★★ (シリーズ)何度読み返してもおもしろい。平安朝ラブコメディ決定版。
「銀の海 金の大地」 ★★★★★ (シリーズ)古代転生ファンタジー。一気に読み返すとより面白かった。
「海がきこえる」パート(1)(2) ★★★★★ あのスタジオジプリによりアニメ化された有名作品。アニメもけっこうおもしろい。
「なぎさボーイ」 ★★★★★ 作風としては「恋する女たち」に近い。「クララ白書」よりシリアス度は高い。
「多恵子ガール」 ★★★★★ 上記姉妹編。視点が多恵子に移行。同じ事件が違った角度から楽しめる。
「北里マドンナ」 ★★★★★ さらに上記姉妹編。
「冬のディーン・夏のナタリー」 ★★★★★ この作品、私は気に入っているのだが、未完成!いったいどうなるのだ?
「ターン―三番目に好き」 ★★★★★ 一般読者を対象にしたOL小説。
「いもうと物語」 ★★★★ 40年代北海道を舞台にした半自伝的小説。小学校4年のチヅルの視点で語られる。
「白い少女たち」 ★★★ 78年10月出版された最初の本。ちょっとシリアスすぎるけど。
「さようならアルルカン」 ★★★ 短編集。後のレベルの高い作品を感じさせる出来ばえ。氷室ファン必読か?
「シンデレラ迷宮」 ★★★★ 目が覚めると見知らぬ世界に来ていた。83年出版だから、荻原規子「これは王国のかぎ」(1993年)より10年早い!
「シンデレラミステリー」 ★★★★ 上記続編。ちなみに荻原規子「これは王国のかぎ」の続編はシリアス学園もの「樹上のゆりかご」である。
「少女小説家は死なない!」 ★★★★ 小説家・火村センセが主人公のパロディ小説。
「蕨ヶ丘物語」 ★★★★ 連作短編集。
「ヤマトタケル」 ★★★★ 「銀・金」の元の元。学生の時からすでに古事記を意識した物語を考えていたとは!流石。
「碧の迷宮」 ★★★ 残念なことにストーリーが尻切れトンボに・・・。
「レディ・アンをさがして」 ★★★ 「ローマの休日」をもとにした脚本+小説。
「冴子の東京物語」 ★★★★ 初めてのエッセイ。
「プレイバックへようこそ」(1)(2) ★★★★ これもエッセイ。
「いっぱしの女」 ★★★★ エッセイ。団体旅行でイヤミなおばさんをやっつけるシーンが痛快!
「冴子の母子草」 ★★★★ 涙なしには読めないノン・フィクション!母子の対決。
「マイ・ディア」 ★★★★ 昔の家庭小説「アン」「パレアナ」「若草物語」等のブックガイド。興味深い。
「ガールフレンズ」 ★★★ 対談、Q&A、イラスト等。バラエティブック。
「氷室冴子読本」 ★★★★ 資料としても役立つ冴子BOOK。自ら編集しているのが、すばらしい。
こんなに、はらはらどきどきするのも久しぶりである。
この作品が連載されていたときは、
次作が待ち遠しくてコバルトシリーズの、
「次月の新刊ラインナップ予告」をいつもチェックしていた。
この「ジャパネスクシリーズ」の後、
作者は「銀の海金の大地」の連載に入り、
このシリーズはひとまず終了してしまったのが、残念。

さて、この物語は平安時代を舞台に、
ヒロイン瑠璃姫が大活躍の作品である。
正義感と人情味あふれるヒロインと、個性的な脇役。
殊に、煌姫のキャラがいい。
瑠璃姫と対抗していたのが、いつの間にか親友となって、
と言う設定は「クララ白書」同様だが、
これが、氷室作品のよいところ。
だからこそ、読後感がよく、カタルシスが得られる。
その結果、もう一度読みたくなる。
すばらしい!
氷室冴子作品はすべておもしろいが、
殊に、「なぎさボーイ」と「多恵子ガール」は、
作品の構成が、実験的ですばらしい。
両作品を読むことによって、
同じ時の流れを
2回楽しめる趣向になっているからである。

男と女のすれ違いをここまで、わかりやすく
たのしい作品にしてくれているのは、
作者のサービス精神か?
作家の本能か?

姉妹編「北里マドンナ」「蕨ヶ丘物語」もある。
同じ学園もので、「クララ白書」パートT、U
「アグネス白書」パートT、Uも、おすすめ。
読むと元気になるよ。
「恋する女たち」もコメディタッチ学園もの佳作。
何回読んでもおもしろい。
こういう話を聞いた。
「ハリーポッター」の作者がまだ有名でないとき、
自分の作品を売り込もうとすると、出版社の人が、
「寄宿舎を舞台にした作品なんて誰も読まないよ」

さて、「クララ白書」のシリーズは、その寄宿舎が舞台である。
寄宿舎の同級生や先輩との楽しい学園生活。
様々な事件もおこるが、シリアスになりすぎないのが、
このタイプの小説のよいところである。

海外ドラマで言えば「アリー」や「ER」ではなく、
「フレンズ」のタイプである。
こちらのほうが、繰り返し読んで、
繰り返し、カタルシスを味わうことができる。
「クララ白書」の続編である。
新しいメンバーがさらに加わり、楽しさもグレードアップ。
氷室作品が、どうして他の作家と比べておもしろいのか?
(1)構成がしっかりしている
(2)ストーリー展開がうまい
(3)キャラクター設定がしっかりしている。
とくに、(3)のキャラクターが重要。
読者に受容されないキャラをいくらつくってもだめだし、
リアリティも必要である。
そのへんのサジカゲンが巧みである。
基礎部分がしっかりしているので、当たりはずれがなく、
どの作品も安心して、作家名だけで購入できる。
すなわち、氷室ブランドである。
スタジオジブリで映画化もされた傑作である。
作者は、勉強家である。
標準語だけでなく、土佐弁でも創作を行っている。
この作品だけでなく、「ざ・ちぇんじ」や、「雑居時代」では、
見事な関西弁を駆使している。


古代を舞台にしたファンタジィである。
(1)〜(11)まで一気に読みかえしてみて、
あらためて、
「すごい」
「おもしろい」
「レベル高い」
と、感じた。
長い作品はきれぎれに読まずに一気に読もう。
(連載中は仕方がないけど)
転生した続編が読みたい。

ところで、この作品のあとがきで、
作者が荻原規子さんと友達であることがわかった。
世間は狭い?


1981年2月、
「クララ白書」の次ぎに、この作品を読んで、
すっかり氷室冴子さんのファンとなった。
今でも、もっとも好きな作品の一つである。

当時、デビューしてまだ間がないと思われるが、
ストーリーと言い、キャラクター設定と言い、
必要にして、充分と言った状態である。
登場人物は個性的で、楽しいキャラクター達ばかり。
この後、どんどん人気が出たのも納得である。

【参考URL】 『現代作家ガイド』氷室 冴子紹介