【寄稿文飯田さんの『桂林(陽朔)クライミング日記』
(2008年1月23開設)


 飯田さんから『桂林(陽朔)クライミング日記』をいただいた。
2007から2008年末年始のクライミングレポートだ。(感謝!)

いつもながらすばらしい成果。
資料としても参考になるし、レポートとしてもおもしろい。
さっそく読んでみて下さい。

by たきやん


 『桂林(陽朔)クライミング日記

2007〜2008年末年始

 by チームクラマグチ 飯田  


 桂林は中国の南部に位置する山に囲まれた観光都市。
町の北から南に流れる離江沿いには,山水画そのものようなの世界が現れる。
陽朔は桂林の南70
kmに位置する。岩峰の数は無数にあり,備中の権現クラスがごろごろしている。
僕は数年前,ギュリッヒが紹介したビデオを見て感動したのを覚えている。
そしてロクスノの31号で「桂林」が紹介された時,桂林への夢は一気にふくらんだ。
そして夢が現実になる年がやってきた。

 桂林は戦後の日本の農村である。
僕は京都の大江町で生まれ育ったが,家は農家だった。
春になると田植えが始まる。もちろん手作業である。
雄の牛が一頭おり,農作業の主力だ。苗も自分の家で育て田んぼに植える。
手作業で刈り取り脱穀する。家には家畜がたくさんいる。鶏はとりわけ重要だ。
卵料理は毎日の重要な食事だ。卵を産まなくなった鶏は,食料となる。
熱湯に体をつけ羽をむしる。
首を切り落とし血を出す。
父が
出刃包丁で料理をする。僕は,横にいて全てを見ていた。
桂林は素朴な農村だ。











陽朔の中心地


2007.12.22(土) 雨

午前10MKタクシーにて京都を出発する。
空港にて
3万円を中国元にチェンジする。1450分関西空港発。
広州到着は
2時間あまり遅れた。
空港に到着すると,中国南方航空の若くてかわいらしい職員が
「飛行機の到着が遅れています。私が案内しますので南方航空のカウンターに来てください。」
とにこやかに声をかけてくる。カウンターに到着すると
「時間がありません。車で送ります。
1人10元いただきます」とせかされる。
案内の職員もカウンターの職員の相当急いでいるようで,
あわただしくチケットの確認をしたり,荷物の整理をしたりしている。
あまりの激しさで航空券の返却を忘れられるわ。荷物の引き換え券はもらえないわ。
これどうなっているの。
我々はゴーカート(8人乗り)に乗せられ出発ロビーへ。車で5分。歩くと15分。
これだけ急がされて出発ゲートに到着したのだが,まだ搭乗手続きは始まっていなかった。
やられた!職員みんながグルになっているとしか思えない。
美人の職員は私たちを送り届けるとさっそうと帰っていった。
日本語ぺらぺらだから信じてしまったか・・・。
21時30分広州発。

23日(日)  雨

起床7時。昨日の疲れを取るために風呂に入る。朝風呂は気持がよい。
重い荷物をかつぎバスターミナルへ。切符を買っていざ陽朔へ。
バスの運転がなんと乱妨なことか。センターラインはあってないようなもの。
反対車線へ出ながらどんどん追い越していく。危険だ。1時間半の恐怖のドライブを経て陽朔に。

ホテルのチェックインを修了して,岩場へ。
初日の岩場は
Banyan Tree Crag (大榕樹)のエリア。
Name?(5.11b)☆☆。核心部にてテンション。これはあまりお進めできない。
続いてName?(12b)☆☆☆へ。ドットスキナーのルートだが,名前が確認できないようだ。
このルートはうすかぶりのガバルート。
最後はコルネ帯だ。どこと言って核心部がなかった。超持久系だ。
終了点にたどり着いた時には,歓喜に包まれた。
OSの最高グレード。
初日からすばらしい土産ができた。
3週間前鳳来で3日間登りこんだ時,左肩の激痛に襲われた。
1週間肩が上がらず,陽朔行きのキャンセルを本気で考えた事もあった。
ストレッチ体操の治療だけで治したが
2週間かかった。
おそるおそる備中にも行ったが,調子はあまり良くなかった。

そんな不安を一掃した。でもこれって,超お買い得かも?

【今日の成果】
Name?(5.11b) ×
Name?(12b)  OS

12月24日(月)  曇りのち晴れ

6時30分起床。白山へ。朝食前にミニバス(タクシー)の予約を試みるが交渉不成立。
しかたなく9時にクラストカェに行く。
英語の話せる女性がいて,白山往復のミニバス(タクシー)を予約してくれる。
自転車通勤という手段もあるが老体にはハードだ。舗装されていない悪い道を通って白山へ。
幅100m高さ100mの素晴らしい岩が我々を迎えてくれた。
アップに 
The Comedians (10c)を快適に登る。ガバの連続だ。
次に
Abinormal11b)へ。出だしのコルネが悪いがOS成功。
今日の目標ルートの
Devil Sticks12b)へ。
核心部のクラックが悪かったが耐えて耐えて
FS
夕食にクラストカェへ。日本語がわかるサイチンと意気投合。
彼女は桂林の学校で日本語を学び,日本にも通訳の仕事で来ていたようだ。


【今日の成果】
The Comedians (10c)  OS
Abinormal11b)  OS
Devil Sticks12b)  FS
China White (12b)  ×

12月25日(火)  曇り時々晴れ

今日も白山へ。9時30分頃到着するが,やや寒い。
岩場には我々以外誰もいない。まだ寒いからであろう。
11時頃香港や中国のクライマーが訪れ,岩場もにぎやかになった。
本日の目標の
China White (12b)へ。
一便目はホケットから遠いガバをとるところでフォール。
ムーブの組み立て直しを余儀なくされる。
2時,本日2回目のトライ。細かいフォールドで中継するムーブでトライすることをきめる。
気温が高くなってきたので裸の真剣トライ。
研究したムーブもバッチリ決まり感激のRP.うれしい!















The Missing Link (10abを登る



【今日の成果】

China White (12b) 3撃
The Missing Link (10ab
Face Raute (11a

12月26日(水)  雨のち曇り

 今日はレスト日。
朝から土産を買いに行く。またこれが疲れる。
ほとんどの土産に値段がついていない。
値段は全て交渉にて決まる。
Tシャツを買う時もそうだった。
「いくら?」と聞くと
「一枚90元でどう。あなたは今日一番の客だから特別に安くするよ・・・。」
冗談じゃない。
Tシャツ一枚に1000円以上払えません。
「20元でどうだ。」と言うと「50元にするよ。」
「じゃ,もういらない。」と帰りかけると腕をつかんで放さない。
「ラストプライス。」としつこく迫ってくる。
「25元」「
OK」これで交渉成立。
約30分近いやり取りだ。
一杯飲んだ勢いで買物をすると,酔っているから高値で買わされる。
買物をする時は買値を決めてから行く事。
その後友人がコインランドリー(
1.5kgで10元)に寄ってからホテルへ。
 昼食後,体を動かすために写真撮影を兼ねてジョギングに出かける。
近くの市場には牛や豚・鶏肉とともに犬・亀・食用ガエルが並んでいた。
夕食は中国人観光客が来ている食堂へ。名物料理の鯉料理を注文。生臭くなくいい味だった。

 

        

   12月27日(木)  雨のち晴れ

 朝の雨もやみ,月亮山へ。入り口にて15元を徴収される。
長い階段を登ること20分。素晴らしい半ドーナッツ型の岩が顔を見せた。
これが夢にまで見たムーンヒル(月亮山)だ。峰々が何重にも重なり霞んで見える。
まさに山水画の世界そのものだ。まずは,
The Dark Side Of The Moon (10d)へ。
長いルートなのでアップちょうどいい。
次に
Moonsturck (11a)をトライ。ホールドがわかりずらかったが,おもしろいムーブだった。
いよいよ目標ルートの
Proud Sky12a/b)へ。ハングの抜けがきびしそうだ。
気合を入れてトライ開始。ガバの連続なので快適に登り,
ハングの下でレストしながらムーブを組み立て読み通りのムーブで終了点に到着。
やった〜。うれしい
OS
数時間休んだ後,
Over the Moon12C)へ。
これは「世界一
かぶったガバの12c」らしい。
中間のレストポイ
ントまでは楽しく登れたが,上部の出だしコルネで力尽きてフォール。
残念!一撃をねらっていたのに・・・。
でも,こんなグレードは冷静に考えれば無理だよね。
後は各駅停車で終了点へ。明日の
RPに期待をかけてヌンチャク残置。
最後に,
Artemis11a)を登る。一箇所悪いところがあったが,ガバの連続だった。
夕食はクラストカフェへ。ここはクライマーが集まるカフェで最新のトポを見ることができる。
カフェでバイトをするサイチンとその友人と明日クライミングに月亮山へ行く事を約束する。

















Proud Sky12a/b)を登る



【今日の成果】
The Dark Side Of The Moon (10d
Moonsturck (11a
Proud Sky12a/b)  OS
Over the Moon12C)  ×          
Artemis11a)

12月28日(雨)

 朝,サイチンとその友人がホテルに来て,ミニバスにて月亮山へ。
到着後も雨が止む気配はない。
二人のギャルのために
Luna Nascente10b)にトップロープをかける。
サイチンは全く初めてなのでこわごわ登っていたが,まもなくテンション。
「怖い。怖い。」と叫び宙ずりに。
雨も強くなり,クライミング用具も泥だらけ。雨の中を撤退。

午後,サイチンとラーメンを食べに行く。
5元でたくさんの薬味もあり美味しくいただいた。
ショッピングをしながらサイチンと会話して印象に残った事は,

@中国の女性(家庭を持っている)は,怠け者だからほとんど外食で食事をつくらない。
A
だから小学生は,登校途中に軽食を食べている。
B陽朔あたりの労働者の1ヶ月の賃金は500元(8500円)ぐらい。
ということだった。

 

12月29日(土)曇り時々晴れ

 月亮山へ。今日の目標は,Over the Moon12C)。
本当は昨日トライする予定だった。今日は風が冷たい。
Emission Control5.9)でアップ。とても寒い。
もう一本
Artemis11a)を登る。
いよいよ
Over the Moon12C)へ。中間まではガバの連続で,快適に登る。
大レストポイントまでは,11
dくらいか?十分の休憩後上部へ。
コルネのガバだが,ホールドが少し遠い。
ここがワンポイント難しい。大きなポケットをアンダーでこなしながら核心部をクリアー。
レストポイントに到達したのだがどんどん腕が張っていく。
ここまで来たら落ちるわけにはいかない。これを目標に桂林に着たのだ。
「登れる。登れる。」と自分自身に言い聞かせながら,一歩一歩慎重に道を選ぶ。
パンプとの戦いに打ち勝ち見事
RP
「陽朔万歳!」天気も回復し,これまでで一番よい天気となった。









Over the Moon12c)を登る


【今日の成果】

Over the Moon12C) 2撃

 

12月30日(日)曇り

今日のエリアは,レイピーシャン。Ma Jie (10d)でアップした後,Pickpoket11d)へ。
大きなポケットの連続だ。
ポケットのオンパレードのため,持てる持てないのあたりはずれが激しい。
快適なガバをつなぎながら登る。

続いてSingularity(12)へ。下部がフェースで上部は長いコルネ。
下部は細かいホールドをつなぎ,上部のコルネは予想よりガバで楽しく登れた。
気をよくして
The Power Of One (12C)へ。
このルートは
Pickpoket11d)の親分だ。ガバポケット・スローパーポケットなど様々だ。
僕は小さなポケットは大嫌いだから,こんなバケツはありがたい。
最後に
Name?(11C)に取り付く。きれいなフィンガークラックが走っている。
だがこれが良くない。ランナウトもしている。要所要所にポケットもある。
なんとか
OSできたが難しく感じた。

【今日の成果】
Ma Jie (10d
Pickpoket11d) OS
Singularity(12)  OS
The Power Of One (12C) ×
Name?(11C) OS

 

1230日(月) 曇り

レイピーシャンへ。とても寒い。
本日の目標
The Power Of One (12C),何故か2撃できた。
まぐれか?このルートは豪快なポケットルートだ。
ガバもあればスローパーもありあたりはずれが極端だ。
昨日ムーブは確認してあるが大きなポケットを使って慎重に登る。
核心部少し甘いポケット。ワン・ツー・スリーでレストポイントへ。
後は遠いガバばかり。どんどん腕が張ってくる。
でも少し余裕をもって終了点へ。うれしい一本だ。

 次にThe Artful Dodger12a)だ。出だしの一歩が少し難しい。
後はバランシーな小ポケットをいかにつなぐか。
上部はガバガバ。下部核心なので,上部は問題なし。OSできた。体がとても軽い。
どこでも登れそうな気がする。こんな事は,
5年に一度あるかないかだ。
こんなに登れたツワーはない。
日本のグレードが辛いのか,それとも調子がいいのか?
今回のツワーで気をつけていること。朝晩のストレッチと朝風呂。
これはいい。酒は大好きなのでしっかり飲んだ。地酒がおいしかった。
中華料理がおいしく日本にいる時よりお腹の調子がよかった。
プロ野球の川上選手は調子がいいとき「ボールが止まって見える」と言った。
僕の体は跳ねているようだ。

【今日の成果】
The Power Of One (12C) 2
The Artful Dodger12a)OS

 

2008年1月1日(火)快晴

陽朔で初めて見る青空。
少し晴れかけた日はあったが,びっくりだ。
今日1時にクライミング終了なので
The Butterfly SpringからWin Bottle Cragへ。
The Butterfly Springで友人が登っている時は観光客の拍手喝采とフラッシュの嵐だった。
その後
Win Bottle Cragへ。
The Great Wall11d)・Where‘s The Jug11a)・Empty Jug11C
をいずれもマスターでオンサイトしてしまった。
最終日なのに筋肉痛もないし,まだ体力もある。
どうなってるの?
今回は友人よりダブルブーリンの結び方も教えてもらった。
エイト結びだとハングドックした時にとてもきつく
締め付けられロープをほどく作業にパンプする時がある。
これなら楽々だ。でも新しい事なので結び間違いは要注意だ。

1時にクライミングは終了しホテルへ。
3人で帰るのでGigタクシーを予約。荷物が多いので通常のタクシーでは乗り切れない。
300元で桂林のエアポートまで行ってくれた。
空港まで
1時間半。陽朔では携帯電話の使用ができた。
緊急時や天気予報の確認のためにはありがたい。
寒い日には月亮山には行かない事。我慢大会になりますよ。


【今日の成果】
The Great Wall11d)
Where‘s The Jug11a)
Empty Jug11C

陽朔(yangshuo)あれこれ

【岩場へのアプローチ

クライミングに行く時は小型のバスがある。
また人数が多い時には,小型バス(タクシー)を予約すると便利だ。
予約はクラストカフェでできる。
料理も美味しく我々も何回か利用した。
また自転車を利用することもできる。体力がある人におすすめ。
重荷を背負って自転車に乗る事は年寄りには辛い。

 

【気候】

最高気温は,10度から15度くらい。
日本の11月頃の気候。クライミングをするには,絶好の条件だ。
日が当たれば暑く,雨が降ればとても寒い。
滞在中は曇りや雨の日が多かったが,帰国後は晴れの日が多かったらしい(後発隊談)。
登る時は
Tシャツで十分。ビレイの時は,暖かく。

 

【交通ルール】

陽朔には信号が一つも無い。
道路を横断するには,一苦労する。
バス・タクシー・自家用車・バイク・自転車などの交通量が非常に多い。
交通量が多い中での横断は緊張する。
11aくらいある。岩登りより危険が大きい。
中国は右側通行だから,まず左の車を確認しなければならない。
これが非日常だ。
センターラインにて立ち止まる事数十秒,様子を見て車を避けながら横断完了。
直ぐに渡れることは全くといっていいほどない。
食事でアルコールが入ってからのちどりあし横断は,
12aだ。
桂林や陽朔の主要な交通手段はバスらしい。運転が荒っぽい。
普通の道路でもセンターラインを超えどんどん他の車を追い越していく。
バスがバスを追い越すこともたびたび。

 

【費用】

航空券(中国南方航空にて関空〜桂林の往復) 75970 

宿 泊 費 合 計 (現地のみ)      15700円 

桂林丹林大酒店(ホテル)      3700

陽朔新離江飯店(ホテル)朝食込み一泊 1500   

夕食はレストランにて。
高い店に行かなければ飲んで食べて一人40元(600円)くらい。
さらに安い店もある。