【著者略歴】 苫小牧市生まれ。早大大学院修士課程(独文学)修了。 早稲田大学講師。ドイツ文学、西洋文化史。 |
怖い絵3 | 朝日出版社 2008年6月 | ★★★★☆ |
名画で読み解くハプスブルク家12の物語 | 光文社新書 | ★★★★☆ |
怖い絵2 | 朝日出版社 2008年4月 | ★★★★★ |
怖い絵 | 朝日出版社 1,890円 2007年7月 | ★★★★★ |
メンデルスゾーンとアンデルセン | さ・え・ら書房 1,575円 2006年4月 | ★★★★☆ |
オペラ・ギャラリー50 登場人物&物語図解 (共著) | 学研 2,940円 2004年9月 | ★★★★ |
恋するヒロイン オペラにみる愛のかたち | ショパン 1,575円 2005年1月 | ★★★★☆ |
恋に死す | 清流出版 1,680円 2003年12月 | ★★★★★ |
情熱の女流「昆虫画家」 メーリアン波乱万丈の生涯 | 講談社 1,995円 2002年1月 | ★★★★★ |
紙幣は語る | 洋泉社 735円 2001年9月 | 絶版 |
かくも罪深きオペラ スキャンダラスな名作たち | 洋泉社 1,890円 1999年12月 | 絶版 |
映画の中のオペラ | 未来社 1,890円 1997年12月 | 絶版 |
オペラでたのしむ名作文学 | さ・え・ら書房 1,325円 1996年12月 | ★★★★ |
【翻訳】 | ||
マリー・アントワネット 上・下 シュテファン・ツヴァイク | 角川書店 620円 2007年1月 | |
天使に会える日 あなたをたすける39のエンジェルたち | 洋泉社 1,260円 1999年11月 | |
訴えてやる! ドイツ隣人間訴訟戦争 | 未来社 2,730円 1993年12月 | |
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2009年6月14日 「怖い絵3」中野京子(朝日出版社)
(でも、これが完結編なのね・・・残念) 私は学校で、絵画は先入観なしに見るべし、と習った。 いかに、それが皮相でレベルが低い見識だあることか。 少なくとも近代以前の絵画を見るには、それなりの歴史・文化の知識が必要。 著者は恐ろしく博識にして洞察力もある。 ホント感服する。 例えば、『かわいそうな先生』(レッドグレイヴ)の絵について。 原題“The por teatcher”の先生とは“governess”(ガヴァネス)を指すと指摘。 女性が職業に就いていること自体が蔑まれた時代から説き起こす。 詳しくは本書を読んでもらうとして、具体的な文学作品を提示される。 (タイトル右は、私のコメント) 「ジェーン・エア」・・・これは真っ先に頭に浮かぶ。私も好きな作品。 「ねじの回転」・・・そうなのか。 「エマ」・・・「自負と偏見」は読んだけど・・・昔は翻訳されてなかったぞ。 「シャーロックホームズ」・・・特に「四つのサイン」ではヒロイン・メアリにワトスンが一目惚れ。 「虚栄の市」・・・タイトルは知ってるけど未読、ここまで読むのは英文学の専門家でしょう。 以上、知識と洞察に圧倒される。 |
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2008年9月14日(日曜)晴れ 「名画で読み解くハプスブルク家12の物語」中野京子(光文社新書)
サブタイトルは・・・ 「650年にわたる血みどろの王朝劇」 本当に、波瀾万丈の王朝劇だ。 ヨーロッパ史の太い縦糸・ハプスブルク家650年を絵画からたどる。 それにしても、濃いキャラクター達だ。 高校世界史の副読本に薦めたい。 カラー図多数掲載で楽しめる。 【参考の目次】
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2008年4月26日(土曜) 「オペラでたのしむ名作文学」中野京子(さえら書房)
例えば「カルメン」は代表的なスペインの物語、と思っていた。 しかし、原作はフランス人・メリメ、オペラもフランス語で歌われる。 さらに、カルメンはジプシー。 恋の相手ドン・ホセも正確にはバスク人。 「カルメン」が発表されたのは1845年。 ホセの生まれたナバラは、もとは王国で、スペインに統合されたのはこの数年前。 ホセも「もしスペイン人が、わが国の悪口をいったら、ただではすまないぞ」、と言っている。 現在でも独立運動でもめている。 他にも、「椿姫」では、ヴィオレッタは結核なのになぜ人前に出たのか? まわりも受け入れたのか?、とか。 いろいろ情報を知ることができる。 PS 児童向けなので、サロメとか、アイーダは避けている。 そのあたり、少しもの足りないけど |
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2008年4月20日(日曜) 「怖い絵2」中野京子(朝日出版社)
「聖ゲオルギウスと竜」の章はみごと。 当時の歴史、文化を解説しながら現代アメリカ批判になっているのがすごい。 竜は異教徒の象徴のみならず、諸々の災厄なども含めた諸悪のシンボル・・・と読み解く。 アメリカは、まだ自らを聖ゲオルギウスと信じているのだろうか、と。(P160参考) |
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「恋するヒロイン」中野京子(ショパン)
オペラに登場する様々なヒロイン。 ストーリーを紹介しながら、登場人物を分析していく。 トスカ、ヴィオレッタ、喋々夫人、カルメン・・・。 あいかわらず冴えている。 見事な分析と判断。 例えば「夕鶴」のつう。 与ひょうにとって「つう」は「母」である、と喝破する。 以下、転載。 『こうして奉仕することで愛をつないできた女性は、絶えざる自己犠牲を求められたあげく、 別れに際して愛した男性から追ってもらえない。 でもこの関係はふたりで作りあげてきたのだ。半分は彼女の責任でもある。 男は甘えながらも、案外どこかで感じとってはいた、献身的に尽くしてくれる女は、 自分を支配しようとしてそうしている、と。 だから彼は小さな女の世界から抜け出し、大きな都へ行きたがった。 金儲けをして、自分を試したがった。 抱きしめるばかりで冒険させてくれない母から自立したくなった。 つうから見れば与ひょうの変化は純真さの消滅だが、 別の見方をすれば彼の好奇心は知恵の始まりであり、 金儲けをしたいという気持ちは男らしさの発生といえよう。』 以上、転載終了。 なんとも、見事な分析、論評だ。 さらに、この後「オルフェオとエウリディーチェ」をもってきて比較する。 (このあたりが並のオペラ紹介・評論と異なるところ) ご存じのように、オルフェオはエウリディーチェを追って冥界へ行く。(古事記にも似た話あり) 著者は下記のように分析。 『手間のかかる女のほうが、愛される確率が高いような気がする。 それとも愛されている自信が、男にとって手間のかかる状況を作りだすのだろうか。』 う〜ん(絶句)。 |
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「情熱の女流「昆虫画家」メーリアン波瀾万丈の生涯」中野京子(講談社)
植物画家で昆虫学者。 現代から見ても、充分変人、と思われる虫好き女性。 この女性の生き様をドイツバロックの歴史と重ねながら、紐解いていく。 バロック期の「虫愛ずる姫君」の物語だ。(貧乏だけど) かなり読み応えがある。 おもしろい! 実は、当時「虫好き」、って言うのは危険。 なぜなら、虫に詳しい、ってだけで魔女裁判で火あぶりにされた女性がいるくらい。 昆虫は悪魔の仲間、と多くの人が信じていた。 しかし、彼女は虫を集め、研究を続ける。 結婚もしたが破綻。 子供を連れてオランダへ移住。 さらに熱帯の虫を見たくて、南米スリナムへ移住する。 (船で3ヶ月かかる、しかもその時彼女は52歳) 驚異の虫好きだ。 著者は、資料を駆使し、丁寧に分析、 当時の歴史と照らし合わせながら、物語を進めていく。 その時、彼女がどう感じたのか状況から推理していく。 その生き生きした女性像を描いていく。 見事な筆力だ。 この作品は読書の楽しみを満足させてくれる。 しかしながら、内容が内容だけに一般受けせず絶版、入手困難。 仕方がないので図書館で借りて読んだ。 PS メーリアンの後世への影響は計り知れない。 昆虫学のみならず、博物学、美術絵画への影響。 現在は再評価され、切手、紙幣に彼女の肖像が使われ、 学校、船にも彼女の名前が使われるくらいドイツで人気。 また、マイセンで花の図柄があれば、メーリアンの画集が元になっている、と言う。 ゲーテ曰く、「感覚的悦びを完璧に満足させる」、と。 【参考】 マリア・ジビーラ・メーリアン - Wikipedia |
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「メンデルスゾーンとアンデルセン」中野京子(さえら書房)
ドイツの作曲家メンデスゾーン、デンマークの作家アンデルセン、 スウェーデンのソプラノ歌手リンド− 境遇も生まれも違う三人の出会いと別れを激動の十九世紀を舞台に描く。 これ以上説明することもないけれど、 中野京子さんらしく西洋史に通暁した知識で、 時代風俗を見事に再現・・・さすが。 読んでみて、オススメ。 |
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2007年12月8日(土曜)晴れ
中野京子さん描く女性列伝。 有名な方も、私の知らなかった方も、 昔の人も、20世紀の人も、 西洋人も、日本人も。 松井須磨子からマリリン・モンローまで。 アン・ブーリンからヴィクトリア女王まで。 中野京子さんのすごいところは、西洋文化(歴史)も日本文化(歴史)にも造詣があって、 深い洞察力・観察力、文章力・表現力もある、ってことだ。 例えば、第1章は大納言久我雅忠の女二条「とはずがたり」。 これをフロイトの「夢分析」を用いて分析し、「トリスタンとイゾルデ」と比較する。 これは、なかなか出来ないよ。 ユングの愛人だったザビーナ・シュピールラインの章もよかった。 ユングがオカルト好きだったのは知ってたけど、 オットセイのようにハーレムを作りたいタイプだった、とは知らなかった。 「一夫多妻が自然の摂理」、と言ってたらしい。 (今だったら、上野千鶴子先生にしばかれていたかも?) ハプスブルク帝国フェルディナンド皇太子妃・ゾフィの章も余韻が残る。 もともと女官だったが未来の皇帝と恋に落ちる。 数々の困難を乗り越え、2人は結ばれる。 ・・・そして運命の時は訪れる。(NHK「その時歴史が動いた」の口調でどうぞ) 1914年、オーストリア領ボスニアの都市サラエヴォで陸軍の演習があり、 皇帝の代わりにフェルデナンドがその演習の視察に行く。 この時テロリストが夫婦2人をピストルで撃ち殺す。 そしてこの暗殺がきっかけとなって、二千万人もの死傷者をだす第一次世界大戦は始まるのだ。 当時のバルカン情勢は一触即発。 なぜ、それでも出かけたのか? 夫婦ならんで公の場に出られる数少ないチャンスだったから。 (身分の低さゆえ、ゾフィは公式行事から閉め出されていた) 最後のシーンも涙を誘う。 1発目はフェルデナンドに、2発目はゾフィに命中。 フェルデナンドは血を吐きながらも妻をかきいだき「ゾフィ、死ぬな。子どもたちのために」、と。 さて、中野京子さんの作品はほとんど絶版状態。 図書館で借りるしかない。 残念なことだ。 |
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2007年10月12日(金曜)晴れ
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【参考】 ⇒中野京子さんのブログ ⇒中野京子さんの著作一覧 ⇒世界史レッスン |