「日常の裏には・・・」  

青木淳子はパイロキネシスを隠し持つ超能力者である。
自分の能力を知られないよう職業を変え、
目立たないように社会の片隅で生きている。
しかし、或る夜、殺人を目撃したことから、
自ら封印していた能力を解き放つ。
「どうしてこの世に私のようなものが生まれたのか」
自らに問い続けながらも、
ささやかな幸福を夢見る普通の女性でもある。
最終ページまで一気に読ませてしまう迫力だ。

数ある宮部作品の中でも、
「クロスファイア」を気に入っている。
そのベクトルは圧倒的である。
短編集「鳩笛草」の中の「燔祭」が姉妹編にあたり、
順番からいえば、先に「燔祭」を読んでおいた方が、より楽しめる。

映画化もされており、こちらもレベルが高い。
日本映画を見なおしたほどである。
「ハリウッドよりおもしろいかも?」
(私はDVDが発売されたとき、すぐ購入した!)
初めて筒井康隆氏の作品を読んだのは、
中学一年生の時であった。
最初に読んだのは、「アフリカの爆弾」で、
とんでもないパロディとギャグの嵐に圧倒され、
以来次々に読んだ。
「七瀬ふたたび」はもっとも一派うけする作品でもあり、
また同時に前衛的でもある。

ヒロインがすごくかっこよく、
「時をかける少女」とともに女性ファンが多い作品と思われる。
他の作品は、女性より男性のファン。
オヤジより学生のファンが多い、印象を持つ。
(渡辺淳一氏と正反対?)

作品の内容は、テレパス能力をもつ女性の戦いと逃亡が
描かれているが、「こんなにおもしろくてよいのでしょうか?」
といった具合である。

発行年月日を見ると、1975年5月10日となっているが、
今でも、新鮮な内容である。
姉妹編に「家族八景」「エディプスの恋人」がある。
筒井氏らしく一作ごとに趣向を変えてある。
貴志祐介氏と言えば、
「黒い家」が有名だが、
私はこちらの作品の方がすき。

内容は、阪神大震災直後の兵庫県が舞台。
ヒロイン賀茂由香里は人の強い感情を読みとることができる
"エンパス"である。
その能力を活かしてボランティアとして、
西宮の病院で被災者の相談相手をしている。
そこで出会った入院中の少女千尋の相手をしていて、
彼女が多重人格であることを見抜く。

「黒い家」でもそうだが、
作中人物の心理分析・解析がおもしろい。

ところで、ヒロインのその後が気になる。
何ともミステリアスな作品である。
作者は、「BANANA FISH」や「YASHA」のような
アクションものが有名だが、
この作品を読んでいると、
「ミステリアスな恐怖ものが、
本来の作者の持ち味なのではないか?」
と、感じてしまう。
秀作である。

「もう一度、人生をやり直せたら・・・」
この課題と正面から取り組んだ作品である。

小説を読むとき私は、
「次はこう展開するのでは」
と、予想を立てながら読んだりするのだが、
それが次々に裏切られるのが、この作品である。
また、これがカイカンでもある。

時間ものSFでもあり、
恋愛ものとしても、楽しめる。
諸星大二郎といえばベテラン作家である。
過去の作品との関連から言って、
まさかこういう作品を描くとは予想しなかった。
女子高生コンビの栞と紙魚子をヒロインに、
なんとも不思議な事件が展開する。

オビの宣伝どおり、
「読めば病み付き」
←【見開きの半頁】
↓【表紙】

(CBSソニー出版)


作者はあの「AKIRA」の大友克洋である。
タイトルは「ヘンゼルとグレーテル」
有名な童話や文学作品が、
見事にリメイクされていく。

山岸凉子さんでさえ、
「こんなに完璧に(リメイク)されるとやりにくい」
といったコメントをされていたと記憶している。

これはすごい作品である!
今まで見過ごしていたのは、痛恨の極み!
こんなすごい作品を見逃すなんて。
平安時代末期(たぶん)を舞台にした、ファンタジーがカテゴリーと思われるが、
ジャンル別けは無意味。
10歳くらいの童女がもののけの河童と共に(母を訪ねる)旅に出て不思議を体験する、
これがあらすじ。
圧倒される。イマジネーションが並じゃない。
花輪和一さんの作品をネット上で探したが、ほとんど絶版状態。
やはり世間のレベルは低いのか?
他の作家のつまらん作品が売れて、
こんな優れた作品群が手に入りにくいなんて。
水木しげるさんのファンや「栞と紙魚子シリーズ」(諸星大二郎)が好きなら、
きっと夢中になるはず。