【荻原規子さんのページ】

          【著者略歴とコメント】
1959年、東京生まれ。
「空色勾玉」でデビュー、赤い鳥児童文学賞。
「薄紅天女」は日本児童文学者協会新人賞。
「これは王国の鍵」は産経児童出版文化賞。
荻原規子さんは寡作・・・それだけが残念。
下記が全作品リストである。
★印5個が最高点であるがほとんど全作品が、
最高点以上の内容である!
1981年冬に氷室冴子作品に出会って以来の
相性の良い作家である。
(マンガ家の山岸涼子さんと吉田秋生さんをのぞいて)
アンダンテ日記 荻原規子さんのブログ
書名 オススメ度 内容
「空色勾玉」 ★★★★★ 古代日本を舞台にしたファンタジー『勾玉三部作』の1作目
「白鳥異伝」 ★★★★★ ヤマトタケルをモデルにしたファンタジー
「薄紅天女」 ★★★★★ 平安時代を舞台にしたファンタジー
「西の善き魔女」(1) ★★★★★ 架空世界を舞台にしたファンタジー
「西の善き魔女」(2) ★★★★★ 架空世界を舞台にしたファンタジー
「西の善き魔女」(3) ★★★★★ 架空世界を舞台にしたファンタジー
「西の善き魔女」(4) ★★★★★ 架空世界を舞台にしたファンタジー
「これは王国の鍵」 ★★★★ アラビアンナイトを題材にしたファンタジー
「樹上のゆりかご」 ★★★★★ ミステリアスな学園もの、主人公は「これは王国の鍵」と同じ
「風神秘抄」 ★★★★★ 平治の乱を背景にしたファンタジー
「RDG レッドデータガール」(1) ★★★★★ 現代日本を舞台にしたファンタジー
「RDG レッドデータガール」(2) ★★★★★ 現代日本を舞台にしたファンタジー
2009年5月31日

「RDG レッドデータガール」(2)荻原規子(角川書店)
内容 現代日本を舞台にしたファンタジー、シリーズ2弾
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 98点
気分 荻原作品サイコ−、ツボ押さえまくり
オススメ ★★★★★
ネット上の紹介 荻原規子の大人気シリーズ、待望の続編登場!
自分の不思議な力と向き合うために泉水子が入学した東京の鳳城学園には、ある特殊な事情が隠されていた…。
荻原規子書き下ろし大人気シリーズ、待望の続刊登場!!
今週末は予定を入れずに、読書に集中した。
書店への入荷は発売日から2日遅れで、土曜日の昼。(取り置きしておいてもらった)
土曜日に一気読みして、日曜日再読した。(ブランクをなくすため1巻目再読してから2巻目読み進んだ)
ワンランク上の面白さ。
ツボを押さえている。
物語の舞台は予想どおり、東京に移動。
ファンタジーと言うより、ほとんど学園もの?、っていうような展開。
しかも、寄宿舎だし!
(「西の善き魔女」(秘密の花園)を思い出す)
今回の特徴は登場人物の多彩さ。
個性的な人物多数登場。
誰が人気出るか?
真夏か真響が上位に入りそう。
泉水子の父も登場したし。
ほんと、顔ぶれが多彩で豪華。
あと、重要人物で登場しないのは紫子さんくらい。
今回気になったのが、和宮のあの姿での登場。
「風神秘抄」とのリンクを感じる。
もしや、これは「転生」では?、と。

PS
蛇足ながら、気になった点、ささいなことだけど。
前回も書いたけど、泉水子を始め、登場人物すべてが標準語を話すこと。
全国から集まった生徒達だけど、どなたも方言を使わない。
方言を使うと、ストーリーのなめらかな進展阻害になるのでしょうね。
でも、一度使っていただきたいような気もする。
2008年7月6日(日曜)

「RDG レッドデータガール」荻原規子(角川書店)
内容 現代日本を舞台にしたファンタジー
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 98点
気分 個人的には大満足
オススメ ★★★★★

荻原規子さん3年ぶりの新刊。
(前作「風神秘抄 」もよかった)
今回も期待を裏切らないおもしろさ。
RDGシリーズ第1作だ。(シリーズだよね?)

さて、金曜日7月4日発売。
残業後、書店に立ち寄る。
先月から予約を入れていたのに、書店に金曜日に来ていない。(怒)
仕方がないので翌日トレーニング終了後、駅前書店に走る。
1冊だけ残っていたのを購入。
思った以上に重厚な装丁なので、読む前から期待が高まる。
・・・夜9時から一気読み。

これはすごいよ、圧倒的なベクトル。
大峰山系の僻地とも言える学園が舞台。
(大峰山系は厳冬期含め何度か登っているので、親しみを感じる)
修験道、山伏、奥駆と言った親しみのある語彙も登場。
明治維新の廃仏毀釈、と言った歴史背景もさりげなく言及。
次作は東京に転校して、新たな学園が舞台になるでしょうね。
ところで、今回は趣向が凝らされている。
つまり、現代日本+ファンタジー、って設定。
「勾玉」は昔の日本が舞台だし。
「西の善き魔女」は架空欧州が舞台。
「樹上・・・」は現代が舞台だけど、ファンタジーじゃないし。
今回は・・・現代、日本、青春、学園、ファンタジー、と王道まっしぐら。
新たな試みに挑戦、と思われる。
今後の展開が楽しみだ。

【蛇足】
もし著者に注文をつけるとしたら、
もっと脇役への書き込み、ページをさいて欲しかった。
ヒロインの友人春菜とあゆみのエピソード。
(結局バスケットの応援に行かなかったし)
生徒会長・越川美沙との確執はどうなるの?
特に修学旅行で泉水子と深行がいなくなったが、
その時の周りの反応は軽く流してしまったし。
次作は上記途上人物たちは、消えてしまうのでしょうか?
こういった「ヒロインが平凡な状態」を詳細に書けば書くほど、
ファンタジーモードに入った時に、リアリズムが増す。
タメの部分が長いほど重厚になる。
ところで、紫子は次回登場するんでしょうか?
お父さんの大成さんは?
疑問だらけだけれど、次作への期待も高まる。

PS
オススメ度98点、としたがファンタジー、学園ものに興味のない方にはオススメしない。
「離愁」(多島斗志之)のような一般性はない。
荻原作品初心者の方は、「樹上のゆりかご」「空色勾玉」 からどうぞ。
私は荻原作品との相性バッチリで、裏切られたことはない。
すべてワンランク上の満足度だ。

PS
関係ないけど、外津川、って十津川がモデル?
あの有名な吊り橋をわたったことあるよ。(走って往復した)
一般の方は、あの高度感で立ちすくむらしい。
私は、もちろんヘーキだ。
(あたりまえか?)

【参考】
RDG

カドカワ銀のさじ

2008年7月13日(日曜)

先週の続き。
「RDG レッドデータガール」(荻原規子)を読み返した。
先週、外津川、って十津川がモデル?、と書いたが、
玉倉神社のモデルも玉置神社、と思われる。

奥駆けについても少し調べてみた。
【登山としての奥駆け】
手元に、「関西の山々」(創元社)と「大峰吉野」の登山地図がある。
一般登山では、山上ガ岳、弥山、釈迦ガ岳を登って前鬼に下るのを奥駆けと呼ぶ。
本宮まで行くと、本来の奥駆け、となる。
だから前鬼で終わると、奥駆けの北半分のみ。
なぜ半分になったのか?
北半分だけでも3泊4日かかる、長すぎてしんどいから?
南半分が水の補給困難だからか?
あるいは、明治政府の廃仏毀釈がからんでいるのかもしれない。

【宗教としての奥駆け】
この道に設けられた行場を修行者が順に修行して歩くことを言う。
本来の奥駆けは、大峰と熊野の信仰により、この間を結ぶ修行の道として開拓。
2種類の行程がある。
本宮から吉野に向かう順峯(じゅんぷ)。
吉野から本宮に向かう逆峯(ぎゃくふ)。
修行場は「靡」(なびき)と呼ばれ、ひとつひとつに番号が割り当てられている。
玉置山(たまきさん)は第10番目の靡きになる。

もし奥駆けを体験したいなら、大峯山護持院 櫻本坊(桜本坊)が、
案内を出されているので、参考にして下さい。
(ただし、女人禁制の為、女性の参加はダメ)
→大峰奥駈修行

奥駆けについてはこれくらいにしておく。
「RDG レッドデータガール」本編で、気づいた点について3つほど。
まず、「サブタイトル」について。
「はじめてのお使い」、とある。
これには、3つ意味があるように思う。
@泉水子が紫子の指示で東京まで行ったこと。
A深行が泉水子のお使いとして行動したこと。
B和宮が姫神のお使いとして出てきたこと。
・・・当たっている?

もうひとつ、「言葉」について。
初回、読んだときは気にならなかった。
でも、再読したときは気になった。
なぜ登場人物が関西弁を使わないのか、と。
東京の読者の方は気にならなかったでしょうね。
(でも、関西人はどこに行っても関西弁を使う)
著者も迷ったことでしょう。
舞台が東京に移動したときに違和感が出るでしょうし。
ひじょうに難しい問題だ。

最後に、「舞」について。
風神秘抄 」では糸世が舞の天才、として登場。
今回の泉水子も舞の才能が尋常ではなさそう。
このあたり、著者の「舞」への思い入れを感じる。
(「樹上のゆりかご」でもサロメのダンスシーンがあるし)
ちなみに、玉置神社の祭りでは「弓神楽(ゆみかぐら)」が奉納される。
でも、男の神子が舞うらしい。
男性が巫女の衣装をつけて、白い弓矢を手にし、舞楽を奏する。
う〜ん、一度見てみたい。

【参考リンク】

玉置神社の新ホームページへようこそ!

熊野巡り/玉置神社


十津川村観光協会 観光情報


風神秘抄 「風神秘抄」(徳間書店)

平成17年(2005年)5月20に発売された。
21日(土曜日)仕事帰りに購入。
22日(日曜日)は予定・約束は入れずに万全の体制で臨み、
1日かけて読了。
あぁ・・・幸せ!

今回は、「勾玉シリーズ」と同じく日本が舞台。
時代は「平治の乱」の頃。
「空色勾玉」の鳥彦の子孫が登場してくるのが嬉しい。
主人公は(荻原作品では)めずらしく少年。
主な登場人物。
草十郎・・・主人公、武芸に秀で、不思議な笛の能力を持っている。鳥と会話できる。
糸世・・・ヒロイン、天才舞踏家。
鳥彦王・・・鳥王家の血筋で、人間界に修行に来ている。草十郎と意気投合。
       このカラスがいなかったら物語が暗くなったでしょう。

物語のベクトルは2種類。
(1)草十郎と糸世の恋
(2)草十郎と鳥彦王の友情
これらが、平家〜源氏、貴族〜武士の時代の流れの中で描かれる。
時代に翻弄される・・・いったいどうなるのか?
後白河法皇も登場してびっくり!
熊野詣での様子も紹介され勉強にもなる。

さて、読む前から面白いのは分かっていた。
(荻原作品だから当然か?!)
「満足、満足」、って感じ。

でも、今回は(あえて)不満を書いてみよう。
(1)第三部は少しベクトルが減少した。
どうしてか?
草十郎と糸世がお互い好きであることを確認したことにより、物語が安定してしまった為か?
鳥彦王と草十郎の2人では物語が持たないのか?
糸世が消えて、舞台が淋しくなったのは事実。
鳥彦王・鳥の国訪問が少し不十分。
もっとページを割くべきか?

(2)少年が主人公な為か、心理描写が控え目であった。
糸世がメインなら、振幅の激しい性格からくる心理描写で退屈させない。
荻原作品はヒロインをメインにした方が生き生きするのか?
思春期の男って(ホントは)さわやかじゃないし。
体育会系にするとストーリーに陰影がでないし。
文化系にすると暗くなるし。
キャラの設定段階でムリがあったのか?
1人で笛を吹くのが好きなのは文化系だし。
武芸に秀でているのは体育会系だし。
著者の苦労が感じられる。
孤児故にいじめられて逆に強くなった、って設定。

(3)3部構成にムリがあったのか?
2部構成にして、いちおう完結させたらどうだろう?
とりあえず相思相愛2人のハッピーエンド、ってことで。
3部目は「続・風神秘抄」として改めて発売する。
1冊目は草十郎と糸世の恋がメイン。
2冊目は草十郎と鳥彦王の友情をメインにして鳥の王国と鳥彦王の妃候補を詳細に描く。
・・・でもヒロイン・糸世が登場しないから(やっぱり)淋しいか?

・・・とまぁ、完璧な作品に無茶な注文をつけてスミマセン、って感じです。
(ファンなのにクレームを付けてどーする!)
素人の戯言と読み流して下さい。
読んでない人には(ぜひ)オススメの1冊!
満足すること間違いなし!
(と、あわててフォロー)

PS
梅田の旭屋で購入したが、この厚い作品が大量に棚に陳列されていた。
表紙を表にして2冊分の巾で。
さらに別な場所に数冊が陳列。
徳間書店がいかに力を入れているかが分かる。
児童書でこの扱いは破格!
滅多にない快挙でしょう。
各書店にメーカー直々に通達したのか?
中央公論新社や理論社も見習うべし!

【「西の善き魔女」(4)完結にあたってのコメント】
とうとう、4巻目が出版され、完結した。
外伝三「真昼の星迷走」が新たに執筆され、
さらに物語は進展し、深くなった。
が、様々な疑問と課題も残ってしまった。

グラール国は3人魔女体制となって機能するのか?
ブリギオン帝国との確執は今後どう展開するのか?
アデイルがヒロインの外伝が執筆されたのなら、
レアンドラがヒロインの外伝が執筆されるのか?
アデイルとユーシスは結ばれるのか?
ティガとルーンは出会うことがあるのか?

どうも、完結したという印象は受けない。
まだまだ続くという予感さえする。
(ほとんど願望)

さて、このシリーズがおもしろく感じられた方は、
同作者による「勾玉シリーズ」も、
おもしろく読めるでしょう。
(1)「空色勾玉」
(2)「白鳥異伝」
(3)「薄紅天女」(以上3部作)




【「樹上のゆりかご」について】
荻原規子というと「ファンタジィ作家」という
イメージがある。
「空色勾玉」
「白鳥異伝」
「薄紅天女」
以上勾玉三部作。
「これは王国のかぎ」
「西の善き魔女」シリーズ
いずれもファンタジィ。

ところが、オビに書いてあるように
「都立高校を舞台にしたミステリアスな青春小説」
意外?!
しかし、「西の善き魔女」第二部「秘密の花園」をみよ。
これは女子寄宿舎を舞台にした学園ものではないか?
ただ、現代日本を舞台にした作品をこれまで著していなかったから、
−−−『知る人ぞ知る、荻原作品のおもしろさ』
といったところがあったように思う。
これで新たに荻原ファンが増えたのではないだろうか。
(出版社は荻原作品をもっとアピールしてもよいのでは?)

ところで、この作品は「これは王国のかぎ」と同じ
上田ひろみがヒロイン。
(このとき上田ひろみはまだ中学生)
こういう設定が、ファンにはうれしい。
近衛有理、中村夢乃といった魅力あるキャラも登場し、
会話部分も大変たのしい。
「近衛有理や中村夢乃をヒロインにしても作品ができるんじゃないか」
と思えるくらい。
あとは、大学編、社会人編と続くのを祈るのみである。
著者は大変寡作なので、それだけが残念である。
「西の善き魔女」シリーズと荻原規子さん
「西の善き魔女」

中央公論新社(1)〜(4)

これはおもしろい。

“ツボ”押さえまくり。読み終わったとたん、

もう一度1ページ目から読みかえしたくらい。


小説には、

(1)キャラクターのおもしろさで読ませる

(2)ストーリー展開のおもしろさで読ませる。

の、2種類ある。

デュマの作品でいうなら、

「三銃士」は(1)

「モンテクリスト伯」は(2)の要素が強い。

「西の善き魔女」は(1)も(2)もすばらしく、

ほどよくブレンドされている。

キャラクターも楽しく、

ストーリーも「いったいこの先どうなるの?」と、わくわくものである。

チャプターごとの趣向もこらしてある。

「秘密の花園」なんて最高。

「これは、ファンタジーでなく学園ものだったのか?」

と、おもうくらい。

このチャプターはもっと長くてもよかったのに。

さて、最近は、実用書やノンフィクションを読む割合が高くなってきたのに、

どういう訳でファンタジーを手にとってしまったのか?

−−−たまたま、書店で「空色勾玉」の空色の背表紙を見たのが始まりである。

「これはおもしろいに違いない!」と、何の根拠もなく思いこんでしまった。

買って読んだ。

確かにおもしろかった。

久々のヒットであった。

翌日、同シリーズを購入。

「白鳥異伝」

「薄紅天女」

この2冊である。

2作目「白鳥異伝」が特によかった。

さらにこの後、

「これは王国の鍵」

「西の善き魔女」と読み進んだわけである。

「西の善き魔女」は中央公論新社のハードカバー版と新書版があるが、

私は、ハードカバー版でよんだ。

挿絵を描いている人が違うので、好みで買いわけたらよいでしょう。

この夏(2002年)に(4)巻がでた。

本伝は(3)巻目で終了しているので、(4)巻目はまるまる外伝である。

外伝も本伝に匹敵するおもしろさで、

内容も濃いのであなどれない。

外伝1「金の糸紡げば」など、児童書のレベルを超えている。

ヒロインの少女が殺意を抱く状態を克明に描写している。

それでいて、読者にカタルシスを与えるはなれわざ。

脱帽!