【著者略歴】 雑誌編集者、プランナー、コピーライターを経て、『ウランバーナの森』でデビュー。 |
【小説】 | ||
B型陳情団 | 未読 | (講談社) |
おれに訊くんじゃない −近そうで遠い男と女のハナシ− |
未読 | (大和書房) |
真夜中のマーチ | 未読 | (集英社) |
最悪 | ★★★★★ | (講談社) |
東京物語 | ★★★ | (集英社) |
イン・ザ・プール | ★★★★★ | (文藝春秋) |
マドンナ | ★★★☆ | (講談社) |
邪魔 | ★★★★☆ | (講談社) |
ウランバーナの森 | ★★★☆ | (講談社) |
空中ブランコ | ★★★★★ | (文藝春秋) |
サウスバウンド | ★★★★★ | (角川書店) |
ララピポ | ★★★★ | (幻冬舎) |
町長選挙 | ★★★★ | (文藝春秋) |
ガール | ★★★★★ | (講談社) |
家日和 | ★★★★ | (集英社) |
オリンピックの身代金 | ★★★★☆ | (角川書店) |
邪魔 | ★★★★☆ | (文藝春秋) |
【エッセイ】 | ||
延長戦に入りました | 未読 | (幻冬舎) |
野球の国 | 未読 | (光文社) |
泳いで帰れ | 未読 | (光文社) |
港町食堂 | 未読 | (新潮社) |
「無理」奥田英朗 地方都市を舞台に展開する「最悪」「邪魔」に続く群像劇。 PS |
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「邪魔」奥田英朗奥田英朗さん、初期傑作。「最悪」と同じ群像劇となっている。 それにしても、巧い。 ストーリー構築、キャラクター設定、詳細な描写とリアリティ、巧みな演出。 現代日本文壇のトップクラスの筆力、と思う。 『引き出し』の多さも抜群、である。 「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」のようなユーモア小説。 「ガール」「マドンナ」のような軽妙なオフィス小説。 「サウスバウンド」型破りな父に翻弄される家族と少年を描く人生案内小説。 そして「最悪」「邪魔」のような急降下する群像劇。 特に巧いと感じるのは、心理的追い込み。 逼迫する状況から、登場人物をどんどん追い込んでいく。 そして、登場人物は突然「切れる」てとんでもない行動に出る。 このあたりの描写が実に巧い。 詳細な描写がリアリティを醸す。 強烈なベクトルで最終ページまで一気読み、である。 PS1 予想もつかないエンディング。もう、何というか・・・絶句。 PS2 本道とは関係ないけど、引っ掛かった個所がある。P125 「パートでも有給休暇はあるんですよ。六ヶ月、勤めれば」 「そうなんですか」 「そうです。給料がもらえて休めるんです。それに一年以上働いて年収90万円以上の見込みがあれば、雇用保険にだって入れます」 これは、現状とは異なっている。 以下を参考にしてみて。 雇用保険の適用について 雇用保険制度(厚生労働省ホームページ) http://osaka-rodo.go.jp/(大阪労働局) |
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2009年5月10日 「オリンピックの身代金」奥田英朗(角川書店)
これは読み応えがあった、二段組み521ページ。 当時の時代背景が詳細に描写される、それが見事。 また、登場人物が脇役に至るまで、血肉を持った人物として描かれる。 東京オリンピックの頃の熱気を感じながら一気に読んだ。 おもしろいし、考えさせられる。 一億総中流、と言われながらも、格差社会は既に始まっていた、と。 PS 過去の作品と比べるとどうだろう? サスペンスでは「最悪」 笑いでは「イン・ザ・プール」 軽妙さでは「ガール」 牽引力では「サウスバウンド」 ・・・このように感じる。 (上記4冊はどれを読んでもハズレなし) PS2 犯人側からも描かれるが、 何となく「マークスの山」(高村薫)を思い出した。 【資料】 吉川英治賞 |
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2008年2月10日(日曜) 「ウランバーナの森」奥田英朗(講談社文庫)
「町長選挙」で実在モデルありの作品をかかれたが、 既にこの作品で実験済み、だったのね。 私は奥田作品を多数読んでいるので、どうしても比較してしまう。 ・・・少しインパクト、吸引力が低いかな、と。 でも、作品全体に流れるユーモア、温かさは健在。 ちなみにモデルはMr.ジョン・レノンとMs.オノ・ヨーコ。 76〜79の空白期間を扱っている。 80年はご存じのように「ダブルファンタジー」を発表し、凶弾に倒れる。 当時、新聞テレビで大きく取り上げられたのを覚えている。 |
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2007年5月19日(土曜) 「家日和」奥田秀朗(集英社) 奥田さんの最新刊。 レベルが一定しているので、安心して読める。 ハズレ無し。 著者名だけで、即購入する作家の1人。 「家」と「人」がテーマ。 外へ出て働かないで在宅している方が主人公。 日本でユーモア小説はヒットしない、売れない、って言う常識を覆した。 ハラハラする展開に絶妙なエンディング。 読んで楽しい。 次作も読みたくなる。 |
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2006年3月27日(月曜)晴れ 「ガール」奥田英朗(講談社) 著者は直木賞作家で、話題の作品。 ベストセラーで人気も高い、と思われる。 確かにおもしろい。 OLの心理をみごとに描写。 今年の(私的)ベスト10間違いなし。 「昔のオフィス小説との違いはジェンダー?」 ・・・読んでいて、そう感じた。 ところで、このタイプの作品は平安津子さんの領域。 もし、著者名が間違って印刷されたら気づくだろうか? また、平安津子さんだったら、ここまで売れただろうか? (ちょっと意地悪な感想・・・ご容赦) しかし、奥田氏は作品の幅が広い。 「最悪」と同じ作家とは思えない。 今回は「マドンナ」の延長線ノリ。 欲を言うなら、「イン・ザ・プール」のような笑いも欲しかった。 |
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2006年5月22日(月曜)くもり 「町長選挙」奥田英朗(文藝春秋) 人気シリーズ3作目。 おもしろい。 質も高い。 映画化されたので、いずれチェックしたい。 今回、ナース・まゆみちゃんがバンドをやっていることが判明。 パンクロックのギタリスト。 う〜ん、似合いすぎ。 |
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2006年4月16日(日曜)くもり 「ララピポ」奥田英朗 ほんと巧い! 閉塞状況に登場人物を追い込むのが。 悲劇と喜劇が紙一重。 理屈で説明不可能な「面白くてやがて哀しき」状況。 円熟期の田辺聖子さん名人芸領域に近い。 第一話から話が進んで、どんどん面白くなってくる。 特に第六話が圧巻。 よくこれだけ情けない人物ばかり集めたものだ。 最高! 欲を言うなら、紋切り型じゃない、一歩踏み込んだ 女子高生キャラを登場させてほしかった。 「ガール」で、キャラの立ったOLを多数登場させたのだから、可能なはず。 |
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2005年7月17日(日曜日)晴れ 「サウスバウンド」奥田英朗(角川書店) オビの文句は以下のとおり。 ☆表表紙: お待たせしました。 2年ぶり、奥田英朗の長編新作です。 おもしろい小説、ここにあります! ☆裏表紙: 型破りな父に翻弄される家族を、 少年の視点から描いた、長編大傑作。 21世紀を代表する新たなる ビルドゥングスロマン、誕生! 以上、どうでしょうか? ちょっと大袈裟だけど、面白さは正味。 小学校6年の次郎君の視点から、家族、友人、学校、社会、世間を描いている。 ちょっと、醒めたところがあり、適度の距離感。 父親の熱血と帳消しで、ちょうどいい感じ。 「世間は歴史も作らないし、人も救わない。正義でもないし、基準でもない」、って言う母・さくらもいい。 また、タイミングよく「メエエ」、と鳴くヤギの十兵衛も好感度が高い。 著者によると、映画「モスキート・コースト」が、着想のきっかけになったそう。 でも、私は(同じくリバー・フェニックス出演の)「旅立ちの時」を思い出した。 いずれにせよ、今年度ベスト3に入る傑作。 PS 私のこだわりとして気になったのが、P426で「七恵はジュニア小説のファン」とある点。 「ジュニア小説」・・・死語じゃなかった? (氷室冴子さんが「雑居時代」を連載していたのが「小説ジュニア」の最後あたりじゃなかった?) 今はYA(ヤングアダルト)か、ライトノヴェルだけど・・・。 |
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2004年7月22(木曜)晴れ 「空中ブランコ」(奥田英朗)文藝春秋 パワー全開。 先の「イン・ザ・プール」の続編であるが、ますます快調。 面白くて、インテリジェンスもある。 とても読みやすい作品だが、書く方は大変ではないか? なぜなら、アイデア(ひらめき)+資料が必要だから。 その上、『笑い』まで追求しているし。 奥田英朗さんと言えば、「最悪」が有名だが、 まさかこういう方向に進まれるとは予想しなかった。 でも過去の作品を見渡すと、様々なタイプの作品を書かれているし。 この作品は、「マドンナ」をさらに濃くして、焦点を明確にしたのが勝因でしょうか? 主人公の精神分析医のキャラクターが魅力だし、 サブのセクシーナース・マユミちゃんもいい味を出している。 第三弾を期待している。 PS(1) 仕事中、ふとした拍子で思い出し笑い。 誰かに見られたら、不気味かも? PS(2) ところで、(おそらく)この作品が今年度(小説部門)マイ・ベストブックでしょう。 マンガ部門は(もちろん)テレプシコーラ。(次点は「のだめ」か「イヴの眠り」) ちなみに昨年のマイ・ベストブックは「永遠の出口」(森絵都)。 さらに2年前のマイ・ベストブックは「黄色い目の魚」(佐藤多佳子)。 |
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2004年7月19(月曜)晴れ 「イン・ザ・プール」(奥田英朗)文藝春秋 話題の作者で、話題の本である。 先日、直木賞を受賞された。 (この時の、芥川賞を受賞された方とのコメントの違いが興味深い) 芥川賞は若くても、感性で書けてしまう(場合もある)。 直木賞は、プラスアルファが必要。 エンタティメントだし。 それが「外見とコメントに現れていた」、・・・って感じ。 ところで、田辺聖子さんは芥川賞を受賞されて、 後にエンタティメントに向かわれた希有な例である。 (滅多にクロスしないのに) 話を「イン・ザ・プール」に戻すと・・・面白かった! 精神科医が主人公である。 それが、もうハチャメチャな人物。 まともな治療なんて全くしない。 「こんな診察で大丈夫なのか?」、って心配していたら、 最後に、(患者さんは)治癒するか、快方に向かってしまう。 (どうなってるんだ?) セクシーナース・マユミちゃんもイイぞ! さて、この作品の続編が、受賞作「空中ブランコ」である。 こちらも、楽しみ。 これから読むつもり。 PS 帯に書いてある宣伝文句は次のとおり。 『何だか生きていくのがスーッと楽になる。日本文学に新しい必笑キャラクター登場!』 (米原万里さんも絶賛) なかなか、よい感じでしょう。 ・・・何よりも、米原万里さんの名前が効いているし! |
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2003年9月18日(木曜)晴れ 「東京物語」奥田英朗(集英社)読了 自伝的連作長編。 「最悪」「マドンナ」も面白かったが、これも佳作である。 共通して言えるのは人物造形がうまい、ってこと。 1978年のキャンディーズ解散から89年のベルリンの壁崩壊の年まで、 当時の世相とオーバーラップさせながら、青春を描いている。 殊に、1979年大学時代を描いた、『レモン』の章が良かった。 |
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2003年7月11日(金曜)早朝、雷雨 「最悪」奥田英朗(講談社文庫)読了 10:30pm過ぎまで残業。 帰宅後、遅い晩飯を食べ、日課の斜め懸垂200回ほどこなし、風呂にはいり、酒を飲む。 後は寝るだけ、って感じ。 ベットで横になり、「ちょっと本でも読むか・・・」が、止まらなくなった! 面白すぎ! ノンストップローラーコースター状態! 眠くなるどころではない! キャラクター造りと言い、ストーリー展開と言い、うますぎ。 零細鉄工所社長・川谷、銀行員・みどり、プータローの和也。 何の共通点もない3人の人生が1点で交わった時、運命は急転し、 とんでもない方向に転がりだす。 先が見えない面白さ。 文字通り『最悪』にまっしぐら。 でも、後味は悪くない。 犯罪小説の名作まちがいなし。 先に読んだ「マドンナ」でもそうだけど、登場人物がキレる瞬間と、 そこにいたるプロセスの描き方が、異常にうまい。 |
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2003年6月2日(月曜) 「マドンナ」奥田英朗(講談社)読了 奥田英朗の短編集である。 奥田英朗と言うと「最悪」が有名。 私も「最悪」から読み始めるつもりが書店に見つからず、こちらから読むことになった。 内容はサラリーマン小説である。 サラリーマン小説と言えば源氏鶏太を思い出すけど。(←かなり旧いぞ) 今はサラリーマン小説と言わないか? オフィス小説と言うのか? さて、内容であるが・・・面白かった。 かゆいところに手の届く小説である。 『会社という世間』がリアルに描かれる。 部下、上司、同僚、女子社員、家庭と会社、妻と子ども・・・よくある関係が再現される。 ありそうでない、なさそうである・・・といった新感覚オフィス小説。 うまい!ひじょうに達者な筆運びである。 次回は名作の噂高い「最悪」を読んでみたい。 |