【佐藤多佳子さんのページ】

                【著者略歴とコメント】
1962年、東京生まれ。
1990年、「サマータイム」で月刊MOE童話大賞
1997年、「しゃべれどもしゃべれども」本の雑誌が選ぶ1997年度第一位、
1998年、「イグアナくんのおじゃまな毎日」で日本児童文学協会賞、
1999年、同書で、路傍の石文学賞

★好感の持てるキャラクター、巧みなストーリーテリング、生き生きとした会話、
おまけに読後感もよい、もっと読まれてもよいはず。
(初期の作品など、絶版で入手不可能、図書館で借りるしかない)
日本人は見る目がなくなったのか?
書名 オススメ度 内容
「一瞬の風になれ」 ★★★★★ 高校陸上部を舞台にした青春スポーツ小説
「黄色い目の魚」 ★★★★★ 高校生みのりちゃんを中心とした連作長編
「しゃべれどもしゃべれど」 ★★★★★ 世間に折り合えない、様々な背景を持つ人が集まり、落語を習得しようと・・・
「スローモーション」 ★★★★★ 周子はVIP級の変人、「ニイちゃん」22歳、無職、元ワル。2人の物語がヒロイン目をとおして語られる。
「サマータイム」 ★★★★★ 滅多に恋愛小説は読まないが、これは面白い。デビュー作。インパクトは強い。
九月の雨」 ★★★★ 「さわやかで、強烈な青春小説」上記続編。
「神様がくれた指」 ★★★★ 出所したばかりのスリの名人が、偶然から占い師と同居、事件に巻き込まれる。
「イグアナくんのおじゃまな毎日」 ★★★ 誕生日に樹里がもらったのは、イグアナ。毎日世話がたいへん。
ハンサムガール」 ★★★ ヒロインは柳二葉は、少年野球チームのサウスポー。家族関係も少しヨソよりヘン。


「一瞬の風になれ」@AB佐藤多佳子(講談社)


待望の作品。
著者4年ぶりの長編書き下ろし作品。
ほんと待ちましたよ。
期待を裏切らない内容。
すばらしい。
2冊まで読んで、3冊目はタイ行き飛行機の中で読了。
あまりに集中して読んだので頭が痛くなった。
(クラビに到着しても2,3日頭痛が続いた)
2006年度私的ランキング1位、である。
2位は「名もなき毒」(宮部みゆき)かな?


今年(2002年)10月30日に出版された新刊だが、
代表作となるであろう作品の誕生。
おもしろい。
以前発表された短編「黄色い目の魚」の『その後』が描かれている。
かつてのヒロイン村田みのりちゃんは、中学1年から高校2年になった。
一人称で物語が進行するが、木島君という彼もできて、
『みのりちゃんと木島君が交互に語る』連作長編となっている。
以前読んだ時も、このヒロインはけっこう気に入っていたので、
成長した姿で再び帰ってきてくれて、嬉しい。
何年かしてその後の二人の姿を見てみたい。
外伝でもいいから他のエピソードも読んでみたい。
佐藤作品の魅力は、登場人物が不器用だけど誠実で、正直なところ。
駆け引きなしの、真剣勝負。
「サマータイム」
「九月の雨」
「スローモーション」
「しゃべれども しゃべれども」
いずれも、然り。
世の中の男女は『恋愛マニュアル本』を読むヒマがあったら、
佐藤作品を読むべし。
←1993年出版時の装丁
「サマータイム」
「九月の雨」
「ハンサムガール」
「イグアナくんのおじゃまな毎日」等
児童書ばかりかと思えば、一般向け
「神様がくれた指」
「しゃべれども しゃべれども」
も出版されている。

いずれも「おもしろさ」の質において、
レベルの高い作品群である。
ところがどうしたことか、初期作品等
絶版になっているではないか。
「神様がくれた指」なんか「このミス」で上位に
なってもおかしくない作品であるが、
実情は大手書店でも店頭では置いていなかったりする。
ただ、「しゃべれども しゃべれども」が、
新潮文庫になって入手しやすくなったのは、よかった。

さて「スローモーション」のヒロインは高校一年生。
そのクラスメイト及川周子はVIP級の変人。
クラスの誰とも口はきかない。動作がトロい。
一方、ヒロインの兄貴22歳、無職、元ワルのライダー。
こんな二人の物語がヒロインの目を通して語られる。

佐藤作品らしい、いきいきとした会話。
意外なストーリィ展開。
魅力あるキャラクター設定。
他の作品も、もっと読まれてもよいはず。
佐藤多佳子「黄色い目の魚」書評(2002年11月17日・朝日新聞)↓
佐藤多佳子「黄色い目の魚」書評(2)(2002年11月24日・朝日新聞)↓
これだけ新聞等で書評されているのに(たとえ書評されなくても)、
「ダ・ヴィンチ」1月号(BOOK OF THE YEAR 2002)で上位ランクされるどころか、
タイトルも出なかった。いったいどういうこと?!
(出版が年末のために間に合わなかったのか?)
「ダ・ヴィンチ」は私からの信用を失った。