【沢木耕太郎さんのページ】

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書名 オススメ度 内容
 「深夜特急」(全6冊) ★★★★★ 紀行文のクラッシックスタンダード





深夜特急 (6)
2008年2月19日(火曜)

「深夜特急」(全6冊)沢木耕太郎(新潮文庫)
内容 インド・デリーからイギリス・ロンドンまで乗り合いバスで行く、ノンフィクション
一般的面白さ ★★★★★
個人的趣味 ★★★★★
点数 97点
気分 わきあがってくるものがある、何か・・・
オススメ ★★★★★

(1冊目)
《香港・マカオ》
第一章 朝の光 「発端」
第二章 黄金宮殿 「香港」
第三章 賽の踊り 「マカオ」
(2冊目)
《マレー半島》
(タイ、マレーシア)
シンガポール
第四章 メナムから 「マレー半島T」
第五章 娼婦と野郎ども 「マレー半島U」
第六章 海の向こうに 「シンガポール」
(3冊目)
《インド・ネパール》
第七章 神の子らの家 「インドT」
第八章 雨が私を眠らせる 「カトマンズからの手紙」
第九章 死の臭い 「インドU」
(4冊目)
《シルクロード》
パキスタン
アフガニスタン
イラン
第十章 峠を越える 「シルクロードT」
第十一章 石榴と葡萄 「シルクロードU」
第十二章 ペルシャの風 「シルクロードV」
(5冊目)
《トルコ・ギリシャ・地中海》
第十三章 使者として 「トルコ」
第十四章 客人志願 「ギリシャ」
第十五章 絹と酒 「地中海からの手紙」
(6冊目)
《南ヨーロッパ・ロンドン》
第十六章 ローマの休日 「南ヨーロッパT」
第十七章 果ての海 「南ヨーロッパU」
第十八章 飛光よ、飛光よ 「終結」
一年以上にわたるユーラシア大陸放浪・・・時に熱く、時に冷静に。
今までいろいろな紀行文を読んだがこれがベスト。
すばらしい内容。
自分の感情、行動を客観的に表現している、その距離感がよい。
全6冊の中でも、3,4冊目が白眉。
やはり、なじみのない異郷が興味深い。
カルチャーショックも大きい。
読んでいるだけでも衝撃が大きいのに、実際経験したらどうだろう?

エピソードを1つだけ紹介。(67ページ)
・・・インド編では、乞食が至るところにいる。
歩いていたら手が差し出され金を要求される。
あるとき著者が歩いているいると、7,8歳の少女がついてくる。
「10ルピー」、と声をかけてくる。
著者が首を振ると、慌てて「6ルピー」と言い直す。
首を振って歩き続けると「5ルピー」「4ルピー」「3ルピー」と下がっていく。
フト著者は気づく、
『少女はその金額で自分の体を買ってくれないかと言っていたのだ』、と。
少女に3ルピーを手渡し、グッバイと言って離れるが、ついてこようとする。

なんとも哀しいエピソードだ。
・・・多分、この子は意味が分からなかったんでしょうね。
「お金を恵まれた」、と理解できなかったんでしょうね。
「自分が憐れまれた」、と思いもしなかったんでしょうね。
もし私がその子ならどう感じただろうか?
おそらく頭の中はハテナ記号でいっぱいになっただろう。
(私のどこがいけなかったの?)、と。
(身体がくさかったのだろうか?)、と急いで沐浴に行ったかもしれない。
(私がかわいくないから?)、と悩んだかもしれない。
(服がおしゃれじゃないから?)、と悔やんだかもしれない。
(どうして私を買ってくれなかったの?)、とお腹をすかせて呆然としただろう。

他にも、読んでいて考えさせられるエピソード多数あり。
一度読んでみて。
全6冊と長いけど、読む価値有るよ。
長さを忘れるおもしろさ。
オススメ。

PS1
このような旅を、いつか私もやってみたい。
(ほんとは30までにすべきだろうが)
でも、遅すぎることはない。
体力と気力が残っていたら・・・。
その為に胃腸を鍛えたい。
著者はあちこちの屋台で食っているが、ほとんど腹を下さず。
驚異の胃袋、である。
羨ましいかぎり。

PS2
この本の価値はなんだろう?
実用書、人生論、ルポルタージュ・・・いずれも中途半端。
では、この本のおもしろさは何か?
著者のリアクションが興味深いのだ。
アクシデントや事物、人物にたいする行動と感情。
それが考えるヒントになる。
心に感じるものがある。
様々に惹起されるものがある。
それがおもしろい。

【おまけ】
地球の歩き方マガジン、って雑誌がある。
96年秋号『旅に誘う本の特集』があった。
読者に選ばれたベスト5を転載する。
1位 「深夜特急」沢木耕太郎
2位 「遠い太鼓」村上春樹
3位 「ドナウの旅人」宮本輝
4位 「イギリスはおいしい」林望
5位 「バックパッカーパラダイス」さいとう夫婦
「河童が覗いたインド」妹尾河童
番外
色々
「ナマコの眼」鶴見良行
「香港旅の雑学ノート」山口文憲
「パパラギ」岡崎照夫
「絵で見る大世界地図」B・デルフ、R・ケンプ
「マレー蘭印紀行」金子光晴
「パリ旅の雑学ノート」玉村豊男
「気分は今もヨーロッパ」竹宮惠子
「コンスタンチノープルの陥落」塩野七生
*1位は「深夜特急」さすが!
*3位に「ドナウの旅人」がランクインしているが、
同著者では「愉楽の園」もおもしろい(タイが舞台)。