【寄稿文・正田マン&S子の『スペイン報告』】
2008年11月29日開設


正田マンとS子さんから、『スペイン報告』をいただいた。
全部で4編から構成されている。

@《岩場編》・・・正田マンによる岩場(3カ所)と主なルートの紹介
A《臨場編》・・・正田マンによる『パタネグラ』RPの臨場感あふれる再現
B《生活編》・・・S子さんによるスペイン生活風景、資料としての価値もあり
C《人物編》・・・S子さんによるスペインで出会った人達の描写

さっそく読んでみて。
by たきやん


 【スペイン報告】
2008.9/11〜2008.11/16
 ―――Rodellar, Onati, Margalef―――

9/11-11/8・・・岩場(Rodellar, Onati, Margareff)
11/9-11/12・・・観光(バルセロナ)
11/13-11/16・・・観光(シンガポール)

★ ★ ★ <<岩場編>> by正田マン ★ ★ ★

ぼくとS子は2ヶ月間、スペインに行ってきました。
ぼくの目標はホンキー
MIX(8c+)というルートです。
”inertia2”というクライミングビデオでジョスネ(最強女クライマー)が登っているルートなのですが、3・4年前に見て登ってみたいと思っていました。
なぜかというと非常にテクニカルで内容が濃くリアル8c+だからです。
あと、オンサイトは8aでした。
S子は観光です。

僕たちは始めRodellarというエリアに行きました。

ルートはとても簡単なものから難しいものまであり、万人が楽しめるところです。
始めの1週間はオンサイト中心に登り、岩慣れをしました。
次はオンサイトとレッドポイントをし、
10/1からRodellarでの目標ルート、パタネグラ(8c)をトライ開始しました。
このルートはユージさんがオンサイトしているルートなのですが、
初めて触った時はヘコヘコになりながら上まで抜けました。
しかし、何回かトライしているとだんだんムーブが洗練されてきて、いい感じになってきました。
ボルダー
&レストの繰り返しなのですが、よれよれになり、最後は11台のムーブもしんどくなるので、超人クラスの持久力とムーブを見極められるセンスがないとオンサイトは出来ないと思いました。
僕は4日間9トライで完登しました。


次にOnatiというエリアに行きました。

ここにホンキー
MIXがあります。
その前にホンキー
MIXというのは、
ホンキートンキー(8c)とマジックアイ(8b
+/c)をリンクさせた物なので、
先にホンキートンキーを登ることにしました。ですが、悪い。悪い。
どこまでいってもレストが出来ません。5日間15トライで完登出来ました。
次にマジックアイ。しかし、これも悪い。
ホンキートンキーとはタイプが違うのですが、中間部のワンムーブが悪いです。
4日間9トライで完登出来ました。
そして、いよいよホンキー
MIXです。
ホンキートンキーの8b
+までのパートをこなした後、初二段のリンクパートをこなして、マジックアイの最後の1級のパートをこなします。
リンクパートを練習して、始めから通して登ることにしました。
ホンキートンキーのパートをこなして、リンクパート数手で落ちてしまったのですが、
「明日はもうちょっと上まで行くぞ!」という気持ちになれました。
しかしその夕方から雨が激しくなり、なんと朝起きたらダムがあふれて、川が洪水のようになり、エリアに行くことさえも出来なくなって、
MIXの核心も全濡れで登れなくなりました。
がっくりしましたが、天候もクライミングの一部なので、しょうがないと思い、
移動しました。


次は
Margalefというエリアに行きました。

周辺にはシウラナ、モンサン、サンタ・リーニャがあります。
Margalefはピンポン玉からソフトボールくらいの丸石が石灰岩にいっぱい埋まってい、
それらが取れてポケットになっている所です。
そして、ルートの9割がポケットといっても過言ではありません。
最後の1週間くらい、ここでオンサイトをしていました。

本当に登りたかったルートは登ることが出来ませんでしたが、
「これからも頑張るぞ
!!」という闘志を持つことが出来ました。
充実した2ヶ月でした。


★ ★ ★ <<パタネグラ(臨場編)>>by正田マン ★ ★ ★ 
 行けるか行けないか、わからんがいっちょ行ってみっか。
全力を出せば、何か見えるはず。(登りだす・・・)最初の10手、何てガバなんだろう。。
ダニー・アンドラーダが見えた。今日もあの山猿、開拓か。。。精が出るなぁ〜。
(ルートに戻る)第一の難関がきた。右手アンダーカチを取り、
「ん?」いつも濡れているが、持った瞬間、肘辺りまで水が滴ってきた・・・・。
なんてこった。しかし、キョンを決めれば安定するはず。ヨシ!キョンが決まった。
後はバランスを合わせて素早くクリップ。
そしてそのまま左手でカチを取り、右手を寄せてきて、いくぞ〜いくぞ〜!!
遠い右手カチが取れたっ。ばんざーい!
右足を上げて、左手でピンチ中継を持ちーの、左足を上げて、
フン!と左手アンダーを掴んで、右手を・・ガバだぁ〜。
ヨシ!次もガバだぁ〜。次は第二の核心じゃ〜。
しかし、ここは得意系だから。あ、マジぃ。足を間違えた。っが、意外にいけたぞ。
次は第三の核心。ここはムーブは簡単だが、ランナウトしている。
ふぇ〜。。。なんてこった。と、ふ〜ん、ふ〜ん、ふ〜ん
!!!
そして第四の核心。ニーバーレストでよく休んでから、いくぞ〜
!!!2分後、ヨシ!いくか。
左手を持ち、遠いガストンへ。いつ見ても高い。目が眩む。呼吸が出来ない。
ふわぁ〜〜〜。とガバが取れた。
はぁ・はぁ・はぁ・はぁ、と息があがる。
次は俺にとって一番の核心だ〜。俺の全てをこのムーブにかける!
左手を取り、リップのカチを取れた。そこから足を上げ、キョンを決める。
そして、フンっ!左手がかかった。
今度は足も残っている。(この辺はトランス状態)
右足を上げ、ポケットを持って左手をカチ中継へ。
そしてラップガバへデッド。とまった!ヤッホ〜ゥとここで、アドレナリンが切れた。
お?なんか意外と冷静だぞぉ。と指が突然開いてきた。
え?うそ?まじ??こんな所で?俺落ちんの?え??いやだ〜?
もうここまできたくないーと思い、声を出してみたが、喉がカラカラで声が出ない。
今まで頑張ってきたことが走馬灯のように蘇る。本当です。
(練習、キツかったなぁ〜。登りすぎで一瞬耳が聞こえなくなることもあったなぁ〜)
ん?まだ聞こえるぞぉう。・・ということはまだいける、いける〜ぅ。
一手一手レストをしながら、足もプルプル、プルプル。パチン。
終了点でクリップ出来た。
良かった〜。
嬉しい気持ちよりも、ジャングルの中へ迷い込み、無事脱出出来たような感覚だった。


★ ★ ★ <<生活編>> by S子 ★ ★ ★ 


 シンガポール航空にて9/11 16:55に関空出発。
正田君は初の海外とあり、やや興奮気味。
特に問題もなく経由地のシンガポールへ。
乗り換え時、シンガポール空港の便利さや巨大さに驚かされる。
1時間ほどでバルセロナへ向けて出発するが、途中ミラノ経由だった。
正田君は飛行機内で一睡もすることなく、ゲームや映画を観て楽しんでいた。
降りる頃には目が真っ赤だった(笑)
到着すると予め予約していたレンタカー会社へ一報。
迎えに来てくれたのはいいが、空港からどんどん郊外に連れて行かれて、
結局バルセロナから目的地に出る時、迷った。
なんとか最初の目的地に到着したのは
16時頃だった。
迷わず
EL PUENTE(キャンプ場)へ。
テントを準備していなかったので、アパートに滞在することにした。


 早速エリアを見に行くと、どこから登ればいいのか分からないくらいのスケール。
驚いた!
正田君は明日からのクライミング三昧を考えると興奮して、
私を置いてあちこちのエリアを見にトポ片手に鼻息荒かった。
ようやく落ち着き、シャワーを浴びたかったが、お湯が出ず
「お湯が出ないよ!」と受付に訴えに行くと、
5分程出し続けると大丈夫。」と教えてくれた。
快適にシャワーを浴びると、今度はご飯。
ガスはマッチがないとつかない事に気がつくまでしばらくかかった。
歩いていける範囲での買出しはキャンプ場受付横のみ。
レストの日に近隣の町に買出しに行くローテーションだった。
食費はだいたい
40/1週間。物価は日本と変わらないと感じた。
驚いたのは、じゃがいもの火の通りがすごく早いこと。
主食はペンネやパスタ。ランチは
EL PUENTEで毎朝登場のパン(1.25)。
美味しかった!!缶詰のオイルサーディンやたこ、ツナが重宝した。

レストの日は、私の日。
バルバストロ・ウェスカ・アルクエサー・サラゴサなどを観光。
観光中にも岩場を見に行く、楽しい散歩もあった。
田舎はインフォメーションセンターも分かり易く、車も少ない為、
ゆったりとした気分で過ごせた。
ウェスカ・サラゴサは少し大きな町なので、車の量も多く、お店も大きく、
インフォメーションセンターも複数あった。
マクドナルドを久しぶりに見て、セット(
5前後)を食べてしまった。
スペインメニューは無かったように思う。飲み物だけ少し大きく感じた。

1ヶ月をRodellarで過ごし、Onatiへ移動。
到着した日は曇ってて、風が強く、印象は暗かった。
今までの生活が天国だったと感じた。
岩場へ早速行ってみると、地元の人らしき数名が登っていて、
「オラ!」と声をかけつつ、トポを「あーでもない、こーでもない」と言いながら見ていると、目の大きな女性が声をかけてくれた。ロレさんと言い、トポが古いと教えてくれて、借り物のトポへどんどんNEWルートを書き込んでくれた。
キャンプ場は近くて40分程離れた所にあったようだが、
シーズン的に週末のみ利用可だった為、車での生活を選択。
3・4日に1回はOnatiの町で安いペンション(
40/1泊 ARREGI)に泊まる。
このペンション(卓球台有)、居心地良かった!コース+飲み物(
14)も美味しかった!
Onatiの町は穏やかで過ごし易く、ガスなどの最低限のキャンプ用品は手に入る。
メイン通りの1本横の角にあるカフェのサンドイッチ(約
2)が具だくさんで最高!
知れば知る程、温かい町だった。
基本的にスーパーより、BARにあるパニーニみたいな方が値段/味ともに満足できる。

Onatiでは見たことない“なめくじ“に遭遇。
生活の場である駐車場にも、彼らは存在。最大20cmくらい。
すごい勢いで何でも食べる・・・・。何でも。さすがに写真はなし。

 移動後、2週間くらい。
正田君がホンキーMIXのムーブ解決をしたと思ったら、恐れていた雨季到来。
10
月の後半の週から深夜激しい雨が降る日が時々あり、10/26深夜から雨がしとしと降り続け、10/27、地元のミケルやエバン兄さんはヌンチャク回収にやってくる。
疑問に思いミケルに「なんでヌンチャク回収するの?」と聞いたら
「雨がくる。今シーズンは、ここにはもう来ない。」と。。。。。
恐れていた為、半信半疑。
しかし、翌朝は近くのダムが洪水状態でエリアにさえ行けず、移動。
ミケル&エバン兄さんお勧めのMargalefへ。
Refugi(山小屋)が安いと聞いていた。
Margalefの町の看板横にRefugiへのあがる道あり。
7/一人1泊でシャワーは2
 1階が受付、トイレ・シャワー。
 2
階がキッチン・リビング。
 3階が寝るところ。
最大20名程滞在可能。シャワーもお湯が出るし、Refugiの親父が清潔好きで快適だった。
親父はご飯も作ってくれる。
正田君はこの親父のパエリヤが大好きだった。
サラダ+パエリヤ(パン付)+デザートで
12
ちょっと贅沢だけど、お腹いっぱい、美味しかった。
最後らへんはガスがなくなってしまい、
1プレート(フレンチフライ+目玉焼き2個+ステーキで
8.5)の夕食を依頼した。
このRefugiはクライマーばかりが集まってくるので、情報交換にもなり、いい刺激だった。

スペインのクライミングが日本と違うな、と感じたのは、“誰でも外岩“。
私みたく、5.10台を登るのが楽しい人には、日本の岩場は制約が多い。
登るところも少ない。
となると、レベルアップしかない。岩場を楽しむというよりは必死で抜けるの連続。
でもスペインの岩場は、初心者でも
「外で登ってみよう!」と週末にはたくさんの家族連れも当たり前。
岩場の少ない日本では仕方ないのだが・・。

11/9からは観光のための1週間。
バルセロナで迷いながら車を返し、チキートに3泊(
48/1泊)。
ピカソ美術館に行き、街中を歩き、サクラダ・ファミリアに行き、
お土産を買い、王の広場で夜はストリートパフォーマンスを見て、観光した。

 11/13からは経由地のシンガポールで2泊(SGD65/1泊)。
格好が格好だったので高いホテルは避けたが、これが厳しかった。
シンガポール空港は買い物も食べ物も充実しており、とても綺麗。
中心街に行けば、観光パンフレットでよく見かけるシンガポールなのだが、
泊まったホテル近くは、まさに東南アジアだった。
道路に面して飲食店があり、中国色強く、臭いもすごい。
ホテルは汚くはないが、シャワールームはトイレとの仕切りがなく、驚いた。
周囲はインド人と中国系であふれていた。
ただし、路面飲食店でもクレジットカードが使えるのには、感心。
買い物天国と聞いていたが、物価は日本と変わらないと感じた。
動物園は何かの賞を取っただけあり、画期的。
百獣の王、ライオンが鉄柵なしの、あまり仕切りがない環境で観察できる。
動物に近いのは、楽しかった!(SGD18/入園)


★ ★ ★ <<人物編>> by S子 ★ ★ ★ 


 RodellarではEL PUENTEの受付嬢Finaさんにお世話になった。
年齢は母くらいだと思うが、スペイン語を教えてくれたり、いつも笑顔で温かかった。
また、岩場では正田君がトライしていたパタネグラで同じルートをやっていたダニーというおじちゃん。
とても慎重な登りをする人で、スタティックで取らないと気がすまない人らしかった。
このダニーのビレイをしていたミケル(のちのちお世話になる)は
左肩に“米岳升”と怪しげな刺青がある愛想の良い人だった。
たくさんの人に会い、
1ヶ月もいると顔見知りになり、声をかけてくれる人もいた。
さまざまな国から登りに来ていた。
日本人に会ったのは
1度きり。

 Onatiでは濃い人が多かった気がする。
専ら
Koreaというエリアにいる事が多かったが、地元の方が多く、
初日に
NEWルートを教えてくれたロレさんは5ヶ月の身重でも
開拓者のパウロと毎週末やってきて、登っていた。
Korea3日目くらいにミケルに会い、顔を覚えていてくれたらしく、いろいろ喋るようになる。
ルートの事もエリアの事もキャンプ場や次のエリアの相談に乗ってくれたり、
地元民が愛用している
IKEAの袋を頂戴したりと、よくしてくれた。
ここでエバン兄さんの登りを見て、「綺麗」と感動した。
彼はムキムキではなく体の動きもしなやか。
ホンキー
MIXをトライしていたが、彼が登るホンキートンキーは難しさが分からない。
足使いが上手い、らしい(笑)。
照れ屋で、ホンキー
MIXを完登した事をミケルが私たちに教えてくれた(レスト日で見逃した)時も、恥ずかしそう&嬉しそうだった。
愛用は象さんの柄の
Tシャツ。
また、クライマーじゃない人にも助けられた。
ある急に冷えてきたとき、
8時過ぎ頃、夕食を済ませ、寝る準備をしていると雨の中、
地元の奥様が
「何か必要な物あれば、うちのキッチンでも部屋でも使ってね。○○の住所だから。」
とわざわざ言いに来てくれた。
あの時は、本当にありがたかった。寒かったけど、温かくなった。
私たちと同じように駐車場で泊まっているオーストラリアカップルも、印象的だった。
登っている時と普段とでは彼は性格が変わる。
2人とも8台を登るカップルであのなめくじの中、テントはって生活してた。
彼らとはのちのち、次の移動先でも会う事になる。

Margalefでは、まずRefugi の親父に大変お世話になった。
困ったときは親父に相談。穏やかに説明してくれる、話の分かる良い親父だった。
移動した初日、イカ・プーが
Refugi でゲラゲラベラベラ喋っていた。
苗字が似ているので親父に親戚か確認したが、友達だそうだ。
この
Refugi、クライマーしかこないので、濃い。でも楽しい所だった。

★ ★ ★ <<あとがき>> by たきやん ★ ★ ★ 

以上、いかがでしたか?
約2ヶ月のスペインツアー。
しかも、今回が初めての海外・・・すごすぎる。
間違いなく日本のトップ。

8c・・・2本RP。
8b+/c・・・1本RP
8b・・・1本RP
8a+/b・・・1本RP
8a+・・・4本RP
8a・・・2本(OS)
RP及びOS、登った総数・約150本!
(あまりにすごすぎて、上記レポートを読んでも、全容はつかめない)

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【参考】
下記の『ナカガイジムブログ』を参考にして。
正田マンのスペインツアー結果報告

なお、ナカガイジムでは正田マンの『道場』が開催されている。
(毎週火曜日8:00pmより―無料、予約不要、ジム使用料必要)

詳細は、『ナカガイクライミングジムHP』のブログ等でチェック、問い合わせしてみて。
→【ナカガイジムブログ