【寄稿文飯田さんの『スペイン日記】
(2005年9月5開設)

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飯田さんよりレポートをいただいた。
「ロデジャ(スペイン)日記」である。(感謝!)
忙しい中、積極的に海外でのクライミング。
勤労者クライマーの鏡である。
約2週間・・・うらやましいかぎり!
byたきやん

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ロデジャ(スペイン)日記byチームクラマグチ  飯田
【2005年8月4日(木)〜2005年9月20日(土)】

A cravita 8a (飯田 Juany Fran se nos van 7a+
★8月4日(木) 晴れ 

10時に関西国際空港を飛び立った飛行機は,オランダ・アムステルダムに15時(現地時間)に到着した。日本から約12時間の飛行時間である。初めてヨーロッパを訪問したのは,20代前半。大韓航空南回りで25時間を越える飛行時間だった。それに比べれば今回のフライトはなんと楽だろう。

 午後3時だというのに,アムステルダムの気温は18℃。北海道より涼しい。京都の気温は連日35℃を越え,日本特有のむし暑さがある。日本のむし暑さは世界有数で,アフリカの砂漠地帯以上のようだ。
スペイン・バルセロナ到着18時。すぐにはハー
ツのレンタカーを借りに行く。なんと,ベンツの大型ワゴン車だ。9人乗りで,大量の荷物を乗せてもゆったりとしている。左ハンドル・ミッション・大型ワゴン車の運転はとても緊張する。右側通行になかなか慣れない。緊張の連続で,ロデジャ8月5日朝3時到着。道を間違え時間がかかってしまった。道路わきに車を止め,野宿をする。3人は車の中で,他の3人は車の横でシュラフにもぐりこむ。快晴で素晴らしい夜空だ。こんなにたくさんの星があったのか?まさにプラネタリュムの世界だ。天の川がはっきりと見える。明け方は少し寒かったが,快適な野宿ができた。

 

★8月5日(金) 快晴

 いよいよ,ロデジャでのクライミングの開始だ。岩に登っていると非常に気分がよい。墜落の恐怖感に反比例するかのように,普段は眠っていた野性的な感覚がよみがえってくる。他のわずらわしいことは消え去り,今,この瞬間に徹することができる幸福。

 今日トライするエリアは,El Camino。午前中日陰なので,たいへん涼しい。朝の早い時間は,寒いくらいだ。ウォームアップに,Para mis amigos 6a+,Sonrisa vertical 6bBonny 6b+などを登った。どれも快適でいいルートだった。その後Tom acastanazo 7a+にオンサイトトライ。基本的には全部ガバなのだが,ムーブはおもしろい。幸運にもオンサイトできた。その後,El Caminoでクライミング Elpisacicbico 7bにもトライ。核心部の細かい一手に耐えきれずフォール。残念。

 今日は,キャンプ場の受け付けと,買い出しのためクライミングは修了。車にてCamping El Puenteに行く。バンガローのかぎをもらう。冷蔵庫・ガス・キッチン・テーブル・シャワー付きの豪華な部屋。一泊65ユーロだった。バンガローの予約をしていただいたY子さんに感謝,感謝。

 ウエスカの町に買い出しに出発。大きなスーパーがある。基本的な物は何でも(米も)手に入る。ヨーロッパは野菜もビッグサイズだ。食料などを購入して,バンガローへ。右側通行・右手のギアチェンジには,なかなか慣れない。道が狭く,車はビッグ。

 キャンピング場に帰り,オーナーのFinaと対面。「Y子さんの紹介で来た。」と伝えると,熱烈な歓迎を受けた。日本から持っていった商売繁盛のペナント・扇子・お祭りと書かれたうちわをプレゼント。シャワーの後,入山を祝って大宴会。パエリアがとてもおいしかった。

 

★8月6日(土)快晴

 今日は,Aquest any siというエリアへ。Lombre de la barca 6cにてアップ。いよいよ Aquest any si 7b+のオンサイトトライ。気合いが入る。このルートは四つ星ルートだ。適当にレストポイントがある。最終ピンの手前まで登ったが力尽きてフォール。前腕がパンパンだ。人気ルートのため何人も取り付いていた。二回目のトライでも,無念のフォール。「なんで?」答えは簡単。持久力がないからだ。(なお,後でわかったことだが,このルートは終了点近くのガバが欠けたらし。)本日のクライミングはこれにて終了。

  夕食・・・西洋風ごった煮コンソメ味・サラダ・デザート

 

★8月7日(日) 快晴

 今日は,Ventanas del Mascun にあるA cravita 8aだ。8aのレッドポイントは今回のツワーの目標でもある。このルートは朝からほぼ日陰で,1日中トライできる。標高もあるので,他のエリアに比べると涼しい。下部は,コルネを快適に登る。上部は基本的にはガバだが,どんどんパンプしてくる。3回トライしてムーブは徐々につながりはじめた。

  夕食・・・カレー・サラダ・チーズ・デザート                   

 

★8月8日(月)  快晴

 レスト日。サラゴサに買い出しに行く。サラゴサはアラゴン自治州都であり,スペイン第5の都市だそうだ。我々は,ビラール聖母教会を観光した。その後,ウエスカの町で買い出しする。

夕食・・・ムール貝のワイン蒸し・いかのこしょう炒め・なすのぴりから醤油炒め・ピーマンの炒め物・チーズ・サラダ・デザート

 

8月9日(火) 晴れ

 El Caminoの右端 Knuff 6bでアップ。細かいところが適当にあったが,基本的にはガバルートだった。 

Mascun にあるA cravita 8aへ。体の動きが悪い。下部のハング越えでフォール。午後Gran BoveedColiseum 8a へ。このルートは35メートルあり,どっかぶりの超持久力が必要だった。基本的にはガバなのだが,傾斜が半端じゃない。ちゅうちょしないでぐいぐい登らないとどんどんパンプしてくる。35メートル登って終了点まで達したときには,へとへとだった。中間点まで降りて結び直し,下部のヌンチャク回収。心身共に大疲労。

 夕食・・・ロデジャ風うさぎのトマト煮込み・サラダ・デザート

 
8月10日(水) 晴れのち雨

 疲れた体は,1日寝ても回復しない。  El CaminoClyde 6bでアップ。疲れているので,どんどんパンプしてくる。今日は,だらだらしよう。Mascunへ。チェコの有名人クライマー・ムラテェックがやってくる。どうやらPatanegra 8c のオンサイトトライをするらしい。長いリーチを生かしてぐいぐいと登って行く。OSなのに迷いがない。核心部も問題なく越えていった。世界のトップクライマーのOS劇場を見られただけでも幸せである。

Juany Fran se nos van 7a+にトライ。どっかぶりでガバの素晴らしいルートだった。気持ちよくOSに成功。遠くで雷鳴が聞こえる。食事・・・イカ墨スパゲティ・トマト煮込みスープ・サラダ・デザート


  (ムラテェックのOSを記念して



★8月11日(木)晴れ
 レスト日。Barbastroに買い出しに行く。前回の買い出しはHuescaまで行っていたがBarbastroでも十分である。帰宅後,岩場巡り。
  夕食・・・たこのマリネ・ムール貝のワイン蒸し・ハリバッド(魚)のオリーブ焼き・ポテト・インゲン豆・ニンニクの炒め物 


★8月12日(金) 快晴
 Gran Bovedaの Comando cono 7b+のオンサイトトライへ。コルネが発達したおもしろそうなルートである。上部までしっかりオブザベすることが出来た。コルネをぐいぐい登るが,上部のトラバースのところで力尽きフォール。上部フェースへの抜けが難しかった。
夕方,Comando cono 7b+の2回目のトライをする。上部コルネで無念のフォール。
夕食・・・七面鳥のコンソメ味スープ・サラダ

 













Mascunでクライミング)


8月13日(土)快晴

 午後よりクライミング。Aquest any si 7b+にサイトライ。中間部でパンプしてフォール。自分の体じゃないみたいだ。夕方隣のバンガローに滞在するフランス人が遊びに来いと言う。みんなとても友好的で陽気だ。扇子・干し梅干し・日本茶・和紙などをプレゼントする。鶴やねこを折るととても喜んでくれた。彼らの国では2ヶ月ほどのバカンスがあって毎年ここに来ているという。うらやましいかぎりだ。

 夕食・・・カレーライス・サラダ・デザート

 

★8月14日(日) 快晴

 Boulder de Jon のエリアへ。7a+にオンサイトトライ。案外楽に成功した。その勢いで,Porque 7a+とAlpinismo de salon 7a+にトライするもあえなくフォール。完全にガス欠状態だ。

夕食・・・カレーの残り・サラダ・チーズ・デザート

 

★8月15日(月)快晴

 レスト日。爆睡した。体がバラバラだ。朝食を済ませ,キャンプ場の散歩。岩場やキャンプ場には犬が走り回っている。犬の糞の後粗末はほとんどしないため,いたるところに犬の糞が転がっている。そのためハエが大量に発生し,飛び回っている。僕が小さい頃は下水道が完備されていなかったためハエが大発生して,家の中につるされたハエ取り紙には,無数のハエがくっついていたのを思い出す。ハエ・蚊・蜂などには全くお目にかからなかった。蚊がいなかったのはうれしかった。

 ロデジャの岩は,化石が一杯だ。化石の中には、貝がら・フズリナ・・・などがはっきりと見える。

夕食に東京のクライマーを招待した。彼は、約2か月ロデジャでクライミングを楽しんでいるという。粗食に耐えながらテント生活ができるのは、やはり若さの特権だろう。
  夕食・・・なすのぴりからいため・干し肉とピーマンのいためもの・羊肉のステーキ・サラダ・デザート

 

★8月16日(火) 快晴

 El Camino へ。朝の空気はとても気持ちがよい。毎日歩き慣れた道だ。前方には、Gran BovedaMascunの岩場が威圧的にそびえている。Billy el rapido 7a+にトライ。下部が細かく、上部はガバガバだ。パンプしかけたがなんとか耐えた。

 午後、Aquest any si へ。Caprichos de lujuria 7bをトライ。ハング下までは問題なく登るが、アンダーホールドが遠く、フォール。2回目のトライをするが、体はすでに終わっていた。

  夕食・・・鳥肉の野菜にこみ・サラダ・デザート

 

★8月17日(水) 快晴

 朝から荷物整理やバンガローの清掃をする。いよいよロデジャ最後の日となった。El Camino へ。初日にOSに失敗したElpisaciclico 7bに取り付く。前回は問題なく出来たムーブが全くできない。使用前、使用後という体の状態だ。全く相手にしてもらえず敗退。Lalarva 7aをオンサイト。細かい部分はあったがなんとか登れた。Felipe el hermoso 6cに取り付く。最後をかざり、楽しく登らせてもらった。

 ロデジャでのクライミングは全て終了。午後、バルセロナに向けて出発した。


8月18日(木) 雷のち晴れ

 今日は市内観光とお土産買い。まず、サクラダファミリーに行った。午後になると見学者の人数も増え大変だと聞いていたので、朝早く出かけた。展望台上がる階段が分かりにくく、苦労させられた。てっぺんの方からは、バルセロナの街が一望できた。その後、サッカーの人気チーム、“バルサ”のホームスタジアムを訪れた。目的は、息子たちからからリクエストのユニホームを買うためだった。ところが、値段を見てびっくり。1万3千近くしている。3人に買ったら???円。ユニホームは、ミニサッカーボールと変身した。

8月19日(金) 晴れ

 レンタカー返却の時、あれやこれやと言われたが、無事終りょう。借りる前の傷まで我々の責任にされるところだった。事前にしっかり確認する必要がある。今後、要注意。無事出国手続きも終了し、20日午前9時、関西国際空港に到着した。


★★クライミングの感想★★

 ロデジャは、ルートの質・量ともに素晴らしいエリアだった。フェース・どっかぶり・長いコルネ・・・。どれも四つ星ルートだった。

 さてクライミングの方だが、友人より「8aは登れる。せひ、登っておいで。」と激励され、僕も「8aを土産にしたい」と目標を定めた。クラビータ8aに3回・コリセウム8aに1回トライした。僕の実力では、短期間のツワーで登れるものではなかった。(同じルートばかりトライしていれば可能かもしれないが。)実力のなさを思い知らされた。結果的には、8aのトライでガタガタになった体は、もうリフレッシュすることが出来なかった。なぜこんな体になったのか?やはり登りこみ不足だ。ツワーに出れば、2日登り1日レストのペースになる。僕のような週末クライマーでは、このペースで登り続けることが出来ない。やはり普段からしっかり登りこまないと、一日のレストではほとんど回復しない。最後には、ガス欠状態だった。

 目標は全く達成出来なかったが、“よい岩・よい友・よい酒(料理)に恵まれ、思い出深いツワーとなった。

 最後に、行動を共にしたみなさん・現地の情報をいただいたY子さんに感謝したい。