「物語のカイカン」  

とうとう、4巻目が出版され、完結した。
外伝三「真昼の星迷走」が新たに執筆され、
さらに物語は進展し、深くなった。
が、様々な疑問と課題も残ってしまった。

グラール国は3人魔女体制となって機能するのか?
ブリギオン帝国との確執は今後どう展開するのか?
アデイルがヒロインの外伝が執筆されたのなら、
レアンドラがヒロインの外伝が執筆されるのか?
アデイルとユーシスは結ばれるのか?
ティガとルーンは出会うことがあるのか?

どうも、完結したという印象は受けない。
まだまだ続くという予感さえする。
(ほとんど願望)

さて、このシリーズがおもしろく感じられた方は、
同作者による「勾玉シリーズ」も、
おもしろく読めるでしょう。
(1)「空色勾玉」
(2)「白鳥異伝」
(3)「薄紅天女」(以上3部作)
 
こんなに、はらはらどきどきするのも久しぶりである。
この作品が連載されていたときは、
次作が待ち遠しくてコバルトシリーズの、
「次月の新刊ラインナップ予告」をいつもチェックしていた。
この「ジャパネスクシリーズ」の後、
作者は「銀の海金の大地」の連載に入り、
このシリーズはひとまず終了してしまったのが、残念。

さて、この物語は平安時代を舞台に、
ヒロイン瑠璃姫が大活躍の作品である。
正義感と人情味あふれるヒロインと、個性的な脇役。
殊に、煌姫のキャラがいい。
瑠璃姫と対抗していたのが、いつの間にか親友となって、
と言う設定は「クララ白書」同様だが、
これが、氷室作品のよいところ。
だからこそ、読後感がよく、カタルシスが得られる。
その結果、もう一度読みたくなる。
すばらしい!

吉田秋生作品の中で、読みかえし回数が一番多い。
作者が「BANANAFISH」や「吉祥天女」を描く前の作品である。
主人公ヒースを中心に、
「親子」「兄弟」「友人」「仲間」「恋人」とあらゆる人間関係が、
丹念に描かれる。

ところで、ニューヨーク市警・アイスキャンデー好きで糖尿の、
ジェンキンズ刑事がこの後、
「BANANAFISH」にも登場し、
「BANANAFISH」のシン・スウ・リンが、
「YASHA」にも登場する。
こういう設定がファンにはうれしい。
作者は「かゆいところに手が届く」と言うか、
「ファン心理」に通暁している。
プロである。
この作品は、『花とゆめ』に連載された。
少女マンガの主人公に聖徳太子をもってくるなんて、
いったい誰が予想しただろうか?

『花とゆめ』の創刊号はたしか、『ガラスの仮面』とともに
『アラベスク第二部』で始まったと記憶している。
その後『妖精王』と続いたのでファンタジー路線かと思いきや、
まさかこんな手でくるとは!うれしい驚きである。
飛鳥時代を舞台にして、こんなに日常生活をリアルに描写するなんて。
作者の何よりも得意とする登場人物の繊細な心理描写―愛情や憎しみを、
当時の権力闘争―曽我氏と物部氏、豪族と天皇家の関係を背景に
見事に描いている。

現在日本では、マンガでも小説でも「古代もの」というジャンルは、
定着してきた。
しかしこの当時(初版1980年8月25となっている)、
実験的であったように思う。
元祖は偉い!

ところで、バレエマンガでは、いまだに「アラベスク」を超える作品がないが、
作者自身によって「テレプシコーラ」が「アラベスク」を超える予感がして、
楽しみである。
いまさら、私が解説する必要もない作品である。
テレビですっかり有名になってしまった。
しかし、私が読んだときは、まさか映像化されるとは、
思ってもみなかった。(70年半ば頃)

ガース・ウィリアムズ氏による挿絵がすばらしい。
絵本「しろいうさぎとくろいうさぎ」の作者としても有名。
「ミス・ビアンカ」シリーズの挿絵も同様である。

このシリーズの後半部分は岩波書店から出版されているが、
できたら福音館から同じ訳者、同じ装丁で出版してほしい。
どうしても、雰囲気が変わってしまうからである。
(別に、岩波の翻訳が悪いからではない。為念。)