「生活と覚書2009(文化・読書編)」
【ぐーたら文化生活】
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2009年12月27日 今年の更新もこれでおしまい。 1年間読んでいただき感謝、です。 「ぼちぼちクライミング」より、こちらを訪問していただいた方が、嬉しい。 (こんな事を書くと叱られるか?) でも、心理的にはこちらのページに力を入れている。 例え、この読書ページより、【ぼちぼちクライミング】が10倍カウント数が多くても。 そこで今回は、『読書』と『クライミング』を比較してみようと思う。 まず、時間的にはどうだろう? クライミングと読書の消費時間はどうだろう? クライミングに、より時間を費やしているだろうか? クライミングは平日2時間×2日、週末アプローチ含めて8時間くらい 1ヶ月50時間くらい、1年で600時間。 読書は1日1時間〜2時間。 週末10時間くらい。 一週間で20時間。 1ヶ月で60時間くらい。 1年で720時間。 クライミングより読書の方が100時間以上多い。 経済的にはどうだろう? クライミングに費やした金額はどのくらいだろう? 読書は1ヶ月1万〜2万円くらいの消費なので、 1万〜2万円×12ヶ月=(せいぜい)20万円くらい。 それに引き替え、クライミングは海外渡航費用だけで(滞在費込みで)それくらいになる。 (米や豪州だと30万以上かかるし、年に2回海外に行った時は50万くらいになった) それ以外に大きいのがジム費用で、年会費10万弱+他ジム訪問費用 これに、クライミングギア、交通費等、である。 1年で、40万〜60万くらい。 ついでに、人間関係ではどうだろう? 例えば、携帯に登録している人数。 施設や法人以外の個人の登録数はどうだろう? クライマー・・・38人(これって少ないの?多いの?) それ以外・・・5人 クライミング関連の組織、ジム、宿泊等の電話番号を入れると、ほとんどクライミング関係ばかり。 (全部で登録数50件くらい) 読書は独りで楽しめる。 サークルに入ってないので、つねに単独行動。 そこが良いところでもあり、欠点でもある。 さて今回は、2009年度ベストブック特集でもしよう、と思っていたけど時間の都合で来年。 「ダ・ヴィンチ2009特集」「このミス」「このマンガがすごい」等を読んで、私のランキングと まったく異なるので、「おかしいんじゃないの?」と、感じていたので、ぜひ書いておきたい。 「どうして世間はずれるのか?!」、と。 「ホントに面白いのはこの本だよ」、と。 では、皆さんよいお年をお迎えください。 また、来年もよろしくお願いします。 |
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2009年12月20日 今年も残りわずか。 気は焦るばかり。 やることはいっぱいで、リミットは迫る。 ひるがえって、この1年をふり返ると、やり残したことばかりが、頭をよぎる。 さて、今週はコミックばかり紹介。 今週一気に読んだのでなく、少しずつ読んで、書いてなかったものを紹介。 「エマ」(全10冊)森薫 「乙嫁語り」(1)森薫 「リアル」(9)井上雄彦(集英社) 「エマ」(全10冊)森薫
![]() この「エマ」は面白かった。 図書館の係の人も、「これおもしろいですよね」、と思わずもらしたくらい。 ストーリーは、斬新ではない。 どちらかというと、昔のメロドラマ風。 でも、舞台が19世紀イギリス、となると珍しい。 ストーリー古風で、設定が斬新・・・この組み合わせがいい。 ディーテイルもきっちり押さえている。 現在マンガでは、あらゆるジャンルとタイプの作品が出尽くした感があるが、 「この手できたか」、って感じ。 オーソドックスだけど新しさを感じる。 (奇をてらったギャグ、下手な絵に辟易している方にオススメ) また、メイド好きなオタクにもぴったりでしょう。 ところで、この作品はずいぶん前から(一部で)話題になっていた。 私も知っていたけど、勘違いして手に取らなかった。 つまり、「エマ」というタイトルからジェーン・オースティンの「エマ」と混同してしまったのだ。 同作品の焼き直しだと思い違いしていた。 (まぎらわしいタイトルつけないでよ!) 今後この著者は要チェック。 山岸凉子さん、樹村みのりさん、吉田秋生さん以降の作家では、久々の注目株。 そうですね・・・例えるなら、羽海野チカさん、よしながふみさんに匹敵する作家でしょうね。 この後に続くのが、東村アキコさん、志村志保子さん、勝田文さん、岩本ナオさん。 また(別格として)、佐々木倫子さん、こうの史代さん。 おおざっぱに「流れ」を書くとこんな感じ。 (くらもちふさこさんや近藤ようこさんが抜けてるけど御容赦) 萩尾望都さん、竹宮恵子さん、大島弓子さんが抜けてるのは、 単に私の趣味じゃないから。 ところで、この作品のキーワードは『ガヴァネス』。 この【覚書】2009,6/14付けに、「怖い絵」(3)の感想として次のような事を書いている。 参考までに再録する。 ・・・例えば、『かわいそうな先生』(レッドグレイヴ)の絵について。 原題“The poor teatcher”の先生とは“governess”(ガヴァネス)を指すと指摘。 女性が職業に就いていること自体が蔑まれた時代から説き起こす。 詳しくは本書を読んでもらうとして、具体的な文学作品を提示される。 (タイトル右は、私のコメント) 「ジェーン・エア」・・・これは真っ先に頭に浮かぶ。私も好きな作品。 「ねじの回転」・・・そうなのか。 「エマ」・・・「自負と偏見」は読んだけど・・・昔は翻訳されてなかったぞ。 「シャーロックホームズ」・・・特に「四つのサイン」ではヒロイン・メアリにワトスンが一目惚れ。 「虚栄の市」・・・タイトルは知ってるけど未読、ここまで読むのは英文学の専門家でしょう。 (以上、再録終了) もし私が英文科学生なら、『ガヴァネス』を卒論のテーマにするかも。 さらに、【参考】リンク・・・ ヘリオトロープ(作者の公式ブログ) ジャンプスクエア・森薫直撃インタビュー これ以外にも 「乙嫁語り」(1)森薫 「リアル」(9)井上雄彦 を読んだけど、詳細コメント省略。 どちらも面白かった。 ムリしてでも読む価値あり、と記しておく。 |
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2009年12月13日 先週、このコーナー休んでスマン。 本を読んでいるヒマがない。 とりあえず、図書館で借りてる本はすべて返却した。 (未読のものも返却した。現在借りてる書籍はゼロ) きれいな状態で正月を迎えたい。 新年を迎えたら、改めて本を借りに行こう、と思っている。 現在、仕事も私事もいそがしい。 師走はホント慌ただしい。 正月に向け、資料を読んで準備いろいろ。 練習もしたいけど、平日も残業で行けないし。 その上、腰を痛めた。(泣きっ面にハチ) 実は、本日RUKA RA GHAAMの忘年会に誘われていたけど、辞退させてもらった。 このジムはユズキ君や親方がバックアップしてるので、私も心情的に応援している。 旧いクライマーが集い、新たなクライマーも育って欲しい、と願っている。 やり残しの課題も多数あるので、また来年かな。 ところで、「ユージ ザ・クライマー」を読んだけど、 『ぼちぼちクライミング』の方でコメント書いたので、こちらでは省略。 こっちのコーナーだけ読んでる方は居ない、と思うので。 (もし居たら、嬉しいけど) |
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2009年11月29日 年末になって、仕事も私事も忙しくなってきた。 用事をメモに箇条書きにして、一つずつ処理している。 そんな訳で、精神的なゆとりもなく、読書もすすまない。 読みたい本は山ほどあるけど、来年かなぁ。 今週は1冊のみ。 でも、これは良かった、高品質! 「床屋さんへちょっと」山本幸久(集英社)
![]() 山本幸久さんの作品はすべて読んでいる。 その中でも、これはトップクラス。 タイトルはさえないけど、内容はすばらしい。 非常に技巧的だけど、そのテクニックを感じさせない温かさ。 最後の章なんて、涙、涙・・・。 翌日の通勤途中、仕事中、帰宅途中、と涙腺ゆるみっぱなし。 こんな家族がまだまだいるなら、日本は安心だけど。 どうなんだろう? PS もう、いつ直木賞をとってもいい、と思う。 この作家さんを評価しないなら、日本の文学賞は見る目がない。 |
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2009年11月23日 「オイアウエ漂流記」荻原浩(新潮社) 「私は水玉のシマウマ」セタリン(講談社) 「オイアウエ漂流記」荻原浩(新潮社)
![]() 現代の漂流記、孤島でのサバイバルを描いた作品と言えば、 「東京島」(桐野夏生)を思い出す。 でも、こちらは荻原浩さんなので、桐野夏生作品と比べると、明らかに雰囲気が異なる。 桐野夏生作品は、粘っこいし、湿度が高いし、汁っぽい。 ネバネバ系、である。 それに比べて、荻原浩作品は、文章あっさりしている。 人間関係の対立もエンターテイメントの範囲で押さえている。 これを、良しとするか、もの足りなく感じるかは個人の趣味。 極限状態を設定して、人間と時代を表現する作品としては、 同じ荻原浩作品では「僕たちの戦争」の方が完成度高い、と感じる。 PS ところで、桐野夏生さんの粘っこさに対抗できるのは、宮木あや子さんくらいか? 「私は水玉のシマウマ」セタリン(講談社)
カンボジア女性なので、ポルポト政権についても言及されている。 いろいろ感じること多し。 |
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2009年11月15日 石井光太さんのブログに興味深い記事があったので、下記に引用する。 この方のブログは、単なる「日記」のレベルを超え、面白い。 (以下、引用) ■日本における風俗嬢=30万人 日本の20代の女性の総人口は800万人ほどである。 このうち、30万人の風俗嬢がいるとしたら、26人に1人が風俗嬢という計算になる。 とすると、クラスに1人ぐらいの割合か。 ただし、1回だけやってやめたという人も多いし、AVや援助交際を含めれば、もっと多くなるはず。 おそらく十数人に1人ぐらいの割合だろう。 30万人という数は、クウェートやアルメニアの総人口である。 ちなみに、モンゴルの総人口が26万人だから、それより多いことになる。 ■日本におけるED(インポ)人口=1130万人 EDは重度、中度、軽度にわかれるが、重度と中度の人だけでもこれだけの数になるのである。 これはギリシャの総人口と同じである。おい、大丈夫か、日本人男性!!! ■日本のうつ病人口=100万人 うつ病患者の半分は再発し、30%は薬が効かないといわれている。 100万人というのは、アイスランドの総人口の3倍の数にもなる。 ■日本の包茎人口=3500万人強 日本の包茎人口は成人男性の7割。 これは、ポーランドやケニアの総人口と同じである。 わかりにくければ、オーストラリアの総人口とカンボジアの総人口を合計した数になると言えば想像ができるだろうか? また、全世界のHIV感染者と同じぐらいの数である。 ■性交時にオーガズムを感じない女性=4000万人 性交(挿入)の際に、オーガズムを必ず感じると答えた女性は3割である。 逆に言えば、そうじゃない女性は7割に達するということだ。 これは、アルゼンチンの総人口と同じ数になる。 日本には、アルゼンチンの総人口と同じぐらい「かならずしもイカない女性がいる」と考えると、 なんつーか、日本男児として申し訳ない気分になる。 【参考】 石井光太公式サイト【コウタイズム】 さて今回の読書は、いずれもレベルが高く、充実していた。 5冊紹介。 「老いて男はアジアをめざす」瀬川正仁(バジリコ) 「若者たち」瀬川正仁(バジリコ) 「マイナス50℃の世界」米原万里(清流出版) 「そこをなんとか」(3)麻生みこと(白泉社) 「黄土の大地を潤す姫」小田菜摘(集英社) 「老いて男はアジアをめざす」瀬川正仁(バジリコ)
![]() (以下、引用) 日本の自殺者は1998年以来三万人の大台を超えている。 その三人に一人が60歳以上の高齢者である。 つまり毎年一万人以上のお年寄りが自ら命を絶っていることになる。 しかも男性高齢者の死亡数は同年代の女性に比べ二倍以上になる。P349 老いというのは誰のとっても未体験ゾーンだ。 仕事、収入、体力、夢や希望。 薄皮を剥ぐように奪い去られてゆく老人だちの喪失感に多くの人が気づかないのは当然かもしれない。 また、誰にも必要とされない孤独感も多くの人に理解されていない。 とりわけ高齢者の性の問題は、まだまだ踏み込んで言及したものが少なく、長い間、 アンダーグラウンドの世界に落とし込まれてきた。P352 (以上、引用終了) 少し硬い文章の引用になったが、この著書の内容は具体例に満ちている。 彼らはどうして老後を東南アジアで暮らすことを選択したのか? その生活はどのようなものなのか? 非常に興味深く、参考になる。 東南アジアに行こうとしてる方に下記のアドバイス。 (以下、引用) 日本語が達者で日本人高齢者をカモにしようとしているプロ女性たちは、 独自のネットワークを持っているケースもある。 彼女たちはたえず仲間と情報交換し相手を物色している。 そして、男の資産、厚生年金の有無、されにはどのくらいの金を貢がせることができるかなどを 聞き出すテクニックや貢がせ方もよく心得ている。 もし、相手が国民年金しかないようなら短期戦で今ある分を吐き出させおさらばする。 また十分な年金があるようなら、しばらく付き合うなり、結婚を迫るなりして金づるにして 徐々に巻き上げる。 さらに注意しなければいけないのは、この手の女性は日本の遺族年金制度、つまり、男性が死んだ後、 本人の年金受給の約半分が自分の懐に入ることも知っている。 (以上、引用終了) この作品はおもにタイを舞台に書いている。(一部カンボジアも) 私は今までタイに3回行ってるけど、(幸か不幸か)歓楽街には足を踏み入れていない。 バンコク→クラビ→プラナン、と寸暇を惜しんで移動している。 (中途半端に真面目な筆者) 一度、老後視察を兼ねて、ディープなタイを体験するのもいいかもね? でも、女性に金を使うんだったら、他のことに使いたい、と思う。 タイHIV人口は100万人で、既に50万人死亡、と聞くし。 (それに、人間関係は読書で間に合うし) 最後に、引用。 「あなたがもてているのではない。財布がもてているんだ」 「若者たち」瀬川正仁(バジリコ)
![]() 実は、この著者の作品を読むのは初めて。 今回、2冊続けて読んだけど。 この著者のスタンスがいい、好感が持てる。 のめり込みすぎず、適度な距離をおいてインタビューしている。 淡々、といった印象で読みやすい文章。 それでいて、内容は重く、問題提起し、考えさせられる。 (それにしても、よくこれだけ著者に心を開いたなぁ・・・懐の深さか) (以下、引用) 中学卒業までの運搬は、バス会社の義務だから、本人がどんなに運ばれることを拒否しても、 運ばなければならなかった。だが、高等学校への旅はオプションである。 そうなったら、バス会社は掌を返したように、やっかいな病人や怪我人を運ぼうとしなくなる。 運良くバスに乗りこんだとしても、病気を理由に途中で降ろされてしまう。 「他の乗客に病気をうつされたら迷惑だ」というのがその理由だ。 そんな彼らを、唯一、乗せてくれたバス、それが夜間定時制高校というバスだった。P246 子供たちは序列化と均質化という、矛盾した二つの座標軸の上で追いつめられてゆく。 多くの「いじめ」が、他の人と違うということから始まるように、子供たちは無意識のうちに 均質性を自分に課すように教育されている。それでいながら、その集められた均質な仲間を 蹴落として上に登らなければ、自分が蹴落とされるという過酷な社会を生きさせられている。 この著者はあちこち「辺境」へ出かけておられる。 アジア各地のレポートを書かれている。 そして、この著書も教育の「辺境の地」を舞台にしている。 最後に、どうしてこの本を読もうとしたかというと、 次のブログ紹介記事を読んだから。 →瀬川正仁『若者たち』 「マイナス50℃の世界」米原万里(清流出版)
それで、防寒衣シリーズにこの名前がついた、という。(ハリウッド映画では邦題・「隊長ブーリバ」) ロシアでは、宮本武蔵や源義経クラスの人気者。 あるとき、ロシア人がつぶやく。 「その方の座右の書がドストエフスキーの『白痴』じゃなくて本当によかったですね」 「そこをなんとか」(3)麻生みこと(白泉社)
よく続いている、エライ! 「きのう何食べた?」と比べてどうだろう? 同じ弁護士が主人公だけど、こちらは法曹界裏話、業界ネタがメイン。 それに比べて、「きのう何食べた?」は私生活をメインに描かれる。 どちらも、面白い。 「黄土の大地を潤す姫」小田菜摘(集英社)
でも、年末行事で忙しく、観るヒマがない。 来年になって、おちついてから? |
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2009年11月09日 11/7土曜日は、RUKA RA GHAAM開店祝い兼ねて宴会。 場所は、ジム向かいの「シャモチン」。 料理が思った以上にうまかった。 旧交も温め、楽しいひととき。 【参考】 →グランドオープン →開店祝 さて、読書について。 このところ、あまり読めてません。 年末行事、いろいろ忙しくて。 (先週、更新休んだし) 下記、3冊のみ。 「セレモニー黒真珠」宮木あや子(メディアファクトリー) 「ウランバナ」勝田文(集英社) 「ちくたくぼんぼん」勝田文(集英社) 「セレモニー黒真珠」宮木あや子(メディアファクトリー)
![]() 宮木あや子作品では軽め。 でも、おもしろい。 ラブコメなのに泣けるのはさすが。 シリーズとして続けて欲しいくらい。 「ちくたくぼんぼん」勝田文(集英社)
「ウランバナ」勝田文(集英社)
寡作な方なのでうれしい。 レトロな雰囲気がいい。 |
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2009年10月26日 先日、長岡天満宮に参拝した。 大きな池があって、風情がある。 鯉も泳いでいた。 さて、気になったのは巫女さん募集のポスター。 「茶髪不可」、とある。 でも、「処女限定」、とは書かれていない。 現実問題、「不可能」だから? それとも、「人権侵害」になるから? もし、筆者が女性なら、応募してみたい。 (・・・書類で落とされるか?試してみたい気分) (正月に巫女さんが舞を踊るけど、あれに憧れる・・・踊ってみたい!) 【参考】 正月巫女奉仕者募集 さて、今週は3冊紹介。 「言葉を育てる」米原万里(ちくま文庫) 「テレプシコーラ・第二部」(3)山岸凉子(メディアファクトリー) 「きのう何食べた?」(3)よしながふみ(講談社) 「言葉を育てる」米原万里(ちくま文庫)
![]() 様々な方と対談されているけど、一番面白くて、生き生きしているのは田丸公美子さんとの対談。 例えば・・・ 田丸 私の親友が米原万里さんの血液型はB型じゃないかって言うから、メールで聞いたこと あったじゃない。“人類を四つに分類しようとするバカとは友だちにはなれません。ちなみに 私はO型です”と返事が来た。 米原 ああ、あったわね(苦笑)。 田丸 その画面をちょうどうちの息子が見て、「何なんだ、この尊大なヤツは。バカにもいいヤツと 面白いヤツがいるじゃないか。こんなこと書くヤツ、こっちから友だちになるのはお断りだ!」って 叫ぶの。私が「控えなさい。エ勝手リーナ様ですよ」って言ったら、急に静かになって、 「そうか。あのひとならしょうがないか・・・」って。ゴリ押し、ムリ押し、万里ならなんでも通る。 養老さんとの対談では・・・ 米原 ロシア人の背骨には、ロシア正教があり、それはギリシア正教と同じカトリックと枝分かれした 東方正教会系なんですね。精神的な拠り所はギリシアなのです。 だからグルジア正教の神学校出のスターリンは、ポーランド人やユダヤ人を大量に殺した けれどもギリシア人はほとんど殺していないというのです。 どうです? 興味深い話がいろいろ。 米原万里ファンの方はどうぞ手に取ってみて。 「テレプシコーラ・第二部」(3)山岸凉子(メディアファクトリー)
雑誌段階で何度も読んでいる。 現在雑誌では、六花は悲惨な状態。 ローザンヌに痕跡すら残せず脱落か!、って状況。 でも、私は諦めていない。 おそらく、六花は1次審査合格のはず。 なぜなら、練習の時に光っていたから。 だから、通った、と思う。そう信じたい。 今回のオビの文句は・・・ わたしなら舞台で倒れてでも今日踊る! ローザンヌ・コンクールがスタートしたものの 体調を崩してしまう六花。 一方、ローラ・チャンは・・・。 あぁ、いったいどうなるんだ?! 「きのう何食べた?」(3)よしながふみ(講談社)
おもしろい。 あっさり書かれているけど、レベルが高い。 日常の細々としたことをリアルに描写。 大きな事件は起こらない。 でも、ドラマはある。 |
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2009年10月18日 先週から、NHKで人形劇『新三銃士』が始まった。 昔、『新八犬伝』を観ていたのを思い出して、少し観てみた。 ストーリー、設定を変えている。 剣の練習シーンが「あしたのジョー」みたいだし、塚原朴伝のエピソードが混じっていたり。 (少し違和感を感じた) プランシェが猿、ってのも・・・う〜ん、どうなんだろう? アトスのイメージも違う、あんなヒゲオヤジなの? ポルトスとアラミスは、まぁ、あんな感じか。 トレヴィルは老人過ぎないか? コンスタンスが可愛らしく作られている。 ロシュフォールとミレディーは、いかにも悪そう。 アンヌ王妃の造形は原作どおり。 自分の意志でリシュリュー枢機卿と対抗する気の強さを持っている。 ところで、米原万里さんによると、原典で読んだら『ダルタニアンとミレディーの濡れ場ばかり』、とか。 私は、岩波文庫版と講談社文庫版で読んだけど、そんな濡れ場は出てこなかった。 講談社版がかなり詳細なので、完訳と思っていたけど、違うのか? 「三銃士」の続編は「二十年後」「ブラジュロンヌ子爵」へと続く。 (「鉄仮面」は「ブラジュロンヌ子爵」のごく一部に過ぎない) アレクサンドル・デュマにはアシスタントが沢山いて、デュマ工場とも言われた。 (まるで、現在日本マンガ界みたい) このアシスタントが下書きまでしていた。 特に、マケ、って方が有名で、筆力があったらしい。 有名作品は、ほとんどマケさんが下書きしていた、とか。 ところが、著作権がらみで裁判となり、マケは負けたらしい。 (う〜ん、このシャレが言いたくて、ここまで引っ張った・・・スマン!) そう言えば、「ブラジュロンヌ子爵」の途中から、リズムとペースが変わるところがある。 「ここからマケさん外されたのか」、って感じた記憶がある。 【参考】 NHK 連続人形活劇「新・三銃士」 三銃士では、one for all, all for one、ってのが合い言葉。 (一人はみんなのために、みんなは一人のために) 「三銃士」は大好きな作品なので、つい語ってしまった。 (「モンテクリスト伯」より好き) 今週は2冊紹介。 2冊とも永井するみ作品。 「マノロブラニクには早すぎる」永井するみ(ポプラ社) 「グラニテ」永井するみ(集英社) 「マノロブラニクには早すぎる」永井するみ(ポプラ社)
![]() 永井作品、最新刊。(先日、出版されたばかり) 永井するみ作品にしたら、割と文章軽め。 それでも、心理描写の上手さ、流れるようなストーリー展開は健在。 初期の業界ものを彷彿させる内容。 ファッション誌が舞台で、新人編集者がヒロイン。 永井作品に付き物、「不倫」もしっかり入っている。 でも、ヒロインの恋愛描写がないのが珍しい。(あっさりしてて、良かった) 最初、「プラダを着た悪魔」風かな、と思っていたら、途中で別な展開に。 ミステリ色もあるけど、色調は弱い目。 新人編集者の奮戦と業界内幕が中心。 他の作家だと、冗漫単調になるところ。 さすが永井作品、最後まで一気に引っ張るベクトルは強力。 巧い! 「グラニテ」永井するみ(集英社)
![]() 出版されたのは昨年。 早くに購入してたんだけど、読むのを控えていた。 なぜかと言うと、「ヴィリ」(山岸凉子)とテーマ重なったから。 つまり、ひとりの男性をめぐる母娘の対立と葛藤。 でも、読んでみて「違う」、と思った。 やはり、永井するみ流に料理されている。 情感あふれる心理描写。 母親から、娘から、両面から描写される。 非常にリアリティがある。 やはりおもしろい。 (テーマがナンなんで、点数辛い目) |
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2009年10月12日 先日、珍しいCDを購入した。 これです→クラシカル・エヴァー!コーラス コーラスばかりを集めてある。 どのように見つけたか、と言うと、単に「イーゴリ公」で検索しただけ。 私の好きなコーラス曲は、「イーゴリ公」と「モーツアルトのレイクエム」。 よかったら聴いてみて。 【参考リンク】 Polovtsian Dances Polovetsian Dances (「イーゴリ公」から「ダッタン人の踊りと合唱 ... Requiem K.626 - 8. Lacrimosa (chorus) - WA Mozart さて、今週は4冊紹介。 沖縄関連が2冊含まれてるけど、たまたま。 「泥ぞつもりて」宮木あや子(文藝春秋) 「となりのウチナーンチュ」早見裕司(理論社) 「白旗の少女」比嘉富子(講談社) 「ぼくのメジャースプーン」辻村深月(講談社文庫) 「泥ぞつもりて」宮木あや子(文藝春秋)
![]() 先日読んだ「野良女」から「花宵道中」まで、宮木作品は幅が広い。 今回は、平安後宮が舞台。 読んでいて、感じた。 松田志乃ぶさんも、この作品を読んでるかも?、と。 「女は灰になるまで女」というセリフ。 碁を打つシーン。 なんとなく、そんな気がする。 「となりのウチナーンチュ」早見裕司(理論社)
このようなフレーズの作品って中途半端なファンタジーだったりするから。 でも、それは杞憂に終わった。 面白かった。 沖縄が舞台なので、沖縄の知識も身につく。 例えば、本土から毎年26000人が沖縄に移住して、24000人が定着せずに本土に戻る、とか。 夢と思い入れと思い込みで沖縄に来ても、現実はきびしい、って事でしょう。 「白旗の少女」比嘉富子(講談社)
どう感じたのか? 非常にリアルに描写されている。 それも子どもの視点から。 先日、TVで放映されたが、本作品はその原作。 これを読むと、TVが原作に極めて忠実である、と解る。 TVの最後のテロップでは、一部フィクションと書かれていたが、誇大表現はない。 原作どおりであり、これが現実だった。 もう涙、涙。 「ぼくのメジャースプーン」辻村深月(講談社文庫)
![]() 最近人気上昇中、辻村深月さんの作品。 (私は辻村作品を読むのは初めて) なかなか巧い。 文章力も描写力もある。 テーマが「悪意」、で考えさせられる。 登場人物、小学生多数。 主人公の男の子は、クラスメート・ふみちゃんの為に闘う。 非常に泣かせる設定。 巧い! |
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2009年10月5日 先日、映画「カムイ外伝」をロードショーで観てきた。 非常に思い入れのある作品なので、DVDになるまでガマン出来なかった。 たまたま月初めだったので、1000円で観ることができた。(ラッキー) (以下、感想) アクションシーンが、良くできている。 では、総合的にはどうか? う〜ん、どうしても原作と比較してしまう。 私の頭の中には、完成度の高いイメージが出来上がっているので。 だから、アラを探してしまう。 @導入部、スガルとの出会い方が違う。 Aサヤカのイメージが微妙に違う。(サヤカが全裸でカムイに寄り添うシーンがない) Bさらに、不動に対する仕打ちが甘い。(最後はサメに食わせるはず・・・だから百日のウツセと確執が生じた) でもまぁ、良くできていた・・・と言う事で。 【参考】 映画「カムイ外伝」公式サイト さて、今週は3冊紹介。 「姫盗賊と黄金の七人」(後編)松田志乃ぶ(集英社) 「ウェットorドライ」今野緒雪(集英社) 「柘植文のつつウラウラまんきツアー」柘植文(竹書房) 「姫盗賊と黄金の七人」(後編)松田志乃ぶ(集英社)
そして、そのまま後編突入。 このシリーズ、コメディ、ロマンス、ミステリの三要素が融合しているが、 本作品はミステリ要素が高かった。 ハラハラドキドキで、最後のページまで一気読み。 ホント面白い、その辺の一般娯楽小説より、よっぽど面白い。 ただ、歴史にうるさい方が読んだら、クレームをつけるかもしれない。 外部と連絡をとる女盗賊だけど、一般庶民が文字を読み書きできたのか、って疑問。 高貴な女性が男性と至近距離で話をして、へーきなのか?、とか。 P209「おきれいな、恵まれた場所に生まれ落ちたのは、別にあんたたちの手柄じゃない」、と女盗賊のセリフ。 これも、引っかかる。 当時は、輪廻転生、因果応報、前世での結果が現在に反映されている、という考えが一般だったはず。 こんなセリフは、現代人の発想である。 でも、そんな事を言ってたらきりがない、楽しめない。 そんな事を考える方は、平安文学を原本で読んで、マニアックな喜びに浸っていたらよろしい。 私も、平安マニアに薦めるつもりはない。 「ウェットorドライ」今野緒雪(集英社)
あわてて「マリみて」を読み返した。 「う〜ん、そうだったのか」、と。 「柘植文のつつウラウラまんきツアー」柘植文(竹書房)
私が食指を動かされたのは下記のコース。 牧場へ行こう、栃木県・那須・千本松牧場 大島一周とリス村 洞窟探検、神奈川・田谷の洞窟 東京下町路線バスの旅 バカンス行っちゃう!?横浜鶴見沖縄ストリート 花見だ花見、伊豆河津 富士の樹海でケイビング こういうツアーも楽しそう。 老後の楽しみが増えた。 でも、大阪から行きにくいのが難点。 |
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2009年9月28日 本よみうり堂 、ってのがある。 総合的な出版情報を得られるので便利。 トピックも興味深い。 リンクしておくので、見てみて。 【参考】 ●この夏読んだベスト1 さて、今週は3冊紹介。 「友がみな我よりえらく見える日は」上原隆(幻冬舎文庫) 「ジェミーと走る夏」エイドリアン・フォゲリン(ポプラ社) 「傷」北原亞以子(新潮文庫) 「友がみな我よりえらく見える日は」上原隆(幻冬舎文庫)
![]() ノンフィクション人物伝、と言うと特別な方が対象・・・と思っていたけど。 これは異なる。 もう、我が事のような。 えっ、これって自分のこと?、って感じ。 淡々と、普通の方の日常を描写する。 こんなノンフィクションがあったのだ。 「ジェミーと走る夏」エイドリアン・フォゲリン(ポプラ社)
![]() これを読んでいて、いつの時代?、って感じた。 まるで、公民権運動の頃のような。 米ドラマを見て、これが現代アメリカ、と思っていたら大間違い。 それは一部にすぎない。 偏見は根強い。 プアホワイトと黒人の対立。 「風と共に去りぬ」を思い出す。 PS 「風と共に去りぬ」はアメリカでの映画人気投票に、ランキングされないらしい。 差別と偏見に満ちているから、らしい。 映画ではモロ差別表現は押さえてるけど、 小説では、『そう言う目』で読めば、『そう言う箇所』がある。 クークラックスクランも出てくるし。 アシュレ・ウィルクスは一員だし。 その集会の様子も描かれているし。 私は単にメロドラマとして読んだけどね。 (昔・・・学生時代に読んだので記憶おぼろ) でも、多少引っかかる箇所があったのも事実。 「傷」北原亞以子(新潮文庫)
![]() 物語の終わらせ方がいい。 まるでフェードアウトするような曖昧な感じ。 読者の想像にまかせる終わらせ方。 非常に味がある。 ところで、このシリーズ、何冊も出ている。 まだまだ楽しめる。 ぼちぼち読んでいこうと思う。 |
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2009年9月21日 先週、E・ハリスのアルバムを購入、と書いた。 youtubeで、E・ハリスの映像をいくつか見つけたので聴いてみて。 http://www.youtube.com/watch?v=OomaNxkY-KY http://www.youtube.com/watch?v=F9N5MGRPV0I http://www.youtube.com/watch?v=lTry1yKvxZM http://www.youtube.com/watch?v=ZNMBI9dutlM&feature=related さて、先週は2冊読んだ。下記のとおり。 「絶対貧困」石井光太(光文社) 「野良女」宮木あや子(光文社) 「絶対貧困」石井光太(光文社)
![]() よくぞここまで取材した。 感心した。 「物乞う仏陀」「神の棄てた裸体」では具体的なデータより、「情念」を感じさせる内容だった。 今回は、「講義」という型式をとって、「貧困とは何か」、ってのを表現している。 具体的な資料満載で、理解しやすい。 石井光太さんの作品はどれも、説得力があり考えさせられる。 興味深い話をひとつ。 (以下、転載) ドイツのワールドカップの時は、海外からやってきた売春婦の数は四万人にも達したそうです。 (中略) 次は2010年の南アフリカ大会ですが、ここでも膨大な性産業の特需が見込まれています。 しかし、南アフリカは世界最大級のエイズ大国で、十五歳から四十九歳の人口の五人に一人が HIV感染し、売春婦の感染率はそれをはるかに上回ると言われています。 もし、ワールドカップで集まってくる外国人がそこで買春をしたらどうなるでしょう・・・。 (以上、転載終了) ・・・恐ろしいことだ。 2010年を境に、HIV感染が世界を汚染するかも。 (これは笑い話ではないぞ) サッカーファン要注意。 「野良女」宮木あや子(光文社)
![]() この方のデビュー作「花宵道中」を読んだのが2007年夏。 「花宵道中」は、吉原を舞台に遊女を描いた傑作。 その時の強烈なインパクトは、今でも残ってる。 後日読んだ、直木賞受賞「吉原手引草」(松井今朝子)がもの足りなく感じたくらい。 あれから2年、「野良女」は最新作。 (ずっと宮木作品、気になっていた) 今回の「野良女」は現代を舞台にしたユーモア小説。 宮木あや子作品にしたら『軽め』かもしれないが、世間では『強烈』でしょう。 今まで「女性の本音全開」、って作品は、けっこう読んできたつもり。 でも、これはすごい、強烈すぎる。 『本音』と言うより、『身も蓋もない』、って感じ。 ここまで書いていいのか、って。 ある意味、「もっと、わたしを 」、「男は敵、女はもっと敵 」、「ガール 」に匹敵する作品、と言える。 (「エグさ」「毒」、では軽く凌駕してるかも) 著者曰く、「しょぼくれSexAndTheCity@中央線の荻窪より西側」と。 もう、声を出して笑ったよ、ホント。 例えば、桶川さんが、たまたま髪を切ってショートにした。 それが「綾波レイ」そっくりになってしまう。 保険の外交で、仕事に行くと、土下座して頼まれる。 このコスチュームを着てくれ、と。 さらに、『私が死んでもかわりがいるもの』、と言ってくれ、と。 P84の『×××芸』にも笑った。 ×××をぐるんぐるん振り回し××に××するシーン。 (そんなこと出来るのか?!) それにしても、とんでもない作品だ。 さらに、著者ブログより、下記のお言葉転載。 (以下、転載) ガールズの半分は優しさでできていますが、あとの半分はえげつなさでできています。 興味本位で読むとたぶん勃起不全か女性不信になります。この忠告は私の優しさですよ。 *********** 参考までに、「花宵道中 」の私自身の感想(2007/8/14)を下記に再録する。 (以下、再録) 驚いた。 これがデビュー作なのか! 恐ろしいほどの完成度の高さ。 しばし絶句。 吉原遊郭が舞台。 読んでいて、生活を感じる。 まるで、自分が江戸時代にいる感覚。 これは相当巧いぞ。 構成もすごい。 連作長編となっていて、短編ごとに主人公が変わる。 第3話が第1話の裏ストーリーになってたりする。 関係がないと思っていた人物同士が関係あったり。 単純な××と思っていたら、裏にえぐい確執があったり。 脇役と思っていたら、次の短編で光が当たって、 この時の何気ない行動には深い意味があったのか、って解ったり。 どの短編も濃度が高い、濃すぎるくらい。 スピリッツクラスの酒をストレートで飲んでる気分。 このすごさは読んで体験してもらうしかない。 圧倒的な情景と情感にひれ伏すのみ。 間違いなく傑作。 巻末に以下の言葉がある。 私たちの知らない吉原で、恋に泣いて、思いを遂げられないまま死 んでしまった遊女たちの魂が、少しでも慰められることを願います。 【参考】 # 2009/07/17 00:00 ☆宮木ログ |
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2009年9月14日 久しぶりに、CDを購入した。 E・ハリス、下記の2枚。 スタンブル・イントゥ・グレイス レッド・ダート・ガール 長い間、入手困難となっていたが、たまたま見つけたのだ。 (でも、私が買ったとたん、『在庫切れ』の表示) 「スタンブル・イントゥ・グレイス 」の9曲目に「愛の喜び」があるが、カントリー風に歌っている。 (「愛の喜び」と言えばナナ・ムスクーリの澄んだ声を思い出すが、こちらも秀逸) E・ハリスは1947年生まれ。(現在62歳) 現役の間に、生で聞いてみたい。 (上記2枚ともリンク先から『試聴』できるから、よかったら聴いてみて) さて、今週は下記の4冊紹介。 「物乞う仏陀」石井光太(文春文庫) 「夫婦で行くイスラムの国々」清水義範(講談社文庫) 「ちょいな人々」荻原浩(文藝春秋) 「野田ともうします。」柘植文(講談社) 「物乞う仏陀」石井光太(文春文庫)
![]() 先週読んだ「神の棄てた裸体」がすばらしかったので、こちらも読んでみた。 やはり、すごい内容だ。 現地の乞食にインタビューを試みる・・・それも毎日、何人も。 非常に生々しいが、ユーモアもある。(そこがすばらしい) 乞食には障害者も多い。 だから、アジアの障害者取材も兼ねている。 著者は障害者のひとりの女性が好きになり食事に誘う。 すると、家に来てくれ、と言われる。 そこから××な展開に・・・まぁ、とりあえず読んでみて。 著者の行動力に脱帽。 「夫婦で行くイスラムの国々」清水義範(講談社文庫)
まるで、教科書の文章のよう。 本来、清水義範さんの文章は軽妙洒脱で楽しいのに。 小説でなく旅行記だと、味が変わってくるんでしょうか? (読んでいて、少し苦痛を感じた) 途中で突っ込みたくなった・・・「少しは羽目を外したら」、と。 まぁ、夫婦で旅行だから、しかたないか。 イスラム世界の勉強になるので、OKか? ガイドブックとして機能する本、と分類しましょう。 「ちょいな人々」荻原浩(文藝春秋)
泣ける話や、サスペンスより難しい、と私は思う。 ユーモア小説と言えば、奥田英朗さんや山本幸久さんが私の好み。 平安寿子さんや中島京子さんの一部の作品もレベルが高い。 本作品もけっこう楽しめた。 「野田ともうします。」柘植文(講談社)
![]() 野田さんの大学生活を描く。 この野田さんのキャラがいい。 とても真面目だし、好奇心も旺盛、行動力もある。 いつもまったくの自然体。 でも、浮いてしまう。 いったい、いつの頃からキャバクラのネエちゃんと女子大生の判別が困難になったのだろう? こんな日本でいいのか?、って私は思うけど。 著者は、淡々と野田さんの日常生活を描いていく。 それが魅力的。 友だちになりたい気分。 |
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2009年9月7日 先週TVを買った絡みで、 手持ちのDVDを観なおしている。 先週は「イノセンス」と「千と千尋」を観たが、 今週は「エイリアン4」と「ダーティダンシング」を観た。 私は「エイリアン」シリーズが好きだけど、一般には「スター・ウォーズ」ファンの方が多いかも? 「スター・ウォーズ」は活劇だけど、「エイリアン」は恐怖映画だから、タイプが違うけどね。 「ダーティダンシング」は何度も観ている。 サエないヒロインが、どんどん魅力的になっていく演出がいい。 さて、今週は5冊紹介。 「神の棄てた裸体」石井光太(新潮社) 「日本人の知らない日本語」蛇蔵&海野凪子(メディアファクトリー) 「東京バンドワゴン」小路幸也(集英社文庫) 「五月女ケイ子のレッツ!!古事記」五月女ケイ子(講談社) 「バカドリル」天久聖一(扶桑社) 「神の棄てた裸体」石井光太(新潮社)
![]() この濃さはなんなんだ、すごすぎる! 旅の主題が異なるから並列できないけど、それでも比べてしまう。 ・・・「深夜特急」が薄味に感じられる、と。 著者が対象にのめり込み、感情移入しすぎるけど、このスタンスもいい。 世界で様々な紛争・戦争が起こっているが、そこに生活している方はどうなっているのか? 例えば、『婆』のエピソード。 東ティモールの紛争がもとになっている。 ヌール婆さんは、歯がなくて、風貌は老婆。 でも実は45歳らしい。 なぜなのか? 理由が語られたとき、このエピソードに呆然とする。 また、最終エピソードでジャラカが、他人の赤ん坊を育てようと決意するシーン・・・。 ジャラカは家族のいない路上生活者。 ぼろぼろのサリーをまくって赤ん坊に乳を飲ませようとする。 (・・・もう涙腺ゆるみっぱなし) PS1 しかし、レジミーはどこへ行ったんだ? (著者のレジミーへの介入は中途半端すぎる・・・怒) PS2 この作品、何の賞も取っていないようだけど、なぜ? こんな凄い作品なのに。 もっと評価されるべき、と感じる。 ぜひ、読んでみて。 【参考】 石井光太公式サイト【コウタイズム】 「日本人の知らない日本語」蛇蔵&海野凪子(メディアファクトリー)
例えば、「シカト」。 元は任侠用語。 花札の鹿の絵(十点)がそっぽを向いているから。「鹿十」→「シカト」 *漢字の読み方では・・・ 風信子→ヒヤシンス 石竜子→トカゲ 馴鹿→トナカイ *漢字の使い方では・・・ 「こんにちは」と「こんにちわ」 「会費を徴収する」と「会費を徴集する」 「危ない」と「危い」 (↑上記、いずれも最初が正しい・・・急に聞かれると「あれ?」と思ってしまう) *さらにマニアックな質問では・・・ 「さしつかえなければ」と「おそれいりますが」の使い分け 【参考】 敬語の指針:敬語の使い方マニュアル 【文化庁】の中にある『敬 語 の 指 針』 ⇒立ち読みページへ 「東京バンドワゴン」小路幸也(集英社文庫)
![]() ありそうでない、この種のミステリ。 東京下町を舞台にホームドラマが展開。 ミステリ色は薄いけど、いい薬味になっている。 キャラもほどほどに立っている。 濃すぎず、薄すぎず、と言ったところ。 シリーズ第1作なので、続きを読みたい気分。 「五月女ケイ子のレッツ!!古事記」五月女ケイ子(講談社)
![]() 私の古事記の知識と言えば、室生犀星さんが書かれた児童向け「古事記」のみ。 子どもの時に何度か読んだ。 この本は、もっと簡単・・・と言うかおおざっぱ。 超入門書、である。 五月女ケイ子さんの破天荒な絵が楽しめる。 さて、これ以外にも 「バカドリル」(天久聖一)を読んだ。 声を出して笑った。 こんな本も出版される日本の出版業界、って! 書店で立ち読みしてみて・・・笑えるから。 |
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2009年9月1日 朝晩涼しくなりましたね。 運動しても、以前ほど汗をかかなくなった。 もう秋なんでしょうか? また、暑い日が戻ってきそうな気もする。 ところで、先日TVを購入した。 前のTVは20年以上前のシロモノで、かなり旧くなったので。 (私はあまりTVは観ないので、けっこう長持ちする) さて、新しいTVと同時に『HDD&ブルーレイ』も購入。 手持ちのDVDをセットして、どの程度画質が向上したか確認した。 真っ先に試したDVDソフトは「イノセンス」、である。 「すごい、映画館での画像に近い」、と感激。 「あのオープニング・シーン」が映画館に近い美しさで再現された。(すばらしい!) もしこのソフトがDVDでなく、ブルーレイなら、どうなるんだろう? もっと美しくなるのだろうか? 「イノセンス」の次に試したのが、「千と千尋」。 これは「イノセンス」ほどではないが、背景画像の鮮明さに感激。 たとえ、ソフトがDVDであろうと、プレイヤーがブルーレイだと、 情報処理量が増加して、画像が鮮明になるのだろうか? 旧い『HDD&DVD』も有るので、ソフトをこちらに入れ替えて再生した。 どうだ?・・・う〜ん、画質が極端に落ちる。 やはり、情報処理量の違いなのか? (以前のTVだと気にならなかったのに・・・TV画像レベルが上がった影響も大きい) ところで、アニメばかり試したけど、実写はどうだろう? ハイビジョン、解像度が高い為、女優さんの濃い化粧が気になってしかたない。 (やはり、観るならアニメか?) これから、いろいろ試してみたい。 話は読書に変わる。 (TVばかり観ていては、読書がすすまないし) 今週は読み返しをしていた。 「武士道シックスティーン」 「武士道セブンティーン」 「武士道エイティーン」 ・・・続けて3冊読んで感じる。 最初から、(少なくとも)3冊分の構想を練ってからストーリー構築しているな、と。 1冊だけでも完成度は高いけど、後々のストーリーとのかね合いも計算されている。 では、この後はどうなのだろうか? ぜひ、シリーズとしてずっと続けて欲しい。 著者の他作品は、私の趣味じゃないけど、このシリーズは自信を持ってオススメする。 おもしろい! そんな訳で、新しい本は、進まなかった。 下記の4冊のみ。 「惣角流浪」今野敏(集英社文庫) 「ニッポン昔話」(下)花輪和一(小学館) 「星守る犬」村上たかし(双葉社) 「ひまわりっ」(11)東村アキコ(講談社) 「惣角流浪」今野敏(集英社文庫)
![]() こういう格闘技小説に弱い。 しかも歴史小説としても楽しめるし。 一挙両得とはこのこと。 1冊で2度おいしい。 「ニッポン昔話」(下)花輪和一(小学館)
![]() 先月発売の上巻に続き、下巻がついに発売。 待ってた、待ってた。 書店にも催促したし。 あぁ、待ってた甲斐があった。 のこりの2冊は簡単に紹介。 「星守る犬」は泣けた。 ネット上の紹介は・・・ 朽ち果てた車の中で寄り添うように、男性と一頭の犬の遺体が発見された。 鑑定の結果は男性が死後1年。だが犬は死後わずか3ヶ月。 この時間差が意味するものとは?それは哀しくも愉快な一人と一頭の、残されたわずかな“生を生き抜く旅の終着点―。 他にも、ネット上の紹介を読むと、けっこう褒めている。 良かったら、調べてみて。 まぁ、いいんじゃない? 「ひまわりっ」(11)はますますマニアックになってきているような。 オタクレベルはかなり高い。 いいねぇ。 |
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2009年8月23日 先日、NHKで中森明菜さんの特集が2週連続であった。 このところ、カバー集をリリースされているから。 最新アルバムが「フォークソング2」。 過去のアルバムも下記に併録しておくので比べてみて。 どれも懐かしい曲ばかり。
特に90年代、小室ファミリーは・・・。 80年代、レベッカのnokko超音波ボイスだったし。 でも70年代、百恵ちゃんは低音だった。 宇多田ヒカルさんも低音。 要所要所は、低音の方が締めて下さるようだ。 中森明菜さんも、どちらかというと低音か。 さて、今週の読書は次のとおり。 「大いなる聴衆」永井するみ(新潮文庫) 「にわか大根」近藤史惠(光文社) 「寒椿ゆれる」近藤史惠(光文社) 「大いなる聴衆」永井するみ(新潮文庫)
![]() 読み応えがあった。(642ページ) 音楽への造詣もハンパではない。 音楽知識だけではなく、「芸術家」と言う選ばれた人達の選民意識まで描いている。 そこが永井するみ作品らしい。 音楽家にしろ、作家にしろ、選ばれた人達、っているんですよね。 ある程度のレベルになると、努力だけでは如何ともしがたい、っていうか。 そういうの感じたことない? 「にわか大根」近藤史惠(光文社) 「寒椿ゆれる」近藤史惠(光文社)
![]() ![]() 近藤史惠さん、って時代小説も書かれていたんですね。 以前から気になっていたので、読んでみた。 時代小説には現代小説にない魅力がある。 歴史知識が得られる、ってのもあるし。 昔の人、って言っても同じ人間だから、考えること感じることは同じはず。 でも、風俗、習慣、法律、社会が異なるとどうなるのだろう? どう考えたのだろう? どう感じたのだろう? 過去の時代を舞台にした小説を読みたくなる。 現在と比較してどうだろう? 答えがあるかもしれない。 |
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2009年8月17日 邦画・「クワイエットルームにようこそ」を観た。 けっこう面白かった。 精神病院が舞台。 ・・・と、言えば「カッコーの巣の上で」や「17歳のカルテ」を思い出すが、内容と方向性は異なる。 ちなみに、カッコーとは精神異常を意味する。 もちろん隠語で教科書には出てこない。 でもアメリカ人なら、このタイトルだけで、「精神病院を舞台にした作品」、と分かるらしい。 また、ピーナッツの「ナッツ」も精神異常の隠語。 「17歳のカルテ」では、アイスクリームにナッツをトッピングして笑うシーンがある。 (映画では無かったかもしれないが、原作にはあった、と記憶している) ・・・以上、つまらん雑学を披露してスマン。 (一般社会では、何の役にも立たない知識じゃ) 【参考】 精神病院を舞台にした小説では「症例A」が有名。(これは面白いよ) 17歳のカルテはウィノナ・ライダーや当時新人だったアンジェリーナ・ジョリー出演した。 クワイエットルームも豪華キャスト。(内田有紀、蒼井優、大竹しのぶ、宮藤官九郎) ラスト近くで、内田有紀が言うセリフが好き。 ・・・「長いバツゲームでございました。終了、です」 さて、盆休みの読書は以下のとおり。 「3月のライオン」羽海野チカ(白泉社) 「疾風ガール」誉田哲也(光文社) 「ガール・ミーツ・ガール」誉田哲也(光文社) 「ジウ」(全3冊)誉田哲也(中央公論新社) 「3月のライオン」(3)羽海野チカ(白泉社)
![]() 現在連載中の作品の中では「テレプシコーラ」「リアル」とともに、最も気になる作品のひとつ。 いったいどうなるのだろう。 どこまで行くのだろう。 どこまで導いてくれるのか? ほんと楽しみな作品。 (長く続いてほしい) これ以外 「疾風ガール」「ガール・ミーツ・ガール」「ジウ」については期待したほど楽しめなかった。 期待しすぎたせいか? 故に、コメント省略。 以上が、盆休み読書である。 休日日数に比べて量が少ないのでは?、と思われるかもしれない。 実は、tutayaでDVD11枚を借りてきた観ていたから。 私は「カカオ80%の夏」「レッドマスカラの秋」シリーズのファンであるが、同趣向の作品がある、と知った。 「ヴェロニカ・マーズ Veronica Mars 」、である。 雰囲気はかなり異なるが、アメリカ・カリフォルニア舞台の米TVシリーズなので当然でしょう。 けっこう楽しめた。 ストーリーは、最近の傾向としてひねくりすぎて(わざと犯人を分かりづらくしている) 登場人物キャラクターに歪みが生じている印象を受けた。 ヒロイン・クリスティン・ベルは魅力だけど、もし身近にいたらイヤな女かもしれない。 「何様のつもり」って突っ込みたくなる。 周りの男性がかわいそう。 (特にローガンがチョー悲惨、ダンカンもきのどく・・・ふたりともヴェロニカにかかわったばっかりに) 男性で優遇されているのは、ヴェロニカ父のみ。 もしかして、この作品はティーン向けではなく、 家庭に居場所のないオヤジへの、感情救済ドラマではないだろうか? (脚本はオヤジ連中が書いたに違いない!) ヴェロニカ、父べったりのシーンがやたら多いし。 最後には××まで追い出してしまうし。 色々けなしたけど、それなりに楽しめた。 最後まで観たし。 (最後まで観させるベクトルを持つ作品は少ないし、「ちょっと観てみよう」って気にもならないのが多い) PS 好きなエピソードは「ピュアテスト」でメグの受難を助ける話(これはアメリカに限らず思春期らしい話)と、 マックの両親の過去を探って、とんでもない真実にたどり着く、って話。 この2つが気に入った。 |
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2009年8月9日 このところ、クライミングに対するモチに反比例して、読書のモチが上がっている。 週末岩場に出かけるのと出かけないのとでは、時間の余裕が全く違う。 出かけない場合、(たとえジムに一日費やしても)かなり読書時間を確保できる。 これは、私にとって貴重である。 何回も訪問した混んだ岩場で同じルートを繰り返すより、独りで読んだことのない本を読む方が楽しい。 (ただし、海外の岩は別・・・観光とセットで楽しめるから・・・これぞ非日常!) ・・・人生は残り少ない。 一年に200冊として、×10年=2000冊。 あと、がんばっても数千冊しか読めないでしょうね。 さて、本日は次の4冊紹介。 「神去なあなあ日常」三浦しをん(徳間書店) 「唇のあとに続くすべてのこと」永井するみ(光文社文庫) 「琉球空手、ばか一代」今野敏(集英社文庫) 「大問題’08」いしいひさいち(東京創元社) 「神去なあなあ日常」三浦しをん(徳間書店)
![]() 三浦しをんさん、いろいろ考えてるし、取材も丹念。 先日、三浦しをんさんの「仏果を得ず」を読んだけど、これは文楽界が舞台。 こんどは、林業が舞台。 山はよく行くけど、林業の実態は知らなかった。 こんな風に植林するのか、ふ〜む、って感じ。 よく調べておられるし、現地取材も熱心にしたんでしょうね。 山に対して愛情が感じられる。 PS 林業は私にはムリそう。 山は好きだけど、虫が苦手だし。 「唇のあとに続くすべてのこと」永井するみ(光文社文庫)
![]() これはデビューして数年後の作品。 ひじょうに巧いし、心理描写もすばらしい。 ミステリ作家として出発したが、ここではミステリの範疇を脱却されている。 後の「ドロップス」もすばらしかったが、既にこの時期このレベルの作品を著されていたんですね。 ところで、私は学生時代、瀬戸内晴美作品をよく読んだ。 (「妻たち」「妻と女の間」「京まんだら」「美は乱調にあり」等) 永井するみ作品は瀬戸内晴美作品に充分匹敵する内容がある。 それどころか、ミステリ要素も加わりおもしろさ倍増。 (ちなみに瀬戸内晴美作品を薄口にすると「失楽園」(渡辺淳一)になる) ストーリーは菜津と良平夫婦の物語。 これに菜津の元・不倫相手と現・不倫相手が絡む。 さらに、夫・良平も不倫をしているのが発覚。(W不倫じゃ!) 物語発端は元・不倫相手が死亡し、その死亡に不審な点がある、と警察がやってくる。 不倫が横糸、ミステリが縦糸で物語が展開する。 今回も、恋愛描写(特に心理面)堪能した。 夫婦のありように対する筆も冴えている。 (以下、引用) 結婚して十年経った夫婦の常として、ある程度の無関心と諦めとを心に抱え持ちながらも、 同時に十年分の知恵もつけていたから、お互いを適度に尊重する礼儀正しさも持ち合わせていた。 (以上、引用終了) ・・・これは、実際どうだろう? ある程度、知的+経済レベルに達した夫婦でないと、こうスマートにいかないような気がする。 (性格もあるだろうし) 一般の夫婦では、下世話な夫婦げんかに終始する、と思う。(皆さんの周りはどうでしょう?) 私は、その方が健康でよい、と思う。まぁ、限度があるけどね。 (再び、以下引用) 心の奥底にある感情はそっとそのままにして、日常の過ぎゆく一こま一こまを 良平と分かち合ってきたつもりだった。 けれどある日気が付いた。 良平と共にあるとき、最も心安らぐのは沈黙だと。 あのときだっただろうか。寝室を別にしようと菜津が提案し、良平が受け入れたのは。 孤独でいられる時間こそが自分の求めていたものだと悟ったとき、寂しかったのか、 それともある種の覚悟を持ったのか、今となっては菜津自身も思い出せない。 (以上、引用終了) 夫・良平のもとへ妻・菜津の不倫を知らせる手紙がくる。 その手紙の解析部分P266〜P269がすばらしい。 この分析から犯人が分かる。 これ以外に、印象深いシーンは、菜津が元・不倫相手の妻と「対決」するシーン。(瀬戸内作品を彷彿) また、菜津が現・不倫相手を追ってバンコクに行くシーン。 (ひじょうに官能的、でも私ならクラビ空港からプラナンへ行く) エンディングも救いが無く、「業」の深さを感じる。 つい思ってしまう、菜津のような妻を持った夫・良平は幸福なのだろうか、と。 PS 作品としては「ドロップス」の方が好き。 まだ、多少カタルシスがある。 「琉球空手、ばか一代」今野敏(集英社文庫)
けっこう面白い。 途中の編集者のコメントも楽しい。 もし私がクライミングをしていなかったら、この世界に入門したかもね。 さて、興味深いのが黒帯にたいするコメント。 (以下、引用P143〜P144) 流派によって、黒帯審査の厳しさはまちまちだが、本当の伝統を知っている流派は、 それほど高いハードルを設けていないはずだ。 基礎ができて、これから本格的な修行に入れますよ、という指標が初段の黒帯なのだ。 だから、「一段」とはいわず「初段」という。 そういう意味合いがあるので、初段が高嶺の花であっては困るのだ。 (以上、引用終了) ここからが私見で、この作品から離れる。 ボルダーの初段はやたら難しい。 基礎の出来ている方でもなかなか登れない。 これは、逆に言えば、「日本にボルダーの伝統がない」、ってことなのか? 「大問題’08」いしいひさいち(東京創元社)
でも、よく考えたら、笑ってすませられない問題も多い。 困ったものだ。 |
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2009年8月2日 先週、ペットとしてのニワトリについて書いたけど、 飼育にあたって、ニワトリキットが一式ある、と聞いた。 そこで、ネットで調べてみたけど出てこない。 代わりに、こんなのが出てきた。 ニワトリキットhttp://www.emily-garden.net/material/336.html (なかなか、おもしろそうだけど、私にはテクニックがない) 「武士道エイティーン」誉田哲也(文藝春秋) 「8分音符のプレリュード」松本祐子(小峰書店) 「防風林」永井するみ(講談社文庫) 「枯れ蔵」永井するみ(新潮文庫) 「緑の森を統べる姫」小田菜摘(集英社) 「武士道セブンティーン」誉田哲也(文藝春秋)
![]() これ、シリーズで一番面白いかも。 脇役にスポットライトをあてて、ストーリーに奥行きが出た。 桐谷先生と吉野先生のつながりには驚いた。(えぇー、って感じ!) 「シュハリ!」も好き。 早苗が母校を訪ねて、香織が電話する友情連係プレー。 高校三年になって、進路にも悩む。 あぁ、思えば、あれから三年もたったのか。 こんなに成長したのか、と。 非常に感慨深い、シリーズ3作目(最新刊!)。 【参考】 「誉田哲也作品」 「8分音符のプレリュード」松本祐子(小峰書店)
![]() これは児童文学で課題図書。 でも、これを読むと感じる。 ・・・児童文学とライトノベルは紙一重、と。(ついでにコミックも) 点数少し辛めにつけた。 面白いけど、プラスアルファが欲しい。 ぜいたくな欲求か? でも、このレベルにとどまってはいけない。 もっと脇役描写も欲しい。 面白かったからこそ、注文をつけたくなる読者心理。 「防風林」永井するみ(講談社文庫)
![]() ミステリ部分に関しては弱くて、ストーリー半ばで仕組みが分かってしまう。 それでも、おもしろい。 引き込まれる。 そこが、ストーリーだけで引っ張る作家と一線を画するところ。 謎だけでなく、登場人物の心理で読ませる。 そこが、永井するみ作品のいいところ。 大矢博子さんの解説もよい。 どうやら、この作品から変化が起こっているようす。 謎解きより登場人物の心理を深く掘り下げる方向に変わったようだ。 たしかに言われてみればそのとおり。 でも、短編では既に実行済み。 もともと持っていた作風、ってことでしょう。 それが長編にも浸透した、と。 「枯れ蔵」永井するみ(新潮文庫)
![]() これがデビュー長編。 でも、レベルが高い。 いきなりこの重厚なレベルに達する作家は少ないように思う。 多面的な視野で物語が進行する。 また、農業ミステリ、ってのが珍しい。 農薬を使用せず有機栽培に徹する被害者大下義一の人物造形がすばらしい。 米作り名人として全国的に有名で米を大切に育てている。 ところが、人格はボロボロで、家族からも嫌われている。 東南アジアに出かけて買春ツアー。 でも、米作り名人で尊敬されている。 ほんと、どうしようもない老人だ。 PS 永井するみ作品もだいぶ読んだ。 未読は残り少なくなった。 【参考】 「永井するみ作品」 「緑の森を統べる姫」小田菜摘(集英社)
さっそく買いにはしった。 この作品のモデルとなっているのが中世ビザンティン帝国。 ちょっと調べてみたくなる。 中世が暗黒時代、という思い込みがあるが、実際どうだったんだろう? 昔、阿部謹也先生のハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界 を読んだけど、興味深かった。 障害者と健常者が共生していた、とか。 【参考】 修道士カドフェル・シリーズ DVD−BOX 黄金のビザンティン帝国 文明の十字路の1100年 イスタンブールの大聖堂 モザイク画が語るビザンティン帝国 |
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2009年7月26日 ニューヨーク大都会のアパートで、ニワトリを飼うのが流行している、と聞いた。 タマゴが食べられるので、実益も兼ねている。 私は生き物を飼わないようにしているが、ニワトリには心が動かされる。 先週読んだ、「テンペスト」でも、女官・思戸が後宮でニワトリを飼うシーンがある。 それだけで、思戸のポイントは高い。 さて、今週は6冊紹介。 「わたしのサウンドオブミュージック」アガーテ・フォン・トラップ(東洋書林) 「恐怖と愛の映画102」中野京子(文春文庫) 「黄金の都の癒し姫」小田菜摘(集英社) 「白銀の都に旅立つ姫」小田菜摘(集英社) 「紅の砂漠をわたる姫」小田菜摘(集英社) 「緑の森を拓く姫」小田菜摘(集英社) 「わたしのサウンドオブミュージック」アガーテ・フォン・トラップ(東洋書林)
![]() 私は「サウンドオブミュージック」のファン。 ご存じと思うが、「サウンドオブミュージック」は実話である。 映画では、トラップ一家に、家庭教師としてマリアが修道院からやって来るところから始まり、 トラップ大佐の後妻となり、子どもたちに音楽を教える。 その後、第二次大戦が始まり、ナチスドイツから逃れるところで終了する。 私は、さらに詳細を知りたくて、「サウンドオブミュージック」と続編「絶妙な道のり」を読んだ。 この2冊は、後妻となるマリア自身が書いた伝記、すなわち自伝、である。 私は中込純次さんの訳で読んだが、現在絶版状態。 その代わり、谷口由美子さん訳の「サウンド・オブ・ミュージック」 と「サウンド・オブ・ミュージック アメリカ編」 の2冊が出版されている。 ちなみに、谷口由美子さんは岩波少年文庫でローラの『小さな家』シリーズを訳されている。 (私が『小さな家』シリーズを読んだのは、ずっと昔なので同じ岩波少年文庫でも鈴木哲子さんの訳) 話を戻すと、今回の作品は、マリアではなくトラップ・ファミリーの長女・アガーテが書いている。 視点が変わると雰囲気も変わる。 それにマリアがやって来る前のトラップ・ファミリーの様子、 アメリカに渡ってからの家族の様子と近況、 これらのことが語られているのが興味深い。 例えば、トラップ大佐は義和団の乱で武勲をたてた、とか。 例えば、マリアの前の妻は魚雷を発明した孫娘である、とか。 ・・・だんだん、きな臭くなってきた。 ところで、どうしてこの本のことを知ったかというと、次に紹介する本に書いてあったから。 「恐怖と愛の映画102」中野京子(文春文庫) ![]()
娯楽と言えば読書ばかり。 以前はtsutayaでよくDVDを借りて観ていたのだけれど。 面白い映画が少ないし、借りるのがめんどう、目が疲れる。 読書も目が疲れるけれど、映画ほどではない。 読書はストーリーのスピードを自分でコントロールできるし、映像も頭の中で自由に想像できる。 活字のほうが気楽、自由、楽しい。 そんな安易な理由で、映画はご無沙汰状態。 でも、たまには映像も観ようかなと、この本を読んで思った。 著者は「怖い絵」シリーズを書かれているだけあって、映像を読み解く能力が高い。 何事でも、量をこなして練習し、意識の高さを保たないとダメですね。 「黄金の都の癒し姫」小田菜摘(集英社) 「白銀の都に旅立つ姫」小田菜摘(集英社) 「紅の砂漠をわたる姫」小田菜摘(集英社) 「緑の森を拓く姫」小田菜摘(集英社)
毎回ヒロインは変わる、時代も変わる。 架空の国が舞台だけれど、モデルはある。 政略結婚を扱っているので、国の思惑(政治、経済、宗教)が描写され、それに個人の感情が絡む。 よく書けている、と私は思う。 出版された順番は上記の通りで、私の好みは下記の順番。 「緑の森を拓く姫」この作品のヒロインが最も自分で考えて行動する。法王庁との知の闘い。 「白銀の都に旅立つ姫」のヒロインも国のために頑張った、好感度が高い。リュドミラもいい。 「黄金の都の癒し姫」は、最後のどんでん返しにのけぞった。そうだったのか! 「紅の砂漠をわたる姫」は、もっとヒロインに活躍させて欲しかった。ちょっともの足りない。 |
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2009年7月20日 学生時代、課題図書は避けていた。 でも、最近は参考になる、と思っている。 学生時代、読書感想文が嫌いだった。 でも、今は(頼まれもしないのに)感想文を書いている。 年齢を重ねると、こんな事もある。(こんな事ばかり) 矛盾だらけの人生だ。 【参考】 「課題図書特集」 「課題図書」 さて、先週は2種(4冊)読んだ。 どちらも読み応えがあった。 「テンペスト」(上・下)池上永一(角川書店) 「チャイルド44」(上・下)T・R・スミス(新潮文庫) 「テンペスト」(上・下)池上永一(角川書店)
![]() ![]() これは面白いよ! 2段組上下2冊が短く感じられる。 実は、この作品昨年の夏に出版された。 その時からずっと気になっていた。 でも、この長さに、ちょっと躊躇していた。 「もし、おもしろくなかったらどうしよう」、と。 でも、とりあえず購入だけしておいた。 読む気になったら、すぐ読めるように、と本棚に置いておいた。 そして、やっと読み気になったのが先週のこと。 ああ、こんなに面白いなら、もっと早くに読むんだった!(後悔先に立たず) 特に、琉球王朝に興味のある方は必読。 首里城が主な舞台。 (以前、沖縄に登りに行った際、観光で訪問したことがあるので、よけい身近に感じられた) さて、興味深い点をいくつか。 男性作家でありながら、少女マンガのテイストを持ち込んでおられる。 ヒロインが真鶴、超美少女天才クラスの頭脳の持ち主、13カ国を操る、と言う設定。 このヒロインが男装して大活躍。 また、この兄が美少年、女装すると、後宮の美女もまっさお。 こりゃ〜、少女マンガか宝塚じゃないか! さらに源流はシェイクスピア「十二夜」「お気に召すまま」等、日本にも「とりかえばや」あるけど。 (そう言えば、シェイクスピアに同タイトルの戯曲あり) 死ぬような目になっても生きかえり、流刑になってもまいもどってくる。 このあたりは白土三平さんのカムイ伝を彷彿する。 さて、ずっと褒めてきたけど、弱点もある。 それはキャラクターの薄さ。 特に、ヒロインの魅力イマイチ。 著者の池上永一さんは女性心理の描写が苦手、とお見受けする。 奥田英朗さんや山本幸久さんクラスになれ、とは言わないけれど、もうちょっとなんとか・・・。 源氏鶏太さんや石坂洋次郎さんの時代を思い出した。 薄味な登場人物が多い中でも、私の好きなキャラは真牛さん。 この方が、もっとも強烈なキャラクターで印象に残る。 後半登場する側室の真美那もヒロインの親友として大活躍、好感度が高い。 女官の思戸もいい感じ。 少々クレームをつけてしまったが、御容赦。 面白くて、レベルが高かったからこその苦言と思って下さい。 ストーリーに関してはジェットコースター状態。 (多少ご都合主義もあるけどご愛敬) 資料の駆使も見事。 PS それにしても、繊細で深い心理描写があれば鬼に金棒なのに、と悔やまれる。 (しつこい?) 琉球文化と歴史を学べるから、まっいっか。 「チャイルド44」(上・下)T・R・スミス(新潮文庫)
![]() ![]() これも、読み応えがあった。 上下2冊を一気読み。 (でも、「テンペスト」には負けるけど) 殺人鬼に夫婦で立ち向かう、って設定がいい。 夫婦愛の幻想を描いて、女性ファンに受けるかも。 また、スターリン時代が舞台なのも秀逸。 資料を駆使して時代背景を描いている。 『このミス』海外ミステリ1位、の価値有り。 週末たっぷり楽しめた。 PS すべてが、まるく収まったように見えるが、 気になるのが犯人の娘・ナージャ。 初めて父の兄(つまり伯父さん)に出会って喜んだのもつかの間・・・・。 ××で××を××なんて! 今後、どのような人生を歩むのだろうか? |
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2009年7月10日 ダ・ヴィンチ連載の最新「テレプシコーラ」見た? 今回は、非常に重要。 今後の行く末を決定づけるようなシーンがあった。 六花ちゃんの振り付けどおりに踊るローラ・チャン! やはり、ローラ・チャンは空美ちゃんなのか!? ある意味、このシーンって、第二部クライマックスではないだろうか。 う〜ん、今回は感激した。 さて、今日は3冊紹介。 「あなたに不利な証拠として」ローリー・リン・ロラモンド(ハヤカワ文庫) 「義珍の拳」今野敏(集英社文庫) 「ニッポン昔話」(上)花輪和一(小学館) 「あなたに不利な証拠として」ローリー・リン・ロラモンド(ハヤカワ文庫)
![]() 評判になった作品である。 2007「このミス」1位。 2008「文春ミステリ」1位 オビでは池上冬樹氏、絶賛の嵐。 たしかに、おもしろい。 ミステリと言うより、文学に近い。 リアリズムに徹していて、心理描写も克明、レベルが高い。 でも、日本女性作家でもこのレベルはある、と思う。 女性の心理描写なら桐野夏生さん、永井するみさん。 ストーリーテリングなら宮部みゆきさん、柴田よしきさん。 リアリズムなら高村薫さん。 ・・・と、つい日本ミステリ界を擁護しまった。 「義珍の拳」今野敏(集英社文庫)
非常に興味深い作品。 このような拳法小説、って好き。 わくわくする。 「ニッポン昔話」(上)花輪和一(小学館)
![]() この作品は、かつて限定販売即完売、だった。 現在、入手不可能。 どれだけ、口惜しい思いをしたことか! 今回、特典をつけ上下巻となり、復刻された。 下巻は来月下旬くらいの発売らしい。 楽しみに待っている。 |
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2009年7月5日 ブログを読んでいて、声を出して笑う、なんてめったにないけど。 「花つむひとの部屋」先週の回は笑った。 ・・・外国人が受けた日本語検定試験とその回答例。 問:「どんより」を使って短文を作りなさい。 答:「僕は、うどんよりそばが好きだ」 問:「まさか〜ろう」を使って短文を作りなさい。 答:「まさかりかついだ金たろう」 問:「うってかわって」を使って短文を作りなさい。 答:「彼は麻薬をうってかわってしまった」 私が採点官なら、正解をだすより、高得点をさし上げたい。 さて、先週は次の4冊を読んだ。 「麦の海に沈む果実」恩田陸(講談社) 「黄昏の百合の骨」恩田陸(講談社) 「リトル・ホラーズ」今野緒雪(集英社) 「姫盗賊と黄金の七人」(前編)松田志乃ぶ(集英社) 「麦の海に沈む果実」恩田陸(講談社) 「黄昏の百合の骨」恩田陸(講談社)
どれも、悪くない。 平均点の優等生タイプ。 恩田陸さんのファンは多い。 特に、このシリーズは熱狂的、らしい。 でも、過去の作品同様、熱中できない。 どうも、私とは相性が悪いようだ。 登場人物に感情移入できない。 どうしてだろう? 筆力とは、ストーリーを作る能力、キャラクター造詣能力。 ・・・これは、けっこう有るように思う。 でも、これが筆力のすべてではない。 表現力、演出力の問題なのだろうか? ヒロインに魅力が無いためか? 単に相性なのか? ネット上の紹介を見ても、私好みのテイスト満載なのに。 残念だ。 PS1 この作品はハードカバーで読んだけど、挿絵がすばらしい。 一度、挿絵だけでも見てみて。 あと、P243の「美人論」が興味深い。 PS2 公平を喫するため、他の方の(褒めている)論評も記載しておく。 麦の海に沈む果実 黄昏の百合の骨 「姫盗賊と黄金の七人」(前編)松田志乃ぶ(集英社)
やはり、おもしろい。 再読に耐える作品群。 本作品も、既に再読した。 作者もあとがきで書いているが、 コメディ、ロマンス、ミステリの三要素が融合している。 私は見事なさじ加減、と思う。 後編が待ち遠しい。 「リトル・ホラーズ」今野緒雪(集英社)
「マリみて」本編はいったん終了している。 本作品は、アンシリーズにおける「アンの村の人々」みたいなもの。 短編集だけど、その各短編のつなぎ方が巧み。 絶妙な技である。 |
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2009年6月28日 暑くなってきましたね。 このところ、アイスばかり食べている。 個人的アイス・ランキングは以下のとおり。 (1)ハーゲンダッツ・ラムレーズン (2)井村屋・小豆アイス (3)エスキモー・ピノ さて、今週の読書は次の6冊。 「ノンフィクションと教養」佐藤優編集(講談社) 「仏像のひみつ」山本勉(朝日出版社) 「この写真がすごい2008」大竹昭子(朝日出版社) 「仏果を得ず」三浦しをん(双葉社) 「天才バカボンのおやじ」(全2冊)赤塚不二夫(竹書房文庫) 「町でうわさの天狗の子」(4)岩本ナオ(小学館) 「ノンフィクションと教養」佐藤優編集(講談社)
つい買ってしまう。 普段、無秩序に読んでいるものだから、重要な本がダダモレ状態。 それに、ノンフィクション関連もあまり読んでないし、教養読書とも無縁な生活を送っている。 その弱みにつけ込む、このタイトル・・・・う〜ん、まいった。 (でも、参考になった) 「仏像のひみつ」山本勉(朝日出版社)
![]() 仏像のヒエラルキーが分かった。 天→明王→菩薩→如来 P86の仏像シルエット、ってのも参考になった。 なかなか、おもしろい。 感心した。 「この写真がすごい2008」大竹昭子(朝日出版社)
#12(カンガルーの寝ている写真) #20(臨終での家族写真) #47(2人の子どもの写真) #52(学級集合写真) #12,20は、その場の雰囲気と瞬間をとらえた写真。 #47,52は、最初から技巧の意図あり、の写真。 どちらも、共に趣味である。 「仏果を得ず」三浦しをん(双葉社)
なかなか、おもしろそうな世界。 能狂言、歌舞伎、文楽、落語・・・このあたりの基本知識は日本人としてあらまもしい。 機会があれば、もう少し探求したい。 「天才バカボンのおやじ」(全2冊)赤塚不二夫(竹書房文庫)
バカボンの語源は英語のバガボンド(放浪者)からきている。(だから最初、無職であった) パパが無職なのは良くないというテレビ局の配慮で植木屋と設定(赤塚不二夫はこれに激怒したらしい) バカボンのママは峰不二子や初代キューティーハニーと同じ声優。 バカボンのおやじの生年月日は昭和元年12月元日のクリスマスの夜。 バカボンのおやじはバカ田大学出身、バカボンのママは黒百合女子大学出身。 「町でうわさの天狗の子」(4)岩本ナオ(小学館)
でも、今回は重要なエピソードが! なんと、太郎坊が××する。 久しぶりに太郎坊の母も登場。 |
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2009年6月21日 一般的な話題と、個人的な話題を各1つずつ。 まず、世間で話題になっているのは趙紫陽氏の回想録。 この方は天安門の関係者なので、この回想録が非常に注目を集めている。 あれから20年たつんですね。 天安門事件で失脚の趙紫陽元総書記、軟禁中の「発言」が本に 日本支部声明 : 天安門事件20周年 今こそ正義を! | ニュース ... 天安門事件、当時を伝える写真 写真41枚 国際ニュース : AFPBB News 天安門事件20年 「趙紫陽回顧録」: TVウォッチBLOG もう一つ、私が個人的に気になる話題は、氷室冴子さんの一周忌。 少し検索しただけでも、ファンの方がいろいろ書いておられる。 早世されたのだ残念だ。 氷室冴子 氷室冴子さんを偲ぶ会: 氷室冴子さん1周忌 また、氷室冴子さんの自宅にあった書籍リスト、ってのがある。 これです・・・興味深い。 →リスト さて、今週は4冊紹介。 「シーセッド・ヒーセッド」柴田よしき(講談社文庫) 「ア・ソング・フォー・ユー」柴田よしき(講談社文庫) 「竜巻ガール」垣谷美雨(双葉社) 「あの日にドライブ」荻原浩(光文社) 「シーセッド・ヒーセッド」柴田よしき(講談社文庫) 「ア・ソング・フォー・ユー」柴田よしき(講談社文庫)
このシリーズ、面白いので第2弾と第3弾も読んだ。 今のところ、シリーズは4冊しか出版されてないので、これで続き待ち。 あとは新刊を待つしかない。 「竜巻ガール」垣谷美雨(双葉社)
次の4編からなる。 「竜巻ガール」・・・これが表題作だけど、ライトノヴェル系で少し軽め。 「旋風マザー」・・・これは巧い。1作目「竜巻ガール」で作者を見切ってはいけない。奥が深いユーモア小説。 中島京子さんや平安寿子さんを思い出した。 「渦巻ウーマン」・・・これも秀逸。不倫相手がいきなり事故死するところから始まる。 これが永井するみさんなら、もっとミステリ色が濃くなるでしょうが、 垣谷美雨さんなので、ユーモア小説で収まっている。 「霧中ワイフ」・・・どちらかというと文学色が濃い作品。関西弁で書かれているのが珍しい。 もともと、兵庫県の方らしい。 特に、2作目・「旋風マザー」が巧い、老練なユーモアを感じる。 3作目・「渦巻ウーマン」もいい感じ。 「あの日にドライブ」荻原浩(光文社)
あの時、別な就職をしていれば、 もし、別な女性と結婚していたら、 ・・・SF型式なら、タイムスリップになるのを、妄想という手法で語らせている。 銀行を辞め、現在はタクシー運転手。 運転をしながら、妄想の世界に入っていく。 他の作家だったら、途中で読むのを止めたかもしれないが、 さすが荻原浩さん、文章・演出が巧い。 単なる愚痴に終わらせない。 |
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2009年6月14日 先週日本エッセイスト・クラブ賞を紹介したが、けっこう面白そうな作品が多い。 大宅壮一賞関連でも読んでいない作品は多いし。 日本出版業界は広く奥が深い。 私もかたよった読書をしていて、多くの優れた作品を見のがしている。 さて、今週は4冊紹介。 「こんな夜更けにバナナかよ」渡辺一史(北海道新聞社) 「グラウンド・ゼロがくれた希望」堤未果(ポプラ社) 「怖い絵」(3)中野京子(朝日出版社) 「シングルベル」山本幸久(朝日新聞出版社) 「こんな夜更けにバナナかよ」渡辺一史(北海道新聞社)
障害者と福祉問題を取り上げた作品。 下記に、いくつか引用する。 それにしても、人が人を支えるとは何なのか。 支える人と、支えられる人が「対等になる」とはどういうことなのか。 一つはボランティアといっても、しょせん《合う人とは合う。合わない人とは合わない》のだから、 あまり人の心理や性格の裏側を深読みせず、自分の理解できることだけを受け止め、 ちゃんと責任を持てということ。 もう一つは、人と人は《現実の表面に出ている部分》でつきあえばいいのであって、 介助をもっと《日常というか、普通のもの》に近づけてゆく努力をしなければならないということ。 (以上、引用終了) いくつか考えさせられる事があった。 クライマーもいつ障害者になるか分からない。 健常者と障害者は紙一重。 「グラウンド・ゼロがくれた希望」堤未果(ポプラ社)
(以下、引用) ビル全体が左右に揺れたのだ。 足下の床が沈みこむようにかしぎ、まるでバランスを崩したボートから落ちるように倒れた私は、 硬いカーペットに嫌と言うほど肘を打ちつけた。 倒れたままで顔をあげると壁にとりつけられたたくさんのテレビ画面に 「ALERT(警戒警報)」の文字が点滅している。 (以上、引用終了) 非常に生々しい記録。 著者は、階段を使って地上まで降り、脱出する。 その後、PTSDに悩まされながらも、ライターとして一歩を踏み出すまでの記録を記している。 (点数が辛いのは、種々の点で私の趣味に合致しないから・・・理由省略御容赦) 「怖い絵3」中野京子(朝日出版社)
![]() 好評の歴史と絵画エッセイ第三弾。 (でも、これが完結編なのね・・・残念) 私は学校で、絵画は先入観なしに見るべし、と習った。 いかに、それが皮相な見識であることか。 少なくとも近代以前の絵画を見るには、それなりの歴史・文化の知識が必要。 著者は恐ろしく博識にして洞察力もある。 ホント感服する。 例えば、『かわいそうな先生』(レッドグレイヴ)の絵について。 原題“The poor teatcher”の先生とは“governess”(ガヴァネス)を指すと指摘。 女性が職業に就いていること自体が蔑まれた時代から説き起こす。 詳しくは本書を読んでもらうとして、具体的な文学作品を提示される。 (タイトル右は、私のコメント) 「ジェーン・エア」・・・これは真っ先に頭に浮かぶ。私も好きな作品。 「ねじの回転」・・・そうなのか。 「エマ」・・・「自負と偏見」は読んだけど・・・昔は翻訳されてなかったぞ。 「シャーロックホームズ」・・・特に「四つのサイン」ではヒロイン・メアリにワトスンが一目惚れ。 「虚栄の市」・・・タイトルは知ってるけど未読、ここまで読むのは英文学の専門家でしょう。 以上、知識と洞察に圧倒される。 【参考】 「中野京子作品」 「シングルベル」山本幸久(朝日新聞出版社)
![]() 山本幸久作品最新作。 全作品を読んでいる。 (と、言っても、この作品を入れても10冊だけど) 今のところハズレなし。 すべて、一定のグレード以上。 そこが安心して楽しめるし、躊躇せず購入に踏み切れる。 他の作家はこうは行かない。 真保裕一さん、桐野夏生さんも当たり外れがあるし、奥田英朗さん、宮部みゆきさんでもある。 全作品が面白いのは荻原規子さんと山本幸久さんくらいか。 (私の趣味では荻原規子さん圧勝だけど、寡作すぎる) あるいは、他の作家が多作すぎるのかも。 【参考】 「山本幸久作品」 |
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2009年6月7日 先日、「新刊大賞2009」を紹介した。 これで、1位になったのが「ルポ貧困大国アメリカ」。 (中央公論社が主催し出版各社の新書編集長と主要書店の店員が選んだ) また、同書は第56回日本エッセイスト・クラブ賞も受賞している。 エッセイのカテゴリーを逸脱している、と思うけど。(まぁ、そんな「賞」なんでしょう) 下記に参考リンクしておく。 日本エッセイスト・クラブ賞受賞作紹介 講談社エッセイ賞受賞作紹介 文学賞 さて、今週は4冊紹介。 「ルポ貧困大国アメリカ」堤未果(岩波新書) 「ふたたびの虹」柴田よしき(祥伝社) 「フォー・ユア・プレジャー」柴田よしき(講談社) 「こっこさん」こうの史代(宙出版) 「ルポ貧困大国アメリカ」堤未果(岩波新書)
アメリカの経済学者ミルトン・フリードマンは言った。 「国の仕事は軍と警察以外すべて市場に任せるべきだ」 このフリードマンに学んだのがラムズフェルド元国防長官。 「イラク戦争」を民営化した。 可能な限り外注と派遣社員を使って。 (この時に貧困ビジネスが利用された) また、米政府はベトナム戦争で懲りた為、ジャーナリズムをまっ先に取り込んだ。 かつてベトナム戦争で「戦争で最も犠牲になるのは真実だ」と言われた。 イラク戦争では「真っ先に犠牲になったもの、それはジャーナリズム」、という。 80年代、「タイムズ」は共和党支持メディア王、ルパート・マードックに買収されている。 彼は世界中に所有する173紙の新聞に戦争支持の社説を書くように指示。 NBC、CBS、ABCも大資本に買収されている。 (NBCの親会社は第二次大戦で原爆を作った軍需産業) さて、軍関係以外に、興味深いのが医療関係のレポート第3章。 クライマーにも関係有りなので、気になる。 医療費がやたらと高額。 例えば盲腸での入院費用。 ニューヨーク・・・243万円(入院1日) ロサンゼルス・・・194万円(入院1日) 日本なら4,5日入院しても30万以下でしょう。 もし、アメリカに登りに行くなら、保険をしっかりかけたい。 もし怪我をして、入院でもしたら、目も当てられない。 「ふたたびの虹」柴田よしき(祥伝社)
![]() 過去の真実を暴くのがすべてではない。 過去と向き合って、どう現在につなげるか。 作品のコンセプトがすばらしい。 よくできている。 「フォー・ユア・プレジャー」柴田よしき(講談社)
![]() 前作おもしろかったので、シリーズ2作目を読んでみた。 前作より楽しめた。 バラバラに思えた事件を一気に収斂するワザは見事。 う〜ん、そう来たか、って感じ。 それにしても巧い。 多島斗志之さんは寡作で多彩だけれど、柴田よしきさんは多作で多彩。 すばらしい才能だ。 「こっこさん」こうの史代(宙出版)
でも、街中ではムリでしょうね。 小さな声のニワトリいないかな? 天井を低くすると鳴かない、と聞いたけど。 それだと、ニワトリ気の毒だし。 また、糞が臭くて、近所から苦情が出る。 田舎でも厳しくなってきたらしい。 |
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2009年5月31日 「RDG レッドデータガール」(2)荻原規子(角川書店)
![]() 今週末は予定を入れずに、読書に集中した。 書店への入荷は発売日から2日遅れで、土曜日の昼。(取り置きしておいてもらった) 土曜日に一気読みして、日曜日再読した。(ブランクをなくすため1巻目再読してから2巻目読み進んだ) ワンランク上の面白さ。 ツボを押さえている。 物語の舞台は予想どおり、東京に移動。 ファンタジーと言うより、ほとんど学園もの?、っていうような展開。 しかも、寄宿舎だし! (「西の善き魔女」(秘密の花園)を思い出す) 今回の特徴は登場人物の多彩さ。 個性的な人物多数登場。 誰が人気出るか? 真夏か真響が上位に入りそう。 泉水子の父も登場したし。 ほんと、顔ぶれが多彩で豪華。 あと、重要人物で登場しないのは紫子さんくらい。 今回気になったのが、和宮のあの姿での登場。 「風神秘抄」とのリンクを感じる。 もしや、これは「転生」では?、と。 PS 蛇足ながら、気になった点、ささいなことだけど。 前回も書いたけど、泉水子を始め、登場人物すべてが標準語を話すこと。 全国から集まった生徒達だけど、どなたも方言を使わない。 方言を使うと、ストーリーのなめらかな進展阻害になるのでしょうね。 でも、一度使っていただきたいような気もする。 |
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2009年5月29日 漫棚通信ブログ版を時々見ている。 5/27付けで、「25年後の磯野家」CMを紹介しているので、さっそく見てみた。 イクラちゃんは、ベンチャー企業をたちあげ、CEO(社長)をやっている。 タラちゃんは、たこ焼き屋のおやじ。 宮沢りえ扮するワカメちゃんは34歳、美人になって、老舗デパートのエレベーターガール。 カツオは36歳になってもあいかわらずで、野球の練習をしている。(仕事してるのか?) 【リンク】↓ ![]() 今日はとりあえず、1冊だけ紹介。 「フォー・ディア・ライフ」柴田よしき(講談社)
![]() 探偵が保育園の園長、って設定がいい。 しかも、新宿二丁目。 ヤクザがわんさか登場する。 ラストのエンディングへの収斂はオタク的すぎるような。 少し、ついて行けなかったので、点数を辛くした。 |
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2009年5月26日 週末に書こうと思っていたけど、都合により今日書いておく。 「新刊大賞2009」(中央公論新社)、ってのがある。 「このミス」の新書版みたいなやつ。 昨年2008年度の新書ベストを選んでいる。 下記のとおり。 比較のため、右側に2007年度のベスト10も併録しておく。 ![]()
さらに、ベスト10には漏れたけど、 私の興味をひいた作品も記しておく。
・・・以上、こんな感じで、おもしろそうな本が盛りだくさん。 読書の楽しみは尽きない。 【参考】 新書が生まれて70周年《夏の新書100冊フェア》 |
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2009年5月24日 再度、「この世界の片隅に」を読んだ。 やはり、新たな発見あり。 例えばP116上段・・・義姉の博覧会でのデートシーンだけれど、その右に少女と母親らしき女性。 これは良く見れば、リンさんが遊廓に売られていくシーンでもある。 エピソードが交錯する一瞬。 さらに気づいたのは、すずとリン、名前が似ている。 リンはすずの(ありえたかもしれない)もうひとつの人生であり、分身でもある。 さて、今週は2冊紹介。 「激流」柴田よしき(徳間書店) 「街角花だより」こうの史代(双葉社) 「激流」柴田よしき(徳間書店)
![]() 読み出したら止まらない、疾風怒濤のミステリ。 タイトルどおり「激流」に飲み込まれる。 2段組み、554ページが短く感じられる。 主要な登場人物は男性2人と女性3人の計5人。 それと、行方不明の冬葉。 実際の事件が起こってから20年後、って設定。 この20年の歳月、それぞれ登場人物がどう生きてきたか? それだけでも、おもしろい。 これにミステリ要素が加わってくる。 う〜ん、激流だ。 PS 点数が辛い、と思うかもしれない。 柴原作品では、「小袖日記」や「ワーキングガール・ウォーズ」が私の趣味。 今回は、(微妙に)私の趣味とずれた。 でも、おもしろい作品であるのは確か。 「街角花だより」こうの史代(双葉社)
こういう、ゆるい明朗作品。 花屋を舞台に店長と店員(2人とも女性)の仕事と日常が描かれる。 初期の作品ですでに、技術的には完成されているような気がする。 例えば、ローアングルからの構図。(P29) 短い線での風景。(P33) 興味深い。 PS さて、今週はいよいよ、RDG2の発売。 今週土曜日は、どこにも出かけずに、読書デーとしたい。 レッドデータガール2 |
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2009年5月19日 今週末にアップ予定だったが、ガマン出来ない。 今日アップします。 この本は、すごいよ! 「この世界の片隅に」(上・中・下)こうの史代(双葉社)
また、すばらしい作品を読んでしまった。 かつて、「夕凪の街、桜の国」を読んだ時に感じた。 これは最高傑作、これ以上の作品は出ないだろう、と。 でも、それは誤り。 再度、こうの史代さんが「戦争」をテーマに取り組まれた。 そして、出来上がったのが、この全3巻。 早くも今年度ベスト作品決定! 日常を淡々と描かれている。 この柔らかいタッチで戦中・戦後が描かれるんだけど、 もう・・・こみあげてくるものがある。 平凡な表現で申し訳ないが、魂を揺さぶられる。 メルヘンと紙一重のストーリーと表現だが、これがテクニカル。 鬼が、座敷童が・・・。 どこまでが現実で、どこからが夢なのか。 「夕凪の街、桜の国」と同様に、各エピソードが複雑に絡み合い、リンクする。 ぼんやり読んでいたら、見のがしてしまう。 物語は、広島と呉が舞台。 昭和18年から始まり、徐々に昭和20年8月に向かっていく。 大きな山が迫ってくる感覚。 じっくり読んで下さい、リンクを読み解くために。 表紙はこのような雰囲気なので、救われる。 PS 先週、「あの戦争から遠く離れて」を読んで、ノンフィクションはすごい、と感じた。 感動や迫力ではノンフィクションに負けるな、と。 でも、それは間違い。 改めて、フィクションの凄味を感じた。 PS2 3巻目の表紙を見て。 ヒロインが髪を切ってショートにしている。 そして、この表情。 どうしてこの構図なのか? どうしてお兄ちゃんが鬼いちゃんなのか? どうして座敷童が出てくるのか? 読み解いて下さい。 すべてがリンクしている。 |
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2009年5月16日 実は今年から『E−hon』に加入している。 このE−honには、『新刊パトロール』制度があって、 作家名を登録すると、新刊をチェックしてメールをくれる、とても便利。 新刊チェックしている作家が40人くらいいるので、この制度はホントありがたい。 さて、今週は次の2冊を紹介。 「あの戦争から遠く離れて」城戸久枝(情報センター出版局) 「あなたにもできる悪いこと」平安寿子(講談社) 「あの戦争から遠く離れて」城戸久枝(情報センター出版局)
![]() この作品、出版されたときから気になっていた。 でも、重そうなので、何となく敬遠していた。 今年の初めに、「この人も好きかも!」のサイトで「米原万里」を入力すると、 城戸久枝さんが1番に出てくる。 それじゃあ読んでみようかな、って気になる。 いつものなじみの書店で取り寄せる手続きをすると、いつまでたっても連絡が来ない。 問い合わせると、「絶版です、出版社にもありません」、とのこと。 図書館で借りてもよかったが、二桁の順番待ちだし、出来るなら購入して読みたい。 そこで、E−honから取り寄せることにした。 (それにしても、このような優れた作品が、なぜすぐ絶版になるのだ?!) さて、この作品は第一部「父の物語」と第二部「私の物語」の二部構成。 特に、第一部がすばらしい。 読んでいて、涙、涙・・・、です。 以下、少し思ったことを書いてみる。 残留孤児の帰国は80年代から始まったが、(皆さんは)その時にどう感じた? 私は(知識と洞察力がないために)次のように感じた。 「日本語が理解できない、何年も会っていない肉親は年老いているか、亡くなっている、 さらに中国には自分を育ててくれた養父母や友人知己がいる。 それなのに、日本に帰国して幸福を感じるのだろうか?」、と。 その後、数年の年月が流れ、「ケ小平伝」、「ワイルドスワン」等を読んで、(フト)感じるところがあった・・・・ あの文化大革命で、残留孤児はエグい経験をしたのではないか?、と。 だからこそ、無理をしてでも日本に帰りたかったのではないか、と。 文化大革命は「造反有理」という言葉とともに、安保闘争に影響を与えた。 当時私は、安保闘争も終わってシラケ世代だったが、 「なぜ孔子批判するのか(批林批孔)」、と不思議に思った記憶がある。 今となっては、共産党指導部の権力闘争として理解されているが。(スターリンの粛正を思い出す) この作品は「ワイルドスワン」に匹敵するノンフィクションで、尚かつ、より身近な内容。 自信を持ってオススメする。 PS1 日中友好と謳いながら、なぜ反日教育をするのか? もちろん、正しい歴史教育は必要。 それにもかかわらず、ヨーロッパ人にせよ、中国人にせよ、大陸系の「したたかさ」を感じる。 日本人って人がよすぎるのか? だから、平和ボケと言われるか? でも、口惜しかったら「平和ボケ」になってみろ、って気がする。 世界の平和団体の理想国家として目指す究極の姿は「平和ボケ」ではないのか? そう言う意味で、日本は理想国家かもね。 (私は、日中友好と歴史教育を否定している訳ではない。念為) PS2 この作品は大宅壮一賞と講談社ノンフィクション賞のダブル受賞。 これも読む気を後押しした。 今回、大宅壮一賞と講談社ノンフィクション賞の比較表を作成した。 よかったら見てみて。 【資料】 『大宅壮一賞&講談社ノンフィクション賞の比較』 「あなたにもできる悪いこと」平安寿子(講談社)
それが、けっこうおもしろい。 ほとんど詐欺師と紙一重で、トラブルに乗り込んでお金を頂戴する。 財産を巡っていがみ合う家族。 不倫と公費着服を隠蔽したい公務員。 NGOを踏み台に野心を遂げようとする自称善意の実践者。 宗教の教祖を操って私腹を肥やそうとたくらむコンサルタント。 票集めのために飛び交う裏金をかすめとるのが生き甲斐の選挙参謀。 大物悪党ではなく、ずるくてせこい2人組。 平安寿子さんの新境地。 |
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2009年5月10日 今月の「ダ・ヴィンチ」6月号は「テレプシコーラ」のクリアファイルが付録。 これは嬉しい。 「ヤングアニマル」2008年5号「3月のライオン」(羽海野チカ)クリアファイル付録に匹敵する。 でも、絵が六花ちゃんでも千花ちゃんでも無いのが残念。 ところで、今回の「テレプシコーラ」の終わり方はひどい。 続きが気になってしかたない。 それなのに来月休載、とは! ひどすぎる。 さて、今週は次の5作紹介。 「オリンピックの身代金」奥田英朗(角川書店) 「千年の夢 文人たちの愛と死」(上・下)齋藤なずな(小学館) 「美晴さんランナウェイ」山本幸久(集英社) 「渋谷に里帰り」山本幸久(日本放送出版協会) 「鈴木先生」(7)武富健治(双葉社) 「オリンピックの身代金」奥田英朗(角川書店)
![]() 昭和39年を舞台にしたサスペンス。 これは読み応えがあった、二段組み521ページ。 当時の時代背景が詳細に描写される、それが見事。 また、登場人物が脇役に至るまで、血肉を持った人物として描かれる。 東京オリンピックの頃の熱気を感じながら一気に読んだ。 おもしろいし、考えさせられる。 一億総中流、と言われながらも、格差社会は既に始まっていた、と。 PS 過去の奥田英朗作品と比べるとどうだろう? サスペンスでは「最悪」 笑いでは「イン・ザ・プール」 軽妙さでは「ガール」 牽引力では「サウスバウンド」 ・・・このように感じる。 (上記4冊はどれを読んでもハズレなし) PS2 犯人側からも描かれるが、 何となく「マークスの山」(高村薫)を思い出した。 【資料】 吉川英治賞 「千年の夢 文人たちの愛と死」(上・下)齋藤なずな(小学館)
有名な文豪が多数出演。 それを見事に処理している。 これは読む価値がある。 ところで、この作品はかつて「恋愛列伝」と言うタイトルで出版されていた。 それが、絶版となり文庫で復刻されたのがこの上下巻。 著者は膨大な資料にあたりながら、それを完全に消化されている。 凡人だと(単なる)伝記で終わるところが、文芸作品として再生している。 そこがすごい。 圧倒される。 PS あまりにレベルと濃度が高すぎて、一般ウケしなかったのが残念。 「華の乱」(永畑道子)とか、好きな方ならOKでしょう。 【参考リンク】 齋藤なずな『千年の夢』 - mm(ミリメートル) 「美晴さんランナウェイ」山本幸久(集英社)
「渋谷に里帰り」山本幸久(日本放送出版協会)
やはり面白い。 文章も読みやすい。 この2冊読んだことにより、山本幸久作品(出版されている限り)すべて読んだことになる。 もし、初めて読むなら下記の作品を薦める。 長編なら・・・
「男は敵、女はもっと敵」 「はなうた日和」 いずれもハズレなし。 【資料】 山本幸久さんのページ 「鈴木先生」(7)武富健治(双葉社)
こんなに続くとは思わなかった。 教育現場、ってけっこうネタが豊富ですね。 それだけトラブルが多いということだけど。 現場の方、ご苦労様です。 人間関係そのものが仕事、ってのは大変。 私には勤まりそうもない。 自分だけ頑張っても、処理できる訳ではないから。 相手の出方次第で、いくらでも仕事が増えて深みにはまってしまう。 複雑で深い人間関係は充実感があり面白いけど、小説や漫画の中だけにしたい。 |
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2009年5月3日 珍しくCDを購入した。 次の2枚。 トゥゲザー・アゲイン〜ベスト・オブ・エミルー・ハリス イマージュ・クラシーク〜バッハ・アンコール エミルー・ハリスは学生時代から聞いている。 どうして聞くようになったかというと、ザ・バンドの映画「ラストワルツ」を観に行って、 ゲストにエミルー・ハリスが出演。その声が好みだったから。 さっそくレコードを買いに走った。 (そう、当時はCDではなく、レコードだった) それ以来聞いている。 レコードを何枚か購入しているうちに、CDの時代になった。 (現在、CD8枚とDVD1枚を所持している) でも、ちょっと油断すると、すぐ廃盤になる。 今回購入のCDもかつて「美しき肖像」というタイトルでリリースされたものの復刻。 レコードでは持ってるけど、CDで持ってなかったので、購入した。 彼女の声自体に味があっていい感じだし、ファルセットに変化するところが、 普通の歌手だと聞き苦しいのに、そこが良かったりする。 私の感性のツボを押さえているので、飽きない。 ちなみにジャンルはカントリー。 のんびりしたテンポが心地いい。 特に、次の3曲が好き。
(11番は、クライマーになじみのある「ボールダー」、って地名が歌に織り込まれているし) もうひとつのバッハのCDを購入したのは理由がある。 『パストレッラ ヘ長調 BWV590』 を聴きたかったから。 この曲はマイナーな為か、バッハのCD選曲に漏れることが多い。 でも、その筋の方には非常に有名なのだ。 そう、あの「カリオストロ」でクラリスと伯爵の結婚式シーンで流れるパイプオルガン曲! 想い出していただけたでしょうか? (マニアックな話でスマン) では、いつもの本の紹介に移る。 今日は、次の3冊紹介。 「男は敵、女はもっと敵」山本幸久(集英社文庫) 「袋小路の男」絲山秋子(講談社文庫) 「護法童子」花輪和一(ぶんか社) 「男は敵、女はもっと敵」山本幸久(集英社文庫)
これほど見事に働く女性の本音が描かれたことはない、と。 しかも男性作家だし。(表紙をの著者名を見なおした、ホントに男性作家なのか、と) これ以上の作品は出ないだろう、と思った。 しかし、それは誤り。 再び、男性作家により、それは成し遂げられた。 「男は敵、女はもっと敵」は「ガール」に匹敵する。 奥田英朗さんは、登場人物を心理的に追い詰めて沸点に達する瞬間を描くのが巧い。 山本幸久さんは、そこまで緊張の糸を引っ張らない。 どちらかと言うとゆるい感じ。 それでいて、人生の複雑な味わいと、深いユーモアを感じさせる。 例えば、不倫の果てに、離婚し家族を失った男が、元妻のソフトボールチームに助っ人で参加するシーン。 ポジションはキャッチャー、妻はピッチャー。 そしてつぶやく・・・ 「おれは家族を失ってからファミリーレストランで食事するようになり、離婚して元女房の女房役になった」 ストーリーと登場人物が複雑に交錯するので、再読しないと100%理解出来ない。 連作短編で、毎回語り手が変わる。 この型式は、(私の知っている限りでは)「もっと、わたしを 」(平安寿子)あたりが最初?(違っていたら教えて) その後、他の作家も真似しはじめたような。 これにより、物語全体が多面的に語られ奥が深まる。 (「平成大家族」(中島京子)もこの型式の成功例) (「駅から5分」(くらもちふさこ)は進化形) さて、今回も著者のサービス精神により、文庫化にあたり書き下ろし短編が追加されている。 さらに、「笑う招き猫」とのリンクもある。 ホント、嬉しい限り。 (山本幸久さんページを作ったので、見てみて) 【資料】 山本幸久さんのページ 「袋小路の男」絲山秋子(講談社文庫)
@「袋小路の男」 A「小田切孝の言い分」 B「アーリオ オーリオ」 @は一人称で進行する。私と小田切の物語。これは私の趣味ではイマイチ、小田切のダメ男ぶりが描かれる。 Aは@を三人称で書き直して、「その後」も追加。これは好み。「私」の名前が大谷日向子である、と分かる。 Bは期待以上によかった。もしかして、3編の中で1番いいかも。 「護法童子」花輪和一(ぶんか社)
非常にありがたい。 手に入らない、と思っていたから。 でも、すぐ絶版になりそう。 |
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2009年4月26日 手塚治虫文化賞が発表された。 候補作は次のとおり。 『海街diary』吉田秋生、小学館 『駅から5分』くらもちふさこ、集英社 『大奥』よしながふみ、白泉社 『海獣の子供』五十嵐大介、小学館 『劇画漂流』辰巳ヨシヒロ、青林工藝舎 『聖☆おにいさん』中村光、講談社 『マエストロ』さそうあきら、双葉社 その結果、受賞したのは マンガ大賞は、『大奥』『劇画漂流』の2作品。 『劇画漂流』は以前から気になっていた。 マニアの間では評判になっていた。 辰巳ヨシヒロさんは好きな作家の1人。 さすが手塚治虫文化賞、って感じでよい作品を選んでいる。 『大奥』も好きな作品なので、受賞して嬉しい。 『海街diary』が選ばれなかったのは、まだ2巻しか発表されていないからだろうか? 『大奥』が達人のワザなら、『海街diary』は名人のワザ。 何万冊と発表される作品のヒエラルキー最上段、と思う。 【資料】 @手塚治虫文化賞 A受賞の記録 さて、本日は次の2作品を紹介。 「凸凹デイズ」山本幸久(集英社文庫) 「私たちの退屈な日々」多島斗志之(双葉文庫) 「凸凹デイズ」山本幸久(集英社文庫)
![]() 山本幸久さんは、お仕事小説と青春小説のドッキングがうまい。 「ある日、アヒルバス」「カイシャデイズ」「笑う招き猫」、いずれも秀作、すばらしい。 作家に必要な要素のひとつがサービス精神。 「はなうた日和」でも文庫化にあたり、書き下ろし短編が追加されていた。 今回も短編が追加されている。 また、「アヒルバス」との軽いリンクもあったりして。 こういうのがファンとして嬉しい。 「私たちの退屈な日々」多島斗志之(双葉文庫)
多島斗志之作品はよくタイトルが変わる。 この作品も文庫になるにあたり、変わった。 もとのタイトルは「もの静かな女たち」。 こっちの方が良かったように思うけど。 |
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2009年4月19日 あっという間に桜の季節終了。 山の方を見ると、若葉の新緑が美しい。 生命力を感じる春ですね。 さて、今週は4冊紹介。 「彼らの犯罪」樹村みのり(朝日新聞社) 「田辺聖子の人生あまから川柳」集英社新書 「不成仏霊童女」花輪和一(ぶんか社) 「藤子・F・不二雄SF短編集」(上・下)小学館 「彼らの犯罪」樹村みのり(朝日新聞社)
「樹村みのりさん、断筆したのだろうか?」、と。 活動続けていたんですね。 先日「見送りの後で」が出版され、これでしばらく無いかな、と思っていたのでうれしい驚き。 しかも、こんなレペルの高い作品を発表されていた、とは。 さすが、凡百の作家とは一線を画する内容。 重要なテーマを真っ正面から取り組んでいる。 (これが、出来そうで出来ない) でも、これらは90年代発表作品ばかり。 2000年に入ってからは、どうされているのだろう? 非常に気になる。 学術書「女性学・男性学 ジェンダー論入門 」を共著されているようだけど。 PS 90年代にヘルスワーク協会、というところから樹村みのり選集4巻が発売されたことがある。 (それにしても『ヘルスワーク協会』なんて聞いたことがない!) 現在絶版入手不可能だが、なかなかよい作品を選んでいる。 以下の4冊。 『女性編』・・・海辺のカイン 『少女編』・・・母親の娘たち 『子ども編』・・・悪い子 『菜の花畑編』・・・菜の花畑のむこうとこちら 特に、『女性編』は過去に単行本化されていない4作品が入っており、価値が高い。 「田辺聖子の人生あまから川柳」集英社新書
昔よく読んだ、特に学生時代はよく読んだ。 特に好きなのは「私の大阪八景」「文車日記」「おせいさんの落語」「長風呂シリーズ」 さて、本作品は川柳アンソロジー。 いくつか、気に入った川柳を抜粋する。 「雀あやまに雪乗せて晴れ歩き」 「悪い事と知ったか猫もふり返り」 「酔っぱらひ真理を一ついってのけ」 「かしこい事をすぐに言いたくなる阿呆」 「招き猫静かな悋気聞いてゐる」 「猫抱いて女冷たい返事する」 「誰がいうてましたと女立ち上がり」 「ちりぢりに友は大人となりにけり」 「年というものは畳の上で転け」 「泣き言を並べつくして夫婦ねる」 特に、最後の作品は意味深く感じる。 なかなか泣き言って言えない・・・歳をとるほど。 でも、夫婦だと言えるんでしょうね。 私のような独身者には感慨深いものがある。 「不成仏霊童女」花輪和一(ぶんか社)
これぞ花輪ワールド、である。 ペンタッチがすばらしい。 平安末期から鎌倉時代の雰囲気が出ている。 それにしても、花輪作品のファンは少なからずいる、と思われるが、 すぐに絶版になるのは困ったものだ。 ところで今回、あの小林源文氏と花輪氏が親しい間柄であることが判明した。 小林源文氏は知ってのとおり、ミリタリー劇画の第一人者。(マニアック!) 同じマニアックな世界どうしで相通ずるものがあるのだろう。 PS 豆知識として、『ちびまる子ちゃん』の登場人物「花輪和彦」は、花輪和一からとられたという。 (by ウィキベディア) こういう知識を蒐集するのもマニアの悦び。 「藤子・F・不二雄SF短編集」(上・下)小学館
ブラックな作品は、どちらかというとももう1人の藤子 不二雄と思っていたけど。 |
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2009年4月12日 今年度大宅壮一賞が発表された。 文藝春秋|各賞紹介|大宅賞 過去の一覧表を見ると私の読んでいない作品がいっぱい。 体系だって読んでいないのが私の弱点。(行き当たりばったり脈絡無し) 優れていて、なお面白い作品が多いのが大宅壮一賞受賞作品。 基本図書として、少しずつ読んでみようか、と思ったりする。 【参考】 大宅賞受賞者一覧 さて、話は変わる。 この2週間かけて、「アリソンとリリア」シリーズを読んだ。 (私が読むのは、こんな軽い作品ばかり) アリソン 1 アリソン 2 真昼の夜の夢 アリソン 3 上 ルトニを車窓から アリソン 3 下 陰謀という名の列車 リリアとトレイズ 1 そして二人は旅行に行った 上 リリアとトレイズ 2 そして二人は旅行に行った 下 リリアとトレイズ 3 イクストーヴァの一番長い日 上 リリアとトレイズ 4 イクストーヴァの一番長い日 下 リリアとトレイズ 5 私の王子様 上 リリアとトレイズ 6 私の王子様 下 このようなファンタジー(架空世界を構築したファンタジー)はいろいろある。 有名どころでは、「指輪物語」や「ナルニア国」のシリーズ。 日本にもある。 どちらかと言うと、ライトノヴェル系が中心。 茅田砂胡さん「デルフィニア戦記」シリーズ(少しものたりない) 須賀しのぶさん「流血女神伝」シリーズ(おもしろい) 小野 不由美さん「十二国記」(イマイチ) 宮部みゆきさん「ブレイブ・ストーリー」(もひとつ) 今回の「アリソンとリリア」シリーズ、割とおもしろかった。 (須賀しのぶさん「流血女神伝」より落ちるけど) ・・・以上、簡単なコメントで申し訳ない。 単なる「趣味」の問題だから気にしないで。 小野不由美さん「十二国記」シリーズファンは多いのに・・・。 (私の読書の感性と趣味を疑われそうだけど、しかたない) 宮部みゆきファンに至っては、そのブランド名で初版何万部も売れているのに。 (恨まれそう・・・夜道を歩けないかも・・・ただし、宮部みゆきさんのミステリや江戸モノはおもしろい) でも、しかたない・・・「趣味」の問題なので。 ところで、荻原規子さんの「西の善き魔女」シリーズは、なぜコメントしないのか? もちろん「別格」だから。 (私の「趣味」ど真ん中) |
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2009年4月5日 NHK最初のアニメシリーズは「未来少年コナン」。 1978年のことである。 当時「保守的なNHKがアニメを放送するのか!」、と驚いた覚えがある。 私はその頃から、テレビより読書重視だったので、テレビはあまり見なかった。 それにもかかわらず、「未来少年コナン」は毎週欠かさず視た。 動きがすばらしかったから。 いったい誰が創っているんだろう?聞いたことがない監督だけど・・・、と思った。 (今から思えばこれが宮崎駿監督のデビューにして原点) その後、『宮崎駿』という名前は要チェックだ、と考えた。 だから、新聞紙上で「カリオストロの城」が広告されたとき、すかさず映画館に足を運んだ。 その後、「ナウシカ」「ラピュタ」と続き、世間でも知られるようになった。 「トトロ」あたりからマニアだけじゃなく、「家族で観る宮崎アニメ」、っていう路線が確定されたように思う。 (映画館でも子どもが増えてきた、世間の評価も高まり、受賞して「権威」も得た) 「魔女の宅急便」あたりから興行的にも成功してきた、と思う。 ストーリーが分かりやすかったし。(「ナウシカ」よりずっと分かりやすい) 時代は過ぎて2009年。 今、NHKアニメはいったい何本あるんだ?!、ってくらい増えた。(参考→NHKアニメワールド) 当時「未来少年コナン」は視聴率が低かったらしい。 レベルの高さ、実際のおもしろさ、世間の評価は異なる、って見本だ。 (昨日終了した「アリソンとリリア」はどうだったんだろう?) さて、(NHKじゃないけど)まもなく「東のエデン」が始まる。 キャラクターデザイン・羽海野チカさん、とのこと。 ちょっと気になる。(製作・プロダクションIGだし) さて、今日は2冊紹介。 「完全恋愛」牧薩次(マガジンハウス) 「学院のおもちゃ」今野緒雪(集英社) 「完全恋愛」牧薩次(マガジンハウス)
だから、超ベテランである。 文章が巧いはずだ。 でも、何かもの足りない。 (このエンディングも、趣味にあらず) 「このミス」3位にもかかわらず・・・。 2005年9月出版の「沖縄軽便鉄道は死せず」と比べてしまう。 こちらは、「このミス」のランクにも入らず、話題にもならなかった。 でも、すごくおもしろかった。 いったい世間(読書界&ミステリ界)はどうなっているのか? だから、点を辛くしてしまった。(スマン!) 「学院のおもちゃ」今野緒雪(集英社)
シリーズ2巻目。 今回の作品を読むにあたり、前作も読み返した。 前巻のエピソードと重なる。 今回は祐麒の視点から描かれる。(ただし、一人称ではない) さらに、「マリみて」のエピソードとも微妙に重なる。 このあたり、ファンにはたまらない。 (新たな展開がなかったので、点数辛めにした) 【参考】 「お釈迦様もみてる 紅か白か」発売! アキバ総研(秋葉原総合研究所) |
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2009年3月29日 先日の強風と雨で木蓮は葉っぱだけになった。 その代わり、桜のつぼみがほころび始めている。 春を感じる今日この頃・・・でも、花粉は続く。 さて、テレビ番組で私の1冊 日本の100冊、ってのがある。 (私は一度も見たことがないけど) ネットサイトを見る限りでは、いろいろ参考になる。 さて、今週は下記3冊紹介。 「悪いことはしていない」永井するみ(毎日新聞社) 「疑心」今野敏(新潮社) 「テレプシコーラ・第二部」(2)山岸凉子(メディアファクトリー) 「悪いことはしていない」永井するみ(毎日新聞社)
![]() おもしろかった! 永井するみ作品最新刊、それも久々のオフィスミステリ。 初期の頃、「ランチタイムブルー」「歪んだ匣」のような優れたオフィスミステリを書かれていた。 でも、最近はずっとご無沙汰状態だったので、うれしい。 ヒロインが、あの「カカオ80%」シリーズの三浦凪の成長した姿と重なる。 でも、こちらのヒロインの方が少し天然っぽい。 中編が2作。 「ピスタチオ・グリーン」 「デビル・ブラック」 どちらも主要登場人物が共通。 特に、穂波と亜衣、2人の友情関係が重要なテーマ。 もしかして、これもシリーズ化されてりして。 期待してしまう。 PS 今後の2人が気になる。 「友情」が進展するのか? 「疑心」今野敏(新潮社)
![]() オビの文句は下記のとおり・・・ 訪日する米大統領がテロの標的に! 空港封鎖を主張するシークレットサービス、 美貌の女性警察キャリア、 単独捜査を強行する所轄刑事・・・。 方面警備部長・竜崎の心は揺れ動く。 (以上、転載終了) やはり、おもしろい。一気読み。 今回の重要キャラは女性キャリア。 今まで、不動心で合理思考だった竜崎が揺れ動く。 その心理が見物。 「テレプシコーラ・第二部」(2)山岸凉子(メディアファクトリー)
雑誌段階で何度も読んでいるが、それでもおもしろい。 小さな山場に一喜一憂する。 伏線があるので、今後のストーリー展開を予想している。 いったい六花はスカラシップを手にするのか? 【参考】 【テレプシコーラ覚書】(単行本編) |
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2009年3月22日 この3週間ほど、拳法小説を読んでいる。 けっこうおもしろい。 今野敏氏による下記のシリーズ。
例えば・・・(以下、転載) 「忍法というのは、山伏の修験道から生まれたといわれている」 「古来、日本には山岳信仰というのがあってな・・・。山を神聖なものと考えるのだ。 役小角(えんのおづね)が始めたといわれる修験道は、古神道に流れをくんだ山岳信仰のひとつだ。 修験道の修行者を山伏と呼ぶが、山伏は杖術を中心とする独自の兵法を編み出した。 やがて、この修験道は、密教と結びつき、山伏たちは、自分たちの兵法のなかに、密教の手法を取り入れた。 さらに、山伏は、安倍晴明が集大成した陰陽道を吸収した。こうして山伏兵法は発展してきた」 「オンミョウドウ・・・?」 「易学を基本とする修法だ。こうした山伏兵法は、奈良・平安といった時代を通じて僧兵を生んだ。 山伏は、密教化した寺院に入り山伏房を作った。 これが、下級貴族や地方の豪族の子どもたちに山伏兵法を伝え、やがて武士を発生させるきっかけとなった。 平家や源氏という武士が身につけていたのは山伏兵法だった」 (以上、転載終了) どうです? さて本日は、上記・拳法小説以外で、下記3冊紹介。 「笑う招き猫」山本幸久(集英社文庫) 「幸福ロケット」山本幸久(ポプラ社) 「もしかして時代劇」宮本昌孝(ハヤカワ文庫) 「笑う招き猫」山本幸久(集英社文庫)
![]() とにかく、おもしろい。 ふたりのキャラが楽しい。 特に、ストーリーの中で、この2人、特にアカコが即興で歌を歌う。 それが愉快、愉快! ・・・そして泣かせる。 読み終わった後は、温かくなっている。 「幸福ロケット」山本幸久(ポプラ社)
![]() 作品の中で、いくつもSF小説が紹介される。 登場人物(小学生)に「ウルフガイ」全巻読ませている・・・いいんだろうか? 「もしかして時代劇」宮本昌孝(ハヤカワ文庫)
(この頃は、まだ大家ではなかった) でも、歴史の知識・蘊蓄はハンパじゃない。 しっかりしているから、ハメを外せる。 私もしっかり笑ってしまった。 (特に、出雲の阿国の舞台シーン・・・なぜチャチャにこだわる!) |
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2009年3月16日 「黒百合」多島斗志之(東京創元社) 「はなうた日和」山本幸久(集英社文庫) 「そこをなんとか」(2)麻生みこと(白泉社) 「プリーズ、ジーヴス」(1)勝田文(白泉社) 「黒百合」多島斗志之(東京創元社)
![]() どうしても「離愁」と比べてしまう。 「離愁」の方がおもしろい。(「離愁」完成度が高すぎ!) それと比較すると、「ちょっと・・・」、って。 でも、それにもかかわらず読む価値はある。 レベルは高い。 ミステリ部分は、かえって邪魔な感じ。 純粋に文芸作品として楽しんだ方が良い・・・何となくそう思う。 PS この作品って・・・『保塁岩』のあたりが舞台なのだ! それだけで、興味津々惹きつけられる。 昔はこうだったのか、ふむふむ、って読んだ。 「はなうた日和」山本幸久(集英社文庫)
日常の切り取り方がみごと。 それぞれの短編に、ゆるいリンクがあるのも楽しい。 キャラでは、「千倉さん」が好み。 「そこをなんとか」(2)麻生みこと(白泉社)
資料もこなれている。 交通裁判の#7、#8がいい。 被害者、加害者から多面的に描き最後のシーンの落とし方もいい。 2巻目の前に、1巻目を読み返したけど、1回目読んだときよりおもしろく感じた。 「プリーズ、ジーヴス」(1)勝田文(白泉社)
(以下、転載) ウッドハウス大好き! 古き良きイギリスのぶっとんだコメディ。 勝田先生のかわいいお洒落な絵になって、楽しさ満点です。 (以上、転載終了) 途中挿入の翻訳者・森村たまきさんの「豆知識」も楽しい。 あとがきを兼ねた「イギリス訪問記」もgood! (でも、読者を選ぶでしょうね) ある程度「大人」で「余裕」がないと、楽しめないでしょうね。 PS このところ、勝田文さん、原作モノが多いですね。 (別に、悪くはないけど・・・) でも、「かわたれの街」「あのこにもらった音楽」みたいなのを、また描いて欲しいなぁ。 |
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2009年3月8日 花粉等の要因で、クライミングのモチが上がらず。 その分、読書量は増えた。 こちらを立てれば、あちらが立たず。 モチが上がらない時はムリに練習しない方が良い。 ケガや故障のもとになる。 本日は、下記の5冊紹介。 「果断」今野敏(新潮社) 「私という病」中村うさぎ(新潮文庫) 「逃亡くそたわけ」絲山秋子(講談社文庫) 「ママの狙撃銃」荻原浩(双葉社) 「恋する後宮」松田志乃ぶ(集英社) 「果断」今野敏(新潮社)
(1)より完成度高いかも、ストーリー遜色なし。 面白さベクトル減少せず。 「私という病」中村うさぎ(新潮文庫)
東電OL事件に通じるものがある。 予備軍は意外と多いかも。 それが恐ろしい。 「逃亡くそたわけ」絲山秋子(講談社文庫)
桃太郎が鬼退治に行ったのは侵略戦争だ、と。 鬼は何も悪いことをしていないのに、鬼が島まで出向いて、鬼の宝を奪ったから。 旧・日本軍の自己正当化に似ている。 当時の国民は、アメリカ・イギリスを鬼畜米英、と教えられた。 「ママの狙撃銃」荻原浩(双葉社)
「恋する後宮」松田志乃ぶ(集英社)
やはり面白い。 読み返しに耐える内容と面白さ。 さて、今回のパート(3)はどうだろうか? 前2作比べてミステリ色は薄くなった。 一気読みのベクトルは減ったけど、その分、平安朝マニア度が高まり、深みが出たように感じる。 ますます、楽しい第三弾。 このままずっと続いて欲しい。 |
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2009年3月1日 「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」を読み返した。 (先日、「石の花」を読んだら、再読したくなったのだ) ![]() やはりおもしろい。 この年齢まで、それなりの読書量を消化しているが、おもしろさトップクラス。 感情と魂を揺さぶられる。 文章は平易だが内容は重い。 この作品の唯一の弱点はページ300弱しかないこと。 (もっと分厚かったらいいのに) さらに悲しいのが、著者が故人であること。 長生きして欲しかった。 さて、今週は下記2冊紹介。 「隠蔽捜査」今野敏(新潮文庫) 「サッカーボーイズ」はらだみずき(角川文庫) 「隠蔽捜査」今野敏(新潮文庫) ![]()
それとも今野敏作品だから? 当時評判になっていたのは知っていたけど、 警察小説は私の守備範囲では無いので、避けていた。 でも、たまたま読んでみたい気分になった。 さすが、評判どおり。 主人公はエリート官僚で、イヤなヤツ、って感じで登場するが、 途中からどんどんかっこよく見えてくる。 (見事な構成だ) 家族小説としても読める。 オススメ。 「サッカーボーイズ」はらだみずき(角川文庫) ![]()
意外とサッカーを描いた小説は少ない。 11人を文章で描き分けるだけで大変。 でも、なかなかの力作。 良くできていて、楽しめた。 続編もあるようだし。 |
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2009年2月22日 「石の花」(全5巻)坂口尚(講談社) 「奥様はニューヨーカー」岡田光世(幻冬舎文庫) 「チームふたり」吉野万理子(学研) 「石の花」(全5巻)坂口尚(講談社)
![]() かつて米原万里さんが推薦されていたので、読んでみた。 複雑なユーゴスラビアの歴史を見事に描いている、というような内容で褒めておられた。 実際読んでみて納得。 確かにすごい、すごすぎる! 改めて、日本マンガ界の奥深さを感じた。 クロアチア人とセルビア人の対立。 ウスタシチェトニクの凄惨な争い。 パルチザンの台頭とドイツ軍への抵抗。 五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字・・・非常に複雑な国である。 よくぞユーゴスラビアを舞台にした! 絵もすごいし、知識もすごい。 もともと虫プロの方である。 私は手塚系のマンガは趣味ではないので、あまり読まない。 でも、この「石の花」は見事、と思う。 ユーゴスラビアを舞台に長編を描く、大胆さ! 俯瞰図や街の風景描写がすばらしい。 「奥様はニューヨーカー」岡田光世(幻冬舎文庫)
![]() 研究社上下2冊のロングセラーが幻冬舎にて文庫本化された。 慣用表現の嵐、である。 これは知らないと、どうしようもない。 例えば、男性が女性に・・・ Hey, pumpkin! と言えばどう答える? なぜ、私がカボチャなのか?、と怒ってはいけない。 かわいい人、いとしい人、って意味らしい。 また、JAPとは日本人の蔑称ではない。 jewish American Princess、の略・・・つまり甘やかされたユダヤ人娘のこと。 少し、知識が増えたかも? 「チームふたり」吉野万理子(学研)
![]() スポーツ小説は多いけれど、卓球は珍しい。 卓球のダブルスは交互に打たなければならない・・・知らなかった。 クラブ内の対立、先輩と後輩、家族の理解。 けっこう盛りだくさんで楽しめる。 |
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2009年2月17日 スーパーのお菓子コーナーに立ち寄った。 バレンタイン売れ残りチョコレートをチェック。 安売りしていたら買いだめしたい。 (もちろん自分で食べるため) 残念ながら、購買意欲をそそるもの無し。 (がっかり) 代わりに、酒を買って帰る。 さて、今日は2冊紹介。
「あした、旅人の木の下で」松村栄子(角川書店)
![]() シンガポール駐在員の妻たち。 優雅にしてアンニュイな日々。 一度こんな日常を送ってみたい。 うらやましい・・・でも、退屈。 「女の子の食卓」(5)志村志保子(集英社)
![]() 前回コメントで述べたように・・・ 現代の児童文学でも、このレベルに達している作品は少ない、と書いたが、 今回も同様に感じた。 さて、今回の(個人的趣味)ベスト3は・・・ 「お姉ちゃんの好きなフルーツサンド」 「苦くなったマーマレード」 「学校帰りのむらたやの焼きそば」 次点「もっと食べたいスモア」 すべてを薦めたい気分。 また、付属の短編「ピアノピラニア」も、すごい。 ここまで、書いていいの?、って感じ。 女の子の欲望と打算を見事に描いている。 すばらしい! |
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2009年2月11日 「亡き王女のためのパヴァーヌ」MIDIをリンクしました。 聴いてみて。 →MIDI亡き王女のためのパヴァーヌ 【参考リンク】 マルガリータ・テレサ・デ・エスパーニャ - Wikipedia マルガリータ王女の肖像 Portrait of the Infanta Margarita |
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2009年2月11日 日曜日、兵庫県立美術館に行ってきた。 (1日がかりだったので、クライミングは休み) 【ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の 秘密展】 私は美術愛好家ではないが、中野京子さんの記念講演会があった。 (これはファンとして、ぜひ聴きたい) テーマは、「ベラスケスのマルガリータ王女−政略結婚に儚く散った生涯」。 (前売り券も購入して楽しみにしていた) 満足、満足、って感じ。 ところで、講演会で「えっ」、と思ったことがある。 かつて17世紀頃、女性は胸が小さいのが流行だった、と言う。 当時ファッションも出来る限り胸を小さく見せるような服装だったようだ。 (日本のロリのハシリのようなもの?・・・ちょっと違うか?) う〜ん、太古の昔から(少なくとも西洋では)女性は巨乳が人気、と思ってたけど。 (当時、胸が大きい方は肩身が狭かったことでしょうね) 流行、っていろいろあるんですねぇ。 (今日本で、スリム&小顔が流行っているようなものか?) もし、今が平安時代なら、現在芸能界ゴミ箱行き、でしょう。 【本日のお言葉】 『時代と共に価値観は変わり、美意識も変化する』 PS 絵画を見ても分かるが、西洋の少女は非常に可愛らしい。 でも、大人になると・・・・? (なぜ、妖精→妖怪になるのか?) 日本人女性は、歳をとっても(それなりに)保っているのに。 不思議だ。 (私が日本人だから、単に身びいき?) (リリアン・ギッシュやベティ・デイヴィスは例外、特にリリアン・ギッシュは老いてもかわいらしい) 【参考】 マルガリータ講演in神戸のご報告 「中野京子作品」 PS2 250人入るホールに500人以上の方が詰めかけたようだ。 予想以上の大人気。 私は1時間半前から(昼食も摂らず)並んで待っていたので、良い席で聴くことが出来た。 朝早く出かけた甲斐があった、というものだ。 PS3 ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ 」、ってベラスケスが描いたマルガリータ王女の事だったのね。 知らなかった! |
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2009年2月7日 本日は2冊紹介。 「チャンネルはそのまま!」佐々木倫子(小学館) 「僕たちの戦争」荻原浩(双葉社) 「チャンネルはそのまま!」佐々木倫子(小学館)
![]() いや〜、笑った、笑った! 楽しめた。 さすが佐々木作品、レベルが高い。 過去の作品の舞台は・・・ 大学の獣医学部・・・動物のお医者さん 病院・・・おたんこナース レストラン・・・Heaven? 今回はテレビ局が舞台だ! 佐々木作品の特徴は主人公に恋愛沙汰が起こらない、ってこと。 これは作品全体にも影響を及ぼし、日本っぽくない乾いた笑いを体験できる。 非常に好み、である。 「僕たちの戦争」荻原浩(双葉社)
![]() 今回も手抜きで、ネット上の紹介を転載する。(スマン) 2001年9月12日世界貿易センタービルに旅客機が突っ込んだ翌朝も尾島健太(19)は、 テレビの臨時ニュースや新聞には目もくれず、一人サーフィンに出かけた。 バイトをクビになりガールフレンドのミナミとも喧嘩中で会えないからだ。 しかし、大波に呑まれた健太が目を覚ますと、そこは1944年だった! 1944年9月12日霞ヶ浦飛行場から飛び立った石庭吾一(19)は、「海の若鷲」に憧れる飛行術練習生だ。 しかし、操縦を誤って海に墜落してしまう。蘇生した吾一が目覚めたのは、なんと2001年だった…。 根拠なしポジティブのフリーターとバリバリの特攻隊員が入れ替わり―どうなる、ニッポン!? 愛と青春のタイムスリップ・ウォー。 以上、いかがでしょうか? もう読んだつもりになった、って? そう言わずに読んでみて、面白いし、考えさせられるし。 昭和19年から来た吾一が現代日本に対するコメントが興味深い。 それにしてもこの結末は! |
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2009年1月31日 本屋大賞について、リンクしておく。 いくつか気になる作品がある。 →「本屋大賞」オフィシャルサイト →2009年本屋大賞! ノミネート作品発表 なお、過去の本屋大賞については・・・ →これまでの本屋大賞 | 本屋大賞 さらに、書評についていくつかサイトをリンクしておく。 書評と新刊情報 - 本が好き!書評 - Yahoo!カテゴリe-hon 本/新聞・TVで話題の本書評 - Infoseek みんなのお気に入りさて、今回は5冊紹介。 先週、タイトルのみで申し訳なかった。 (このところ調べ物があって、書いているヒマがないし、読めてもいない・・・あぁ、ストレスが溜まる) 「ある日、アヒルバス」山本幸久(実業之日本社) 「あぽやん」新野剛志(文藝春秋) 「見た目診断」おおたうに(産業編集センター) 「犬を飼う」谷口ジロー(小学館) 「遥かな町へ」(上・下)谷口ジロー(小学館) 「ある日、アヒルバス」山本幸久
![]() 山本幸久さんの最新作。 バスガイド物語。 手抜きをして、ネット上の紹介文を下記に転載する。 東京生まれの東京育ち(ただし八王子)の高松秀子(デコ)はアヒルバスに入社して五年の観光バスガイド。 一筋縄ではいかないわがままなツアー客たちに振り回され、新人研修の指導員になったものの教育は遅々として進まない。 そんな中、同期の中森亜紀にアヒルバスの「革命」を持ちかけられるが… 若きバスガイドの奮闘と成長を、温かな目線と軽妙なユーモアで描くお仕事&青春小説の傑作。 以上、転載終了。 いかがでしょうか? おもしろそうでしょう? 実際、おもしろかったし。 山本幸久さんの文章はあっさりしていて、くどくないのがいい。 「あぽやん」新野剛志(文藝春秋)
![]() 新野剛志さんの新刊、と言っても昨年の作品だけど。 再び、手抜きしてネット上の紹介文を転載する。 遠藤慶太は29歳。大航ツーリストの企画課から成田空港支所に「飛ばされて」きた。 遠藤は「ぜったいあぽやんにはならないぞ、本社に返り咲くぞ」と心に誓うが―。 再入国許可のない日系ブラジル人少女をめぐる駆け引き、 絶対に出発しようとしない老婦人の秘密、 予約が消えて旅立てない新婚夫婦をどうするか? 空港で起こる旅券やチケットのトラブルを解決し、 旅客を笑顔で送り出す「あぽやん」たちのカウンター越しの活躍を描く。 以上、転載終了。 空港を舞台にした小説が読みたかった。 そこでどんなドラマがあるんだろう、と興味津々。 どちらかというと、知識としての興味。 内容はさほど期待しなかったのだが、予想以上に面白かった。 これはオススメ。 登場人物に感情移入しまくりで読んだ。 ドラマにしてもヒットするかも。 「見た目診断」おおたうに(産業編集センター)
![]() 外見から、その人の本質が見えてくる。 実に興味深い。 イラストレーターおおたうにさんの作品。 手元に一冊持っていてもいいかも。 職業別、年代別にもファッションが描かれていて面白い。 【参考】 おおたうにオフィシャルホームページ Diary 旧おおたうにオフィシャルブログ 「遥かな町へ」(上・下)谷口ジロー(小学館)
でも、良くできている。 48歳の男が14歳に戻る話。 記憶はそのままに。 いわゆるタイムスリップもの。 この手の話はいっぱいあるけど、読んでしまう。 シチュエーションだけでもベクトルがあるから。 しかも、あの谷口ジロー氏が描いたとなると、読むしかないでしょう。 「犬を飼う」谷口ジロー(小学館)
飼い犬の晩年の話。 泣けるし、奥が深い内容。 犬の話でありながら、人間の老後にも通じる。 これが、谷口ジロー氏の精密な描画で表現される。 PS 「ものがたり12か月」を読んだ。 児童書アンソロジー。 荻原規子さんの短編が掲載されている。 あの「これは王国のかぎ」「樹上のゆりかご」スピンオフ。 ファンとしては興味深いものがある。 【参考】 →ものがたり12か月 |
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2009年1月26日 珍しく音楽ネタ。 最近、エニグマの曲をよく聴いている。 グレゴリオ聖歌にダンスビートが重なり、合いの手に女性のあえぎ声が。 つま先立ちのような絶妙なバランスで音楽が成り立っている。 感心する。 (90年代アタマにヒットしたファーストアルバムに収録) Enigma- Sadeness Enigma - Mea culpa (Catholic version) 読書については以下のとおりだけど、コメントは後ほど。 (いろいろ忙しくて) 「ある日、アヒルバス」 「あぽやん」 「犬を飼う」 「遥かな町へ」上下 |
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2009年1月18日 第140回直木賞・芥川賞が決まりましたね。 参考までにリンクしておきます。 芥川賞に津村氏 直木賞は天童氏・山本氏 さて、今日は2冊紹介。 「雪の断章」佐々木丸美(ブッキング) 「街でうわさの天狗の子」岩本ナオ(小学館) 「雪の断章」佐々木丸美(ブッキング)
![]() ネット上の紹介は下記のとおり。 伝説の作家・佐々木丸美の作品集「佐々木丸美コレクション」第1弾! 天涯孤独の少女・飛鳥は雪降る札幌で青年・祐也と出会い、彼に育てられる。 2人の運命と苦しいほどの愛を描いた珠玉の名作がついに復刊! カバーイラストは味戸ケイコ氏による描き下ろし。 エッセイ「雪の街への憧憬」と著者年譜を巻末に特別収録。 以上、転載終了。 荻原規子さんがブログで紹介されていたので、読んでみた。 インパクトのある内容だ。 悪く言えば、乙女の妄想全開、って感じ。 それも、粘着質の。 確かに面白いんだけど、一気に読むのがしんどかった。 ヒロインの毒気にやられた。 PS このヒロイン、私の好みにあらず。 ヒロインの友だちの順子の方が好感度が高い。 どう思う? 「街でうわさの天狗の子」(3)岩本ナオ(小学館)
![]() 早くも3巻目。 読んでいてホッとする。 良い意味で緊張感がない。 ゆるんでる感じがたまらなく良い。 「雪の断章」と比べるせいだろうか? |
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2009年1月12日 2007年1月号「ダ・ヴィンチ」P246『仕事に前向きになれる、サラリーマン・OL物語は?』、ってのがある。 小説で紹介されているのは・・・ 「神様から一言」荻原浩 「ガール」奥田英朗 「フライ、ダディ、フライ」金城一紀 「カイシャデイズ」山本幸久 「ワーキングガール・ウォーズ」柴田よしき ・・・以上、いかがでしょうか? なかなか良いところを紹介している。 (これ以外にも、近藤史恵さん、平安寿子さんとかどう?) さて、気になったのは山本幸久さんと、荻原浩さん。 今まで読んだことがないので読みたくなった。 「カイシャデイズ」山本幸久
![]() 「神様から一言」荻原浩
![]() 上記2作は甲乙つけがたく面白かった。 でも、どちらかというと山本幸久さんの方が好み。 ストーリーとしては「神様から一言」の方が起承転結があり盛り上がる。 どちらもオススメ、読めば元気になる。 もし、他の作品・・・ 「ガール」奥田英朗 「フライ、ダディ、フライ」金城一紀 「ワーキングガール・ウォーズ」柴田よしき 以上、3作品を読んでいないなら、これらもオススメ。 特に「ガール」は女性心理のツボを押さえている、男性作家とは思えないくらい。 【自分の為の覚書】 @AU契約変更(ダブル定額ライト▲1050) A図書館、6冊借り B××チャージ C××前売券購入 Dtsutaya更新、CD&DVD借り Eメモリースティック価格チェック FDVD予約のこと |
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2009年1月10日 あけましておめでとうございます。 中国から帰国して余韻に浸っています。 何か書こうと思いながら、仕事から帰ってコテンと寝てしまう。 疲れが溜まってるんでしょうね。 とりあえず、年末年始に読んだ本だけ紹介しておきます。 「米原万里の愛の法則」米原万里(集英社新書) 「北京大学てなもんや留学記」谷崎光(文春文庫) 「ボクの音楽武者修行」小澤征爾(新潮文庫) 「大奥」(4)よしながふみ(白泉社) 「ひまわりっ」(9)東村アキコ(講談社) 「ハローグッパイ」今野緒雪(集英社) 「変愛小説集」岸本佐知子訳(講談社) ・・・内容は後ほど。 ところで、「この人も好きかも!」、ってサイトがある。 好きな作家や漫画家を入力すると関連した「この人も好きなんじゃない?」、ってのを薦めてくれる。 ためしに「荻原規子」さんを入力すると下記の結果に。 う〜ん、微妙に違うような。 でも、まっ、いっか。 Ex荻原規子 が好きならこの人も好きかも! 話は変わる。 「ユリイカ」1月号は米原万里さんの特集。 先日「愛の法則」を読んだばかりなので、気になる。 (書店で取り寄せ中) 若くして夭逝されたのが残念で悲しい。 『ユリイカ 2009年1月号』 ![]() 米原万里さんを偲んでいくつかリンクしておく。 ・ 米原万里 - Wikipedia |
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