「生活と覚書2008(文化・読書編)」   
【ぐーたら文化生活】

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2008年12月24日(水曜)

先日21日のTV『情熱大陸』がよかった。
小学校音楽教諭・桜井さん登場。
(小学校の先生、ってのは番組初めてかも?)
以下、番組紹介のページを転載する。

 長野県にある上田市立西内小学校。
全校児童わずか73人の山あいにある小さな学校に、5、6年生32人全員参加の金管バンドがある。
5年生から金管楽器を手にする初心者の子どもたちにもかかわらず、
「全日本小学校バンドフェスティバル」ではニ度の最高賞を受賞し、全国でも知られている。
この金管バンドを指導しているのが桜井。
思うように音が出ない子どもたちに対して、必ず出来るという言葉をかけ続け、絶対に妥協をしない。
人前で演奏するにも下を向いていた子どもたちが、次第に自分たちの演奏を楽しむまでになっていく。
春、新五年生が加わり新たな金管バンドがスタート。
秋に行われる全国大会を目指し、子どもたちの才能を音楽で引き出そうとする桜井と、
泣き笑いしながら成長する32人の子どもたちの姿を追った。


以上、転載終了。
いかがですか?
才能がある子も、ない子も、共に上達してハーモニーを創っていくすばらしさ。
番組で、特に印象に残った言葉は・・・

『100%練習をこなした者だけが、次のステップに進める』

言葉は正確じゃないかもしれないが、このようなことを言っておられた。
納得のいく練習をした者が上達していくのだ。
(でも、ハンパな練習ではなかったけど・・・反復1万回、とか)
最後の言葉も印象に残った・・・

『音楽は競争ではない』
音楽を楽しいと感じて欲しい、と。
う〜ん、クライミングに通じるモノがある。

さて、前置きが長くなった。
今年の更新もこれで最後にしよう、と思う。
自分なりのベスト作品をざっと書き出した。
下記のとおり。

【フィクション】部門
2008年度出版の作品から選ぶと・・・
「RDG レッドデータガール」荻原規子
「レッド・マスカラの秋」永井するみ(理論社)
「平成大家族」中島京子
「リセット」垣谷美雨
「ラン」森絵都(理論社)
「義弟」永井するみ
「武士道セブンティーン」誉田哲也
「東京島」桐野夏生(新潮社)

・・・と、こんな感じかな。
私は新刊ばかりを読んでるわけではないので、
下記に、2008年以前に出版された作品の中で、
今年読んで良かった作品を書き出した。

「離愁」多島斗志之 (角川文庫)
「雨にもまけず粗茶一服」松村英子
「白楼夢−海峡植民地にて」多島斗志之
「武士道シックスティーン」誉田哲也
「ベルカ、吠えないのか?」古川日出男(
「吉原手引草」松井今朝子
「赤朽葉家の伝説」桜庭一樹
「藩校早春賦」宮本昌孝(集英社)
「夏雲あがれ」宮本昌孝

「鴨川ホルモー」万城目学

「夜は短し歩けよ乙女」森見登見彦

「烏金」西條奈加

【ライトノベル】では次の3冊が特に良かった・・・
(もちろん、「マリみて」シリーズは別格)

「ひみつの乳姉妹」松田志乃ぶ
「見習い姫の災難」松田志乃ぶ

「アート少女」花形みつる(ポプラ社)

さらに、【コミック部門】では・・・

「テレプシコーラ・第二部」山岸凉子
「3月のライオン」(1)(2)羽海野チカ
「海街diary2−真昼の月−」吉田秋生
「リアル」(8)井上雄彦
「きのう何食べた?」(2)よしながふみ

「駅から5分」(1)(2)くらもちふさこ
「女の子の食卓」(4)志村志保子(集英社)
「町でうわさの天狗の子」(1)(2)岩本ナオ
「雨無村役場産業課」(1)岩本ナオ(小学館)
「鈴木先生」(5)(6)武富健治
「見送りの後で」樹村みのり
「くらしのいずみ」谷川史子
「聖☆おにいさん」(2)中村光
「少女少年学級団」(1)(2)藤村真理


上記作品以外でも(2008年じゃないけど)・・・
「天然コケッコー」(全14巻)くらもちふさこ
「かわたれの街」勝田文
・・・
これはよかった。

【ノンフィクション】も、いくつか選んでみた。
私は(あまり)ノンフィクションを読まないので、旧い作品も一緒に混ぜて書いた。
2008年以前に出版された作品も多く混じっている。

「怖い絵2」中野京子
「危険な世界史」中野京子
「名画で読み解くハプスブルク家12の物語」中野京子
「若き数学者のアメリカ」藤原正彦

「深夜特急」(全6冊)沢木耕太郎
「どこまでやったらクビになるか」大内伸哉
「科学の扉をノックする」(小川洋子)
「メンデルスゾーンとアンデルセン」中野京子
「恋するヒロイン」中野京子
「フェルメール全点踏破の旅」朽木ゆり子
「サンダカン八番娼館」山崎朋子

「悪いことしたら、どうなるの?」藤井誠二
「悩む力べてるの家の人びと」斉藤道雄

【海外作品】(ほとんど読んでないけど)では・・・
「口は災い」リース・ボウエン
「草花とよばれた少女」シンシア・カドハタ
「きらきら」シンシア・カドハタ
「復讐はお好き?」カール・ハイアセン

【アンソロジー】では・・・
「I LOVE YOU」(祥伝社)
「COLORS」(ホーム社)

「Fragile―こわれもの」(ポプラ社)
「Lost and Found」(ポプラ社

【エッセイ・コラム】では・・・
「ねにもつタイプ」岸本佐和子
「あのころ、先生がいた」伊藤比呂美
「MIYAKO」吉田都
「うわさの神仏」加門七海
「だいじなことはみんなアメリカの小学校に教わった」中島京子
「ツレがウツになりまして。」細川貂々

・・・以上、こんな感じかな。
急いで、ピックアップしたのでモレがあるかも。
来年落ち着いたら、『ダ・ヴィンチ」特集「BOOK OF THE YEAR」のランキングと
私の趣味とのズレ、とかを考えてみたい。
また、このマンガがすごい! 2009年版のランキングについても考えてみたい。

毎年恒例、宝島社『このミステリーがすごい! 2009年』と
文春の2008年ミステリベスト10を参考にして、上位作品をチェックしたい。

では、このへんで今年最後の更新を終了します。
この1年、拙文を読んでいただきありがとうございました。
皆さん、よいお年をお迎えください。
また、来年お会いしましょう。


2008年12月21日(日曜)

忙しくて更新できません。
下記、リンクだけします。
時間があれば、23日(火曜)あらためて更新するかも。
(年賀状も出来ていない・・・困った!)

 
 
 
 
2008年12月15日(月曜)

今年の読書も、読み納めに近づいてきた。
(実質、今回の読書でオワリ、と思われる)
年末業務忙しく、読書どころでなくなってきたのだ。
(年末年始クライミング資料も消化する必要あるし)
また、来年・・・かなぁ。

ただし、購入に関しては・・・
12/24発売予定「大奥」(4)
12/26発売予定「マリみて」(最新刊)
・・・この2冊で終了。

今年の読書総括もしたいけれど、ヒマがない。
来週時間があれば、少し書くかも。
例によって、世間では年間ベスト書籍が選ばれている。
いくつか参考までにリンクする。

【参考】
2008年ベスト10

ビーケーワン2008年、年間ベストセラー発表!


また、ブログででの話題ランキング、ってのもある。
2008年ブログの話題ランキング、1位はあの感動、2位は話題のドラマ最終回
これには、氷室冴子さん訃報もランキングに入っている。
(・・・私もショックだった)

さて、本題に入る。
今週は下記の3冊を紹介。
(実質)今年最後の紹介にふさわしく、いずれも読み応えのある作品。


「一週間のしごと」永嶋恵美(東京創元社)
「藩校早春賦」宮本昌孝(集英社)
「夏雲あがれ」宮本昌孝(集英社)



「一週間のしごと」永嶋恵美(東京創元社)
内容 子どもを拾ったばっかりに・・・青春ミステリ
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★
点数 82点
気分 だんだんシリアスな展開に・・・ハラハラする
オススメ ★★★★

[出版社商品紹介]
猪突猛進型の女子高生が拾ってきたのは人間の子供だった。
善意が招いた大騒動を描いた、展開予想不能、青春ミステリの快作登場。


上記、出版社からの紹介。
この人騒がせな女子高生・菜加がトラブルメーカー。
菜加に振り回されるのが、幼なじみの恭平君。
ストーリーはどんどんシリアスな展開になっていく。
私は、読んでいて怒りまくり、であった。
「このバカ女め!」、と。
(これこそ作者の思う壺、か?)
でも、恭平君は振り回され、ぼやきながらも、菜加が可愛く感じられるようだ。
読後感として、私はずっと菜加に怒りっぱなしだったので、ミステリを楽しむ余裕がなかった。
それが残念。

「藩校早春賦」宮本昌孝(集英社)
「夏雲あがれ」宮本昌孝(集英社)

内容 明朗時代小説
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★☆
点数 94点
気分 時代小説を堪能した
オススメ ★★★★☆

いや〜、よかった。
これは楽しめた、読み応えがあった。
成長小説、人生案内小説としてもgood。
中心となる少年3人、脇を固める大人達も存在感がある。
地方の小藩の経済事情、時代と封建社会、身分社会の矛盾等、
硬くならない程度にうまく描写される。
行きとどいている。
これこそ明朗時代小説!
興味のある方は、私の説明より、下記の説明を読んでみて。

→「藩校早春賦
→「夏雲あがれ

続編の「夏雲あがれ」は、最後の方バタバタして残念。(詰め込みすぎ?)
私の思い描いたエンディングと少しずれた。
熱血ドラマになってしまった。
(それはそれでよかったんだけど)
もっとリリカルにしてほしかった。
(意見は分かれるでしょうね)

***********

【閑話休題】
話は、がらりと変わる。
私はネタを仕入れるため、書評サイトをハシゴしている。
また、小説以外にもマンガ好きなので、そっちもチェックしている。
漫棚通信さんは情報満載で楽しい内容。
先日、面白いことが書いてあった。
以下、シモネタ・R指定なので子どもは読まないように。

あのペイリン候補ポルノDVDが出回っている、らしい。
(もちろんコンピュータ処理した別人か、そっくりさん)
ペイリン候補、ライス国務長官、クリントン夫人、くんずほぐれつ三つどもえ、とのこと。
(う〜ん、濃い・・・ある意味オールスター)
ペイリン候補はメガネっ娘、オタク心を刺激するようだ。
(どなたか購入されたら貸して下さい)

【参考】
ペイリン、ポルノになる


2008年12月7日(日曜)

寒くなってきましたねぇ。
布団から出られない。(と、言いながらイスに座ってこれを打ち込んでるけど)
このところ、立て続けに面白そうな本が出版されている。
でも、時間がない、圧倒的に時間がない。
年末年始で、仕事が忙しいし、クライミング練習も必要だし。
でも、とりあえず本は購入。(今は読めないけど)
例えば・・・
「オリンピックの身代金」(奥田英朗)
「完全恋愛」(牧薩次)
「黒百合」(多島斗志之)
「チャイルド44」(T・R・スミス)
(これ以外にも、購入して読んでいない本が100冊くらいあり)
図書館では、宮本昌孝作品、永嶋恵美作品、おおたうに作品を予約状態。
(口の中が食べ物でいっぱいなのに、さらに食べ物を詰め込んでる感じ)
時間が欲しい、身体が二つ欲しい。
これ以外にも「テンペスト」「告白」も気になる。
年が明けたら、クライミング練習減らして、読書に集中しよう、と思う。
(クライミング、って時間と労力かかりすぎ・・・その割に実り少ないし)
そうしないと、処理しきれない。
今日は以下の3冊紹介。

「レッド・マスカラの秋」永井するみ(理論社)
「雨にもまけず粗茶一服」松村栄子(マガジンハウス)
「鈴木先生」(6)武富健治(双葉社)



「レッド・マスカラの秋」永井するみ(理論社)
内容 「カカオ80%」続編
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 94点
気分 ファン必読
オススメ ★★★★☆

いや〜、待った待った!
あの「三浦凪」が帰ってきた。
ファン必読でしょう。
前回は福祉業界が舞台だったが、
今回はモデル業界、化粧品業界が舞台。
永井するみさんは、このような業界モノがうまいし、得意とする。
「デビューした頃から、働く女性を描くことは、大きなテーマの一つ」、とあとがきにも書かれている。
毎回、その業界の知識が楽しめるのも永井するみ作品の魅力。
もちろん、登場人物もいい感じだし。
前回出演のミリ、紀穂子、雪絵、マスター、ジェイク、凪母、とオールスター。
今回新たな出演・・・すみれ社長、ショップ経営の瀬菜に助けられながら、友人ミリを助ける。
ミステリ要素は前回より低いけど、ストーリー牽引力は大きい。
さっそく手にとって、楽しんでみて。

PS
P148ページに注目。
雪絵が凪に「依頼」するシーンが好き。
あと、凪が招集をかけるP221全員集合のシーン。

PS2
今回少しでも早く読みたい、と出版社に直接購入したが、
12/4発売→12/7到着・・・・遅すぎる!
実は、ガマンできなくて、12/6大型書店に梅田まで買いに行ったのだ。
1日くらい、と思われるかもしれないが、辛抱堪らなかった。
人生折り返し地点が過ぎ、老い先短くなって、気も短くなった。
忍耐力は小さくなり、人間も小さくなった。
・・・そして、手元には同じ本が2冊。(涙)


「雨にもまけず粗茶一服」松村栄子(マガジンハウス)
内容 京都舞台の青春「茶道」ストーリー
一般的面白さ ★★★★★
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 95点
気分 楽しい気分が持続する、にこにこしながら読みすすんだ
オススメ ★★★★★

よかった!
読んでいる間、ずっと楽しかった。
これほど楽しい気分で読める作品は少ない。
作品レベルも高い、上質だ。
このような作品が埋もれて、あまり話題にもならなかったのが不思議。
(単に私が情報をつかんでないだけ?)
ストーリーは「お茶」の家元の息子が家業を継ぐのがイヤで家出するところから始まる。
ひょんなことから、京都へ行くことに。
ところが、居候先がお茶の先生。
にげても追いかけてくる「お茶」の世界。
京都変人キャラクター多数出演。
これはオススメ!

PS
この作品は文庫本にもなった。
ただし、上下2巻・・・どちらが得か?

【参考】
松村英子

松村栄子 - Wikipedia


「鈴木先生」(6)武富健治(双葉社)
内容 現代中学を舞台に、教育を考える
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★☆
点数 91点
気分 鈴木先生が裁判に?!シリーズ6巻目
オススメ ★★★★☆


鈴木先生が彼女を妊娠させたことが、生徒に発覚!
生徒が鈴木先生を裁判にかけることに。
丁々発止のやりとり、これが中学生の発言なのか!?
こんな先生が担任だったら、生徒はうれしい?
それとも、うっとうしい?


2008年11月30日(日曜)

「カカオ80%の夏」の続編が出るらしい、と以前書いた。
いよいよ12月に出版されるらしい。
先日、理論社からのダイレクトメールが届き、新刊案内に書いてあったのだ。
・・・刊行予定12月、と。
タイトル「レッド・マスカラの秋」〜待ち遠しい!
さっそく理論社に直接購入を申し込んだ。
いつもの書店に頼んでもよいのだが、問屋との兼ね合いで、発売日に入手できる可能性が低い。
梅田・大型書店に買いに行ってもよいのだが、仕事の都合で週末になるし。
(ここは、やはり出版社直接購入が無難でしょう)
「レッド・マスカラ」に備えて、「カカオ」を読み返してみた。
・・・やはり、おもしろい!
一気読み。ストーリーはスピード感あるし、登場人物もそれぞれ存在感ある。
続編ますます楽しみ。
さて、今週は4冊紹介。

「I LOVE YOU」(祥伝社)
「COLORS」(ホーム社)
「3月のライオン」(2)羽海野チカ(白泉社)
「きのう何食べた?」(2)よしながふみ(講談社)


「I LOVE YOU」(祥伝社)
内容 男性作家による恋愛アンソロジー
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
点数 87点
気分 つぶぞろい、いずれも平均点以上
オススメ ★★★★☆
●透明ポーラーベア / 伊坂 幸太郎
●魔法のボタン / 石田 衣良
●卒業写真 / 市川 拓司
●百瀬、こっちを向いて / 中田 永一
●突き抜けろ / 中村 航
●Sidewalk Talk / 本多 孝好
読んでいて気がついたのだが、これは男性作家による『恋愛小説アンソロジー』だ。
(タイトルから察しろよ!)
中田永一氏の「百瀬、こっちを向いて」を読みたかっただけなんだけど、他の作品もよかった。
いずれも平均点以上で、つぶぞろい。
読んでソンはない。
個人的おもしろさの順位は・・・
@百瀬、こっちを向いて 
A卒業写真 
B魔法のボタン
C透明ポーラーベア
DSidewalk Talk
E突き抜けろ

さて、男性作家の作品ばかりを集めると、感じるモノがある。
・・・男性作家が非常にロマンチストであること。
・・・男性に都合の良い視点で書かれていること。
・・・男性の理想の女性像が(なんとなく)見えてくること。
読んでいて感じた・・・少女マンガのご都合主義を笑えないぞ!、と。
(以下、イヤミなことを書くけど、許してくれ)
例えば古典的少女マンガ紋切り型ワンパターンをいくつかあげると・・・
@何の取り柄もない少女が学園のあこがれの少年とくっつく話
A外見だけが取り柄の不良少年が、平凡な女主人公にだけ、心を開き、くっつく話
B普通の少女が複数の(かっこいい)少年からいいよられる話
もちろんキメのセリフは、「そのままの君が好きだ!」(ありえね〜、って)
でも、これら少女マンガは最大公約数の読者を「良い気分」にさせてくれる。
きびしい現実を忘れさせてくれる。
この「I LOVE YOU」は少女マンガ男性バージョン。
男性の都合の良い「理想と夢」が語られる。
善き哉。

「COLORS」(ホーム社)
内容 色にまつわるアンソロジー
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
点数 87点
気分 いずれもレベル高い
オススメ ★★★★☆
●黄色い冬 / 藤田 宜永
●空の青さを / 宮下 奈都
●真っ黒星のナイン / 松樹 剛史
●ももいろのおはか / 豊島 ミホ
●緋色の帽子 / 池永 陽
●ターコイズブルーの温もり / 永井 するみ
●金色の涙 / 宮本 昌孝
●銀の匙キラキラ / 水森 サトリ
●さよならの白 / 関口 尚
●ふかみどりどり / 朝倉 かすみ
●色色灰色 / 花村 萬月
どの作品もレベルが高く、甲乙つけがたい。
面白かった。(唯一、花村氏の作品がイマイチだったくらい)
もし、ベスト3を選ぶとしたら・・・
@金色の涙
A真っ黒星のナイン
B緋色の帽子
宮本昌孝氏の作品は短い中にストーリー凝縮され、みごと。(泣けた)
ふだん人情ものを読まないので、よけい感激したのかも。
「金色の涙」が入っている、ってだけでこの本価値有り。
ところで、この作品、「夏雲あがれ」「藩校早春賦」のスピンオフのようだ。
いずれ、チェック予定。

「3月のライオン」(2)羽海野チカ(白泉社)
内容 東京下町が舞台、プロ棋士・零君の成長物語
一般的面白さ ★★★★★
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 97点
気分 ストーリー、登場人物、舞台背景・・・すべてに満足
オススメ ★★★★★

オビの文句は次のとおり・・・
『優しい贈りもの届けます・・・待望の第2巻』
ホント、そのとおり、って感じ。
いいっすねぇ、とても良い感じ。
キャラクター全て、すみずみまで行き届いている。
下町の風景も、空気を感じるくらいすばらしい。
時々、雑誌の段階で立ち読みしているので、だいたい既に読んでいる。
それが残念なところ。
少しずつ読むのが良いか、一気に読むのが良いか?
迷う。

「きのう何食べた?」(2)よしながふみ(講談社)

内容 生活と料理のリンク、主人公は弁護士
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 94点
気分 日常なのか?非日常なのか?
オススメ ★★★★☆

昨年末発売された作品の2巻目。
弁護士の仕事と生活を描いている。
生活は料理が中心に描かれる。
非常に日常的、と思われるだろうが、
この主人公がゲイで、ルームメイトも当然そっちの人。
家族や、職場の人、近所の人、と丁寧に描写されているのが好感。
特に、料理と生活、ストーリーがリンクして展開するのが、よしながさんの味。
2巻目もいい感じだ。


2008年11月24日(月曜)

「科学の扉をノックする」(小川洋子)
「Fragile―こわれもの」(ポプラ社)
「アート少女」花形みつる(ポプラ社)

「ダンスがすんだ」フジモトマサル(新潮社)


「科学の扉をノックする」(小川洋子)
内容 現代科学入門
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
情報・知識 ★★★★☆
点数 85点
気分 興味深い
オススメ ★★★★☆

内容・目次は以下のとおり。
1章 渡部潤一と国立天文台にて―宇宙を知ることは自分を知ること;
2章 堀秀道と鉱物科学研究所にて―鉱物は大地の芸術家;
3章 村上和雄と山の上のホテルにて―命の源“サムシング・グレート”;
4章 古宮聰とスプリングエイトにて―微小な世界を映し出す巨大な目;
5章 竹内郁夫と竹内邸にて―人間味あふれる愛すべき生物、粘菌;
6章 遠藤秀紀と国立科学博物館分館にて―平等に生命をいとおしむ学問“遺体科学”;
7章 続木敏之と甲子園球場にて―肉体と感覚、この矛盾に挑む

いろんな分野の科学者・・・それも碩学と言える方との対談集。
タイトルどおり、科学の扉をノックする入門書。
小川洋子さんが読者の代わりに、いろいろ驚きながら、扉を開けてくれる。
【参考】
科学の扉をノックする 試し読み

「Fragile―こわれもの」ポプラ社
内容 書き下ろしアンソロジー
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
点数 84点
気分 書き下ろしとテーマに価値有り
オススメ ★★★★

先日読んだ「Lost and Found」と同じシリーズ。
面白かった順番は・・・
@「あたしの、ボケのお姫様。」令丈 ヒロ子
A「アート少女」花形 みつる
B「忘れ物」長崎 夏海
C「Fragile―こわれもの」石崎 洋司
D「流星群」石崎 洋司
花形みつる作品を読みたくて読んだのだが、令丈 ヒロ子作品が予想外に面白かった。

「アート少女」花形みつる(ポプラ社)

内容 美術部を舞台にした学園コメディ
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★☆
点数 85点
気分 ポップな感じで楽しめ、美術の知識も得られる
オススメ ★★★★★

先日読んだ「Fragile」に収められていた「アート少女」の続編。
学校長が美術部をつぶしにかかったことから戦いが始まる。
美術部の変人キャラ達が楽しい。
学園コメディの王道作品。
安易に恋愛騒動に走らないのがエライ!

「ダンスがすんだ」フジモトマサル(新潮社)
内容 回文集
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
点数 83点
気分 ありそうでないこのタイプ
オススメ ★★★★☆

これは珍しい書籍。
例えば・・・
カルテ見てるか?
医師らしい
薬の暗い快楽のリスク
妻待つ
この娘(こ)!猫の娘(こ)
陰のあるあの外科
くだをまく、くまを抱く
離婚懲り
うどんどう?
無駄なダム
崖で怪我
いざいけアジア経済
世の中バカなのよ
怒りを理解
関係ない、愛ない喧嘩

・・・いかが?解りました?
(怒濤の回文なのだ!)
つまり『タケヤブヤケタ』と同じ、下から読んでも同じ文章。
タイトルの『ダンスがすんだ』も当然回文。
ありそうでない、珍しい書籍。


2008年11月21日(金曜)

集英社の『デジタル読み物サイト』が楽しめる。
特にオススメは中野京子さんの「王妃たちの光と闇」。
これ以外にも楽しめる読み物盛りだくさん。
下記を参考にして。

さて、今週の読書は3冊紹介。
「Lost and Found」(ポプラ社)
「今日はなぞなぞの日」フジモトマサル(平凡社)
「ウール100%」フジモトマサル(文化出版局)



「Lost and Found」(ポプラ社)
内容 書き下ろしアンソロジー
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
点数 84点
気分 書き下ろしとテーマに価値有り
オススメ ★★★★

書き下ろしアンソロジー。
おもしろかった順番は・・・
@「いっちゃん」花形 みつる
A「ハンカチの木」永井 するみ
B「アヴァロンを探して」香谷 美季
C「夢のない眠り」長崎 夏海
D「神様のさいころ」石崎 洋司
なぜこの本を読む気になったかと言うと、永井するみさんの作品を読みたかったから。
それも書き下ろしだし。
花形みつるさんの作品は予定外のおもしろさだった。


「今日はなぞなぞの日」フジモトマサル(平凡社)
内容 なぞなぞ集
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
点数 82点
気分 話のタネにどうぞ
オススメ ★★★★

例えば、こんな『なぞなぞ』・・・
雪山で遭難しそうになっている人が
携帯電話で助けを呼ぶとき、
その口調はどんな風でしょうか?

答え・・・小声(凍え)


内容 ほのぼのマンガ
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★
点数 83点
気分 楽しめる
オススメ ★★★★

都会でひとり暮らし、ポジティブなOL羊ドリーの日常。
シリアスな展開でも、なぜかほのぼの。
OLが羊なのに、なぜかしっくり。
脱力しながらも和んでしまう。


2008年11月16日(日曜)

「どこまでやったらクビになるか」大内伸哉(新潮新書)
「いきもののすべて」フジモトマサル(文藝春秋)

「リアル」(8)井上雄彦(集英社)

「どこまでやったらクビになるか」大内伸哉(新潮新書)
内容 実践労働法入門
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
情報・知識 ★★★★☆
実利 ★★★★☆
点数 92点
気分 知って得する労働法
オススメ ★★★★☆

オビの文句は次のとおり・・・
『副業、社内不倫、経費流用、ブログ、転勤拒否、内部告発、セクハラ・・・。
身近な実例で学ぶ我が身の守り方』

内容は具体的な例を出しながら18項目。
サラリーマンなら知っておきたい労働法。
例えばブログについて。
時々、会社や上司の悪口を書いている方を散見する。
これは労働法から見てどうなんだろう?
『企業秩序維持の観点から、就業規則に違反する懲戒処分事由に該当する』、と判断される可能性あり。
そうなると懲戒解雇、即ち『クビ』、である。
『ネット社会はパブリックな空間』、と再認識したい。
このほかにも役に立つ情報がたくさん。
例えば下記のような目次・・・
副業―会社に秘密で風俗産業でアルバイトをしている女性社員がいます。法的に問題はないのでしょうか?
社内不倫―社内不倫しています。これを理由にクビになる可能性はありますか?
経費流用―私用の飲食代を経費として精算したのがバレてしまいました。どれくらいの額だとクビになりますか?
転勤―会社から転勤を命じられました。どういう事情があれば拒否できますか?
内部告発―会社がひどい法令違反をしています。内部告発をした時に自分の身を守る方法はありますか?

・・・通勤読書にどうでしょう?


「いきもののすべて」フジモトマサル(文藝春秋)
内容 四コママンガ集
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★☆
点数 86点
気分 軽い笑いから深遠な哲学まで
オススメ ★★★★☆

軽く読める作品から、奥深い意味を感じる作品もある。
文章で内容を説明しにくいのがフジモトワールド。
動物多数登場する絵を見ているだけで、和める。
もっと読みたくなる。

「リアル」(8)井上雄彦(集英社)
内容 車イスバスケ群像劇
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 97点
気分 この展開、このドラマ、この人物造形!
オススメ ★★★★★

現代日本のマンガ界。
膨大な作品群がある。
でも突き詰めると、2種類しかない。
「無理をしてでも読む作品」と「それ以外の作品」。
この「リアル」は、もちろん前者。
ちなみに、『現在連載されている作品』で、
特に読む価値のある作品、無理をしても読みたい作品は次のとおり。
@「テレプシコーラ 」山岸凉子
A「海街diary」吉田秋生
B「3月のライオン」羽海野チカ
・・・それに、この「リアル」でしょう。

PS
今回8巻目を読むにあたって、1巻から読み通してみた。
読みごたえがある。
群像劇で、多数登場人物だけど、個人的には「野宮」が好き。
高橋君のリハビリ状況と父との関係も気になる。

2008年11月10日(月曜)

このところ、何かと忙しく読書がはかどらず。
(まぁ、そんなときもあるよ)
今週の読書のキーワードは「なごみ」。
2冊紹介するけど、両者とも和める。
「14ひきのひっこし」いわむらかずお(童心社)
「二週間の休暇」フジモトマサル(講談社)


「14ひきのひっこし」いわむらかずお(童心社)
内容 ネズミ一家の大移動
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
ヒーリング ★★★★☆
点数 85点
気分 なごめる
オススメ ★★★★☆

店頭で見て、おもわず購入。
茶色系の秋の読書にふさわしい色。
なごめるヒーリング系作品。
【参考】
「14ひき」シリーズ
絵本ナビ 作家紹介 - いわむら かずお(岩村 和朗)
いわむらかずお - Wikipedia
いわむらかずお 絵本の丘 美術館 |

「二週間の休暇」フジモトマサル(講談社)
内容 仕事に疲れた女性が不思議な世界に迷い込む
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★☆
点数 85点
気分 穏やかで不思議なフジモトワールド、ヒーリング100%
オススメ ★★★★☆

ジュール・ベルヌの「二年間の休暇」と勘違いしそうなタイトル。
(私は間違えたよ、ベルヌにしては鳥がすわっているし・・・変?)
なんと言っても描画が独特ですばらしい。
なんとも不思議な世界が展開する。
ハラハラドキドキはないけれど、そこがいい感じ。

【参考】
フジモトマサルの仕事

2008年10月31日(金曜)

先週の海外ネットワークでは、グルジア問題で揺れるウクライナ特集であった。
気になったのはティモシェンコ首相のヘアスタイル。
ウクライナの伝統的な髪型を自分でアレンジされたらしい。
(なんとなく「スターウォーズ」のレイア姫を思い出した)
ウクライナの南には黒海もあり、あの「エイラ」シリーズ前半の主要舞台。
一度訪問したいエリアだ。
ところで、今回「ティモシェンコ首相」でネット検索かけたら、「萌え」てる方が少なからずいることが判明した。
ちなみに、ドイツ・メルケル首相にはこの現象は起きていないようだ。
(見た目、って影響大!?)
【参考映像】→ティモシェンコ首相
【公式サイト】→Yulia Tymoshenko official site

さて、今週は事情により、金曜日に更新し、下記の2冊を紹介。
「ママはテンパリスト」(1)東村アキコ(集英社)
「少女少年学級団」(2)藤村真理(集英社)


「ママはテンパリスト」(1)東村アキコ(集英社)
内容 育児コメディ
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★
ストーリー ★★★★☆
点数 85点
気分 笑えて、学べるエッセイマンガ
オススメ ★★★★

育児エッセイやマンガが手に取りにくいのは訳がある。
どうしても、親バカや子ども自慢が見え隠れするヤラシさを感じるから。
(実際はどうかしらないけど、そのように感じてしまう)
でも、さすが笑いを追求する東村アキコ作品は違う。
自分の子どもをかなり冷徹な目でとらえ、客観的にとらえている。
それを笑いに昇華している。
感心したと同時に、育児の大変さも学んだ。

「少女少年学級団」(2)藤村真理(集英社)
内容 小学生たちの学園ライフコメディ
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★☆
点数 91点
気分 過去と比較しながら楽しめる
オススメ ★★★★☆

オビの文句はこうだ・・・
『ますますお騒がせな小学生ストーリー』
ますます快調、小学生ライフ。
小学生にも大人と同じ人間関係のトラブルと悩みがある。
子どもだからといって、悩みの絶対値が小さいわけではない。
大人のように酒で紛らわす訳にもいかず。
感情の処理が初心者なので、読んでいて笑ったりハラハラしたり。
非常に楽しめる作品。

2008年10月25日(日曜)

先日、ラジオを聞いていると、「中国・国学ブーム」に関するニュースを放送していた。
昨年あたりからブームらしい。
食品問題のモラル低下を考えると、中国も日本も孔子孟子を学ぶべきかも?
ところで、あの文化大革命 での孔孟批判はどうなったのだろう?
(手のひらを返したような、国学ブーム)
4人組逮捕で、終焉か?
「ワイルドスワン」を読むと、文革で多くの人が粛正されたようだ。
(中国近代史として「ケ小平伝」(中公新書)がオススメ、読みやすい平易な文章)
時たま考えることがある、
「あの膨大な人数の紅衛兵はどうなったのか」、と。
地方の農村へ下った、と聞いているが、どうしているのだろう?

さて、今週はauのマニュアルばかり読んでいて、
肝心の読書がすすまなかった。
紹介する作品はなし。


2008年10月19日(日曜)

先日、仕事で××会に行ってきた。
その時、 ハンドルキーパー運動について言及があった。
外食したときに酒を飲まない人を決める運動だ。
(それ英語?何かヘン・・・だけど)
まず、車の「ハンドル」という名称自体、正確ではない。
(wheel、あるいは steering wheel)
それに、そんな場合の語彙は既に用意されている・・・・designated driver
(受験生の方は覚えておこう)
さて、今週は下記の2冊紹介。

「イトウの恋」中島京子(講談社文庫)
「子猫のための探偵教室」松田志乃ぶ(集英社)


「イトウの恋」中島京子(講談社文庫)
内容 維新後間もない日本を舞台に、通訳ガイド・イトウの恋を描く
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★☆
点数 87点
気分 ストーリーテリングとみごとなアレンジに酔う
オススメ ★★★★☆

紹介記事は下記のとおり。
(以下、転載)
維新後間もない日本の奥地を旅する英国女性を通訳として導いた青年イトウは、
諍いを繰り返しながらも親子ほど年上の彼女に惹かれていく―。
イトウの手記を発見し、文学的背景もかけ離れた二人の恋の行末を見届けたい新米教師の久保耕平と、
イトウの孫の娘にあたる劇画原作者の田中シゲルの思いは…。

(以上、転載終了)

現在と過去が交錯しながら物語が進行する。
退屈しないように、構成が考えられている。
本作の原本は、イサベラ・バード「日本奥地紀行」。
・・・しかし、よくこんな本を掘り出してきて、味付けしよう、と考えたなぁ!
ちなみに、この著者は「蒲団」(田山花袋)もアレンジしなおしている。
文学センスを感じる。

「子猫のための探偵教室」松田志乃ぶ(集英社)
内容 学園ミステリー
一般的面白さ ★★☆
個人的趣味 ★★★
キャラクター ★★☆
ストーリー ★★★
点数 55点
気分 敢闘賞・・・かな
オススメ ★★☆
松田志乃ぶさんの第1作。
「ひみつの乳姉妹」、2巻目「見習い姫の災難」がすごく面白かったので読んでみた。
でも、これはイマイチ。
松田志乃ぶさんの浮世離れした雰囲気が現代小説に合わない。
平安時代が舞台だと、すごく生き生きと登場人物が動くんだけど。
現代だとうわすべりしてしまう。
ミステリ部分は練られているし、キャラクターも印象に残る造形も一部あるけど。
でも、全体としては・・・残念。

2008年10月12日(日曜)

皆さん、連休いかがお過ごしでしょうか?
昨日は、四天王寺に行ってきました・・・「四天王寺秋の大古本祭り」に。
なかなか賑わってましたよ。
昭和17年の「少女の友」とか売っていて、そこが「ブックオフ」とかと違うところ。
ちなみに17000円。
(ブックオフは「古本屋ではなくリサイクルショップ」)
だから、初版や希少本も関係ない。
久しぶりの古本屋めぐりで、気分転換になった。
さて、今週は下記の5冊を紹介。
今回は傑作ぞろいだよ。
ハズレなし。

「平成大家族」中島京子(集英社)
「武士道セブンティーン」誉田哲也(文藝春秋)
「私のアンネ=フランク」松谷みよ子(偕成社)
「海街diary2−真昼の月−」吉田秋生(小学館)
「駅から5分」(2)くらもちふさこ(集英社)



「平成大家族」中島京子(集英社)
内容 愉快に時代と家族を描く
一般的面白さ ★★★★★
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 94点
気分 見事な筆、上質なユーモアに脱帽
オススメ ★★★★★

出版社からの内容紹介は・・・、
72歳の元歯科医・緋田龍太郎が、妻と妻の母、ひきこもりの長男と暮らす家に、
事業に失敗した長女一家、離婚した妊婦の次女が戻ってきて…。
家族それぞれの思いをつづる連作長編。

(以上、転載終了)

巧い、非常に巧い!
連作長編、と言うだけあって、短編が絡み合ってストーリーが進行する。
全部で11編で、スポットライトのあたる人物が変わっていく。
こう書くと、平安寿子さんの「もっと、わたしを 」を思い出すが、
一人称ではなく三人称で書かれているし、トータルに「家族」を描いている。
中学2年のさとるから92歳のタケまで、と幅が広い。
章で言うと「公立中サバイバル」と「時をかける老婆」。
どちらも印象に残る短編だ。
ひきこもりの克郎の恋を描いた「冬眠明け」もいい。
性格の異なる姉妹―逸子と友恵の対象もおもしろい。

物語の構築展開技術と技巧のある話術、
キャラクターの描き分けの妙、
家族を描く事により、結果として時代を描く巧みさ、
良い作品を読んだ、という気分にさせる作品だ。
もちろん、読後感も良い。
ユーモア小説、って書けそうで書けない、難しいジャンルだ。
著者にある程度の人生経験がないとダメだし、
シニカルにとらえる冷徹な目も必要。
また、それを表現する技巧もないと、上滑りしてしまう。
だから、書けそうで書けないのだ。
久しぶりに上質のユーモア小説を読んだ。
良い気分、オススメ!

「武士道セブンティーン」誉田哲也(文藝春秋)
内容 剣道にかける青春と友情物語、第二弾
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★☆
点数 93点
気分 一気読み間違いなし、パート2でも失速せず
オススメ ★★★★☆

「武士道シックスティーン」
に続く、シリーズ第二弾。
今年7月に出版されたばかり。
あの香織と早苗が帰ってきた。
ストーリーは早苗が福岡に転校するところから始まる。
転校先は全国でも有名な剣道強豪校。
そこには、香織が中学全国大会決勝で敗れた黒岩レナがいた。
第一弾同様、一気読みだ!
おもしろい、パート2でも失速せず。
クライマックスは早苗がレナに果たし状を渡して決闘するシーン。
それぞれの成長も見えて楽しい。

「私のアンネ=フランク」松谷みよ子(偕成社)
内容 直樹とゆう子シリーズ3弾
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
問題提起 ★★★★★
ストーリー ★★★★☆
点数 88点
気分 みごとな構成とストーリー
オススメ ★★★★☆

「直樹とゆう子」シリーズ第3弾。
興味深かったのは、蕗子がアウシュビッツを訪問するところ。
さて、ここでおさらいする。(私も知らなかった)
アンネはドイツ・フランクフルト生まれだけれど、
隠れていた場所はオランダにあり、
アウシュビッツはポーランドにある。
アウシュビッツはドイツ読みで、ポーランドではオシフィエンチムと言うらしい。
著者の分身と思われる蕗子がヨーロッパのアンネゆかりの地を巡り歩いていく。
非常に印象深いシーン。

さて、今度のテーマは人種差別。
非常に難しいテーマだけど、松谷みよ子さんらしく民話をつかいながら
「いわれなき差別」を表現していく。
P128に紹介される佐渡の昔話も印象に残る。
美しいむすめが、むこにきた実直な青年を殺す話。
「いわれなき」にくしみ、悪意、差別を表現している。
最初はナチス・ドイツからはじまり、身近な在日問題にまで。
見事な展開と筆の冴え。

「海街diary2−真昼の月−」吉田秋生(小学館)
内容 鎌倉を舞台にした「家族」の物語
一般的面白さ ★★★★★
個人的趣味 ★★★★★
問題提起 ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 98点(満点つけたい気分だけど、完結してないから)
気分 極上の酒を飲んだ気分
オススメ ★★★★★

吉田秋生さん最新作、「海街diary」パート2だ。
(待ってました!)
昨年の4月にパート1が出て以来、ずっと待ってた。
期待を裏切らないおもしろさ。
名人芸に近い筆の冴え。
もう、その辺の文学ではたちうちできない領域。
特に微妙な心理描写、ストーリーが重層的に絡み合う構築の巧さは絶妙。
絵も初期の頃から上手いし。
(「カリフォルニア物語」から、既にハイレベルであった)
このレベルの作品を描ける作家は何人いるだろう?

PS
今回の作品を読むにあたり、パート1を読み返した。
やはり泣けた。

「駅から5分」(2)くらもちふさこ(集英社)
内容 架空の街・花染町を舞台に、ふれあいとすれ違いが描かれる
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 93点
気分 パズルを解いている気分
オススメ ★★★★☆

ふれあいとすれ違い――彩りのクロスオーバーストリー、とオビにある
人を描いて街を俯瞰し、街を描いて人を表現。
架空の街・花染町を舞台に、物語が展開。
前回第1巻では、次のように紹介した。(2007年12月8日)

街の中にも多重構造で「社会」がある。
・・・「小学校」「中学校」「高校」、
・・・街に住む人、他から訪問する人、
・・・花染町のネット社会まで描いている。
上記コミュニティーと人が多重構造でリンクし影響し合う。

今回もこんな感じで物語がどんどんクロスし、リンクしあう。
ホント、見事なテクニックと感性だ。
すばらしい。

2008年10月5日(日曜)

中国では10月1日から国慶節の大型連休。
おかげで、現地通関も休みで、荷物が動かず。
(まぁ、もともとCCCの影響なんだけど)
現地日本企業の人も、この機会に里帰りされているようだ。
電話をしても通じない。
次に、問い合わせでマレーシアに電話すると、
ハリ・ラヤ・プアサ(断食明け祭り)で休み、来週まで待ってください、とのこと。
あぁ、どこも休日か!


さて、本日は次の4冊を紹介。
「ねにもつタイプ」岸本佐和子(筑摩書房)
「ふたりのイーダ」松谷みよ子(講談社)
「死の国からのバトン」松谷みよ子(偕成社)
「卒業前小景」今野緒雪(集英社)


「ねにもつタイプ」岸本佐和子(筑摩書房)
内容 2007年 第23回 講談社エッセイ賞受賞
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
妄想・感性 ★★★★★
点数 91点
気分 これがエッセイなのか?
オススメ ★★★★☆

翻訳家・岸本佐和子さんのエッセイ。
このようなエッセイは初めて。
エッセイというより妄想。
それにしても頭の中すごすぎる。
翻訳家になる前は、サントリーの宣伝部でOLをしていた、とのこと。
ところが、OLの仕事がむいてなくて、仕事を取り上げられた、と言う。
(なんとなく分かる気がする)
それで時間が余って、習い事でもしようと始めたのが、翻訳の勉強だったらしい。
以下、転載。

週1回、仕事帰りに翻訳スクールに通い始めましたが、私にとって翻訳の勉強は、
習い事というよりも「部活」のようなもの。
朝から晩まで会社にいても失敗続きでプライドが保てないので(笑)、
なんでもいいから会社以外の居場所が欲しかったんです。
勉強の全然できない生徒が教室にいても居場所がなく、
放課後のクラブ活動で救われるような、そんな感じでした。


(以上、転載終了)
ちなみに、エッセイ第一弾「気になる部分」を連載したときも、苦情があったらしい。
世の中には、枠からはみ出すタイプ、ってあるのだ。
しみじみ、そう思う。

北海道新聞でのインタビュー 2007年2月18日

^ http://www.fellow-academy.com/fellow/magazine/userMailMagazineView.do?deliveryId=4

「ふたりのイーダ」松谷みよ子(講談社)
「死の国からのバトン」松谷みよ子(偕成社)
内容 直樹とゆう子シリーズ1弾と2弾
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
問題提起 ★★★★★
ストーリー ★★★★☆
点数 88点
気分 みごとな構成とストーリー
オススメ ★★★★☆

文章は平易だが、その奥にある知識と経験に圧倒される。
「ふたりのイーダ」は原爆問題。
「死の国からのバトン」は公害と歴史問題。
どちらのテーマも重い。
それを「ファンタジー」の形に変え、過去と現在を行き来し、作品に昇華している。
見事な手腕。
これらが30年以上前に創作されたとは、すばらしい。
【参考リンク】
松谷みよ子 - Wikipedia

松谷みよ子(公式ホームページ)

「卒業前小景」今野緒雪(集英社)
内容 「マリみて」最新刊
一般的面白さ ???
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 85点
気分 これこそユートピア、雰囲気にひたるのみ
オススメ マニア限定
「マリみて」シリーズ最新刊。
構成も文章も見事。
説明不要。

2008年9月28日(日曜)

びっくり法律旅行社を見ていたら、ベトナムではハイビスカスを送ると失礼にあたる、とのこと。
ハイビスカス=頭が悪い、と言う意味。
ハイビスカスは真っ赤で見かけはすばらしいが、匂いがないから、らしい。
だから、ベトナムではハイビスカスをプレゼントしてはいけない。
こういう知識は重要。
日本の常識では推察しにくい知識だから。
さて、今日の前置きはこれくらいにして、次の2冊を紹介する。

「リセット」垣谷美雨(双葉社)
「ミーナの行進」小川洋子(中央公論新社)



「リセット」垣谷美雨(双葉社)
内容 高校生から人生をやりなおせたら・・・
一般的面白さ ★★★★★
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 96点
気分 40代以上の女性にオススメ
オススメ ★★★★★

リプレイ 」以来、様々な亜流、バリエーションが創られた。
でも、なかなかオリジナルを越えられない。
(やはり、本家は偉大だ)
・・・でも、この作品は面白い。
すばらしい仕上がりで、(★印はおまけな感もあるが)読んでソンはない。
例えるなら、本場バゲットはおいしいけれど、アンパンも美味しい、とか。
本場ナポリタンもおいしいけど、和風スパゲッティも美味い、とか。
・・・そんな感じだ。
ストーリーは、人生にくたびれた3人の女性が出会うことから始まる。
対照的な3人の性格。
美人で控えめな性格の知子、頭の良いキャリアウーマンの薫、不良少女から水商売の道を歩んだ晴美。
それぞれに悩みを持ち、人生をやりなおせたら・・・と考えていた。
そして、その願いがかなったことから、この物語がまわりだす。
このストーリーの落とし方は見事。
タイトルの真の意味を知ることになる。
(若い作家には書けない内容だ、ひとりひとりのセリフすばらしい)

「ミーナの行進」小川洋子(中央公論新社)
内容 友情と家族と成長物語
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★☆
点数 87点
気分 メルヘンの中を泳いでいる幸せな気分
オススメ ★★★★☆

1972年の芦屋が舞台、2006年度谷崎潤一郎賞受賞作。
場所と時代が具体的にもかかわらず、ほとんどメルヘン。
現実の雰囲気が薄い。
芦屋と時代の雰囲気がメルヘンを醸し出している。
(実際はそんな幸せな時代じゃなかった・・・けど、高度経済成長の矛盾をはらんだ時代だ)
なんと言っても、カバのポチ子が現実離れした物語の雰囲気に寄与している。
貢献度100%、愛すべきキャラだ。
物語は朋子が岡山から出てきて、芦屋の親戚の家に預けられるところから始まる。
その家には1歳年下の小学校6年のミーナという従妹がいた。
この2人の友情と成長が描かれる。
ミーナは身体が弱く、喘息のため車にも乗れない。
その為、小学校へはカバのポチ子に乗って登校する。
ここからしてメルヘン色が濃い。
現実離れしたシチュエーション。
でも、読んでいて違和感を感じない。
語りにうっとりしてしまう。
雰囲気を楽しむ作品だ。
(その割に、随所にスパイスが効いているけど)
着地もツボを押さえている。

2008年9月21日(日曜)晴れ

このHPを見てのとおり、
私の生活はクライミングと読書が中心。
(もちろん仕事は、しっかりしている・・・「プライベートな時間」、って意味)
故に、テレビは出来るだけ見ないようにしている。
なぜなら、読書時間が減るから。

それでも、ある程度チェックしている。
以下の番組だ。

【語学・海外情報】
びっくり法律旅行社 ・・・海外事情と法律は知っておきたい。知識の蓄積が必要、先日はメキシコ特集だった。
英語でしゃべらナイト ・・・9月22日(月曜)はコロラド特集第二弾・・・語学は必要(遊びにも仕事にも)
海外ネットワーク・・・海外事情と政治情勢、今後どの国に行くことになってもOKなように、備えたい。

【啓発&スポーツ関係】・・・面白そうな企画のみチェック、毎回見るわけではない
スポーツ大陸
トップランナー -TOP RUNNER-
プロフェッショナル 仕事の流儀
情熱大陸

・・・どうでしょう?
(やはり、クライミングと何らかの関連があるものばかりか?)
ところで先週、吉田都さんについて書いたが、
次のような言葉がある。

ケガ、合わないシューズ、パートナーの交代・・・。
厳しいバレエの世界では、何も問題なく本番にのぞめることはほとんどない。
しかしどんな不安があっても本番当日には、吉田はすべてのトラブルを頭から捨て去る。
そして、そこまで練習を重ねてきた自分をひたすら信じ舞台にのぞむ。
プレッシャーで逃げ出したい気持ちにかられることはあっても、自分で戦っていくと覚悟を決める


上記の『バレエ』の代わりに『クライミング』と置き換え、
『舞台』の代わりに『岩場』と置き換えても違和感がない。
類似点を多々感じる。
また、森下洋子さんの言葉には・・・

「1日休めば自分に分かる。
 2日休めばパートナーに分かる。
 3日休めば観客に分かる。
 だから、片時も練習を休むことができない」

(たぶん「バレリーナの情熱」 からの言葉・・・本棚に見あたらず)

これも、クライミングに通じるものがある。
(だからこそ『テレプシコーラ』に、夢中になるのかもしれない)

【参考】
バレリーナ・吉田都
“仕事術”スペシャル Part3|吉田都の「運動術」

【参考2】
吉田都 1/6
吉田都 2/6
吉田都 3/6
吉田都 4/6
吉田都 5/6
吉田都 6/6


今日は、前置きが長くなった。
1冊だけ紹介。

「義弟」永井するみ(双葉社)
内容 ミステリを逸脱したドラマとサスペンス
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★☆
点数 87点
気分 あやしい気分になる
オススメ ★★★★☆

オビの文句は次のとおり・・・

【表ページ】
このまま抱きしめたら
絞め殺してしまう・・・

押さえきれない破壊衝動を封じ込めてきた弟、
心と身体に深い傷を抱えながら生きてきた姉。
血の繋がりのないふたりは、本当の肉親以上に
信頼しあっていた。しかし、ある事件をきっかけに
"姉弟の箍”が外れていく。

【裏ページ】
スポーツインストラクターの克己と弁護士の彩は、
血の繋がりのない義理の姉弟。成人した今、克己の
彩に対する感情は、姉以上のものになっていた。
そんな中、彩の不倫相手が彼女の職場で急死する。
助けを求められた克己は、彼女を守るため遺体の処理を
するのだが・・・。


いかがでしょうか?
著者の文章は、微妙な心理を克明に描写していく。
これが、なんともたまらない・・・けど。
心理描写の巧い作品が私の好みだ。
なぜなら、小説とは感情のトレースだから。

PS
TVはクライミングがらみだけど、
読書はクライミングとかけ離れた作品を選んでいるようだ。

【本日のお言葉】
人はクライミングのみにて生くるにあらず

2008年9月14日(日曜)晴れ

連休いかがお過ごしですか?
私は読書三昧、です。
(土曜・日曜と部屋に、こもっている)
クライミングに関しては、次のステップに向かって練習再開したい。
でも、一休みしてもバチは当たらないでしょう。
十分休養をとって、次のツアーに備えたい。
さて、今回は以下の5冊を紹介する。


「MIYAKO」吉田都(文藝春秋)
「名画で読み解くハプスブルク家12の物語」中野京子(光文社新書)
「武士道シックスティーン」誉田哲也(文藝春秋)
「だいじなことはみんなアメリカの小学校に教わった」中島京子(主婦の友社)
「プロトコル」平山瑞穂(実業之日本社)


「MIYAKO」吉田都(文藝春秋)
内容 写真とエッセイで振りかえる吉田都の軌跡
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
情報・知識 ★★★★
美と感性 ★★★★★
点数 91点
気分 プロであり続ける難しさ
オススメ ★★★★☆

エッセイで軌跡を語られている。
淡々綴られる文章だが、才能と努力が感じられる。
この方こそプロ中のプロ。
プロフェッショナルとは?、と言う問いに対して・・・
「闘い続けられること。言い訳をせず、闘い続けるっていうことですね」
【参考】
バレリーナ・吉田都

「名画で読み解くハプスブルク家12の物語」中野京子(光文社新書)
内容 ハプスブルク家650年を絵画から読み解く
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
情報・知識 ★★★★★
インパクト ★★★★☆
点数 92点
気分 濃くなりすぎた血は滅亡する
オススメ ★★★★☆

サブタイトルは・・・
「650年にわたる血みどろの王朝劇」
本当に、波瀾万丈の王朝劇だ。
ヨーロッパ史の太い縦糸・ハプスブルク家650年を絵画からたどる。
それにしても、濃いキャラクター達だ。
高校世界史の副読本に薦めたい。
カラー図多数掲載で楽しめる。
【参考の目次】
アルブレヒト・デューラー『マクシミリアン一世』;フランシスコ・プラディーリャ『狂女フアナ』;
ティツィアーノ・ヴィチェリオ『カール五世騎馬像』;ティツィアーノ・ヴィチェリオ『軍服姿のフェリペ皇太子』;
エル・グレコ『オルガス伯の埋葬』;ディエゴ・ベラスケス『ラス・メニーナス』;
ジュゼッペ・アルチンボルド『ウェルトゥムヌスとしてのルドルフ二世』;アドルフ・メンツェル『フリードリヒ大王のフルート・コンサート』;
エリザベート・ヴィジェ=ルブラン『マリー・アントワネットと子どもたち』;トーマス・ローレンス『ローマ王(ライヒシュタット公)』;
フランツ・クサーヴァー・ヴィンターハルター『エリザベート皇后』;エドゥアール・マネ『マクシミリアンの処刑』


「武士道シックスティーン」誉田哲也(文藝春秋)
内容 剣道にかける青春と友情物語
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★☆
点数 93点
気分 一気読みのおもしろさ
オススメ ★★★★☆

昨年出版されて話題になった本だ。
一途でまっすぐな青春小説の王道。
剣道にかける青春、2人の対照的な少女。
このキャラクターの対比が楽しい。
小さいときから剣道まっしぐらな香織。
中学の時、日舞から転身して剣道を始めた早苗。
剛の香織と柔の早苗。
この2人が出会ったことから、闘いの火ぶたがきっておとされる。
もしクレームをつけるとしたら、脇役キャラが甘いこと、くらいかな。
もう少し固めて欲しかった。
なお、続編「武士道セブンティーン」も、今年7月に出版された。
チェック予定。

「だいじなことはみんなアメリカの小学校に教わった」中島京子(主婦の友社)
内容 中島京子さんのアメリカ体験記
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★
知識情報 ★★★☆
感性と洞察 ★★★☆
点数 84点
気分 軽い気分転換によし
オススメ ★★★★
作家として有名な中島京子さんのアメリカ体験エッセイ。
アメリカの小学校に日本を紹介するインターンシステムで渡米。
軽いエッセイとして楽しめる。
次回は小説を読んでみよう、かな。

「プロトコル」平山瑞穂(実業之日本社)

内容 オフィス小説、成長小説、恋愛小説?
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★☆
点数 87点
気分 予想した以上に楽しめた。
オススメ ★★★★☆

「膨大な文字列をひとめで記憶できる」、という特殊能力をもったヒロイン。
しかし、それ以外の人間関係は苦手で、硬すぎる性格。
仕事を真面目にこなしていく生活。
しかし、ふとしたことから派閥争いに巻き込まれ、
個人情報漏洩事件も起きる。
いったいどうなるのか?
ハラハラしながら楽しめる。
ヒロインの家族背景も描きながら物語は進展する。
悪役の家族背景もきっちり描いているのも感心した。
後味も悪くない。

2008年9月7日(日曜)晴れのち曇り

「ひみつの乳姉妹」松田志乃ぶ(集英社)
「見習い姫の災難」松田志乃ぶ(集英社)

「新・平家物語」(11)吉川英治(講談社)


「ひみつの乳姉妹」松田志乃ぶ(集英社)
「見習い姫の災難」松田志乃ぶ(集英社)
内容 平安マンチックミステリー
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 96点
気分 ジャパネスクの再来、無条件に楽しめる!
オススメ ★★★★★

「嘘つきは姫君のはじまり」シリーズ。
サブタイトルが、初巻「ひみつの乳姉妹」、2巻目「見習い姫の災難」
試しに読んでみたら、やたらおもしろい!
予想以上の面白さと完成度だ。
シリーズは2冊しか出ていないけど、まだまだ続きそう。
平安朝を舞台にした小説と言えば、氷室冴子さんの「ジャパネスクシリーズ」が有名。
実は、(あまり)期待せずに読み始めた。
「ジャパネスクの雰囲気が味わえたらいいかな〜」、ってな感じで。
それが途中からぐいぐい引き込まれた。
歴史上実在の人物とフィクションが交錯。
細かい風俗上のディーテイルも押さえている。
ミステリ部分もよくできている。
メインキャラは破天荒な馨子と、人のよい宮子。
この2人の息がぴったりで良い感じ。
例えば次のようなセリフ。
以下、転載。(P91)

「わたしはおまえの、打たれ強いところ、小さな身体で根性のあるところが大好きよ。
人生の半分は根性で乗り切れるもの。へこたれず、その調子で前向きに頑張っていきなさい」
「根性で乗り切れない、残りの半分はどうするのですか?」
「運とはったりで押し切るに決まっているでしょ」
・・・と、含蓄のあるセリフ。
ちなみに、このセリフの後・・・
運はともかく、はったりをかますには、それなりの知識と頭の回転が必要――

・・・と続く。

この2人が、ホームズとワトソンの関係で謎を解いていく。
その課程で、「お約束」の美形男性キャラが絡んでくる。
次郎の君も「謎の少年」として登場。
これも「お約束」で背景みえみえにもかかわらず、楽しめる。
およそ魅力的な男性キャラは、「エヴァンゲリオン」の女性キャラなみに出そろう。
期待大、のシリーズだ。
自信を持って薦める。

さて、シリーズ2作目のあとがきで次のようなコメントがある。
以下、転載。

本書の執筆中に、氷室冴子先生の訃報を知りました。
瑠璃姫の冒険に笑い、涙した青春時代は私の宝物です。
ご冥福を心からお祈りいたします


・・・以上、転載終了。
(やはり、影響を受けていたのね)
でも、作品内容は二番煎じにありがちな薄味ではない。
氷室冴子さんの後継者であり、オリジナルな面白さも醸している、と感じる。
(1)後継者な部分・・・有子や蛍の宮の描き方・・・最初意地悪キャラだが、後に宮子と仲良くなる、ってパターン。
(2)オリジナルな部分・・・1冊目では、兼通と馨子が(最後に)意気投合するシーン。
              ・・・2作目では、女盗賊竜田と馨子が、同種類の人間である、と認め合うシーン。
もし氷室冴子さんが、この作品を読んだら、どう評するだろう?
負けてられない、と筆をとって復活されたかもしれない。
残念だ。

「新・平家物語」吉川英治(講談社)
進捗状況 全16巻のうち11巻まで読了
このところ、滞りがちだけど、ぼちぼち読んでいる。
木曾義仲の時代は終わり、義経が華々しく活躍。
一ノ谷の合戦が描かれる。

【講談社からの紹介とあらすじ】
11 源氏の内輪もめが幸いして、都落ちした平家は急速に勢力を挽回していた。
西海は一門の軍事力の温床、瀬戸内には平家の兵船が波を蹴たてて往きかい、着々と反攻の秋(とき)を窺っていた。
わけて一ノ谷は天険の要害、平家自慢の陣地だった。
加えて兵力では、平家は源氏の何倍も優位にある。しかし、地勢と時と心理とは、まったく平家に不利だった。
義経軍の坂上からの不意打ちに算を乱して敗走する。


2008年8月30日(土曜)曇り時々雨

日本に帰って慌ただしい日々だ。
コロラドでのクライミングが夢のように感じる。
(夢だったのか?)
それなら覚めないで欲しかった。
次の海外までガマン。
海外でのクライミングと好きな作家の新刊だけを楽しみに生きている。
本日の紹介は2冊。

「盆栽マイフェアレディ」山崎マキコ(幻冬舎)
「親なるもの断崖」(全2巻)曽根史子(宙コミック文庫)


「盆栽マイフェアレディ」山崎マキコ(幻冬舎)
内容 盆栽の道を究めるか、愛人として優雅に暮らすか
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★
点数 83点
気分 疲れているときに読むといいかも、安心して読めてリフレッシュ
オススメ ★★★★

この作家(山崎マキコ)の作品を読むのは初めて。
タイトルが変わっているので、読んでみた。
内容は「マイフェアレディ」と言うより、「プリティウーマン」か?
盆栽師を目指す22歳の繭子が主人公。
毎日は過酷な重労働で、賃金は低く、職場も変人の先輩・松本のみ。
そこに、ふってわいたようなリッチなイケメン王子様登場。
愛人にならないか、と提案される。
ストーリーは予測されるのだが、キャラクターが共感できる。
描き方が上手い。
突っ張ってもいないし、流されてもいない。
そのあたりのさじ加減がいい。

「親なるもの断崖」(全2巻)曽根史子(宙コミック文庫)
内容 昭和初期、室蘭を舞台にした底辺女性親子2代
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★
ストーリー ★★★★☆
点数 87点
気分 疲れているときに読むとよけい疲れる
オススメ ★★★★☆

宙コミック文庫、って知ってた?
(私は知らなかった)
しかも、この内容。
(一般受けするとは、とうてい思えない、売れているのだろうか?)
でも、内容はすばらしい、よく描けている。
資料も駆使されている。
(でも、一般誌での連載は難しいでしょうね)
ストーリーはかなり重たい、この重さに耐えられるか?
ほとんど読者への挑戦だ。
「夕凪の街」あたりのアレンジで濃度処理したら一般受けするでしょうけど。
第一部の裏表紙の作品紹介を転載しておく。
(以下、転載)
彼女たちは、渾身の力を振り絞り闘い続けた・・・!!

昭和2年4月、北の海を渡り、
4人の少女が北海道室蘭の
幕西遊郭に売られてきた。
松恵16歳。その妹梅11歳。竹子13歳。
道子11歳。松恵は着いたその日に
客をとらされ、首を吊った。
奈落の底で、少女たちの血を吐くような
人生が始まった!!


2008年8月23日(土曜)

今週の紹介は下記の5冊。

「危険な世界史」中野京子(角川書店)
「うわさの神仏」加門七海(集英社文庫)
「若き数学者のアメリカ」藤原正彦(新潮文庫)
「ひまわりっ」(8)東村アキコ(講談社)
「のだめカンタービレ」(21)二ノ宮知子(講談社)


「危険な世界史」中野京子(角川書店)

内容 エピソード人物伝裏話の数々
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
情報・知識 ★★★★★
インパクト ★★★★☆
点数 91点
気分 小さなエピソードの点描が、大きな絵となり、世界史となる
オススメ ★★★★☆

この本は、朝日新聞ブログに連載した「世界史レッスン」100回分を集めたもの。
(2006年開始、約2年分)
以下、著者の言葉を引用・・・

絵画でいえばスーラの点描画のようなものを目指すことにしました。
ある人物の、ある事件の、ある現象の、ほんの短いエピソードを、
絵筆の先でぽつりぽつりと画布に置いてゆく感じでしょうか。
その点々がいつしか大きな絵となり、なるほど世界はこのように――
「色の点」のときには何の関連もなさそうに見えていたのに――、
実際には網の目状につながっていたのだな、と驚いてもらえれば、
さらには歴史に興味を持つきっかけになってもらえれば、
書き手としてこんな嬉しいことはありません。


いかがでしょうか?
この「世界史レッスン」は現在も連載中。
私も1週間に1回、必ずチェックしている。

「うわさの神仏」加門七海(集英社文庫)
内容 怖くて笑える神仏エッセイ
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
情報・知識 ★★★★☆
インパクト ★★★★☆
点数 84点
気分 こんなジャンルがあったのか?
オススメ ★★★★☆

本屋に行ったら、P35「七福神の巻」を立ち読みしてみて。
(ところで、すべて言える?)
この七福神の履歴を読むと、けっこう怖い。
それだけでも、この本を読む価値有り。
また、P181チェック。
秋葉原について。
・・・秋葉の原、とある。
以下、引用。
この一帯は、江戸の昔から秋葉神社の天狗の縄張りなのである。
天狗というのは通信・通行・伝達を司るヘルメスみたいな存在だ。
その領地が今、世界有数の電気街として威勢を誇っているのだ。
なかなか象徴的でしょう。
昔、天狗を祀った神社の場所は、今の秋葉原駅に相当している。
ならば、神社は消滅したのか?
いやいや、これがまたスゴイ。
秋葉神社は実は今、利用客の目に触れない駅構内にあるのである。
つまり極論するならば、通行を仕切る駅自体が神社になっているというわけ。
侮れませんね、天狗さん、いいや旧国鉄=JR。
この街が未だ繁栄するのも、天狗の社に毎日毎日、何千人もの人々が
参拝しているから――なんて思うのは私だけなんでしょうかね。

(以上、引用おわり)
どうです?おもしろいでしょう?
さらに、P164もチェック。
玉置神社も訪問されて、言及されている。
私のこの【覚書】を読んでいる方はお解りでしょうが、
この神社は荻原規子さんの「RDG」の舞台となっている。
要チェックですね。

「若き数学者のアメリカ」藤原正彦(新潮文庫)
内容 アメリカ体験記、日本エッセイストクラブ賞受賞作品
一般的面白さ ★★★★★
個人的趣味 ★★★★★
感性 ★★★★★
洞察 ★★★★★
点数 97点
気分 読んでソンはない、おもしろい!
オススメ ★★★★★

ご存じとは思うが、新田次郎氏と藤原ていさんの次男だ。
文章力があって、感性、洞察力もするどいはずだ。
この作品の後半がコロラド舞台となっている。
偶然ではあるが、コロラドからの帰りの飛行機で読んだので、
より印象深く、感銘を受けた。
あまり上手く紹介できなくてスマン。
【参考】→若き数学者のアメリカ

以上、3冊はコロラド(USA)往復機内で読んだ。
さすがに現地(岩場とか)では読まなかった。
クライミングに集中しているから。
読書どころではない。
(読書家として、そんなこと言っていいの?)

これ以外に帰国してから下記の2冊を読んだ。
「ひまわりっ」(8)東村アキコ(講談社)
「のだめカンタービレ」(21)二ノ宮知子(講談社)

この2冊はシリーズで、この【覚書】でも何度もコメントしているので、
今回は、感想「おもしろく読んだ」とだけして、詳細論評割愛させてもらう。

PS【情報】
東村アキコさん新刊「ママはテンパリスト」(1)が10月17日発売らしい、要チェック。
また、永井するみさんの新刊が秋に出るらしい。
しかも、あの「カカオ80%の夏」の続編、と聞く。
この新刊情報、うれしくて涙が出た。

2008年8月18日(月曜)

アメリカ・コロラドに行って来た。
(もちろん岩登りに)
先刻帰宅。

さて、今回飛行機で読んだのは・・・
「危険な世界史」中野京子(角川書店)
「うわさの神仏」加門七海(集英社文庫)
「若き数学者のアメリカ」藤原正彦(新潮文庫)

・・・以上3冊。
後ほど、紹介します。
今回は出発直前に読んで、更新準備していた下記の1冊のみ紹介。

「雨無村役場産業課」(1)岩本ナオ(小学館)
内容 故郷に帰った銀一郎
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★
点数 93点
気分 田舎の雰囲気がgood
オススメ ★★★★☆
大学を卒業して、故郷に戻った銀一郎。
村役場に就職する。
(つまりUターン就職)
職場の様子、村の様子。
一件だけぽつりとあるコンビニ。
それらの雰囲気がいい、レトロな描画も合っている。
舞台は架空の村になっているが、おそらく岡山県、と思われる。
岩を登りに行く都合で、何度も訪問しているので、親しみを感じる。
次作が楽しみ。


2008年8月9日(土曜)

今週末は、事情により更新休み。
【クライミング覚書】も同様。
また、来週18日以降に更新します。
ご了承ください。

2008年8月5日(火曜)

「東京島」桐野夏生(新潮社)
内容 無人島での極限状態を描写
一般的面白さ ★★★★★
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★☆
点数 87点
気分 喉が渇いた
オススメ ★★★★☆


小説は2種類ある。
日常を描くものと、極限状態を描くもの。
これは(もちろん)後者だ。
以下、オビの文句。

【表のオビ】
あたしは必ず脱出してみせる

無人島に漂着した31人の男と1人の女

ノンストップ最新長編


【裏のオビ】
32人が流れ着いた太平洋の涯の島に、
女は清子ひとりだけ。
いつまで待っても、助けの船は来ず、
いつしか皆は島をトウキョウ島と呼ぶようになる。
果たして、ここは地獄か、楽園か?
いつか脱出できるのか――。

食欲と性欲と感情を剥き出しに、
生にすがりつく人間たちの極限状態を容赦なく描き、
読者の手を止めさせない傑作長編誕生!


どうです?
これだけで読んだ気になった?
現代小説で「無人島漂着」、ってのが珍しい。
「グロテスク」ほどの濃度を感じなかったのが残念。
もっとどろどろするかと、思ったけど。
でも、あっさり流しているのが、深かったりする。
細かい設定に著者の熟練を感じる。
ストーリーは怒濤の展開。
驚くのはエンディング。
これは予想外、のけぞった。

PS
簡単に火をおこすシーンが、リアリズムを薄くする。
でも、サバイバル生活を描くのが目的じゃないから、これでいいのか?

PS2
この逆パターンの作品を渡辺淳一センセーに書いていただきたい。
即ち、31人の女と、1人の男が無人島に漂着する、って話。
タイトルはもちろん「楽園」。
「失楽園」より売れるかも?


2008年8月4日(月曜)

「お釈迦様もみてる」今野緒雪(集英社)
「町でうわさの天狗の子」(2)岩本ナオ(小学館)
「聖☆おにいさん」(2)中村光(講談社)


「お釈迦様もみてる」今野緒雪(集英社)
内容 マリみて姉弟編、祐巳の弟・祐麒が主人公
一般的面白さ ???
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 96点
気分 ぜひシリーズ化してほしい
オススメ マニア限定
「マリみて」姉弟編、スピンオフ。
「マリみて」が百合系なら、こちらはBL系だ。
でも、あまり全面に「ソレ」を出していない、だから助かる。
さすがに「ソレ」はしんどい。
キャラではアンドレ先輩がいい。
かつての氷室冴子さんを彷彿させる。
「朝衣」や「煌姫」の設定を思い出した。
つまり、「すばらしい!」、ってこと。
【参考】
「お釈迦様もみてる 紅か白か」発売!
アキバ総研(秋葉原総合研究所)


「町でうわさの天狗の子」(2)岩本ナオ(小学館)
内容 母は人間、父は天狗、って女の子の日常ファンタジー
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★
点数 93点
気分 ファンタジーと日常生活のみごとな融合、筆加減がよい
オススメ ★★★★☆羽海野チカさんもオススメ

シリーズ2冊目。
荻原規子さんの「RDG」との(ゆるい)リンクを感じる。
(1)特殊な血の持ち主であること。
(2)眷属や従者を持ってること。
(3)山の結界があること・・・
例えば「下で暮らすにしても絶対お山が見えなくなるとこまでいくんじゃねーぞ」、と言うセリフ。
天狗の存在が日常に溶け込んでいるのがいい。
主人公は天狗の子で力持ち、って事以外は普通の女の子・・・ここが「RDG」と異なる。
P87の下欄に注目・・・special thanks katsuta bun、とある。(私は勝田文ファン)
すなわち勝田文さんに手伝ってもらった、ってことだ。
つまり「そういう仲」、な訳だ。
2人とも絵に味があり、レトロな雰囲気。
いい感じだ。
【参考】
今月の発売予定・・・「雨無村役場産業課兼観光係」

「聖☆おにいさん」(2)中村光(講談社)
内容 男子2人でアパートシェア
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★
点数 85点
気分 こんなのアリ?!
オススメ ★★★★
シリーズ2冊目。
とりあえず続いているようでめでたい。
よくクレームがつかないものだ。
(それともクレームを無視しているのか?)
ブッダとイエスの下界でのバカンス。
ルームシェアして暮らしている。
なんともきわどいギャグの数々。

2008年7月28日(月曜)

「テレプシコーラ・第二部」(1)山岸凉子(メディアファクトリー)
「新・平家物語」(10)吉川英治(談社文庫)


内容 バレリーナをめざす六花の物語
一般的面白さ ★★★★★
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 98点
気分 圧倒的なリアリズムにひれ伏すのみ
オススメ ★★★★★

雑誌の段階で、読んでいる。
次の号が出るまでに、何度も読み返す。
だから、感想を聞かれても今更、という感じだけど。
でも、単行本が出てもなお、何度も読み返す。
「アラベスク第二部」も良かったが、「テレプシコーラ」は、よりリアリズムに磨きがかかっている。
第二部のスタートはローザンヌから。
16歳になった六花の成長した姿が、見開きを計算に入れたアップで登場。
また、要所要所で千花の回想映像が挿入される。
もうそれだけで、涙、涙・・・。
ところで、ローラ・チャンという中国系米国人が登場する。
彼女は空美の成長した姿じゃないだろうか?
渡米して整形した、と思うのだが、いかがなものだろうか?
以前、「第二部はローザンヌ中心」、と予想したが、そのとおりとなった。
この予想も当たるだろうか?

PS
オビの文句は次のとおり。

六花・・・
あんたは強くなれた?
千花を喪った
悲しみを越えて、
六花の新たな挑戦がはじまる
山岸凉子、
渾身の長編バレエ漫画、
待望の第2部、
いよいよスタート!


上記、オビの文句でネタバレがあるので、
一部伏字にさせていただいた。
既に第一部を読んでいる方は反転させて下さい。
それにしても、わくわくするコピーだ。


「新・平家物語」吉川英治(講談社)
進捗状況 全16巻のうち10巻まで読了
時代はめまぐるしく変化する。
平家の時代から源氏・木曾義仲へ。
そして、その木曾義仲から鎌倉・頼朝へ。
木曾義仲は義経の軍勢の前に消えていく。
ただ、木曾義仲の周りにいた女性たちが皆長生きした、と言うのが良い。
女性のたくましさを感じる。
(ただし、冬姫は亡くなるけど・・・最初から儚げだったし)

【講談社からの紹介とあらすじ】
10 平家追討の院宣ならびに朝日将軍の称号を賜わり、生涯最良の日々を味わう義仲。
だが、彼の得意満面の笑みも次第に歪みはじめる。
牛車の乗りかたひとつ知らない田舎そだちだから、殿上づきあいは苦手だ。
相手は老獪な後白河法皇。義仲の凋落は水島合戦から始まった。
反撃の平家、背後から襲いかかる鎌倉勢、加えて院方――と義仲は四面楚歌。
さすがの一世の風雲児も、流星の如く消えてゆく。


2008年7月21日(月曜)

「女の子の食卓」(4)志村志保子(集英社)
「鈴木先生」(5)武富健治(双葉社)
「新・平家物語」(9)吉川英治(談社文庫)


「女の子の食卓」(4)志村志保子(集英社)
内容 食をテーマにした短編集・第四弾
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★★
点数 95点
気分 上質の児童文学を読んでる気分
オススメ ★★★★☆

短いページにテーマが凝縮されている。
ヒロインも小学生だったり、成人した大人だったり。
大人の視点になったり、子どもの視点に戻ったり。
過去に戻ったり、現代に飛んだりめまぐるしく変化。
変幻自在、千変万化。
内容もレベルが高い
現代の児童文学でも、このレベルに達している作品は少ない、と思われる。
さて、今回の(個人的趣味)ベスト3は・・・
「葉を取らずに食べる桜餅」
「彼に食べさせてもらうアーティチョーク」
「まっ黒こげのパプリカ」

また、付属の短編「カンナヅキ」も、すばらしい完成度。
ある意味、先日読んだ「ラン」(森絵都)に匹敵する内容。
短編にもかかわらず、そう思う。
すばらしい。

「鈴木先生」(5)武富健治(双葉社)
内容 現代中学を舞台に、教育の現状を考える
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★☆
点数 94点
気分 いったいどこまで現実なのか?
オススメ ★★★★☆


笑いと紙一重のリアリズム。
学校と家庭。
教師と生徒。
丁々発止のやりとり。
5巻目では、なんと鈴木先生の彼女・麻美さんの秘技「生霊とばし」が発覚!
(そんな技があるのか?)
この作品ってリアリズムを追求していたのではなかったのか?
超リアリズムのファンタジーだったのか?
あらゆるジャンルが出尽くした感のあるマンガ界だが、このような作品があったのだ。
読んでソンはない。
一読を勧める。


「新・平家物語」吉川英治(講談社)
進捗状況 全16巻のうち9巻まで読了
このところ停滞していた「平家物語」。
やっと9巻目読了。
前半、木曾義仲大活躍。
例の火牛の計が描写され、倶利伽羅峠で大勝利。
これが契機となり、平家の都落ちが始まる。
後半、都落ちの様子が描かれる。

【講談社からの紹介とあらすじ】
源平それぞれに明日の運命を賭けた寿永2年。
――ひとくちに源氏といっても、頼朝は義仲を敵視しているから、三つ巴の抗争というべきであろう。
最初の勝機は義仲がつかんだ。史上名高い火牛の計で、4万の平家を走らせた倶利伽羅(くりから)峠。
勝ちに乗じた義仲は、一気に都駈けあがる。京洛の巷(ちまた)は阿鼻叫喚。
平家は都落ちという最悪の事態を迎えるが、一門の心は決して1つではない。

*********

あまり読書の気分にならない。
8月にクライミングツアーが控えているから。
どうしても気分がクライミング中心になってしまう。
今は停滞期。
いろいろ心配事あり。
うまく登れるのだろうか?
指の痛みは大丈夫だろうか?
なんとかだましだまし登れるのだろうか?
お腹を下さないだろうか?
薬はどれくらい持って行こうか?
お金はどうしよう?
飛行機の乗り継ぎ大丈夫だろうか?
無事合流できるのか?
宿泊施設は?レンタカーは?
(今回自分で仕切ってない、まかせっきりだけど)
8月ツアーが終了したら、おもいっきり休養を取りたい。
(だから8月後半から読書活動が活発になる見込み)

2008年7月17日(木曜)

情報を羅列。

京都国際マンガミュージアム、特別展"少女マンガパワー" スタート!

文藝春秋|各賞紹介|直木賞

文藝春秋|各賞紹介|芥川

139回芥川賞・直木賞 選考委員代表が会見

文学賞メッタ斬り!|第139回芥川賞・直木賞選考会

139回 直木賞・芥川賞特集! - livedoor BOOKS | 特集


2008年7月13日(日曜)

先週の続き。
「RDG レッドデータガール」(荻原規子)を読み返した。
先週、外津川、って十津川がモデル?、と書いたが、
玉倉神社のモデルも玉置神社、と思われる。

奥駆けについても少し調べてみた。
【登山としての奥駆け】
手元に、「関西の山々」(創元社)と「大峰吉野」の登山地図がある。
一般登山では、山上ガ岳、弥山、釈迦ガ岳を登って前鬼に下るのを奥駆けと呼ぶ。
本宮まで行くと、本来の奥駆け、となる。
だから前鬼で終わると、奥駆けの北半分のみ。
なぜ半分になったのか?
北半分だけでも3泊4日かかる、長すぎてしんどいから?
南半分が水の補給困難だからか?
あるいは、明治政府の廃仏毀釈がからんでいるのかもしれない。

【宗教としての奥駆け】
この道に設けられた行場を修行者が順に修行して歩くことを言う。
本来の奥駆けは、大峰と熊野の信仰により、この間を結ぶ修行の道として開拓。
2種類の行程がある。
本宮から吉野に向かう順峯(じゅんぷ)。
吉野から本宮に向かう逆峯(ぎゃくふ)。
修行場は「靡」(なびき)と呼ばれ、ひとつひとつに番号が割り当てられている。
玉置山(たまきさん)は第10番目の靡きになる。

もし奥駆けを体験したいなら、大峯山護持院 櫻本坊(桜本坊)が、
案内を出されているので、参考にして下さい。
(ただし、女人禁制の為、女性の参加はダメ)
→大峰奥駈修行

奥駆けについてはこれくらいにしておく。
「RDG レッドデータガール」本編で、気づいた点について3つほど。
まず、「サブタイトル」について。
「はじめてのお使い」、とある。
これには、3つ意味があるように思う。
@泉水子が紫子の指示で東京まで行ったこと。
A深行が泉水子のお使いとして行動したこと。
B和宮が姫神のお使いとして出てきたこと。
・・・当たっている?

もうひとつ、「言葉」について。
初回、読んだときは気にならなかった。
でも、再読したときは気になった。
なぜ登場人物が関西弁を使わないのか、と。
東京の読者の方は気にならなかったでしょうね。
(でも、関西人はどこに行っても関西弁を使う)
著者も迷ったことでしょう。
舞台が東京に移動したときに違和感が出るでしょうし。
ひじょうに難しい問題だ。

最後に、「舞」について。
風神秘抄 」では糸世が舞の天才、として登場。
今回の泉水子も舞の才能が尋常ではなさそう。
このあたり、著者の「舞」への思い入れを感じる。
(「樹上のゆりかご」でもサロメのダンスシーンがあるし)
ちなみに、玉置神社の祭りでは「弓神楽(ゆみかぐら)」が奉納される。
でも、男の神子が舞うらしい。
男性が巫女の衣装をつけて、白い弓矢を手にし、舞楽を奏する。
う〜ん、一度見てみたい。

【参考リンク】

玉置神社の新ホームページへようこそ!

熊野巡り/玉置神社

十津川村観光協会 観光情報


PS
話は変わる。
今月7月の新刊、お楽しみ予定。
@テレプシコーラ/舞姫<第2部> 1 
A「危険な世界史」
B「女の子の食卓(4)」


2008年7月6日(日曜)

「RDG レッドデータガール」荻原規子(角川書店)
内容 現代日本を舞台にしたファンタジー
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 98点
気分 個人的には大満足
オススメ ★★★★★

荻原規子さん3年ぶりの新刊。
(前作「風神秘抄 」もよかった)
今回も期待を裏切らないおもしろさ。
RDGシリーズ第1作だ。(シリーズだよね?)

さて、金曜日7月4日発売。
残業後、書店に立ち寄る。
先月から予約を入れていたのに、書店に金曜日に来ていない。(怒)
仕方がないので翌日トレーニング終了後、駅前書店に走る。
1冊だけ残っていたのを購入。
思った以上に重厚な装丁なので、読む前から期待が高まる。
・・・夜9時から一気読み。

これはすごいよ、圧倒的なベクトル。
大峰山系の僻地とも言える学園が舞台。
(大峰山系は厳冬期含め何度か登っているので、親しみを感じる)
修験道、山伏、奥駆と言った親しみのある語彙も登場。
明治維新の廃仏毀釈、と言った歴史背景もさりげなく言及。
次作は東京に転校して、新たな学園が舞台になるでしょうね。
ところで、今回は趣向が凝らされている。
つまり、現代日本+ファンタジー、って設定。
「勾玉」は昔の日本が舞台だし。
「西の善き魔女」は架空欧州が舞台。
「樹上・・・」は現代が舞台だけど、ファンタジーじゃないし。
今回は・・・現代、日本、青春、学園、ファンタジー、と王道まっしぐら。
新たな試みに挑戦、と思われる。
今後の展開が楽しみだ。

【蛇足】
もし著者に注文をつけるとしたら、
もっと脇役への書き込み、ページをさいて欲しかった。
ヒロインの友人春菜とあゆみのエピソード。
(結局バスケットの応援に行かなかったし)
生徒会長・越川美沙との確執はどうなるの?
特に修学旅行で泉水子と深行がいなくなったが、
その時の周りの反応は軽く流してしまったし。
次作は上記途上人物たちは、消えてしまうのでしょうか?
こういった「ヒロインが平凡な状態」を詳細に書けば書くほど、
ファンタジーモードに入った時に、リアリズムが増す。
タメの部分が長いほど重厚になる。
ところで、紫子は次回登場するんでしょうか?
お父さんの大成さんは?
疑問だらけだけれど、次作への期待も高まる。

PS
オススメ度98点、としたがファンタジー、学園ものに興味のない方にはオススメしない。
「離愁」(多島斗志之)のような一般性はない。
荻原作品初心者の方は、「樹上のゆりかご」「空色勾玉」 からどうぞ。
私は荻原作品との相性バッチリで、裏切られたことはない。
すべてワンランク上の満足度だ。

PS
関係ないけど、外津川、って十津川がモデル?
あの有名な吊り橋をわたったことあるよ。(走って往復した)
一般の方は、あの高度感で立ちすくむらしい。
私は、もちろんヘーキだ。
(あたりまえか?)

【参考】
RDG

カドカワ銀のさじ

2008年6月22日(日曜)雨

「ラン」森絵都(理論社)
内容 ファンタジー+スポーツ小説
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★☆
点数 87点
気分 「カラフル」クラスのおもしろさを保証しましょう
オススメ ★★★★☆

ガマンできなくて読んだ。
(とても、平家読了まで待てない)
・・・やはりおもしろかった。
土曜日に一気読み。
「カラフル」に匹敵するおもしろさ。
ファンタジーだけれど、スポーツものとしてのおもしろさもある。
(ファンタジー色は薄く、あまり意識せず、自然な感じ)
森絵都さんにはスポーツもので「ダイブ」4部作があるが、
この作品のスポーツ熱血度は低い、少し脱力系。
スポーツ縁遠そうな方ばかりが集まっている、ってのがミソ。
それぞれのキャラも楽しい。
オバさんの描き方が巧い。
(少し紋切り型な感もあるけど、それ以上のおもしろさがある)

PS
もし、森絵都作品初めてなら、(私の好みでは)「永遠の出口」を薦める。

【参考】
「森絵都作品」


「新・平家物語」吉川英治(講談社)
進捗状況 全16巻のうち8巻まで読了
3つの重要な展開があった。
(1)義経と頼朝の対面
(2)木曾義仲登場
(3)清盛病没
義仲は陽気で愉快な人物。
巴御前も登場。
葵ノ前との「女の戦い」が怖い。

【講談社からの紹介とあらすじ】
打倒平家の旗のもとに鎌倉を進発した源氏軍と意気あがらぬまま東下した維盛(これもり)の頼朝征討軍。
両軍は富士川をはさんで対峙する。“水鳥の羽音”で敗走した平家には、著者一流の解釈がある。
――黄瀬川の陣で、末弟義経と初の対面をした頼朝。
いよいよ活気づく源氏勢に手を焼く平家は、腹背に敵を受けた。
木曽義仲の蜂起は平家一門の夢を劈(つんざ)き、北陸路もまた修羅の天地であった。


2008年6月17日(火曜)

理論社から森絵都さんの新刊「ラン」が送られてきた。
実際は6月21日発売。
でも、早く送られてきた。
しかも、著者直筆のサイン本・・・それも私の名前まで入っている!
(どう、うらやましい?)
私は理論社のブックサークルに入っている。
5月から理論社に直接予約していたからこそ可能なワザだ。
さっそく読むか、それとも全16巻の「平家」読了まで待つか?
・・・う〜ん。
ラン
話題の作品 くわしくはこちら

PS
永井するみさんの新刊「義弟(おとうと)」も、棚に飾ったまま保留にしている。
こちらも早く読みたい。

2008年6月15日(日曜)

「新・平家物語」吉川英治(講談社)
進捗状況 全16巻のうち7巻まで読了
以仁王による挙兵が描かれる。
これは失敗に終わるが、これが契機になり源平の戦いが始まる。
7巻は頼朝が中心。
実際はどうだったか知らないが、頼朝だけでは華やかさがない。
(悪く言うと暗い)
鎌倉幕府を興した有名人だけれど、場が持たない。
その点、義経はスターである。

【講談社からの紹介とあらすじ】
源三位頼政は、殲滅された源氏一族にあって、異例といえるくらい、清盛の殊遇をうけた人であった。
その彼が、なにゆえ76歳の高齢もかえりみず、平家打倒に起ちあがったのか。
そして戦いは断橋の悲痛な叫びを残して終ったが、これを境に反平家の勢力は、燎原の火の如く各地に蹶起する。
――伊豆での旗拳げに1度は失敗した頼朝も、鎌倉に本拠を定めて、都を窺う。


2008年6月8日(日曜)

「まさか」、と疑った、再度読み直した。
作家・氷室冴子さんが亡くなられた。
6月6日、肺がんだった、そうだ。
なんとも、惜しまれる。
復活して執筆してくれる、と信じていたから。
残念としか言いようがない。

氷室作品は(ほとんんど)リアルタイムで読んできた。
1番読み返し回数が多いのは、「クララ白書」のシリーズ。
次が、「ジャパネスクシリーズ」。
このあたりは何度も読み返している。
それほどおもしろい、完成度が高い。
(今のコバルトで氷室作品に匹敵するのは「マリみて」くらいだろう)
それにしても悲しく、残念なお知らせだ。
「冬のディーン・夏のナタリー」の続きはどうなるのだろう?
「銀の海 金の大地」は転生してほしかった。

【参考】
「なんて素敵にジャパネスク」 作家の氷室冴子さん死去 ...

作家の氷室冴子さん死去


「氷室冴子作品」


いきなり、つらいお知らせになったが、
今週の読書は(あいかわらずの)平家物語だ。

「新・平家物語」吉川英治(講談社)
進捗状況 全16巻のうち6巻まで読了
出だしは、俊寛僧都の鬼界ケ島配流について。
あとは、義経の彷徨。
白拍子となった静が義経と時忠の屋敷で「出会う」シーンが見どころ。
また先週、「弁慶と五条の橋の上での出会いが無い」と書いたが、
俗説とは異なる形で、義経と弁慶の出会いが描かれる。
・・・やはり五条の橋の上、ではあるが、このシーンも山場。
弁慶の母親・さめが義経と弁慶を近づける狂言回しとなる。
歴史小説は史実とフィクションが絡み合うが、
弁慶の母親の「さめ」の描き方、その娘・蓬(よもぎ)、その夫・麻鳥の描き方が秀逸。
フィクションならではのおもしろさだ。

【講談社からの紹介とあらすじ】
鹿ヶ谷事件は“驕(おご)る平家”への警鐘であったが、清盛にはどれ程の自覚があったろうか。
高倉天皇の中宮(ちゅうぐう)徳子は、玉のような御子を産み、一門をあげて余慶にひたっていた。
――だが、反平家の動きは、いまや野火の如く六波羅の屋形を包んでいた。
その総帥はもちろん、清盛の圧力に屈せぬ後白河法皇、関白基房などの院方。
そして意外と思われる人に、76歳の源三位頼政がいた。


2008年5月31日(土曜)

「新・平家物語」吉川英治(講談社)

進捗状況 全16巻のうち5巻まで読了
前半は頼朝と政子が中心。
後半に弁慶登場。
また、鹿ヶ谷の陰謀についても語られる。
興味深い。
弁慶に関しては、逸話が多い。
五条の橋の上での牛若丸との出会い、とか。
でも、これは俗説なのか吉川文学では語られない。
・・・なんとなく、残念。

【参考1】
北条政子に関しては、以前永井路子さんの作品で読んだことがある。
参考→「北条政子」(文春文庫)

【参考2】
→鹿ケ谷の陰謀

【講談社からの紹介とあらすじ】
もし頼朝が伊豆以外に配流となっていたとしたら、後の日本の歴史も違ったものになっていたに違いない。
まことに奇(く)しき伊豆、そして火の国の女・政子との出会いであった。
さすがの佐殿(すけどの)も、政子の情熱に寄り切られたのである。
ここに最大の被害者は、政子の父・北条時政であった。
――一方、都に目を移せば、反平家の気運は次第に強まり、洛中洛外、不穏な兵馬の動きにあわただしい。


話は変わるけど、アンダンテ日記(5/30)で、「スカイクロラ」について書かれている。
試写を観られたそうだ。
う〜ん、うらやましい!
私もはやく観てみたい。(8月2日一般劇場公開)
「イノセンス」以上の映像、ってどんなんだ?
こういう映画は、DVDではなく劇場で見たい。
「イノセンス」も劇場で観たが、ど迫力だった。
その後、DVDを購入して何度も観ているが、スクリーンの迫力に(はるかに)劣る。
劇場で押井守特集をしてくれないだろうか?
下記で「スカイクロラ」予告編を観ることができるので、チェックしてみて。

【参考】
スカイ・クロラ The Sky Crawlers」

PS
女性指揮官の名前が奇しくも草薙、である。
奇妙な偶然、である。

2008年5月25日(日曜)

「新・平家物語」吉川英治(講談社)

進捗状況 全16巻のうち4巻まで読了
前半は京都が舞台。
妓王や仏御前が登場し哀愁をさそう。
後半は少年期の義経が描かれる。
舞台も鞍馬から東北へと移動。
平家全盛ではあるが、源氏の胎動も表現される。

【参考史跡】
祇王寺(京都嵯峨野)
妓王寺(滋賀県野洲)
京都を歩こう(京都の散歩道紹介)

【講談社からの紹介とあらすじ】
平治の乱以後、平家は目覚しい興隆期に突入した。一門の総帥清盛は、またたく間に位人臣をきわめ、
平相国(へいしょうこく)と呼ばれる。一族の栄達はいうまでもない。その矢先に起った“車あらそい”の事件。
娘徳子の入内(じゅだい)、厳島の造営など、彼の見果てぬ夢はつづくが、
先の嵐に吹き堕ちた源氏の胚子(たね)も、無視できない大きさに。
――爛熟と発芽と。相容(あいい)れぬ2つの世界があり、明日を待っている。

2008年5月17日(土曜)

「新・平家物語」吉川英治(講談社)
進捗状況 全16巻のうち3巻まで読了
内容 平家の栄枯盛衰、興亡興廃一大絵巻
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★☆
点数 92点
気分 点が線でつながる快感
オススメ ★★★★☆

全16巻なので、躊躇していたが(やっと)読み始めた。
平家物語には数々のエピソードがあるが、
知識として(雑学として)細切れの断片が頭の中にある。
この作品を読むことにより、知識の断片が繋がっていく。
点が線でつながる快感だ。
(日本史事典を手元に置いて読んでいる)

やっと3巻まで読了で、先は長い。
この間は他の作品は読めない。
読み始める前は、この長さに耐えられるか?
・・・と、思っていたが、けっこう楽しく物語に浸っている。
このような古典を読んで余生を送るのもアリかも、と思えてくる。
(実際はムリでしょうね・・・新刊情報に翻弄され老後を送りそう)

さて、3巻までに多くのキャラクター登場。
常磐御前、ってのがすごい。
九条院の雑仕女を採用する為、都の美女千人を集めたという。
それを、さらに百人にしぼった。
その百人からさらに十人を選んだ!
常磐御前はその十人の中でも1番美人であった、と言う。
(「モー娘」なみのオーディション・・・それ以上か?)
後に、彼女は源義朝の側室となり義経を生むことになる。

ところで、平家物語のヒロインは誰か?
やはり建礼門院、でしょうね。
「海の底にも都のさぶろうぞ」、と言って幼い安徳天皇を抱いて壇ノ浦に入水。
(思い出すだけで泣けてくる)
上記のシーンがどう描かれるか?
3巻目にして、ヒロインついに登場。(まだ、幼女だけれど)
今後の展開が楽しみ。

【講談社からの紹介とあらすじ】
12世紀の初め、藤原政権の退廃は、武門の両統“源平”の擡頭をもたらした。
しかし、強者は倶に天を戴かず。その争覇興亡が古典平家の世界である。
『新・平家物語』も源平抗争の歴史を描くが、単なる現代訳でなく、古典のふくらんだ虚像を正し、
従来無視された庶民の相(すがた)にも力点を置く。
――100年の人間世界の興亡、流転、愛憎を主題に、7年の歳月を傾けた、著書鏤骨の超大作。
保元の乱前夜、爛れた世の病巣は、意外に深かった。
院政という摩訶不思議な機構の上に、閏閥の複雑、堂上家の摂関争いの熾烈、
その他もろもろの情勢が絡みあって、一時にウミを噴き出す。
――かくて保元の乱は勃発したが、「皇室と皇室が戦い、叔父と甥が戦い、
文字どおり骨肉相食(あいは)むの惨を演じた悪夢の一戦」であった。
その戦後処理も異常をきわめ、禍根は尾をひいた。

平治の乱の実際の戦闘は、わずか半日だった。
だが、この半日を境に源平の明暗は大きく分れる。
源氏一門の棟梁義朝は、都を落ちてゆく途中で非業の最期を遂げ、
その子義平、頼朝は勿論、常盤(ときわ)に抱かれた乳のみ児の牛若まで、業苦の十字架を背負って生きる。
一方、宿敵の源氏を軍馬で蹂躙(じゅうりん)した清盛は、もはや公卿の頤使(いし)には甘んじていなかった。
平家全盛の鐘は、高らかに鳴りはじめている――。


2008年5月10日(土曜)

GW、ぜんぜん読書せず。
昼は岩を登り、夜はぐったり。
クライミングに集中すると、余力が無くなる。
今回は4日連続登りだったので、よけい疲れた。
そんなわけで、2冊だけ。
GWの前後に読んだ作品だ。
(帰ってからも、あまり読めていない)
脱力状態。

「リピート」乾くるみ(文藝春秋)
「少女少年学級団」(1)藤村真理(集英社)


「リピート」乾くるみ(文藝春秋)
内容 もし過去に戻れたら・・・
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★☆
キャラクター ★★★☆
ストーリー ★★★★
点数 78点
気分 二転三転するストーリー、驚愕のラスト
オススメ ★★★☆
ストーリーがめまぐるしく展開する。
確かにおもしろいし、よくできている。
ただ、ストーリー中心なので、趣味にあらず。
(「デスノート」の好きな方はハマるかも)
さらに残念なのは、「リプレイ」の本歌取りなこと。
(まぁ、それは解ってて読んだんだけど)
やはり、オリジナルは越えられなかった。
もし、「リプレイ」を知らずに読んだら、異なる感想をもったかも。

「少女少年学級団」(1)藤村真理(集英社)
内容 小学生たちの学園ライフコメディ
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★☆
点数 91点
気分 いろいろ感じるところがある
オススメ ★★★★☆

オビの文句はこうだ・・・
『小学生は、恋も野球も直球勝負!』
・・・はるか昔の小学生時代を想い出す。
現在より、生活や環境はシンプルだったかもしれない。
でも、感情の絶対値やベクトルは変化してないような気がする。
理由はともかく、悲しいことは悲しく、楽しいことは楽しかった。
大人になって複雑になった、と感じているのは勘違いかも?
素直でなくなっただけ?
自己を演出しようとするから?
欺瞞や、知識増加による思い込みのせい?
知識が増えた分、邪心も増えた?
再び小学生になった気分で、いろいろ感じるところがあった。

PS
なお、この著者には同様の小学生コメディーの著作がある。
「学級×ヒエラルキー」、だ。
こちらもおもしろい、オススメ。

2008年4月26日(土曜)

「きらきら」シンシア・カドハタ(白水社)
「オペラでたのしむ名作文学」中野京子(さえら書房)
「ひまわりっ」(7)東村アキコ(講談社)


「きらきら」シンシア・カドハタ(白水社)
内容 アメリカ日系家族の生活
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★
点数 90点
気分 旧きよき日本は日系作家に受け継がれている
オススメ ★★★★☆

きびしい生活、日本人への差別・・・。
でも、文章は明るく澄んでいる。
読んでいて気持ちがよい。
家族愛、姉妹愛が強く感じられる。
ところで、この家族の両親がひよこ鑑定士。
もしかして、このあたり「フラワーオブライフ」に影響あり?
・・・と、思ったが、「きらきら」は2004年10月出版。
「フラワーオブライフ」は2003年7月から連載開始。
なんとなく、共通点を感じるんだけどなぁ。
PS
「草花とよばれた少女」と同著者。
おもしろさは同じくらい。

「オペラでたのしむ名作文学」中野京子(さえら書房)
内容 オペラを原作と比較しながら楽しむ
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
知識・情報 ★★★★
点数 88点
気分 原作と比べて、ここが違うのか!
オススメ ★★★★
不正確な知識、誤った思い込みを修正される。
例えば「カルメン」は代表的なスペインの物語、と思っていた。
しかし、原作はフランス人・メリメ、オペラもフランス語で歌われる。
さらに、カルメンはジプシー。
恋の相手ドン・ホセも正確にはバスク人。
「カルメン」が発表されたのは1845年。
ホセの生まれたナバラは、もとは王国で、スペインに統合されたのはこの数年前。
ホセも「もしスペイン人が、わが国の悪口をいったら、ただではすまないぞ」、と言っている。
現在でも独立運動でもめている。

他にも、「椿姫」では、ヴィオレッタは結核なのになぜ人前に出たのか?
まわりも受け入れたのか?、とか。
いろいろ情報を知ることができる。
PS
児童向けなので、サロメとか、アイーダは避けている。
そのあたり、少しもの足りないけど

「ひまわりっ」(7)東村アキコ(講談社)
内容 健一レジェンド第7弾
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★
点数 85点
気分 分析がするどく、ギャグがさえる
オススメ ★★★★
第76回「ボーンアイデンティティー」で宮崎名物チキン南蛮が紹介されている。
この濃い味付けが美味そう。
でも、作中の京都出身者が、
「こういう甘ったるい味の料理食われへんのですよ、
(中略)ポン酢でさっぱり食べた方が美味しいと違いますか〜?」
私もクライミング等で他の地域に行くと感じる。
味が濃すぎる、と。
関西人は薄味じゃ〜、と。
(外国に肯定的な意味で、「薄味」と言う語彙があるのだろうか?)
その素材本来が持つ味を消し去るような味付け反対!
うどんも薄味で食べたい。

2008年4月20日(日曜)

「ベルカ、吠えないのか?」古川日出男(文藝春秋)
「「悪いこと」したら、どうなるの?」藤井誠二(理論社)
「怖い絵2」中野京子(朝日出版社)


「ベルカ、吠えないのか?」古川日出男(文藝春秋)
内容 20世紀、「犬」をキーワードに読み解く
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★
ストーリー ★★★★☆
点数 93点
気分 驚いた、こんな小説があるのか?!
オススメ ★★★★☆

1943年、アリューシャン列島から物語は始まる。
アッツ島の玉砕をうけた日本軍はキスカ島から全面撤退。
無人の島には4頭の犬が取り残される。
ここから怒濤の展開となる。(驚くぞ)
第二次大戦を経て、朝鮮戦争、
ケネディ暗殺・・・1963
ベトナム戦争・・・1965−1975(アメリカ、泥沼)
アフガン戦争・・・1979−1989(ソ連、泥沼)
スターリン粛正時代
フルシチョフ(反スターリン・・・スターリンの独裁を暴露)
ブレジネフ(1964−1982、反フルシチョフ)
アンドロポフ(1982−1984、反ブレジネフ)
チェルネンコ(1984−1985)(ブレジネフ派、かつての右腕)
ゴルバチョフ―1989年米ソ和解冷戦終結
ざっと書くだけでも、すごい展開だ。
「犬」をキーワードにしながら描いていく。
ほんと、びっくり仰天、驚異の作品だ。

PS
関係ないけど、中野翠さんがロシアを「フサ」と「ツル」が交互に政権をとっている、
と(昔どこかで)書かれたのを思い出した。
スターリン(フサフサ)
フルシチョフ(ツルツル)
ブレジネフ(フサフサ)
アンドロポフ(ツルツル)
チェルネンコ(フサフサ)
ゴルバチョフ(ツルツル)
エリツィン(フサフサ)
う〜ん、「フサ」と「ツル」はイデオロギーと感情の対立を生むのだろうか?

「「悪いこと」したら、どうなるの?」藤井誠二(理論社)
内容 少年犯罪について・・・少年が犯罪を犯すと、どうなるのか?
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★
知識/情報 ★★★★
点数 84点
気分 もっと数多くの具体的な例を読みたい
オススメ ★★★★
新聞報道での少年犯罪。
では、具体的にどう処罰されているのか?
改心しているのか?
再犯率は?
1章、子どもでも、死刑になるの?
2章、「少年法」は、子どもを守ってくれるの?
3章、少年院って、どんなところ?
4章、「少年法」が改正されたのは、なぜ?
5章、犯罪少年の家族は、どうしているの?
6章、被害にあった人は、ゆるしてくれるの?
マンガも挿入されていて、あの「武富健治」さんが描いている!
内容は(主に)被害者の立場から書かれている。
これらは非常に気になる問題・・・もっと具体的な例を読みたい。
(基本的な部分は押さえているけど)

「怖い絵2」中野京子(朝日出版社)
内容 名画から恐怖を読み解く、パート2
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
情報・知識 ★★★★★
インパクト ★★★★☆
点数 93点
気分 著者の知識に驚き、分析に感嘆する
オススメ ★★★★★まずはパート1からどうぞ

著者の博識ぶりに感心する。
「聖ゲオルギウスと竜」の章はみごと。
当時の歴史、文化を解説しながら現代アメリカ批判になっているのがすごい。
竜は異教徒の象徴のみならず、諸々の災厄なども含めた諸悪のシンボル・・・と読み解く。
アメリカは、まだ自らを聖ゲオルギウスと信じているのだろうか、と。(P160参考)


2008年4月13日(日曜)

全国の書店員が売りたい本を選ぶ「2008年本屋大賞」が8日発表された。
伊坂幸太郎さんのミステリー「ゴールデンスランバー」(新潮社)。
【参考】
「2008年本屋大賞」を授賞した伊坂幸太郎さんの「ゴールデンスランバー」

さて、先週の読書は5冊。
以下のとおり。

「草花とよばれた少女」シンシア・カドハタ(白水社)
「まほろ駅前多田便利軒」三浦しをん(文藝春秋)
「あのころ、先生がいた」伊藤比呂美(理論社)
「見送りの後で」樹村みのり(朝日新聞社)
「そこをなんとか」(1)麻生みこと(白泉社)


「草花とよばれた少女」シンシア・カドハタ(白水社)
内容 第二次大戦、収容所での生活
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★
ストーリー ★★★★☆
点数 91点
気分 日本人の感性と文化が感じられる
オススメ ★★★★☆

たまに翻訳物をよみたくなるときがある。
これはヒット。
よかった、おもしろかった。
物語は1941年12月から始まる。
(著者は日系三世)
カリフォルニアの花農家。
日常生活がいきいきと描写される。
真珠湾攻撃から生活が一転。
アリゾナの収容所への移住。
そこはインディアンの居留地でもあった。
収容所での生活。
インディアンの少年との交流。
これはオススメ。

「まほろ駅前多田便利軒」三浦しおん(文藝春秋
内容 便利屋・多田の元に持ち込まれる難問珍事件、直木賞作品
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★
点数 85点
気分 変人多数登場で楽しい
オススメ ★★★★

便利屋・多田の元に高校時代のクラスメート行天が居候。
この行天をはじめ登場人物が変なヤツばかり。
この変人キャラ大集合のおもしろさ。
自称コロンビア人の娼婦・ルルとルームメイト・ハイシー。
ヒモのシンちゃん。
ヤクザの星と女子高生の彼女・清海。
チワワのハナちゃんと元飼い主・小学生のマリちゃん。
予言する曽根田のばあちゃん。
ストーリーがまとまりすぎない、ってのがいい。
様々なキャラが複雑に絡み合う。
(最近の作家は器用にまとめすぎる)
そう言う意味で小説らしい小説。
小説の王道、と言える。
PS
読んだ後で気づいた。
第135回(平成18年度上半期)直木賞受賞作品。
どうりでレベルが高いはずだ。

「あのころ、先生がいた」伊藤比呂美(理論社)
内容 小・中・高校時代、影響を受けた先生を振り返る
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
感性 ★★★★☆
分析 ★★★★☆
点数 88点
気分 詩人らしい感性と文章、言葉の選び方がみごと
オススメ ★★★★☆

文章がいい。
言葉の選び方がすばらしい。
例えば・・・
(以下、転載)

十歳、十一歳というそのころは、もう小さな子どもじゃなくなり、
親のもとから少し離れて、いつも友だちと群れていたい時期であります。
友人との関係も複雑になり、男の子もなんとなく気になりはじめ、
女の子どうしの愛憎はさらに激しく、仲間はずれになりやすく、仲間はずれが何より怖く、
いつもだれかとだれかが、くっついたり離れたりしていたものです。
(中略)
中学生って、最低な時期です。
十三歳や十四歳や十五歳。
十七歳や十八歳のように大きくはないし、九歳や十歳のように小さくもないし。
食べても食べてもおなかがすくし、でもなんだか身体は重たいし。
男/女の前に出ると不自然になるし、男/女のこと、考えないでいられないし。
にきびはできるし、経血はどばどば出るし。
友人は疑心暗鬼で意地悪だし。みんなと同じことしないといけないし。
同じことしてるとつまんないし。
何よりも悪いのは、自分がだれだったのか、価値があるのかないのか、
どこにいてどこに行くのか、わかんなくなってるってことです。
どんな自分を想像しても、これでいいってことはなくて、
これじゃいけないってことしか思いうかばない。
(中略)
毎日、焦って、孤独で、寂しくて、何かがほしくて、得られなくて、
じたばたして、でもなんにもできないで、できないということに、焦ってました。

(以上、転載終了)

長い引用でスマン。
表現が巧いので紹介したくなったのだ。(さすが詩人!)
著者は、そんな中で、『下がらない熱』『さめない夢』を手に入れていく。

「見送りの後で」樹村みのり(朝日新聞社)
内容 樹村みのりさんの最新作
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★
ストーリー ★★★★
点数 87点
気分 まさか新刊が出るとは、驚いた
オススメ ★★★★樹村ファンの方へ

2007年発表作と2006年発表作が入っている。
あぁ、まだ創作活動をされていたのですね!
作品を手にとって、懐かしいやら、うれしいやら。
読んでいて、ふと思春期に戻ったような気分。
書店に「ポケットの中の季節」(1)(2)が普通に並んでいた頃・・・。
(吉田秋生さんもデビューしてなかった)
今回の新作を読んで、「まだまだ現役」、と感じた。
力量は衰えていない。
完成度は高い。

「そこをなんとか」(1)麻生みこと(白泉社)
内容 新米弁護士奮戦記
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★
キャラクター ★★★★
ストーリー ★★★★
点数 86点
気分 期待以上におもしろかった
オススメ ★★★★
よくできている。
知識・情報としても興味深い。
このままドラマにしても高視聴率かも。
本来、依頼主の利益を第一に考えるが、
自分の趣味で暴走するのがおもしろい。
遺産問題、離婚調停等、興味深いテーマが満載。


2008年4月6日(日曜)

◎石井桃子さんが亡くなられた。
101歳だったそうだ。
子どもの図書館は今でも影響を受けている。
【参考】
訃報:児童文学者の石井桃子さん

◎各界のマンガ通が「その年一番のマンガ」を選ぼうと創設された「マンガ大賞」が3月28日発表され、
石塚真一さんの「岳」(小学館)が初の大賞に選ばれた。
【参考】
マンガ大賞:28歳でデビュー“遅咲き”の石塚さんが戴冠 “マンガ版直木賞”に感激

さて、今週の読書は5冊。

「夜は短し歩けよ乙女」森見登見彦(角川書店)
「ツレがウツになりまして。」細川貂々(幻冬舎)
「マーガレットにリボン」今野緒雪(集英社)

「医学のたまご」海堂尊(理論社)
「冬の動物園」谷口ジロー(小学館)



「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦(角川書店)
内容 京都を舞台にした青春小説+ファンタジー・・・か?
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★
点数 89点
気分 めくるめく饒舌に煙にまかれた気分
オススメ ★★★★

よく似た作品に「鴨川ホルモー」(万城目学)がある。
どちらも京都を舞台にした青春小説。
どちらも著者は関西出身、京都大学卒業。
共通点は多い。
でも、表現技巧は異なる。
「鴨川ホルモー」はファンタジーを前面に出しながら、それ以外はリアルな写実描写。
「夜は短し歩けよ乙女」はファンタジーを隠し味に使って、前面には出さない。
一見、普通の小説のように表現。
でも、かなりファンタジー濃度は高い、と感じる。
あとからボディブローのように効いてくる。
それにしても饒舌な文体だ。
なめらかな、滑るような文章。
この饒舌な文章に幻惑される。
PS
この小説に登場するヒロイン・・・誰かに似てない?
佐々木倫子さんの作品に登場しそうな。
東村アキコ作品、二ノ宮知子作品でもありそうな。
でも、小説では珍しいかも・・・ね。

「ツレがウツになりまして。」細川貂々(幻冬舎)
内容 夫が突然ウツになった!
一般的面白さ ★★★☆
個人的趣味 ★★★★
情報・知識 ★★★☆
インパクト ★★★☆
点数 80点
気分 ウツは突然やって来る
オススメ ★★★☆
旦那が突然ウツになった!
これをコミカルに、妻の立場から日常を描く。
でも、実際は大変だった、と思うよ。
要所要所に、旦那の書いたエッセイも挿入されていて、これが泣かせる。
例えば・・・(以下転載)

カトリック教会には結婚講座なるものがあり、ボクらを含めて8組のカップルが
半年もの間、講座に通っていた。(中略)今年は10年を振り返っての報告会ということになった。
相棒の番になって、彼女が立った。
「結婚式のときに読み上げた『誓約』を、また読み上げて胸にこみ上げるものがありました。
それは、『順境のときも逆境のときも、病気のときも健康のときも』というところです。
去年は彼が病気で・・・」そこまで言って、彼女は嗚咽で先がつづけられなくなった。(後略)


(以上、転載終了)
PS
うつ病は神経の伝達物質セロトニンの減少で起こるらしい。
故に、セロトニンの原料となるアミン酸トリプトファンがよい、とある。
具体的には、卵の白身、大豆製品、はちみつ、バナナ、納豆、牛乳等。

「マーガレットにリボン」今野緒雪(集英社)
内容 「伝統」ある私立女子高校「リリアン」を舞台に「女性同士」の「友情」を描く
一般的面白さ ???
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 95点
気分 これこそユートピア
オススメ マニア限定
「マリみて」シリーズ最新刊。
即購入、即読了、即昇天。
これこそ天国、ユートピア。

「医学のたまご」海堂尊(理論社)
内容 医学界を舞台にしたユーモア・ミステリ
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★☆
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★
点数 87点
気分 悪役藤田教授の造形がみごと
オススメ ★★★★
著名な作家・海藤氏の作品。
中学生が、ひょんなことから大学の医学生となる。
医学界、大人の権謀術数渦巻く世界に巻き込まれる。
反省として、「チーム・バチスタの栄光」から始めた方がよかったかも。
少し後悔。

「冬の動物園」谷口ジロー(小学館)

内容 昭和40年代自伝風作品
一般的面白さ ★★★☆
個人的趣味 ★★★★
キャラクター ★★★★
ストーリー ★★★☆
点数 81点
気分 昭和40年代がよみがえる
オススメ ★★★☆
あの谷口ジロー氏の若き日の姿。
『坊っちゃん』の時代」を未読の方はぜひ読んで欲しい。


2008年3月30日(日曜)

今週の読書は4冊。

「吉原手引草」松井今朝子(幻冬舎)
「<移情閣>ゲーム」多島斗志之(講談社)
「恋するヒロイン」中野京子(ショパン)
「牧神の午後」山岸凉子(メディアファクトリー)



「吉原手引草」松井今朝子(幻冬舎)
内容 江戸吉原を舞台にした第137回直木賞受賞作品
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★☆
点数 94点
気分 吉原ガイドブック+ミステリ
オススメ ★★★★☆

昨年(2007年)直木賞受賞作品。
おもしろかった。
ストーリーより構成と文章で読ませる。
見事な技巧。
読み進めるうちに吉原の仕組みと、そこで働く人たちが見えてくる。
全17章でそれぞれ一人称の語り。
引手茶屋内儀の語りから始まり、毎回語り手が変わる。
どうやら葛城という花魁が「事件」を起こしたらしい。
語り手が変わり、物語が進むに従い、事件の核心に迫ってくる。
どんな事件だったのか?
なぜ事件が起こったのか?
その後どうなったのか?
葛城自身は一度も登場することはない。
しかし、葛城とはどんな花魁だったのかが「語り」で見えてくる。
それにしても見事な技巧だ。
ミステリとしては弱いけれど、それ以上のものがある。
PS
吉原を舞台にした小説と言えば「花宵道中」 が思い出される。
どちらがおもしろいか?
情報、知識、技巧、キャラクターの描き分けでは本作「吉原手引草」
ストーリー、キャラクターの屈折、情感、情念では「花宵道中」かな。
で、私の趣味は・・・「花宵道中」
【参考】
松井今朝子ホームページ

「恋するヒロイン」中野京子(ショパン)
内容 オペラ案内
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
情報・知識 ★★★★☆
インパクト ★★★★
点数 93点
気分 分析と判断がすばらしい
オススメ ★★★★☆

副題は『オペラにみる愛のかたち』。
オペラに登場する様々なヒロイン。
ストーリーを紹介しながら、登場人物を分析していく。
トスカ、ヴィオレッタ、喋々夫人、カルメン・・・。
あいかわらず冴えた文章。
見事な分析と判断。
例えば「夕鶴」のつう。
与ひょうにとって「つう」は「母」である、と喝破する。
以下、転載。

『こうして奉仕することで愛をつないできた女性は、絶えざる自己犠牲を求められたあげく、
別れに際して愛した男性から追ってもらえない。
でもこの関係はふたりで作りあげてきたのだ。半分は彼女の責任でもある。
男は甘えながらも、案外どこかで感じとってはいた、献身的に尽くしてくれる女は、
自分を支配しようとしてそうしている、と。
だから彼は小さな女の世界から抜け出し、大きな都へ行きたがった。
金儲けをして、自分を試したがった。
抱きしめるばかりで冒険させてくれない母から自立したくなった。
つうから見れば与ひょうの変化は純真さの消滅だが、
別の見方をすれば彼の好奇心は知恵の始まりであり、
金儲けをしたいという気持ちは男らしさの発生といえよう。』


以上、転載終了。
なんとも、見事な論評だ。
さらに、この後「オルフェオとエウリディーチェ」をもってきて比較する。
(このあたりが並のオペラ紹介・評論と異なるところ)
ご存じのように、オルフェオはエウリディーチェを追って冥界へ行く。(古事記にも似た話あり)
著者は下記のように分析。
『手間のかかる女のほうが、愛される確率が高いような気がする。
それとも愛されている自信が、男にとって手間のかかる状況を作りだすのだろうか。』

う〜ん(絶句)。

「<移情閣>ゲーム」多島斗志之(講談社)
内容 政治国際謀略小説
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★
ストーリー ★★★★
点数 88点
気分 孫文が身近になった
オススメ ★★★★

多島斗志之氏のデビュー長編。
後に「龍の議定書」と改題され、今回「<移情閣>ゲーム」として復刻された。
スケールの大きな国際政治小説。
「中国と台湾の代表を握手させてほしい」とシンガポール華僑実業家。
そんなことが可能なのだろうか?
時代は1980年代前半。
大手広告代理店に持ち込まれる
ストーリーは少しひねりすぎ?
でもおもしろい。
孫文に興味がある方、オススメ。

「牧神の午後」山岸凉子(メディアファクトリー)
内容 山岸凉子バレエ作品集
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 95点
気分 あのニジンスキーが・・・、バランジンの妻マリアが・・・
オススメ ★★★★☆

3月29日に出版されたばかりの山岸凉子バレエ作品集。
表題作「牧神の午後」は20世紀初頭に活躍した天才ニジンスキーの悲劇を描いたもの。
さらに、バランシン妻マリアの物語「ブラックスワン」も収録。
どちらも読みごたえがある。
ただ残念なのは、既に読んでいる、ってこと。(何年も前に)
今回は復刻再編集版。
書棚から以前出版されたものを出して調べてみたら、
「牧神の午後」は朝日ソノラマ平成3年12月25日発行、
「ブラックスワン」は白泉社1995年(平成7年)7月15日発行、となっている。
でも、今回読み返してみて、当時読んだときよりおもしろく感じた。
感情が進化したのだろうか?

2008年3月22日(土曜)

今週の読書は7冊。

「口は災い」リース・ボウエン(講談社)
「鈴木先生」(1)〜(4)武富健治(双葉社)
「見晴らしガ丘にて」近藤よう子(青林工藝舎)
「とりぱん」とりのなん子(講談社)
「東京マーブルチョコレート」谷川史子(講談社)
「掃除当番」武富健治(太田出版)
「ルミとマヤとその周辺」ヤマザキマリ(講談社)



「口は災い」リース・ボウエン(講談社)
内容 20世紀初頭、ニューヨークを舞台にした歴史ドラマ+ミステリ
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★★
点数 95点
気分 アイルランド娘モリーがニューヨークの街を駆け巡る
オススメ ★★★★☆

誤って殺人を犯してしまったモリーは、
着の身着のままでアイルランドを飛び出しロンドンへ。
偶然知り合った女性から、話を持ちかけられる。
「自分の代わりに子供をニューヨークの父親の元まで連れて行って欲しい」、と。
船の中の描写、エリス島での手続きの様子、
20世紀初頭ニューヨーク風景。
それだけでも、十分おもしろいドラマ要素。
さらに、これにミステリが加わってくる。
エリス島で殺人事件が起きる。
船でモリーにセクハラと脅迫を行った男だ。
いったい誰が犯人なのか?
それにしてもこのヒロイン、よくしゃべる、よく動く。
ニューヨーク中を駆けまわる。
これはおもしろいぞ!
最近読んだ翻訳ものの中でもトップクラス。
オススメ。

「鈴木先生」(1)〜(4)武富健治(双葉社)
内容 現代の教育問題に鈴木先生が悩みながらぶつかっていく
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 95点
気分 教室は舞台だ、笑いと紙一重の絶妙さ
オススメ ★★★★☆

学校と教室を舞台にした、
先生と生徒の(あるいは先生同士の)ドラマ。
これはおもしろい!
鈴木先生が悩めば悩むほど作品の奥が深くなり、面白さが増す。
この設定、って似てない?
あの作品に?
「デトロイトメタルシティ」(通称DMC)に!?
笑いと紙一重のドラマ展開の境界線上でつま先たちをしている気分。
この境界線から「笑い」に転じたのが「DMC]で、
「シリアスドラマ」に転じたのが「鈴木先生」だ。
この鈴木先生、悩む、悩む。
その悩みがストーリーを推進し、読者は楽しむ、って訳だ。
おみごと!
PS
この作品以外に、学校、先生、教育を扱ったオススメは・・・
「先生がいっぱい」安田弘之(全3巻)
「光の島」尾瀬あきら(全8巻)


「見晴らしガ丘にて」近藤よう子(青林工藝舎)
内容 不幸ではない、幸福でもない普通の人びとを描く
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★
ストーリー ★★★★☆
点数 88点
気分 近藤よう子さんの代表作のひとつ、一度読んでおきたい
オススメ ★★★★

特に不幸でもない、幸福でもない人たち。
その生活の断片を切り取ってみせる。
近藤よう子さんの佳作。
このような文学的切り口は、あまりなかった。
でも、今は志村志保子さんもいる。

「とりぱん」とりのなん子(講談社)
内容 鳥の生態エッセイコミック
一般的面白さ ★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★
ストーリー ★★★★
点数 85点
気分 ホッと一息
オススメ ★★★★

こんな作品もあるのか?
鳥の生態、エッセイコミックだ。
こんなのもテーマになるのか?
でも、おもしろい。

「東京マーブルチョコレート」谷川史子(講談社)
内容 プロダクションIGと谷川史子さんのコラボ!
一般的面白さ ★★★☆
個人的趣味 ★★★☆
キャラクター ★★★★
ストーリー ★★★☆
点数 84点
気分 あの攻殻機動隊のプロダクションIGが?!
オススメ ★★★☆マニアの方は必読

「掃除当番」武富健治(太田出版)
内容 武富健治さん初期作品集
一般的面白さ ★★★☆
個人的趣味 ★★★★
キャラクター ★★★★
ストーリー ★★★☆
点数 85点
気分 「鈴木先生」につながる作品の数々、要チェック
オススメ ★★★☆

「ルミとマヤとその周辺」ヤマザキマリ(講談社)
内容 ノスタルジック昭和ストーリー
一般的面白さ ★★★☆
個人的趣味 ★★★★
キャラクター ★★★☆
ストーリー ★★★★
点数 84点
気分 鍵っ子が珍しかった頃の昭和を思い出す
オススメ ★★★★


2008年3月15日(土曜)

第12回手塚治虫文化賞「マンガ大賞」の候補作が決まった。
チェックしてみて。
マンガ大賞の候補に10作品 手塚治虫文化賞

さて、今週の読書は以下のとおり。
「サンダカン八番娼館」山崎朋子(文春文庫)
「昭南島に蘭ありや」(上)(下)佐々木譲(中公文庫)
「二十歳のバースディ・プレート」清原なつの(本の雑誌社)


「サンダカン八番娼館」山崎朋子(文春文庫)
内容 底辺女性史の名著
一般的面白さ ★★★★★長い間絶版であったが、新装版で復刻。
個人的趣味 ★★★★☆
情報・知識 ★★★★★
インパクト ★★★★★
点数 92点
気分 波に飲み込まれる
オススメ ★★★★★一度は読んでおきたい

先日「白楼夢−海峡植民地にて」(多島斗志之)を読んだ。
1920年代シンガポールを舞台にしたフィクション。
作中で妓楼について触れてあった。
その箇所を読んでいて、「からゆきさん」関連書籍を読みたくなったのだ。
どのように連れてこられたのだろうか?
どのような待遇だったのだろうか?、と。

著者は文学を著したわけではない。
学術的な史料を残そうとしたようだ。
紀行文の形式をとっている。
(途中で一人称の語りとなる、これもいい)
この作品の魅力は、「からゆきさん」であるおサキさんの魅力だ。
著者がおサキさんと出会わなかったら、この作品は生まれなかった。

文章は淡々として、過酷な過去が語られていく。
故に、硬い印象が持たれる。
しかし、ときたま著者の感情が大きく振幅する。
読者の感情は満水状態。
そこに大きなうねりがくるのだ。
シンクロし、波に飲み込まれる。
それもこの作品の魅力になっている。

さて、この作品は底辺女性史の名著にして古典。
そのわりに92点は低いんじゃない?、と言われるかもしれない。
それは単に私の趣味の問題。
一カ所引っかかったのだ。
それは取材方法。
おサキさんに対してフェアじゃないような。
結果として、「しかたない」とも言えるが。
(おサキさんは許しているが、私はひっかかる・・・もっと早く告白しろ、と)
軽く許すおサキさんは偉大だ。
一度読んでみて。

【参考】
島原紀行
からゆきさんの小部屋
Yahoo!地図情報 - 熊本県 - 天草

「昭南島に蘭ありや」(上)(下)佐々木譲(中公文庫)
内容 シンガポールを舞台に太平洋戦争裏面史
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★
ストーリー ★★★★☆
点数 91点
気分 砲弾の中ジャングルを這い回る
オススメ ★★★★

昭和16年から20年のシンガポールが舞台。
主人公は台湾生まれの青年。
昭南島とは、日本人が占領したときのシンガポールのこと。
そして、「蘭」とは?

先日「白楼夢」を読んでシンガポールに興味を持った。
他にないだろうか、シンガポールを舞台にした作品が・・・。
そして、見つけたのがこの作品。
おもしろかった。
主人公は台湾生まれの客家(ハッカ)、って言う設定がよい。
中国は多民族国家で9割以上が漢人。
(ちなみに清朝は満州民族の国家)
漢人は東南アジア等へ移住した場合、「華人」と称した。
(現地移住先の国籍を取得せず中国籍を有したままの場合は「華僑」となる)
客家は華人(あるいは華僑)の中でも少数派らしい。
また、「中国のユダヤ人」とも言われ、教育水準が高く、流通、商業に従事する者が多かったらしい。

物語は、最初は英国による支配、
ついで日本人の占領、そして敗戦、とめまぐるしく変化する情勢を舞台に
英国人、日本人、華人が争い、諜報戦を繰り広げる。
帚木蓬生氏の「逃亡」 での香港占領描写と同様に、シンガポール陥落時もひどい。
つまり虐殺、残虐行為があったようだ。
さらに、華人同士の確執も描かれている。
民族同士の対立よりは国共合作での不和が中心に描かれる。
「白楼夢」では潮州と福建人の対立が描かれていたけど)
興味深く、エキサイトしながら読んだ。

さて、例によってこの作品は絶版状態。
古本屋で見つけて購入した。

PS1
ストーリー本流とは関係ないが、気になることがある。
女性の描かれ方が美化されすぎているような。
娼婦の麗娜が男性に都合良く描かれすぎているような。
男性作家の一般的傾向か?

PS2
客家で有名人と言えば、洪秀全孫文ケ小平


「二十歳のバースディ・プレート」清原なつの
内容 バースディ・プレートにまつわる連作長編
一般的面白さ ★★★☆
個人的趣味 ★★★★
キャラクター ★★★☆
ストーリー ★★★★
点数 85点
気分 メルヘンなのか、現実的なのか?
オススメ ★★★☆
よくできた連作長編。
でも、私の好みは「夏時間」。
おまけについていた短編。
キャラクターを対比させながら、
変化の瞬間を描く、ってのが好み。

2008年3月8日(土曜)

「情熱の女流「昆虫画家」メーリアン波瀾万丈の生涯」中野京子(講談社)
「バックパッカーパラダイス」さいとう夫婦(旅行人)
「町でうわさの天狗の子」(1)岩本ナオ(小学館)
「サボテン姫とイグアナ王子」清原なつの(本の雑誌社)
「光の海」小玉ユキ(小学館)
「羽衣ミシン」小玉ユキ(小学館)

「情熱の女流「昆虫画家」メーリアン波瀾万丈の生涯」中野京子(講談社)
内容 ドイツ/バロック期の女性・メーリアンの生涯
一般的面白さ ★★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
情報・知識 ★★★★☆
インパクト ★★★★★
点数 96点
気分 読み応えがある
オススメ ★★★★★マニアは必読!

17世紀から18世紀に生きたドイツ女性・マリア・シビラ・メーリアン。
植物画家で昆虫学者。
現代から見ても、充分変人、と思われる虫好き女性。
この女性の生き様をドイツバロックの歴史と重ねながら、紐解いていく。
バロック期の「虫愛ずる姫君」の物語だ。(貧乏だけど)
かなり読み応えがある。
おもしろい!

実は、当時「虫好き」、って言うのは危険。
なぜなら、虫に詳しい、ってだけで魔女裁判で火あぶりにされた女性がいるくらい。
昆虫は悪魔の仲間、と多くの人が信じていた。
しかし、彼女は虫を集め、研究を続ける。
結婚もしたが破綻。
子供を連れてオランダへ移住。
さらに熱帯の虫を見たくて、南米スリナムへ移住する。
(船で3ヶ月かかる、しかもその時彼女は52歳)
驚異の虫好きだ。
著者は、資料を駆使し、丁寧に分析、
当時の歴史と照らし合わせながら、物語を進めていく。
その時、彼女がどう感じたのか状況から推理していく。
その生き生きした女性像を描いていく。
見事な筆力だ。

この作品は読書の楽しみを満足させてくれる。
しかしながら、内容が内容だけに一般受けせず絶版、入手困難。
仕方がないので図書館で借りて読んだ。

PS
メーリアンの後世への影響は計り知れない。
昆虫学のみならず、博物学、美術絵画への影響。
現在は再評価され、切手、紙幣に彼女の肖像が使われ、
学校、船にも彼女の名前が使われるくらいドイツで人気。(紙幣はユーロになるまでのマルク)
また、マイセンで花の図柄があれば、メーリアンの画集が元になっている、と言う。
ゲーテ曰く、「感覚的悦びを完璧に満足させる」、と。

【参考】
マリア・ジビーラ・メーリアン - Wikipedia

「バックパッカーパラダイス」さいとう夫婦(旅行人)
内容 夫婦で世界一周貧乏旅行2年半の記録
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★
知識 ★★★☆
インパクト ★★★☆
点数 84点
気分 やってみたい
オススメ ★★★☆
夫婦で2年半も旅を続ける、ってのがすごい。
ある程度、年齢を重ねると貧乏旅行はつらい。
私もアウトドアをしてるけど、テントはしんどくなってきた。
上げ膳据え膳ベッドで寝たい。
これじゃあムリかな?

「町でうわさの天狗の子」(1)岩本ナオ(小学館)
内容 母は人間、父は天狗、って女の子の日常ファンタジー
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★☆
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★
点数 93点
気分 ファンタジーと日常生活のみごとな融合、筆加減がよい
オススメ ★★★★☆なかなか味がある、読んでみて
羽海野チカさんが推薦されていたので読んだ。
さすがにおもしろい。
天狗の存在が日常に溶け込んでいる。
主人公は天狗の子で力持ち、って事以外は普通の女の子。
舞台になっている田舎の雰囲気がよい。(岡山県内陸部?)
動物の絵(たぬき、キツネ、うさぎ)も味がある。
なお、「Yesterday,Yes a day」 も読んだが、
こちらは上記作品ほどおもしろくなかった。
(もともと対象読者層にオヤジは含まれてない、って)

「サボテン姫とイグアナ王子」清原なつの(本の雑誌社)
内容 清原なつの短編集
一般的面白さ ★★★☆
個人的趣味 ★★★★
キャラクター ★★★☆
ストーリー ★★★★
点数 83点
気分 シリアスな展開でも妙にユーモラス
オススメ ★★★☆
「ロストパラダイス文書」と表題作がよかった。
短編集だけれど、脈絡一貫性はない。
ごった煮って感じ。

「光の海」小玉ユキ(小学館)
内容 人魚がテーマのオムニバス
一般的面白さ ★★★☆
個人的趣味 ★★★★
キャラクター ★★★☆
ストーリー ★★★★
点数 84点
気分 普通に人魚がいる日常
オススメ ★★★☆
日常に人魚がいるのを、自然に描写。
違和感なし、ってのが筆力でしょう。
新人なのに巧い。
でも、なにかもの足りないものを感じる。

「羽衣ミシン」小玉ユキ(小学館)
内容 小玉版・鶴の恩返し
一般的面白さ ★★★☆
個人的趣味 ★★★★
キャラクター ★★★☆
ストーリー ★★★★
点数 87点
気分 ほんのりとせつない
オススメ ★★★☆
同じ小玉作品だけれど、こちらの方がおもしろく感じられた。
日常の中に異分子が入り込んで登場人物と生活を共にする・・・、ってのは藤子F不二雄さんの得意技。
小玉作品はファンタジー色が強い。
エンディングも余韻を残して好ましい。


2008年3月7日(金曜)

今日は情報をいくつか羅列する。

★三省堂サイトに外来語コラムのページがある。
例えば、「プロパー」、って言葉。
日本では、「正社員」「生え抜きの社員」、てな意味に使われている。
また、医療業界では製薬会社の営業マンが「プロパー」、って呼ばれていた。
これが長い間、私には謎であった。
なぜ製薬会社の人間がプロパーなのか?
これを読んでやっと解った、謎氷解。
ちなみに彼らは、MR(medical representative)と呼称が変わった。
90年代半ば頃だった、と記憶している。
(90年前半は、まだプロパーと呼ばれていた、と思う)
なぜ呼称が変わったのか?
医師に対してあまりに過剰な営業活動(学会の資料集め、引越しの手伝い、接待等、もう何でもアリ)
・・・で、イメージ悪化のためだ。
[三省堂辞書サイト]10分でわかるカタカナ語

★噂の作品「中原の虹」が吉川英治文学賞を受賞。
私は未読だが、おもしろい、と聞いている。
吉川英治文学賞に浅田次郎氏「中原の虹」
講談社BOOK倶楽部:中原の虹

★3月1日から「ライラの冒険 黄金の羅針盤」が始まった。
(関西はどうなんだろう?)
下記のサイトでダイモン占いができる。
ちなみに筆者は「蜘蛛」だった。(3回やって、いずれも同じ結果)
PS
この原作は既に読んでいる。
過去のこの【覚書】を調べたが、見つけられなかった。
という事は、だいぶ前なのだろう。
(これから映画を見ようとする方のためにコメントは控える)

映画『ライラの冒険 黄金の羅針盤

★葉っぱの絵ばかり描いておられる方がいる。
群馬直美さんだ。
木の葉の絵を見ていると、心が和む。
以下のサイトを見てみて。
木の葉の美術館


2008年3月1日(土曜)

「白楼夢−海峡植民地にて」多島斗志之(創元推理文庫)
「復讐はお好き?」カール・ハイアセン(文春文庫)
「ソナタの夜」永井するみ(講談社文庫)
「青空チェリー」豊島ミホ(新潮文庫)


「白楼夢−海峡植民地にて」多島斗志之(創元推理文庫)
内容 1920英国領シンガポールを舞台にしたミステリ
一般的面白さ ★★★★★
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★☆
ストーリー ★★★★★
点数 95点
気分 歴史小説、冒険小説、ミステリ渾然一体のおもしろさ
オススメ ★★★★★

おもしろい!
1920年代英国領シンガポールが舞台、ってだけで興味津々。
日本人同士の確執。
華僑も一枚岩でなかった、と言う事実。
英国人の支配体制、階級制度。
ゴム農園、妓楼の様子。
ストーリー展開と共に、当時の風俗が浮き上がってくる。
もし難を言うなら、物語全体が淡泊な印象。
(好みの別れるところだけど)
白蘭をもっと登場させてほしかった。
呂家の兄弟関係(呂鳳生、虎生)を白蘭を交えて詳細に描いて欲しかった。
無い物ねだりだけど。
淡泊な文章が多島作品の魅力なのだから。

「復讐はお好き?」カール・ハイアセン(文春文庫)
内容 ユーモアミステリ
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★☆
キャラクター ★★★★
ストーリー ★★★☆
点数 82点
気分 楽しく読める
オススメ ★★★☆、日本でもファンが多いようだ
結婚記念日の船旅で、夫によりデッキから夜の海に突き落とされる。
九死に一生を得た妻・ジョーイは復讐を決意する。
この作品のおもしろさは、登場人物にある。
悪役も刑事も変人ばかり。
ちなみに、私のお気に入りはトゥールである。

「ソナタの夜」永井するみ(講談社文庫)
内容 不倫を扱ったオムニバス短編集
一般的面白さ ★★★☆
個人的趣味 ★★★★
キャラクター ★★★★
ストーリー ★★★★
点数 86点
気分 テーマがナンなんですっきりしないが、感情は揺さぶられる
オススメ ★★★☆

オビの宣伝文句はこうだ・・・
狂おしいほど切実な七つの危険な恋愛

7編のオムニバス短編集。
「ミルクティ」
「秋雨」
「緑深き淵」
「彼女の手」
「隣の公園」
「唐草といふもの」
「ソナタの夜」
いずれもレベルが高い、感情が揺さぶられる。
例えば次のような文章。(P152)
・・・夫との間にあったのも、恋愛というよりは、上手に助け合って
効率的に人生を歩もうじゃないかという取り決めに近い。
一人の男を想うだけで、男の肌に触れるだけで、
体がとろとろに溶けていくような感覚を覚えたことはなかった。
焼き上がったばかりのスフレのように熱く甘い瞬間は、
もう二度と私の人生には訪れないだろうと考えていた。

どうです?
気分はほとんど不倫妻。

ところで、この作品は永井するみ作品の中で重要な位置にある。
なぜならミステリ作品ではないからだ。
いままでずっとミステリにこだわってきたのに。
犯罪を扱った作品ばかり書いてきたのに。
しかし、これが契機となり、
「年に一度、の二人」
「ドロップス」
「グラデーション」
・・・と続くのだ。
その意味で重要な作品であり、岐路でもある。

PS
「彼女の手」を読んでいて、瀬戸内晴美「妻たち」の1シーンを思い出した。
PS2
1月に発売されたばかりなのに絶版状態。
数店舗めぐって入手した。

「青空チェリー」豊島ミホ(新潮文庫)
内容 豊島ミホ初期短編集
一般的面白さ ★★★
個人的趣味 ★★★☆
キャラクター ★★★☆
ストーリー ★★★
点数 78点
気分 少し趣味がずれる、残念
オススメ ★★★
他の作品に比べると、魅力はイマイチだけど。
でも、この作品によりデビューしたことを考えると、重要な作品。
既刊で筆者の好みは・・・
(1)「夜の朝顔」
(2)「檸檬の頃」
(3)「エバーグリーン」
・・・の順位かな。

2008年2月23日(土曜)

先週から5冊ほど読んだ。
古いのもあれば新しい作品もある。
「千利休」清原なつの(本の雑誌社)
「鴨川ホルモー」万城目学(産業編集センター)
「スイート・ダイアリーズ」須賀しのぶ(角川書店)

「3月のライオン」(1)羽海野チカ(白泉社)
「フェルメール全点踏破の旅」朽木ゆり子(集英社新書)
以下詳細。


「千利休」清原なつの(本の雑誌社)
内容 千利休の生涯
一般的面白さ ★★★☆
個人的趣味 ★★★★
点数 82点
気分 これが「へうげもの」の原点かも?
オススメ ★★★☆
清原なつのさんが、このような作品をかくとは驚いた。
SFユーモア作品を書いておられたような。
「アンドロイドは電気毛布の夢を見るか?」のような。(古い?)
現在の作品を読んでいないので、チェックしてみよう、と思う。
茶器が戦国武将への褒美恩賞として使われた。
上記表にも書いたが、もしかしたらこの作品が「へうげもの」に影響を与えたかも?
それなら大変価値があり、栄誉なことだ。

「鴨川ホルモー」万城目学(産業編集センター)
内容 **を使って大学生がチーム戦
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★
キャラクター ★★★★
ストーリー ★★★☆
点数 84点
気分 もっと読んでみたい
オススメ ★★★★

装丁は一般小説だが、内容はライトノベル系。
軽く読めて楽しめる、その意味で価値が高い。
(普通に楽しめる作品は意外と少ない)
前半は冗漫だけれど、残り三分の一くらいからエキサイトした。
(つまりサークルが**したあたりから)
なお、姉妹編に「ホルモー六景 」がある。
いずれ読むつもり
【参考】
著者第2作『鹿男あをによし』は直木賞候補になった。

「スイート・ダイアリーズ」須賀しのぶ(角川書店)
内容 女性仲良し3人が交換殺人を・・・
一般的面白さ ★★★☆
個人的趣味 ★★★★
キャラクター ★★★☆
ストーリー ★★★★
点数 84点
気分 女性同士の友情と破綻、少女から女へのシフトの難しさ
オススメ ★★★☆
著者初の一般向け小説。
昨年「野生時代」に集中連載されていたのを覚えている。
その時から気になっていた。
単行本になったので読んでみた。
さすがに文章はこなれている、うまい。
でも、これだけ小説が量産されている現実を考えると、
もう少しインパクトが欲しい、差別化するものが欲しいけど。
次作もフォローするつもり、気になる作家の1人だから。
PS
「女の子の食卓」(3)の「コンビニのお赤飯おにぎり」「冷凍したブルーベリー」を思い出した。
【参考】

  webKADOKAWA特設ページ
(動画インタビューあり)

「3月のライオン」(1)羽海野チカ(白泉社)
内容 東京下町を舞台、プロ棋士・零君の成長物語
一般的面白さ ★★★★★
個人的趣味 ★★★★★
キャラクター ★★★★★
ストーリー ★★★★★
点数 97点、気分はほとんど満点、でも初巻なので遠慮した
気分 物語に流れる空気がいい、温かさが伝わってくる
オススメ ★★★★★焦ってない人はある程度VOLがたまって一気読み、って手もある◎

待ってました。
羽海野チカさんの最新作だよ。
キャラクターと街の風景が一体となった雰囲気がいい。
もう、ひたすら浸っていたい。
両親と妹を一度に亡くし、天涯孤独となった零君。
親戚も一癖ありそうで、結局血の繋がらない父の友人宅に引き取られる。
そこで、覚え学んだ将棋。
でも、彼が入り込んだことでその家族同士も歯車がかみ合わなくなる。
結局、零君は家を出て東京下町に独りで住む。
そこで出会った人びとに(お互い)励まされ・・・って設定。
これからさらに、彼の未来が書き込まれていくだろう。
過去の人間関係もさらに書き込まれるだろう。
世話になった家の娘さんが重要キャラだが、未登場。
いつどういう形で登場するかが楽しみ。
PS
羽海野チカ作品のキーワードのひとつは「才能」だ。
「ハチクロ」でも天才とも言える森田やはぐちゃんをはじめ才能あるれる登場人物多数出演。
今回は才能なき人の「挫折」も描いてくれそうな予感がする。
どうだろう?
「ハチクロ」未読の方は全10巻一気読みしてみて。
ところで、昨年2007年は「のだめ」&「ハチクロ」で人気2分した感がある。(NANAはともかく)
私の感覚では「ハチクロ」の方がよりマニア度が高くおもしろい、と感じる。
伝統のお約束がちりばめられているから。
読んでいて原点にかえった喜びを感じたから。
もちろん「テレプシコーラ」が個人ベストだけれど。
【参考】
http://www.younganimal.com/3lion/index.html

「フェルメール全点踏破の旅」朽木ゆり子(集英社新書)
内容 3週間弱、フェルメールの絵を見るためだけの旅
一般的面白さ ★★★☆
個人的趣味 ★★★★
情報・知識 ★★★★
インパクト ★★★
点数 82点
気分 地理的な旅だけでなく、歴史的な旅も味わえる
オススメ ★★★☆フェルメール・ファンの方

オランダの画家・ヨハネス・フェルメール。
日本でもフェルメールファンは多い、と聞く。
その作品は世界中で三十数点のみ。
著者はニューヨーク在住のジャーナリスト。
3週間弱で世界中にちらばったフェルメール作品を踏破していく、って企画。
とはいえ、「旅」そのものには記述の重点はなく、作品の履歴と背景、読み解きが中心。
カソリックとプロテスタント、ナチスドイツ、ソ連により作品は右往左往している。
また、現在は全作品の三分の一がアメリカにある。
この著書はどうしてその美術館に所蔵されるようになったか、
その都市の歴史と共にひもといていく。
「寓意」についての記述も興味深かった。
(例えば「楽器」が「愛」を暗示する、とか)
入門書としていいかも。。
【参考】
恋するフェルメール 36作品への旅
謎解きフェルメール
フェルメールの受胎告知


2008年2月19日(火曜)

「深夜特急」(全6冊)沢木耕太郎(新潮文庫)
内容 インド・デリーからイギリス・ロンドンまで乗り合いバスで行く、ノンフィクション
一般的面白さ ★★★★★
個人的趣味 ★★★★★
点数 97点
気分 様々な感情が惹起される
オススメ ★★★★★

(1冊目)
《香港・マカオ》
第一章 朝の光 「発端」
第二章 黄金宮殿 「香港」
第三章 賽の踊り 「マカオ」
(2冊目)
《マレー半島》
(タイ、マレーシア)
シンガポール
第四章 メナムから 「マレー半島T」
第五章 娼婦と野郎ども 「マレー半島U」
第六章 海の向こうに 「シンガポール」
(3冊目)
《インド・ネパール》
第七章 神の子らの家 「インドT」
第八章 雨が私を眠らせる 「カトマンズからの手紙」
第九章 死の臭い 「インドU」
(4冊目)
《シルクロード》
パキスタン
アフガニスタン
イラン
第十章 峠を越える 「シルクロードT」
第十一章 石榴と葡萄 「シルクロードU」
第十二章 ペルシャの風 「シルクロードV」
(5冊目)
《トルコ・ギリシャ・地中海》
第十三章 使者として 「トルコ」
第十四章 客人志願 「ギリシャ」
第十五章 絹と酒 「地中海からの手紙」
(6冊目)
《南ヨーロッパ・ロンドン》
第十六章 ローマの休日 「南ヨーロッパT」
第十七章 果ての海 「南ヨーロッパU」
第十八章 飛光よ、飛光よ 「終結」
一年以上にわたるユーラシア大陸放浪・・・時に熱く、時に冷静に。
今までいろいろな紀行文を読んだがこれがベスト。
すばらしい内容。
自分の感情、行動を的確に表現、その距離感がよい。
全6冊の中でも、3,4冊目が白眉。
文化的な隔たりが大きいから。
カルチャーショックも大きい。
読んでいるだけでも衝撃が大きいのに、実際経験したらどうだろう?

エピソードを1つだけ紹介。(67ページ)
・・・インド編では、乞食が至るところにいる。
歩いていたら手が差し出され金を要求される。
あるとき著者が歩いているいると、7,8歳の少女がついてくる。
「10ルピー」、と声をかけてくる。
著者が首を振ると、慌てて「6ルピー」と言い直す。
首を振って歩き続けると「5ルピー」「4ルピー」「3ルピー」と下がっていく。
フト著者は気づく、
『少女はその金額で自分の体を買ってくれないかと言っていたのだ』、と。
少女に3ルピーを手渡し、グッバイと言って離れるが、ついてこようとする。

なんとも哀しいエピソードだ。
・・・多分、この子は意味が分からなかったんでしょうね。
「お金を恵まれた」、と理解できなかったんでしょうね。
「自分が憐れまれた」、と思いもしなかったんでしょうね。
もし私がその子ならどう感じただろうか?
おそらく頭の中はハテナ記号でいっぱいになっただろう。
(私のどこがいけなかったの?)、と。
(身体がくさかったのだろうか?)、と急いで沐浴に行ったかもしれない。
(私がかわいくないから?)、と悩んだかもしれない。
(服がおしゃれじゃないから?)、と悔やんだかもしれない。
(どうして私を買ってくれなかったの?)、とお腹をすかせて呆然としただろう。

他にも、読んでいて考えさせられるエピソード多数あり。
一度読んでみて。
全6冊と長いけど、読む価値有るよ。
長さを忘れるおもしろさ。
オススメ。

PS1
このような旅を、私もやってみたい。
(ほんとは30までにすべきだろうが)
でも、遅すぎることはない。
体力と気力が残っていたら・・・。
その為に胃腸を鍛えたい。
著者はあちこちの屋台で食っているが、ほとんど腹を下さず。
驚異の胃袋、である。
羨ましいかぎり。

PS2
この本の価値はなんだろう?
実用書、人生論、ルポルタージュ・・・いずれも中途半端。
では、この本のおもしろさは何か?
著者のリアクションが興味深いのだ。
アクシデントや事物、人物にたいする行動と感情。
それが考えるヒントになる。
心に感じるものがある。
様々に惹起されるものがある。
それがおもしろい。

【おまけ】
地球の歩き方マガジン、って雑誌がある。
96年に『旅に誘う本の特集』があった。
読者に選ばれたベスト5を転載する。
1位 「深夜特急」沢木耕太郎
2位 「遠い太鼓」村上春樹
3位 「ドナウの旅人」宮本輝
4位 「イギリスはおいしい」林望
5位 「バックパッカーパラダイス」さいとう夫婦
「河童が覗いたインド」妹尾河童
番外
色々
「ナマコの眼」鶴見良行
「香港旅の雑学ノート」山口文憲
「パパラギ」岡崎照夫
「絵でみる大世界地図」B・デルフ、R・ケンプ
「マレー蘭印紀行」金子光晴
「パリ旅の雑学ノート」玉村豊男
「気分は今もヨーロッパ」竹宮惠子
「コンスタンチノープルの陥落」塩野七生
*1位は「深夜特急」さすが!
*3位に「ドナウの旅人」がランクインしているが、
同著者では「愉楽の園」もおもしろい(タイが舞台)。



2008年2月12日(火曜)

オーストラリア・ネタをひとつ。
昨年、ハワード首相からラッド首相に政権交代があった。
外交畑らしく、温暖化問題にもそつなく対応。
今回は、先住民アボリジニ問題にも手をつけた。
私は知らなかったのだが、1970年代までアボリジニの家族から子どもを取り上げ、
白人の家族に預けて育てさせる、って政策が行われていたらしい。
(これが20世紀戦後民主主義なのか?)
先住民アボリジニの文化をまっこうから否定する政策。
白人の文化こそ最高、という思い上がり。
さすが白豪主義、と感心した。
この子どもたちを「盗まれた世代」と言うらしい。
今なお、DVによるPTSDに苦しんでいる方が多いらしい。
明日2月13日(水曜)、ラッド首相が公式謝罪する、とのこと。

PS1
イギリスが香港を中国に返還した際のコメントを思いだした。
「我々英国は香港経済に貢献した、感謝しなさい」、って感じだった。
PS2
でも、このエリート意識は白人に限ったことではない。
中国には中華思想があり、ユダヤ人は自ら神に選ばれた民とする。
さて、日本では・・・・?
PS3
【クライミング覚書】の方に書こうかと思ったけど、
あっちのページを読む人って、クライミングネタ以外興味なさそうなので止めた。

【参考】
豪政府、先住民に謝罪へ

2008年2月10日(日曜)

最近のこと、なじみの書店がEdyを導入。
試してみたけど、小さな装置にカードを当てるだけ。
お釣り不要なので便利。

さて、今週の紹介は以下のとおり。
「感傷コンパス」多島斗志之(角川書店)
「ウランバーナの森」奥田英朗(講談社文庫)
「女の子の食卓」(1)〜(3)志村志保子(集英社)
「聖おにいさん」中村光(講談社)

「GOSICK2」桜庭一樹(富士見ミステリー文庫)
「ファニおばさんと動物たち」ウィルトルート・ローザー(偕成社)
・・・詳細は、下記のとおり。

「感傷コンパス」多島斗志之(角川書店)
内容 山里、分校物語。
一般的面白さ ★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
点数 84点
気分 昭和30年が楽しめる
オススメ ★★★☆
またまたやってくれました、多島斗志之さん。
こんなジャンルにも挑戦。
前回読んだのが、「少年たちのおだやかな日々」だったので、えらい較差を感じた。
内容は、昭和30年伊賀山里の分校に新卒で赴任した、明子先生。
担任クラスの人数は、4年生と5年生を合わせて6人。
それぞれ個性的な子どもたち・・・、って話。
私はこういう話が好きなんだけど、
ドラマチックな展開もなく、他の人には「たよりない」と感じるかも。
それで、オススメ★★★☆とした。
(もちろん多島斗志之ファンの方は必読)
【参考】
感傷コンパス 多島斗志之
「多島斗志之作品」

「ウランバーナの森」奥田英朗(講談社文庫)
内容 実在モデルありの喪失と再生物語
一般的面白さ ★★★☆
個人的趣味 ★★★☆
点数 81点
気分 温かい気分
オススメ ★★★☆
奥田英朗氏初期の作品。
「町長選挙」で実在モデルありの作品をかかれたが、
既にこの作品で実験済み、だったのね。
私は奥田作品を多数読んでいるので、どうしても比較してしまう。
・・・他作品と比べてインパクト、吸引力が低いかな、と。
でも、作品全体に流れるユーモア、温かさは健在。
ちなみにモデルはMr.ジョン・レノンとMs.オノ・ヨーコ。
76〜79年の空白期間を扱っている。
80年はご存じのように「ダブルファンタジー」を発表し、凶弾に倒れる。
当時、新聞テレビで大きく取り上げられたのを覚えている。
PS
ウランバーナとはサンスクリット語で「苦しみ」の意味。
釈迦の弟子目連という僧侶が、あるとき地獄に落ちて苦しんでいる母をみつけて、
なんとか天国に送り届けてやりたいと思った。
そこで目連は釈迦の知恵を借り、さまざまなお祈りやお供えものを使って、
旧暦の7月15日に母親を救うことができた。
それを記念して釈迦が《ウランバーナの日》と決めた。
それが盂蘭盆会=お盆となった、と言う。
【参考】
「奥田英朗作品」

「女の子の食卓」(1)〜(3)志村志保子(集英社)
内容 オムニバスの傑作
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★★
点数 95点
気分 必ずしもハッピーエンドじゃないけど、充実感、幸福感
オススメ ★★★★☆

ひさしぶりにツボにはまった
これはおもしろいぞ。
レベルの高いオムニバス。
相当な手練れじゃ、画も巧い。
作品内容は(例えるなら)大島真寿美さん、笹生陽子さん、森絵都さんを彷彿させる。
今後、志村志保子さんは要チェックだ。
PS
いずれ時間を見つけてもう少し書き込みたい。
「志村志保子作品」

「聖おにいさん」中村光(講談社)

内容 男子2人でアパートシェア
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★★
点数 85点
気分 こんなのアリ?!
オススメ ★★★★
男子2人でアパートシェア・・・こんなのおもしろくない?
でも、その2人がブッダとイエスなら?
東京・立川でアパートをシェアし、下界でバカンス。
とんでもない作品を考えたものだ。
何でもありか?
クレーム付かなかったのか?
ブッダは急に後光がさしたり、
イエスは聖痕から血が流れたり・・・これがギャグなのか?
なぜか極道に慕われる2人。
笑えるギャグ多数。
仕事中に思い出し笑いしてしまうのが欠点。
PS
ギャグ好きな方は必読。

「GOSICK2」桜庭一樹(富士見ミステリー文庫)
内容 ヨーロッパの架空小国を舞台にしたミステリ
一般的面白さ ★★★
個人的趣味 ★★★☆
点数 83点
気分 楽しめる
オススメ ★★★
先日、直木賞受賞された桜庭一樹さんの長編ミステリ。
人気作品、シリーズ第二弾。
先週読んだ作品の続編。
ある山間の小さな村。
夏至が近づき、謎多き村で起きる不可解な殺人。
過去に起こった不可能な殺人とリンクしていく。
楽しめる。

「ファニおばさんと動物たち」ウィルトルート・ローザー(偕成社)
内容 ドイツの児童書
一般的面白さ ★★★
個人的趣味 ★★★★
点数 86点
気分 自立した女性のほのぼの生活、いい感じ
オススメ ★★★☆
女性が独りでおおぜいの動物と暮らす話。
(永井するみさんがインタビューでコメントされていたので、読んでみた)
けっこう共感する話。
よい雰囲気。
私もこんな生活をしてみたい。
動物も個性的で楽しい。
現在絶版状態、図書館で借りた。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

PS1
ATOK2008AAA優待版を購入、8400円。
ATOK17を使用してたけど、さらに便利になった。
連携電子辞書も一緒に購入したし。
変換機能も向上した。
96年から使っているけど、どんどん進化している。
(最初はマックで使用した、コトエリは最悪だった)

PS2
先日覚書(クライミング編)で「CIFとインコタームズに悩まされている」、と書いた。
シンガポールに100kgほど出荷したところ、
現地で木箱が損傷したのだ。
フォークリフトを突き刺したようだ。
CIFはどの時点まで適用するのか?
飛行機が着陸したときなのか?
インコタームズでもあいまい。

survey費用はどうするのか?($80)
なんとか解決したが、電話、メール、ファックスと大変だった。
読書とは関係ないけど、ぼやいてみた。
(私は会社の何でも屋)


2008年2月3日(日曜)

*今日は5冊紹介。
「算法少女」遠藤寛子(ちくま学芸文庫)
「GOSICK」桜庭一樹(富士見ミステリー文庫)
「くらしのいずみ」谷川史子(少年画報社)
「しゃべれどもしゃべれども」勝田文(白泉社)
「かわたれの街」勝田文(白泉社)
・・・詳細は、下記のとおり。

「算法少女」遠藤寛子(ちくま学芸文庫)
内容 江戸和算物語
一般的面白さ ★★★★
個人的趣味 ★★★☆
点数 84点
気分 当時の暮らしぶりが興味深い
オススメ ★★★☆
江戸時代には、様々な同好会、サークルのようなものがあったらしい。
その中に和算好きな方が少なからずいた、という。
(このことは、先日紹介した「烏金」でも出てきた)
この本を読む限り、「和算」のレベルは高い。
現在学校教育は西洋数学一辺倒だが、
当時の和算レベルは負けていない。
πの数値もかなりの精度で出しているし。
ではなぜ西洋数学に後塵を拝したのか?
この作品の本来の趣旨ではないが、理由が(結果として)説明されているように思う。
つまり、「流派」にこだわったからではないか?
茶道、華道、剣道と同じ。
家元や流派の枠が発展の妨げになったようだ。
作品内容自体おもしろいので、
江戸風俗や和算に興味のある方はどうぞ。
小説としては(私の好みでは)キャラがもう少し立って欲しかった。
少し、残念。
1973年、児童書の岩崎書店からの復刊なので、しかたないかも。
著者1931年生まれだし、多くを求めてはいけない。

「GOSICK」桜庭一樹(富士見ミステリー文庫)
内容 ヨーロッパの架空小国を舞台にしたミステリ
一般的面白さ ★★★
個人的趣味 ★★★☆
点数 83点
気分 わりと楽しめる
オススメ ★★★
先日、直木賞受賞された桜庭一樹さんの長編ミステリ。
人気作品、シリーズの第一弾。
ライトノヴェルらしく、キャラのツボは押さえている。
これだけしっかり押さえたら、マニアやファンがいるに違いない。
私も(もう少し)続編を読んでみたい気分だ。

「くらしのいずみ」谷川史子(少年画報社)
内容 さまざまな夫婦、家族ストーリー
一般的面白さ ★★★☆
個人的趣味 ★★★★
点数 89点
気分 上手い、泣けた!
オススメ ★★★★
谷川作品は初めて。
でも、当たり!
これは良かったよ。
全部で7編、ハズレなし。
レベルの高い短編集。
さまざまな夫婦、家族を描いている。
(一部作品リンクして、登場人物重なる)
オビの文句は以下のとおり。

日常にある幸せ、貴方にお届けします。
友達夫婦、姉さん女房、年の差結婚、仮面夫婦!?
人生いろいろ夫婦もいろいろ・・・
ほんのささいな日常、でもあったかい暮らし、そして大切な人・・・
夫婦の形いろいろあれば、暮らしもさまざま。
まったりゆったりな時間を過ごす家族達が貴方に幸せお届けします。
じんわり涙がでてくる、しみじみ家族ストーリー。

う〜ん、まったくそのとおり。
実際は(夫婦生活なんて)もっと過酷で容赦ない日常なんだろうけれど、
こういう夫婦愛の幻想、ファンタジーも美しいものだ。
一時の幸せを感じる。
(独身の私が言うのもナンですが・・・)

「しゃべれどもしゃべれども」勝田文(白泉社)

内容 あの佐藤多佳子さん原作
一般的面白さ ★★★☆
個人的趣味 ★★★★☆
点数 84点
気分 違和感なし、原作者も褒めている
オススメ ★★★☆
先日、「Daddy Long Legs」を紹介した勝田作品。
今回も原作ありで、仕上がり上々の作品。
よくできている。
実は、私は佐藤作品のファンなのだ。
そして勝田ファンでもある。
だからうれしい、楽しい、倍増だ。
原作者もあとがきで書いているけど、
勝田さんのレトロな感じの画が落語の世界を描いたこの作品に合っている。
作品内容は売れない落語家・三つ葉が素人相手に「話し方教室」を開くことから始まる。
集まってきたのは、変なヤツばかり・・・って話。
よかったら原作も読んでみて。
【参考】
「佐藤多佳子作品」

「かわたれの街」勝田文(白泉社)
内容 架空の街を舞台にした料理コメディ
一般的面白さ ★★★☆
個人的趣味 ★★★★★
点数 94点
気分 キャラクター全てに共感、幸せ気分
オススメ ★★★★

これはよかった、すばらしい出来映え。
完成度は高い。
架空の街(地方都市と思われる)が舞台。
時代は不詳、とてもレトロな雰囲気、昭和30年代のような・・・でも現代なんでしょうね。
ヒロインは豆腐屋の娘・高校生の木菜ちゃん。
著者はあとがきで「ゆるい」内容と表現してるが、これがいいんだよ。
料理の知識を織り交ぜながら、物語はゆっくりと進行する。
キャラクター全てに共感が持てる。
読んでいて、ずっと幸せな気分に。
これこそ勝田作品、みごと!
PS
これで、勝田文作品をすべて読んだことになる。
あとは、新刊を待つばかり。
【参考】
「勝田文作品」


PS
話は変わる。
奥田英朗 さんがインタビューで下記のように発言している。
(以下転載)
書きたいのは人の気持ちであって、ストーリーはどうでもいいんです(笑)。
一読者としても本を読む時に知りたいのは人の気持ちだし。
最初にプロットを立ててそれに合わせて登場人物を動かしたりするのはちょっと……。

・・・私も同感。
ストーリー中心の作品は趣味ではない。
私は登場人物の感情をトレースしたいのだ。
ディーテイルの積み重ねで(結果として)テーマが浮き彫りになる、ってのが好き。
奥田作品がおもしろい理由が分かった。

2008年1月31日(木曜)

WEB本の雑誌では、様々な人気作家のインタビューが掲載されている。
気になる作家を、下記に集めてみた。

第6回 : 金城一紀 さん
第12回 : 奥田英朗 さん
第16回 : 森 絵都 さん
第21回 : 山本一力さん
第52回 : 町田 康さん
第54回 : 桜庭 一樹さん
第55回 : 豊島 ミホさん
第65回 : 森見 登美彦さん
第67回 : 永井 するみさん
第69回 : 乙一さん
第71回 : 近藤史恵さん
第75回 : 花村萬月さん


2008年1月30日(水曜)

珍しく音楽ネタ。
先日、CD・DVDショップに行ったら、
70年代から新しい曲まで・・・次々にかかった。
それも名曲ばかり。
いったい誰が歌っているのか?
「シングル・アゲイン」が流れ、ガマンがちょん切れた。
店の人に聞いてみる。
「このアルバムは誰が歌ってるのですか?」
その女店員は、私を陳列棚に案内して、
「これです」、と。
徳永英明氏、3枚のCD、以下の作品。
これはすごい。
疾風怒濤の選曲だ。
PS
男性が女性ボーカルの曲をあつめて歌う、ってのが珍しい。


VOCALIST VOCALIST2 VOCALIST3
1. 時代 1. 雪の華 01. PRIDE (今井美樹)
2. ハナミズキ 2. いい日旅立ち 02. まちぶせ (石川ひとみ)
3. 駅 3. あの日にかえりたい 03. ENDLESS STORY (REINA starring YUNA ITO)
4. 異邦人 4. 未来予想図2 04. 桃色吐息 (高橋真梨子)
5. シルエット・ロマンス 5. かもめはかもめ 05. CAN YOU CELEBRATE? (安室奈美江)
6. LOVE LOVE LOVE 6. セカンド・ラブ 06. やさしいキスをして (DREAMS COME TRUE)
7. 秋桜 7. シングル・アゲイン 07. わかれうた (中島みゆき)
8. 涙そうそう 8. あなた 08. 迷い道 (渡辺真知子)
9. オリビアを聴きながら 9. 恋人よ 09. たそがれマイ・ラヴ (大橋純子)
10. ダンスはうまく踊れない 10. なごり雪 10. 恋におちて-Fall in Love- (小林明子)
11. 会いたい 11. M 11. Time goes by (Every Little Thing)
12. 翼をください 12. 瞳はダイアモンド 12. 月のしずく (RUI)
13. 卒業写真 13. for you・・・ 13. 元気を出して (竹内まりや)


2008年1月27日(日曜)

「烏金」西條奈加(光文社)
「少年たちのおだやかな日々」多島斗志之(双葉社)


「烏金」西條奈加(光文社)
面白さ
内容 大江戸金融エンターティメント
点数 93点
気分 時代小説ニュータイプ、爽快
オススメ
最初、「ナニワ金融道」大江戸版、かと思ったが、違った。
借金を取り立てるだけでおわらない。
そんなもんじゃない。
江戸時代の金融・金貸し業界の説明を挿入しながら物語が展開。
借金の取り立てより、生活の立て方を指南する。
切りつめるべき所は切りつめ、
新しい事業展開にも積極的。
後半、孤児の窃盗団にもかかわり、
まっとうな商売をするようにアドバイスしていく。
こんな時代小説は初めて。
こりゃおもしろいよ。
読んでみて。

「少年たちのおだやかな日々」多島斗志之(双葉社)
面白さ
内容 少年たちのおだやかならざる日々
点数 94点
気分 これが「離愁」と同じ著者?衝撃
オススメ
多島斗志之短編集。
(多島氏の短編集は希少)
裏を見ると、1994年4月15日出版、とある。
全部で7編。
言いません・・・小説推理93.5月
ガラス・・・小説推理93.7月
罰ゲーム・・・小説推理93.1月
ヒッチハイク・・・小説推理92.5月
かかってる?・・・・・・小説推理93.5月
嘘だろ・・・小説推理94.1月
言いなさい・・・小説推理93.11月

おどろいた。
いずれも一癖ある、繊細且つ、毒のある内容。
こんな作品も書くのか!
例えてみれば、乙一氏のような作品?
(ただし、乙一氏のデビューは1996年なので、この作品のまだまだ後)
と言うことは、多島氏はとんでもなく多才な作家、ってことだ。
「症例A」「離愁」「海賊モア船長の憂鬱」・・・どれもまったく異なる内容。
いったいどうなってるんだ?
すごすぎる。
PS
絶版状態、入手困難。
筆者は図書館で借りた。


【参考】
「多島斗志之作品」

2008年1月23日(水曜)

先日「赤朽葉家の伝説」読んで、コメントしたばかりの桜庭一樹さんが直木賞を受賞された。
下記を参考にして。

2008年1月20日(日曜)

「悩む力べてるの家の人びと」斉藤道雄(みすず書房)
「メンデルスゾーンとアンデルセン」中野京子(さえら書房)
「Daddy Long Legs」勝田文(集英社)
「恋のスリサス」東村アキコ(集英社)



「悩む力べてるの家の人びと」斉藤道雄(みすず書房)
面白さ
内容 べてるの家ノンフィクション
濃度 第24回 講談社ノンフィクション賞受賞
点数 85点
気分 「狂気は自分の本質的な謎のなかで目をさましている」ミシェル・フーコー
オススメ
精神病を持つものが集い、生活するべてるの家ノンフィクション。
以下、本文を転載する。

「医学とは、記述し分類し、病名をつけることはできるが、
その意味を説明することはできない」
「あなたは分裂病ですということはできるけれど、
ではどう生きるべきかについて検討するのは医学の責任外のことだ。
けれど、その部分を無視しているかぎり、患者の回復はありえない。
精神病は、結局のところ人間関係の問題である部分が想像以上に大きいのだから」
「つまりかんたんにいうならば、べてるの家の人びとがなしたことは
狂気との交流だったのではないか」
「けれど、それは交流することによって精神病が昇華されるという意味ではない。
精神病は、分裂病は、つねに私たちをその世界に引きもどすのである」
「自分自身と和解することのできた人のみが、人とも和解できる」

生きていくかぎり、他人事ではない。
つねに人間関係は存在するから。

【参考】
日刊気になるフレーズ: 悩む力――べてるの家の人びと|斉藤道雄

e-hon 本/悩む力 べてるの家の人びと/斉藤道雄/〔著〕


「メンデルスゾーンとアンデルセン」中野京子(さえら書房)
面白さ
内容 タイトルどおり
点数 87点
気分 こんなキャラだったのね
オススメ


オビの文句はこうだ・・・

人生における幸運とは?
ドイツの作曲家メンデスゾーン、デンマークの作家アンデルセン、
スウェーデンのソプラノ歌手リンド−
境遇も生まれも違う三人の出会いと別れを激動の十九世紀を舞台に描く。


これ以上説明することもないけれど、
中野京子さんらしく西洋史・西洋文化に通暁した知識で、
時代風俗を見事に再現・・・さすが。
読んでみて、オススメ。

「Daddy Long Legs」勝田文(集英社)
面白さ
内容 勝田文作品集
点数 84点
気分 絵が好き、雰囲気が好き
オススメ
内容いろいろ、勝田文作品集。
タイトルになった「Daddy Long Legs」はそのなかのメインとなる中編。
「あしながおじさん」をモチーフに、舞台を日本にしてアレンジしなおした作品。
原作を元にアレンジ、ってのは著者のスランプか?新境地か?
いずれにせよ、いい感じで仕上がっている。
マニア間での評価は高い、と思われる。
私も好ましく感じる。

→参考イメージ


「恋のスリサス」東村アキコ(集英社)

面白さ
内容 東村アキコ、初期短編集
点数 82点
気分 気になっていた作品を読んですっきり
オススメ
あちこちの書店をまわっても見つけられずに困っていた作品。
梅田の専門店で入手。
一番最初に出版された初期作品集。
さすがにおもしろい。
満足。

【参考】
「東村アキコ作品」

2008年1月18日(金曜)

おもしろいコラムを見つけた。
興味のある方、読んでみて。
今回は『日出処の天子』編〜その1。

少女漫画に学ぶ[ヲトメ心とレンアイ学]

2008年1月14日(月曜)

「天然コケッコー」(全14巻)くらもちふさこ(集英社)
「吉田秋生BestSelection」吉田秋生(小学館)
「キラキラまわる」今野緒雪(集英社)
「赤朽葉家の伝説」桜庭一樹(東京創元社)
「日傘のお兄さん」豊島ミホ(新潮文庫)


「天然コケッコー」(全14巻)くらもちふさこ(集英社)
面白さ
内容 僻地を舞台にしたほのぼのライフ
濃度 巧すぎる、さすが!
点数 95点
気分 くらもちワールドへようこそ
オススメ
実は、90年前半にリアルタイムで1,2巻を読んだことがある。
でも、その時は「ふ〜ん」、って感じでおもしろさ、すばらしさを理解できなかった。
今回14巻すべてを年末年始にかけて読んだ。
あれから15年たって(やっと)「すごい!」、と感じることができた。
絶妙な心理描写。
巧みな自然描写。
心理描写と自然描写の渾然一体となったくらもちワールドだ。
舞台はS県となっているが、島根県と思われる。
かつて出雲大社、玉造温泉に行ったことがあるし、
クライミングに行ったこともある。(Mウォールも訪問した)
親しみのある県だ。
機会があればこの舞台を訪問したい。
【参考】
街物語(4)】「天然コケッコー」漫画のままの田舎 島根県浜田市

「吉田秋生BestSelection」吉田秋生(小学館)
面白さ
内容 吉田秋生名作短編集
濃度 ハズレなし
点数 85点
気分 当時80年頃を思い出す
オススメ
1980年前後の短編集。
残念ながら、すべて読んだものばかり。
未収録の作品を期待してたんだけど。
1970年後半から1980年前半の作品ばかり。
当時を思い出すよ。
今読みかえしても、旧さを感じない。
初期段階から既に完成度が高い吉田作品だ。
初期作品を知らない方にはオススメ。
でも、これを読むんだったら*「夢みる頃をすぎても」を薦めるけど。
(*このタイトルからリンダ・ロンシュタットを思い出す)

「キラキラまわる」今野緒雪(集英社)
面白さ
内容 シリーズ最新刊
点数 87点
気分 まってました!
オススメ 薦めるつもりはない
シリーズ最新刊。
特に大きな変化なし。
身内の皆さんで、遊園地へお出かけ。
あとがきに「マリみて」はファンタジーか?、って話があったけど。
私は以前から「マリみて」はファンタジーだと思っている。
ユートピア・架空世界リリアンを舞台にしたファンタジーだ。
一時でも幸福感を味わえるなら、
読む価値は大いにあるでしょう。

「赤朽葉家の伝説」桜庭一樹(東京創元社)
面白さ
内容 戦後旧家女系3代記
点数 86点
気分 一気読み間違いなし
オススメ
2007年ミステリベスト上位作品。
おもしろさは保証しましょう。
長い作品だけど退屈せず。
最後までベクトルを維持。
戦後史としても楽しめる。
PS
何となく「ガープの世界」を思い出した。

「日傘のお兄さん」豊島ミホ(新潮文庫)
面白さ
内容 短編集
点数 81点
気分 けっこうバラバラな味付け作品
オススメ
これを読むと、まだまだ収納箱を心に持っていることが分かる。
一概に言えない価値観。
著者の意気込みが感じられる。
こう言うのか好き、
こんなのが書きたい、って。
世俗的で叙情派で・・・。
今回の文庫化にあたって、相当書き直したそうだ。
【参考】
「豊島ミホ作品」

2008年1月11日(金曜)

皆さん、あけましておめでとうございます。
長い間更新せず、すみません。
オーストラリア関連で心の余裕がなかったので。
帰国しても、ほっと一息、って気分にもなってないし。
(まぁ、それでも本は読んでるけどね)

とりあえず blue mountains行き帰りを中心に読んだ本を紹介。
それでなくても、荷物が多いので本は2冊に絞った。
まず、ハズレなし、って作品にした。
詳細は下記のとおり。


「誰か」宮部みゆき (光文社)
面白さ
内容 長編ミステリ
濃度 軽め
点数 75点
気分 カタルシスなし、中途半端な気分
オススメ

宮部作品としてはイマイチ。
(故に点数は辛めにつけた・・・期待より低かったから)
ミステリとしても中途半端。
どちらかというと姉妹の愛憎劇。
いずれにせよ、このエンディングはすっきりしない。
(まぁ、それでも充分おもしろいんだけどね・・・最後の方は一気読み)
ただ、この作品が発端となり「名もなき毒」へと続くことを考えると、
重要な作品でもある。

「離愁」多島斗志之 (角川文庫)
面白さ
内容 純愛小説+歴史+ミステリ
濃度 見事な風味
点数 98点
気分 この格調の高さ!
オススメ

旅の友、もう一冊は多島作品を選んだ。
おもしろい、と確信していた。
予想は裏切られなかった。
すばらしい。

格調の高い純愛小説。
(普段、筆者は純愛小説を読まない・・・多島作品だから読んだのだ)
歴史も学べ、ミステリとしての謎解きも楽しめる。
戦中、戦後、現在へと時代は流れ、
登場人物の連鎖も複雑に絡み合う。
あの有名な「ゾルゲ事件」も関わってくる。
2008年をこの作品で始められたことをうれしく思う。
自信をもって薦める、読むべし!

【参考】
→多島斗志之作品


昨年2007生活と覚書へ