「生活と覚書2007(文化・読書編)」   
【ぐーたら文化生活】

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2005.8.25設置  生活と覚書2006へ
2007年12月24日(月曜)

「彩乃ちゃんのお告げ」橋本 紡 (講談社)
「あいびき」勝田文(集英社)
「ひまわりっ」(6)東村アキコ(講談社)
「大奥」(3)よしながふみ白泉社


「彩乃ちゃんのお告げ」橋本 紡 (講談社)
面白さ
内容 連作長編
濃度 ごく一般的
点数 83点
気分 少し、しみいる
オススメ
3編からなる連作作長編。
小学生だけど、彩乃ちゃんは宗教の次期教主様。
それぞれ語り手は異なるが、
それぞれが彩乃ちゃんの「お告げ」により「幸せ」への切符を手にする。
大きな感動はないけれど、けっこう心にしみる。
少し軽めの文章だけれど、読みやすいし内容にもあっている。
読んでソンはないでしょう。

「あいびき」勝田文(集英社)
面白さ
内容 勝田さんの短編集
濃度 この「普通さ」がいい感じ
点数 82点
気分 good
オススメ
4編が納められている短編集。
様々な人情劇。
この「普通さ」はけっこう好み。
登場人物へのスタンスがいい感じ。
「あのこにもらった音楽」でも感じたけれど、
あたたかい視線がここちよい。

「ひまわりっ」(6)東村アキコ(講談社)
面白さ
内容 講談社モーニング連載コメディ
濃度 笑えるよ
点数 85点
読後 すっきり気分良好
オススメ

いつもの書店に行くと、「6巻でたよ」、と書店のオヤジ。
こんな早くに6巻がでるとは!
見逃していた。
さすが、なじみの書店、筆者の買う本を分かっている。
(少し怖い気もするが)
まっ、いっか。
おもしろかったし。

「大奥」(3)よしながふみ(白泉社)

面白さ
内容 SF+歴史
濃度 ジェンダーを感じる
点数 85点
気分 楽しみながらフェミニズムにつて考える
オススメ

家光の時代のつづき。
歴史の逆説を提示しながらも、
皮肉な結果を導き出している。
隠れたテーマ、フェミニズムとジェンダーが表面に出てきた。
でも、娯楽として楽しめる。
読んでみて。

2007年12月19日(水曜)

「キノベス」、ってのがあるらしい。
中野京子さんのブログ「花つむひとの部屋」に書かれていた。
全国紀伊國屋書店店員が選ぶベスト書籍、とのこと。
けっこうよいツボを押さえている。
下記を参考にして。

「怖い絵」、キノベス第7位に!

2007年12月16日(日曜)

「文春」、「このミス」が発表されましたね。

【文春】
1 「女王国の城」 有栖川有栖 東京創元社
2 「楽園」 宮部みゆき 文藝春秋(上/下)
3 「警官の血」 佐々木 譲 新潮社

【このミス】
1 「警官の血」 佐々木 譲 新潮社(上/下)
2 「赤朽葉家の伝説」  桜庭一樹 東京創元社
3 「女王国の城」 有栖川有栖 東京創元社

【参考】
『このミステリーがすごい!』ランクイン作品一覧

『週刊文春 傑作ミステリーベスト10』ランクイン作品一覧


【文藝春秋資料】

話は変わる。
BRUTUS最新号/特集・『読書計画2008』、だ。
そそられる特集だ。
32人が450冊紹介してくれている。
一度立ち読みしてみて。
(筆者は購入したけど・・・来月でよかったら貸し出しするよ)
450冊のうち2〜3冊でも「これ読みたい!」、ってのが見つかったら収穫だ。
多くを求めてはいけない。

【参考】
No.631
12月15日発売、550円(税込)


また、先日ダカーポ最新号・特集『今年最高の本』を紹介した。
こちらも購入済み。
(だいぶあちこち探した)
残念なことに、この号で休刊らしい。
(どうりで無いはずだ)
なお、この特集以外に『日本人のための「日本語」入門』特集も併設。
これも興味深い。
P122の「夜の日本語に本音という言葉はない!?」がおもしろい。

【会話例】
アフターに誘われたキャバ嬢の断り方
『本当は行きたいんだけど、閉店後店長に呼び出し食らってるの。
私、営業成績が悪くて怒られるみたい。こんな話できるのあなただけだよ。
ねぇ、また今度お店に来て私の話聞いて。あなたといると安心できるの』

【ビジネスシーンで応用】
上司:「飲みに行かないか」
平社員:「お誘いありがたいのですが、夜間の警備アルバイトがありまして・・・。 
    子どもも生まれ、僕が生活をちゃんど守っていかないとダメなんで」
上司:「そうか。お前の給料も考えてあげないとな」

(筆者:・・・そんなうまくいくかなぁ?)

【参考】
ダカーポ

2007年12月15日(土曜)

遅くなったが、「ダ・ヴィンチ1月号」の「テレプシコーラ」についてコメント。
降雪のため飛行機運休となる。
これは意味が深いような。
ローザンヌ旅立ちの日に雪が降る、ってことは?
六花(ゆき)にとって縁起のよいのか?
到着が間に合うのか?
ぎりぎりになるのか?
プレッシャーは?
コンクールにどう影響するのか?
さらに、今回は新たなキャラ・・・天才少女と言われる双葉ちゃんだ。
お母さん(バレエ教師を兼ねる)といっしょに登場。
今後の展開に重要に関わってくる、と思われる。
気になる人物だ。
まぁ、逆に言えば茜ちゃんでは六花ちゃんの相手として力不足になってきた、ってことだ。
バレリーナとしてもキャラクターとしても。
それだけ、六花ちゃんが成長してきた証しでもある。

2007年12月8日(土曜)

「駅から5分」(1)くらもちふさこ(集英社)
面白さ
内容 彩りのクロスオーバーストリー、とオビにある
一言 人を描いて街を表現、街を描いて人を表現
点数 93点
気分 パズルを解いている気分
オススメ


架空の街・花染町を舞台に、物語が展開。
人を描いて街を表現、街を描いて人を表現、って感じ。
街の中にも多重構造で「社会」がある。
・・・「小学校」「中学校」「高校」、
・・・街に住む人、他から訪問する人、
・・・花染町のネット社会まで描いている。
上記コミュニティーと人が多重構造でリンクし影響し合う。
さすが、ベテラン・くらもちふさこさんだ!
過去の作品では、あまりに表現が巧すぎて(内容より技巧が浮き上がり)、
感情移入しにくい作品もあったが、この作品は見事なできばえだ。
まだ1巻だけれど、まだまだ複雑にクロスオーバーしていくことでしょう。

「恋に死す」中野京子(清流出版)
面白さ
内容 歴史上の女性列伝
一言 こんなエピソードがあったのか!
点数 93点
気分 人生いろいろ・・・
オススメ


中野京子さん描く女性列伝。
有名な方も、私の知らなかった方も、
昔の人も、20世紀の人も、
西洋人も、日本人も。
松井須磨子からマリリン・モンローまで。
アン・ブーリンからヴィクトリア女王まで。
中野京子さんのすごいところは、西洋文化(歴史)も日本文化(歴史)にも造詣があって、
深い洞察力・観察力、文章力・表現力もある、ってことだ。
例えば、第1章は大納言久我雅忠の女二条「とはずがたり」。
これをフロイトの「夢分析」を用いて分析し、「トリスタンとイゾルデ」と比較する。
これは、なかなか出来ないよ。

ユングの愛人だったザビーナ・シュピールラインの章もよかった。
ユングがオカルト好きだったのは知ってたけど、
オットセイのようにハーレムを作りたいタイプだった、とは知らなかった。
「一夫多妻が自然の摂理」、と言ってたらしい。
(今だったら、上野千鶴子先生にしばかれていたかも?)

ハプスブルク帝国フェルディナンド皇太子妃・ゾフィの章も余韻が残る。
もともと女官だったが未来の皇帝と恋に落ちる。
数々の困難を乗り越え、2人は結ばれる。
・・・そして運命の時は訪れる。(NHK「その時歴史が動いた」の口調でどうぞ)
1914年、オーストリア領ボスニアの都市サラエヴォで陸軍の演習があり、
皇帝の代わりにフェルディナンドがその演習の視察に行く。
この時テロリストが夫婦2人をピストルで撃ち殺す。
そしてこの暗殺がきっかけとなって、二千万人もの死傷者をだす第一次世界大戦は始まるのだ。
当時のバルカン情勢は一触即発。
なぜ、それでも出かけたのか?
夫婦ならんで公の場に出られる数少ないチャンスだったから。
(身分の低さゆえ、ゾフィは公式行事から閉め出されていた)
最後のシーンも涙を誘う。
1発目はフェルディナンドに、2発目はゾフィに命中。
フェルディナンドは血を吐きながらも妻をかきいだき「ゾフィ、死ぬな。子どもたちのために」、と。

さて、中野京子さんの作品はほとんど絶版状態。
図書館で借りるしかない。
残念なことだ。

「グラデーション」永井するみ(光文社)
面白さ
内容 成長小説
一言 不倫も犯罪もない永井作品・・・おどろいた!
点数 91点
気分 12.5%ワインを飲んだ気分・・・good
オススメ

永井作品最新刊。
オビの文句はこうだ・・・
『一つ一つ、迷ったらいい。
歩き続けていれば、
日々は色濃くなってゆくものだから』


14歳から23歳までの10年間を描く成長小説・人生案内小説(ビルドゥングスロマン)。
(簡単に言えば、永井版「永遠の出口」だ!)
それにしても、このような作品を書いてくれるとは、びっくりした。
不倫も犯罪もない永井作品だぞ!
表紙に「永井するみ」の印字がなければ判らないかも?
今年7月に出版された「ドロップス」でも犯罪は起きなかったし。
(不倫はあったけど)
どうしたんだ?
ミステリにこだわってないのかも?
それはそれで、今後が楽しみだけど。
(私もミステリにこだわってないし)
ところで今回の作品だけど、きわだって大きな事件もエピソードもない。
等身大の身近なヒロインによる成長小説。
これが著者の略歴とダブらない。
著者の過去はもっと波瀾万丈。
1983年東京芸術大学音楽学部中退,
1987年北海道大学農学部農業生物学科卒業。
日本アイ・ビー・エム(株),アップル・コンピュータ(株)勤務,
フリーのコンピュータ・インストラクターを経て,作家業に入る・・・。
自伝を書いても、ドラマチックでおもしろいかもね?

PS
今回も印象に残る文章があったので紹介する。
自分がしんどい思いをしなければならないというのに、
しょうがないわねえ、と子供でも見るような目を向けている。
こういう余裕というか、心の糊しろのようなものがあるから、
別の誰かの糊しろと重ね合わせることができるのだ・・・


【参考】
「永井するみ作品」

****************
話は変わる。
「ダ・ヴィンチ」最新号読んだ?
book of the year特集。
1位、「夜は短し歩けよ乙女」・・・未読だけどいずれ読もうとチェック済み・・・来年かな?
2位、「楽園」・・・9月1日に読んだ。この【覚書】にもコメント済み。わりと良かったけど、2位にするほど・・・
3位、「一瞬の風になれ」・・・2006〜2007年末年始に読んだ。【覚書】1/14にもコメント済み。これは妥当。

まぁ、最大公約数だから筆者の感覚とずれるのはしかたない。
こんなもんでしょう。
ちなみに筆者の2007ベストは・・・

「カカオ80%の夏」永井するみ
「サクリファイス」 近藤史恵
「恋戦恋勝」梓澤要

「一瞬の風になれ」佐藤多佳子
「ドロップス」永井するみ
「夜の朝顔」豊島ミホ
「グラデーション」永井するみ
「花宵道中」宮木あや子
「ダブル」永井するみ
「檸檬の頃」豊島ミホ
「香港の甘い豆腐」大島真寿美

「小袖日記」柴田よしき
「ワーキングガール・ウォーズ」柴田よしき
「家日和」奥田秀朗(集英社)
「楽園」(上・下)宮部みゆき
「モップの魔女は呪文を知っている」近藤史惠
「窓際の死神(アンクー)」柴田よしき
「千年の黙」森谷明子
「やってられない月曜日」柴田よしき
「夜想」貫井徳郎
「夜よ泣かないで」香納諒一
う〜ん、たくさんありすぎる、って?
(ベスト10にしぼれない・・・)
2007年出版を中心に選んだけど、旧い出版物も入っている、って?
(まぁ今年読んだって事で、御容赦)

なお、上記に入れてないけどライトノヴェルも重要。
(どれが、どこからライトノヴェルなのか?って問題はさておき)
やはり、「マリみて」シリーズが1位。
今年出版された「マリみて」は・・・
「薔薇の花かんむり」今野緒雪
「フレームオブマインド」今野緒雪
「あなたを探しに」今野緒雪

「クリスクロス」今野緒雪
「流血女神伝」もよかった。(完結してしまった!)
「喪の女王」須賀しのぶ
(5)〜(8)が今年出版され11月に8巻が出てシリーズ全27巻完結じゃ!

今年は他にもいくつかライトノヴェルを試したが、
上記作品がダントツにおもしろかった。
他の作家の作品はイマイチだったので【覚書】にも書かなかった。
(つまり無視した)

なお、フィクション以外では・・・
「怖い絵」中野京子・・・これはダントツ1位!
「恋に死す」中野京子(清流出版)・・・これも確定!
「ビバ!私はメキシコの転校生」山崎まどか・・・これもよかった(絶版入手困難)
「ヤスマ君、立ってなさい!」安間繁樹
「西表島自然誌」安間繁樹
「世界の日本人ジョーク集」早坂隆
「オーパ!」開高健
「こんな映画が、」吉野朔実
「わたしのノラネコ研究」 山根 明弘
「大人のための文章教室」清水義範
「この本、おもしろいよ!」岩波書店編集部
「オラ!メヒコ」田口ランディ・AKIRA

「私の家は山の向こう」有田芳生
「ヒロインの日本史」梓澤要
「ナショナルジオグラフィック傑作写真ベスト100」
「日本の奇勝百景」中西栄一
(こちらも旧い作品が入ってるけど、今年読んだってことで御容赦)

対談では・・・
「あのひととここだけのおしゃべり」よしながふみ

コミックに関しては下記を参考にして・・・
「このマンガがすごい!」


2007年12月6日(木曜)

年末になってきたので、雑誌で「ベスト特集」が組まれてきた。
モレがないかチェックしたい。
・・・ダカーポ最新号が「今年最高の本」特集。

【参考】
ダカーポ

2007年12月5日(曜)

「きのう何食べた?」(1)よしながふみ(講談社)

面白さ
内容 日常系
濃度 軽いタッチだが、奥深いよ
点数 95点
気分 幸せな心持ち
オススメ

これはいいよ。
淡々と日常が描かれているが、
その平凡な中にもドラマがある。
主人公男性2人の関係がいい。
定石として対照的なキャラ設定だけど、2人とも好感が持てる。
家族との関係、職場の人間関係もきちんと描かれている。
(これは簡単のようで、なかなか出来ないよ)
主婦キャラ佳代子さんも、作品の中で安定感を与え、平凡だけど好ましい。
シリーズ1作目として快調な出だし。
次作が楽しみだ。

PS
吉田秋生さんのコメディタッチ作品を彷彿させるが、
料理へのこだわりが、よしながさんらしくて良い。

PS2
中野京子さんがブログで5代目市川団十郎さんの句を紹介されている・・・
「楽しみは春の桜に秋の月、夫婦なかよく3度食う飯」
・・・なんとなく、この作品に合っているように感じる。
【参考】
「幸せはいつも3月花のころ・・・」

*【参考】
きのう何食べた?ブログ

「よしながふみ作品

2007年12月3日(月曜)

「リアル」(7)井上雄彦(集英社)
面白さ
内容 車イスバスケの世界
一言 エンターテイメント、且つシリアスドラマの両立
点数 95点
気分 アドレナリン放出
オススメ

シリーズ7作目。
このシリーズはおもしろいよ。
現在連載されている作品では「テレプシコーラ」に匹敵する内容だ。
(シリアスドラマが展開する中でエンターティメントを演出する、って意味で)
作中キャラの中で、野宮がいい。
味がある。
数少ない健常者キャラだが、重要な役どころだ。
いい加減なところと、繊細なところもある。
やっぱりいい感じ。

【参考】
「このマンガがすごい!

2007年11月30日(金曜)

「1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター」五十嵐貴久(双葉社)
面白さ
内容 バンドストーリー、家族小説
濃度 一般的・・・少し軽めか・・・
点数 85点
気分 壮快にして、ほろりと・・・
オススメ

平均年齢40代おばさんのバンドストーリー。
家族小説でもあり、女性同士の友情物語でもある。
この著者・五十嵐貴久さんを知ってる?
私は知らなかった。
今年ヒットしたドラマ「パパとムスメの7日間」 の原作者だ。
そう言えば、なるほど、って感じ。
ツボを押さえたストーリー展開だ。
(女性同士の友情、ってのも最近流行のツボだ)
最後まで一気読み、読みやすいし。
楽しめた。

2007年11月29日(木曜)

モーリス・ベジャールさんが22日、スイス・ローザンヌの病院で亡くなられた。
下記参考のこと。

asahi.com:「春の祭典」「ボレロ」の振付家ベジャールさん死去 - おくやみ

舞踊界の巨人、ベジャール氏死去 - goo ニュース

2007年11月28日(水曜)

「あのひととここだけのおしゃべり」よしながふみ(太田出版)
面白さ
内容 マニアのマニアによるマニアのための対談
濃度 200%超濃厚スピリッツ限定品
点数 92点
気分 そうだったのか!
オススメ あなたがマニアなら◎

圧倒される、ただ圧倒される、ひたすら圧倒される。
この濃厚な言葉の数々。
そうだったのか、と膝をうち、
なるほど、と目から鱗が落ち、
そういう見方があるのか、と開眼する。
お互い創作者同士の対談なので、表現が巧い。

羽海野チカさんとの対談が好き。
賛否両論のエンディングについても説明されている。
真山と理花さんの関係がアンドレとオスカル、ってのも説得力がある。

さて、いろんな方と対談されいるが、
残念なのは山岸凉子さんとの対談がない、ってこと。
ホント、残念。
アラベスクからテレプシコーラまでしゃべりつくしてほしかった。

【参考】
「よしながふみ作品

2007年11月25日(日曜)

「残響」柴田よしき(新潮文庫)
面白さ
内容 SF+ミステリ
濃度 普通
点数 78点
気分 ストーリー少し暗め
オススメ △作品全体が暗いタッチ

死者の残留思念と共鳴できる能力をもつヒロイン。
警察はそれを利用しようとするが・・・。
ヒロインが前向きで、少しずつ努力して生活を築こうとする姿勢が共感できる。
でも、柴田作品が初めてなら他の作品からはじめた方がよい。

【参考】
「柴田よしき作品」

PS
話は変わる。
このところ、読書がすすまない。
年末年始ツアーに向けて、「資料」を読む必要があるから。
調べることが多すぎる。
岩場、観光、宿泊、レンタカー、道路、食事、費用・・・。
本を読んだり、ネットで調べたり。
メールでもいろいろ教えてもらっている。
あちこち迷惑をかけてるかも?
ある程度調べて、あとは「成り行き」、ってのが筆者のスタイル。

2007年11月18日(日曜)

「やってられない月曜日」柴田よしき(新潮社)
面白さ
内容 オフィス小説、日常系
濃度 ごく普通に楽しめるでしょう
点数 85点
気分 楽しめる
オススメ

「ワーキングガール・ウォーズ」の姉妹編のような作品。
上記作品をさらに日常風にした感じ。
読後感も良い。
ヒロインに恋愛沙汰が起こらないのが、なお良い。
作品全体の雰囲気に好感が持てる。
イメージ映像

【参考】
「柴田よしき作品」

2007年11月17日(土曜)

「サクリファイス」 近藤史恵 (新潮社)
面白さ
内容 スポーツ小説+ミステリ
濃度 一般的
点数 88点
気分 泣ける
オススメ ○オススメ

これは良かった。
おもしろいよ。
自転車ロードレース世界。
(ツールドフランスとかが有名だけど・・・やはりヨーロッパが最先端、クライミングの世界と同じ)
まったく知識がない状態で読んだが、充分楽しめる。
アスリートの世界を描いているので、クライマーならより楽しめるでしょう。
サイクルロードレースはチーム戦なので、エースを助けるアシストが重要。
アシストは風よけになったり、戦略の駒として動いてエースを助ける。
チームメンバーは平坦ロードに強い選手がいたり、
クライマーと言って、山道に強い選手がいたりする。
それぞれの能力に応じてエースをアシストする。
メンバーの性格も様々で、この描写が巧い。
主人公のプライベート部分「過去」エピソードも良くできている。
伏線となる事故があり、最後にまた「事故」が起こる。
最後はミステリー小説となり、この部分もレベルが高い。
そして、最後の結末は・・・。
これには泣けた。
すばらしい。
今年度ミステリベスト3に入る。

【参考】
近藤史惠さんのページ

2007年11月17日(土曜)

「喪の女王」(8) 須賀しのぶ (集英社)
面白さ
内容 流転ファンタジー
濃度 ライトノヴェル系
点数 85点
気分 ついに完結、感無量
オススメ ○大団円

とうとう完結、全27巻。
長かったけど、楽しめた。
もっと続いてほしかった。
でも、最後にかなりの登場人物が亡くなった。
おもなキャラクター激減。
××も○○も、△△も・・・。
でも、番外編はまだ出そう。
子ども世代のエピソードを読みたい。

2007年11月17日(土曜)

「わたしのノラネコ研究」 山根 明弘 (さ・え・ら書房)
面白さ
内容 iこんな研究があるのか?
濃度 普通
点数 78点
読後 楽しめる
オススメ ○ノラ猫に興味がある方
ノラ猫についての生態学。
やさしく解説。

 →イメージ映像 

2007年11月17日(土曜)

「日本の奇勝百景」中西栄一(東方出版)
面白さ
内容 i文字通り
濃度 普通
点数 75点
読後 楽しめる
オススメ ○風景写真の好きな方、奇岩を見たい方

日本にもこんな奇岩があったのか!
登りたいけど、天然記念物・・・残念。

参考イメージ

2007年11月14日(水曜)

天才バカボン」連載40周年記念。
「天才バカボン THE BEST」が話題になっている。
小学館と講談社から同時発売。
チェックしてみて。

【参考】

「天才バカボン」40周年記念

天才バカボンのおやじ

2007年11月11日(日曜)

「DEATH NOTE」大場つぐみ・小畑健(集英社)

面白さ ○まぁまぁ、そこそこ楽しめる
内容 死神が人間界に落としたノートをめぐって・・・
濃度 普通
点数 70点可もなく、不可もなし
読後 趣味にあらず
オススメ △話の種に・・・程度

話題になっているので12冊(108話)を読んだ。
そこそこ楽しめる。
しかし、趣味にあらず。(残念)
ムリに読む必要なし。
話題になっているので、話のタネにはいーかもね。

PS
小畑氏の描画は巧い。
相当な表現力。
他の作品もチェックしたい。

【追加説明】
さらに説明する。
なぜ趣味じゃないかというと、
ストーリー中心で進行するから。
もうストーリー展開のみ、って感じ。
キャラクターによるドラマがない。
これは原作者が最初から意図したことだ。
作品の方向性自体が趣味ではない。
これでは仕方がない、評価できない。
「趣味」ではないんだから。

ストーリーは見事かもしれないが、各キャラクターが悩まない。
だいたい「善人」と「悪人」、って何?
根本部分ですでに引っかかってしまう。
あまりに単純すぎる。(ハリウッド映画か?)
この2元論で解決できるなら、各地の紛争やテロはどうなる?

ではなぜヒットしたのか?
おそらくPS、ニンテンドーなどのゲーム世代が受け入れたから?
ベストセラー、って普段本を読まない人が購入した時に起きる現象だ。
つまり、そういうことでしょう。

2007年11月10日(土曜)

(A)「モップの精は深夜に現れる」近藤史惠(実業之日本社)
(B)「モップの魔女は呪文を知っている」近藤史惠(実業之日本社)
面白さ
内容 オフィスミステリ
濃度 ごく一般的
点数 A=85点, B=93点
読後 すっきりさわやかカタルシス
オススメ ○面白い、オススメ

シリーズ2作目と3作目にあたる。
掃除人キリコを主人公にした連作短編オフィスミステリ。
毎回、語り手は変わる。
働く場所・オフィスも変わる。
だんだん面白くなってきたぞ。
特に3作目「モップの魔女は呪文を知っている」がオススメ。
その中でも「第二病棟の魔女」が秀逸。
これだけでも読んでみて。
病院の様子、患者・親族、ナースの関係。
ナースのヒエラルキー。
小児病棟の雰囲気。
もう見事な描写、でしょう。
このシリーズを3作目まで読んでよかった、って感じている。

2007年11月7日(水曜)

「ダ・ヴィンチ」12月号。
ついに「テレプシコーラ」第二部スタート!
待った、待った。
ずっと待ってた。

さて、昨年10月に、
「ローザンヌが中心になるだろう」、と予想した。
これは当たったが、まさかいきなり空港出発シーンからとは!
驚いた。
ローザンヌに向けての練習シーンが省略されている。
これが意外と言えば意外。
いきなり核心、って感じだ。
六花ちゃんも成長していたし。
第二部登場シーンは、高校生になった姿を読者に印象づけるカットで描かれている。
このシーンだけでも「ダ・ヴィンチ」を買った値打ちあり。
姉の千花ちゃんが回想として何度もカットで登場し、それだけで泣けてくる。
(読者サービスか?)
さぁ、いったいローザンヌでの二次予選、ファイナルの展開はどうなるのだろう?
頭の中を様々なシーンが駆け巡っている。
1人で暴走しまくりだ。
私の予想ではルードラのボジョリー先生がキーポイント。
おそらく審査委員として登場する、はず。
どうでしょうか?

また、今月号は井上雄彦「リアル」特集。
作者インタビューも掲載。
これは要チェックだ。
私も、以前から「リアル」は注目している。
現在連載されているコミックは膨大な量にのぼるだろうが、
これはトップクラスの面白さだ。
自信を持って薦める。

話は変わる。
集英社の新しい雑誌が話題になっている。
ジャンプSQ、だ。
確認してみて。
神尾葉子さんも執筆してるよ。
びっくり。
ジャンプスクエア」ついに創刊!

2007年10月31日(水曜)

中野京子さんのブログ10/30を見た?
毎回、知的で楽しい内容。
今回は高畑勲さんについて書いておられる。
読んでみて。

高畑勲さんインタビューin「母の友12月号」


2007年10月30日(火曜)

「小袖日記」柴田よしき(文藝春秋)
面白さ
内容 平安時代を舞台に源氏物語世界+ミステリー+ユーモア
濃度 古文の知識が無くても楽しめる
点数 93点
読後 男性への厳しいご意見がこたえる
オススメ ○楽しみながら古文の知識も増える

平安時代へタイムスリップ。
それも紫式部に仕える女房「小袖」の身体に。
身体は平安女性、頭は現代女性。
小袖は紫式部の助手で取材係。
物語のネタを探してあちこち動き回る。

源氏物語は現代の感覚から読むと、少し違和感を感じるところがある。
その辺の調整が物語の中で上手くアレンジされている。
例えば、第一章「夕顔」は生霊に殺される。
でも、実際はあり得ない。
では誰が夕顔を殺したのか?
物語の中で真犯人を確定していく。

また、第二章「末摘花」は(実は)美人だった。
では、なぜブスの代表のような書かれ方をしたのか?
これもみごとなエンディング。
この着地点もすばらしい。
八方上手く収まる。

第三章「葵」が秀逸。
この展開、このエンディングはすごい!
人物造形もみごと。
どうして六条御息所の生霊、ってことになったのか?
みごとな説明。
もう泣けたよ。
柴田よしきさんの筆力はみごと。
ただ者ではない。

PS
世の中には源氏ファンは多い。
ファンと言うよりマニア。
古典の中でも源氏学、って言うのがあるらしい。
源氏だけで一生モンの研究らしい。
大学で卒論にするにも、1回生から準備する、と言う。
その人たちからみたら、この作品は邪道かもしれない。
でも、筆者のような一般読書家からみたら、非常に良くできた作品、と感じる。

2007年10月28日(日曜)

今月は楽しめた。
筆者の誕生月だから、って訳ではない。
マリみてシリーズ最新刊が出たし。
東村アキコ作品の新刊が2冊も出たし。
山岸凉子作品の新刊もでたし。
新刊でなくても面白い本に当たったし。
もう、大漁じゃ!

来月はどうだろう?
流血女神伝・シリーズ最終巻が月初めに出る。
テレプシコーラの第二部連載始まる。
う〜ん、待ち遠しい。

話は変わるけど、Cookie占い、ってのがある。
ちなみに筆者はクールな知性派『レモンシャーベット』、だ!
http://cookie.shueisha.co.jp/fortune/index.html

2007年10月27日(土曜)

「きせかえユカちゃん」(11)東村アキコ(集英社)
面白さ
内容 Cookie連載コメディ
濃度 どうだろう?
点数 93点
読後 今回も声を出して笑った
オススメ ○男性は購入しにくい?Cookieだしね・・・

出ました、11巻目!
待ってました。
やはり面白い。
今回も笑わせてもらった。
ユカちゃんとみどりちゃんのペアは最高に楽しい。
今回は大きなキャラ移動があった。
ユカちゃんのお姉さんがベルギーに留学してしまったこと、
みどりちゃんに妹ができたことだ。
赤ちゃんのニックネームは「親分」!

本屋に行ったら、大量に平積みされていた。
さすが人気作品。
(もしかして工作員のしわざ?)

PS
オビを確認したら、「ひまわりっ」の宣伝が!
クロスオーバー・フュージョン現象か?
集英社と講談社が結託したのか?
でも、Cookieとモーニングだぞ!
この読者層が重なるってのが怖い・・・。

2007年10月27日(土曜)

「ひまわりっ」(5)東村アキコ(講談社)
面白さ
内容 講談社モーニング連載コメディ
濃度 一般受けする、と思うけど
点数 85点
読後 笑ってすっきり
オススメ
宮崎を舞台にしたローカル色あるコメディ。
シリーズ5巻目。
ギャグの冴えは衰えず。
5巻目も絶好調で失速せず。
濃いキャラとギャグが楽しい。

PS
一番驚いたのは、講談社の作品にもかかわらず、
オビの宣伝に『集英社「きせかえユカちゃん」最新第11巻大好評発売中!!』、となってることだ。
いったいどういう事?
こんなことってありえん!
ここまで、講談社は柔軟で寛容なのだろうか?
それともお金をもらったのか?
まさか、天下の講談社がお金を貰ったくらいで、集英社の宣伝をするだろうか?
驚異の東村アキコパワーだ。
工作員が動いたのかもしれない。

2007年10月26日(金曜)

「ヴィリ」山岸凉子(メディアファクトリー)
面白さ
内容 日本を舞台にしたバレエマンガ
濃度 一応マニア向けか?
点数 90点
読後 例によって濃度の高い内容、考えさせられる
オススメ ○どうせ読むなら「テレプシコーラ」からどうぞ。

現代日本が舞台。
ヒロインは43歳のバレリーナ、シングルマザー。
「ジゼル」の公演が迫っての練習風景。
バレエ団の経営、家庭内不和、若いバレリーナの育成。
ヒロインの悩みは尽きない。
個人的にも恋に悩んでいる。
その「ジゼル」と物語がリンク・オーバーラップする展開。
ジゼルはアルブレヒトを許したのか?
『愛とは許すこと』、ってのがテーマ。
例によって内容は濃い。
ドラマチック。
途中の幽霊も怖い。
生霊も出るし。
六条御息所 か?)
エンディングに救いがあるのでホッとする。
物語とともにヒロインの成長もあるし。
それにしても重く、濃い。

ところで、翌月から(いよいよ)「テレプシコーラ」第二部スタート。
待ち遠しい。
早く来い、早く読みたい。

イメージ画像
↑表紙画像がハッとするくらい美しい。
ジゼル死の装束なので怖いくらい。

【参考】
ジゼル - Wikipedia

2007年10月25日(木曜)

「東海道中膝栗毛」十返舎一九/土田よしこ(中央公論社)
面白さ
内容 ご存じ東海道ロードコメディ
濃度 一般的?マニアック?
点数 80点
読後 楽しい
オススメ

土田よしこ版・東海道中膝栗毛、である。
注釈部分も楽しめる。
弥次さん喜多さん男ふたりの珍道中ロードコメディ。
この2人が煩悩のかたまり。
女と食べ物への執着が笑いをよぶ。
ところで、学術書によると弥次さん喜多さんはゲイの関係、と聞いている。
日本は古来から、ゲイには寛容な風土があった。(善悪の判断とは別に)
禁忌として異端視されたのは西洋キリスト教モラルが導入されたから?
さて、生物として生きる目的は種を残すこと。
DNAを残そうとしないゲイは、何なのか?

話が脱線した。
有名古典なので読んでおいてソンはない。
普通に楽しめる。
平成九年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞。

PS
秋シーズンで週末クライミング。
平日も残業か練習。
読書時間減少。
クライミングと読書は両立せず。
困ったものである。

2007年10月19日(金曜)晴れ

「天使はモップを持って近藤史惠(実業之日本社
面白さ
内容 オフィスを舞台にしたミステリー
濃度 少し軽め
点数 81点
読後 まぁまぁ
オススメ

シリーズ第1作。
掃除人キリコのオフィスミステリ。
文章は軽めで、読みやすい。
先日の、「ワーキングガール・ウォーズ」より面白さでは負けるけど、
まぁまぁ楽しめる。

PS
文春より文庫版も出ている。

2007年10月18日(木曜)晴れ

「ワーキングガール・ウォーズ」柴田よしき(新潮文庫)
面白さ
一般性 オフィス小説、爽快な気分を味わえる
マニア濃度 ごく普通に楽しめるでしょう
点数 91点
オススメ ○おもしろい!

良かった!
小説に関しては、このところ当たり続き。
(クライミングはイマイチだけど)
タイトルが平凡だけど、中味はgood!
オフィスを舞台に「お局様」が大活躍。
最初はイヤなヤツ、って思っていたら、
物語の進行に従い、印象が変化していく。
「いいやつじゃん、頼れるじゃん!」、って。

オフィスの描写も克明。
もうほとんど、平安寿子「もっと、わたしを」か、奥田英朗「ガール」の世界。
でも、それだけじゃないぞ。
これにミステリ要素が加味され、面白さ倍増。
登場人物も脇役に至るまでしっかり書かれている。
正社員、派遣社員、アルバイトの子。
アルバイトの加奈みどりがいい味だしてる。
仕事は熱心じゃないけど、社内探偵役になると(やたら)集中力を発揮する。
上司のセクハラ証拠を集めたり、とか。
最後の章の対決シーンなんて、感涙ものだよ、ホント。
かっこいいよ。

2007年10月15日(月曜)晴れ

「窓際の死神(アンクー)」柴田よしき(双葉社)
面白さ
一般性 通勤読書にどうぞ
マニア濃度 男性、女性ともに楽しめるでしょう
点数 83点
オススメ ○おもしろいよ

柴田作品は初めて。
期待した以上に楽しめた。
おもしろかった。
読んでソンはない。
ストーリーもキャラもしっかりしている。
脇役にも(しっかり)顔があったし。
ところで、このシチュエーションに似た小説がある。
伊坂幸太郎氏の「死神の精度」→(文芸春秋2005年6月)だ。
窓際の死神(アンクー) 」→(双葉社2004年12月) なので、柴田作品の方が早い。
面白さは・・・う〜ん、同じくらいか柴田作品の方が上?
知名度、発行部数は伊坂作品に負けたかな?

PS
ところで、柴田よしきさんて男性作家なのだろうか?
名前は男性名のようだけど?
読んでいて、(文章、内容、雰囲気から)女性作家のように感じる。
どうなんだろう?
誰か知ってる?

【参考】
柴田よしき

柴田よしきの日記 - livedoor Blog(ブログ)

★★★★★★★★★

話は変わる。
前回、受胎告知について書いた。
それに関連して少し・・・。

聖書はもともと古代ヘブライ語で書かれた。
その後・・・

古代ヘブライ語

古代ギリシャ語

ラテン語

英語、仏語等

・・・この課程で、誤訳があったのではないか、と。
聖母マリアの処女懐胎・・・普通ではあり得ない話。
これは婚姻せずに懐妊する相当語彙が無かったために生まれたのではないか、と。
この話は、昔読んだ本から・・・(ああ)出典を思い出せない。
米原万里さんだった、と思うんだけど。
どなたか教えてください。

2007年10月12日(金曜)晴れ


「怖い絵」中野京子(朝日出版社)
面白さ
一般性 知的探求心、知識欲を刺激される
マニア濃度 本好きな方なら、普通に楽しめるでしょう
点数 93点
オススメ ◎自信を持って薦める、おもしろい!

これはおもしろいよ。
書評サイトで見つけた。
今年の夏に出版された、すでに3刷状態。
どちらかというと、マイナーな出版物と思われるが、
内容がすばらしいので、好調な様子。

様々な絵に潜む恐怖を読み解いていくとともに、
知的好奇心を刺激し、知識欲を満足させてくれる仕組みになっている。
例えば、「受胎告知」。
ヨーロッパ3大主題は・・・
(1)キリスト磔刑(たっけい)
(2)聖母子
(3)受胎告知
この3つめ「受胎告知」の必須セットは・・・
(1)大天使ガブリエル
(2)聖母マリア
(3)精霊の鳩
さらに無垢の象徴としての「百合」、
エルサレムの神殿で祭司の衣服を織っていたとの言い伝えから「糸まき棒」。
これらをふまえ、フラ・アンジェリコとティントレットを比較し「恐怖」をひもといていく。

まえがきに次のような著者の言葉がある。
(以下、転載)

恐怖の源、それは何より「死」である。
肉体の死ばかりでなく、精神の死ともいうべき「狂気」である。
直接的な恐怖はほとんど全て、このふたつの死へと収斂されると言っていいだろう。
脆い肉体に襲いかかる「苦痛」「暴力」「戦争」「大自然」「闇」「野獣」「病気」は肉体の死に結びついているし、
自己の存在を揺るがす「嫉妬」「孤独」「喪失」「悪意」「怨霊」「悪魔」「(人肉食などの)タブー破り」は狂気と結びついている。
それら前段に当たる「未知」「不安」「他者」も同じだ。
また、「愚かさ」も大いな恐怖の種になる。
愚かさゆえに人間は、自分で作りあげた半端な社会制度によって「偏見」「貧困」「差別」を産み、
やはり緩慢な死へと自も他も追い込んでゆく。
ある種の「悪」が燦然たる魅力を放つように、恐怖にも抗いがたい吸引力があって、
人は安全な場所から恐怖を垣間見たい、恐怖を楽しみたい、というどうしようもない欲求を持ってしまう。
これは、奇妙でも何でもなく、死の恐怖を感じるときほど生きる実感を得られる瞬間はない、
という人間存在の皮肉な有りようからきている。

(以上、転載終了)

・・・どうです?
この濃縮された言葉の数々。
もう既に「まえがき」だけで圧倒される。

【参考】
中野京子さんのブログ

中野京子さんの著作一覧

世界史レッスン

中野京子さんのページ

2007年10月10日(水曜)晴れ

「ほげらばり」小林聡美(幻冬舎文庫)
面白さ
一般性 メキシコに興味のある方
マニア濃度 軽いエッセイ風で濃度は薄い
点数 75点
オススメ

小林聡美さんのメキシコ旅行記。
本来文筆家ではないので、内容は薄味。
でも、軽妙洒脱
そこそこ楽しめる。

2007年10月4日(木曜)

「薔薇の花かんむり」今野緒雪(集英社)
面白さ
一般性 男女両方にウケているようす
マニア濃度 でも、一般性はない
点数 88点
オススメ △薦めるつもりはない

シリーズ最新刊。
なんか、感無量。
祐巳と瞳子ついに姉妹、となる。
長い道のりだった。
マリア様での儀式より、薔薇の館で報告した際の、乃梨子の反応に感激した。
(筆者は乃梨子ファン)

2007年10月4日(木曜)

「お茶にごす。」(1)西森博之(小学館)
面白さ
一般性 コミックなので、通勤では読みにくいかも
マニア濃度 ごく一般受けする作品、と思われる
点数 80点
オススメ △まだ、1巻目なので・・・

“悪魔”と恐れられる男・船橋は、
高校入学で心を入れかえ、ケンカから足を洗い、静かな学園ライフを手に入れようと、
茶道部に入部する。
文化系・脱不良コメディ。
けっこう笑える。

2007年10月1日(月曜)

「俯いていたつもりはない」永井するみ(光文社文庫)
面白さ
一般性 ミステリー長編&恋愛モノ
マニア濃度 不倫が主要なテーマなので・・・
点数 82点
オススメ △テーマがナンなんでどうかな?

もし、著者名が書いてなかったら、どうだろう?
ミステリ謎解き部分がなかったら、どうだろう?
・・・もうほとんど瀬戸内晴美さんの世界?
(出家する以前の作品)
もちろん誉めてるんだよ。
それほど不倫描写が巧い。

ブリュッセルと日本の両方にまたがる。
(このあたり宮本輝氏を彷彿させる)
プレスクールがキーワード。
精密な心理描写は永井作品らしい。
子供とその母親の描写が巧い。
後味も悪くない。
意外な事実も最後に判明し、びっくり。

2007年9月27日(木曜)

「堤中納言物語」に「虫愛づる姫君」、って話がある。
「風の谷のナウシカ」の元ネタとしても有名だけど。
また、これには「その後」を描いた話もある。
→虫愛づる姫君後日譚
(集団のルールに入りきれない生き方をする人の辿る運命を描いてるらしい)

私は、アウトドアをやってるが、虫は嫌い、苦手。
とくに蚊は刺されたら、痒いは腫れるはで困ったヤツだ。
ところが、蚊が脳梗塞に効くらしい。
下記のタイトルの本を見つけた。
いったいどうやって治すんだ?

「蚊が脳梗塞を治す!昆虫能力の驚異」
(講談社+α新書)  

2007年9月26日(水曜)

米マイクロソフト社がEUに敗訴した。
約800億円の制裁措置。
他社との技術共有是正措置。
これは今後も、もめるでしょうね。
知的所有権VS独占禁止法。

【参考】
マイクロソフトEU競争法訴訟で敗訴

2007年9月22日(土曜)

「ボランティ・スピリット」永井するみ(光文社文庫)
面白さ
一般性 ミステリー短編集
マニア濃度 カタルシス不要!、って方に
点数 81点
オススメ △体調の良い時にどうぞ。


良く集めたものだ。
・・・これだけ後味の悪い話ばかり!
日本在住外人へのボランティア日本語教室が舞台。
講師も生徒も集うK市文化センター。
そこで起こる様々なトラブル、事件。
外国人への偏見。
日本人同士の軋轢。
様々な感情が渦巻く。
どの短編も(みごとに)後味が悪い。
これって、著者の意図なんでしょうねぇ・・・。

善意の裏に隠された、陰湿な顔。
ほんと、悪意の書き方が巧い。
体調を整えて読んでいただきたい。

【参考】
→「永井するみ作品」

2007年9月21日(金曜)

集英社にアーカイブコーナーがある。
例えば、こんなの・・・

■くらもちふさこ『おしゃべり階段』『いつもポケットにショパン』

なつかしいねぇ。

2007年9月20日(木曜)

「オーパ!」開高健(集英社)
面白さ
一般性 釣り好きな方、アマゾン好きな方、その他一般人もOK
マニア濃度 釣り好きのみならず・・・
点数 85点
オススメ

アマゾンで釣りをする話、ノンフィクション。
緑の魔境・アマゾン、そこには巨大淡水魚が棲息する。
もちろんピラニア、ワニ、肉食ドジョウ・・・凶暴魚も。
魚の生態、ブラジル人の生活。
さすが、プロの作家だけあって描写力がある。
写真も満載。
文庫本もあるが、どうせ読むならハードカバー豪華版を図書館で借りて、大写真で見て欲しい。
筆者は釣りに興味ないが、雰囲気にはひたれる。
いい感じ。

巻頭に中国の古諺が掲載されている。
(以下、転載)

1時間、幸わせになりたかったら
酒を飲みなさい。

3日間、幸わせになりたかったら
結婚しなさい。

8日間、幸わせになりたかったら
豚を殺して食べなさい。

永遠に、幸わせになりたかったら
釣りを覚えなさい。


・・・どうでしょうか?
最後の句・「釣り」の代わりに「クライミング」と入れ替えたら?
はたして、永遠に幸せになるのだろうか?

【参考】
『オーパ!』

開高健 釣り人語らず

2007年9月18日(火曜)晴れ

話題になっているので、書いておく。
前FRB議長の回想録。
ブッシュ大統領をかなり批判しているらしい。
曰く、イラク戦争は石油が目的であった、と。
アマゾン洋書売上首位。(未翻訳)

【参考】

Bloomberg.co.jp: ニュース/コラム

【参考2】
ポール・ボルカー :本/日経BookDirect

2007年9月17日(月曜)晴れ

「フリークライミングテクニック」山と渓谷社
「フリークライミング」山と渓谷社

面白さ 技術書なので・・・
一般性 一般性(まったく)なし
マニア濃度 クライマー限定
点数 評価不要
オススメ
(以下、クライミング覚書とダブルけど、書籍は本来このページに載せるべきなので)

「ロクスノ」での杉野保氏の文章を楽しみにしている。
そこで、遅ればせながら杉野氏の単行本「フリークライミングテクニック」を読んでみた。

1996年12月出版だけど内容は旧くない。
囲い込みコラム記事がおもしろい。
図書館で見つけて、その部分だけでも読んでみて。
参考になるから。
また、P120『テクニック以外の大事なこと・・・』が重要。
良いルート、良いスタイルについて言及されている。
この部分も読んで欲しい。
例えば・・・(以下、転載)

どう考えてもまだまだ早いと思われるグレイドのルートを延々とハングドックを繰り返すのは
どうだろうか。(中略)レットポイントとはオンサイトに比較して、当然多くの情報を得ることができる。
最も効率の良いシークエンスとムーヴで、その人の持つクライミング能力を最大限に引き出し、
かつミスが皆無になったときその人にとっての最高レベルのレッドポイントが達成される。
であるから、到達高度が徐々に伸びていく課程を楽しみながら、成功へとつなげていく期間は、
長くて1週間〜10日間が限度だと思う。(中略)実力をつけて出直した方がいいだろう。
 また、度を過ぎたリハーサルと同様、過剰なプロテクションの現場を数多くの岩場で見かけることが
増えた。(中略)本来ならばボルトがないところまで、その上のボルトから長いスリングを垂らしてきて、
臨時のプロテクションとしたり、無節操にスティック・クリップを用いたりする行為がそうである。
(中略)初登のスタイルがひとつの基準になるということははっきりと言うことができる。
(中略)グレイドの進歩だけをフリークライミング自体の進歩であると考えるのは
まちがっているということだ。

(以上、転載終了・・・実際、手にとって全文を読んでみて)

モラルにも、きちんと言及されている。
私もハングドックしてRPに何日もかけてしまうことがあるので、耳の痛い話だ。
「高望み」もほどほどにして、気をつけたい。
・・・でも、ある程度「上」を目指さないと向上しない、って?
では、どのあたりまで「高望み」がOKなのか?
目安はOSグレードである。
OSの数字ひとつ上あたりがRP可能なはず。
例えば筆者の場合、日本の岩場での最高OSグレードは11+くらい。
海外では7bくらいまでOSした。
ジムでは12−くらいまでOSしている。
故に、目指すRPグレードは(最高)12+〜(せいぜい)13−あたりが妥当、と考える。
13+は現在の身体能力から判断して、かなりムリがある。
以上、あくまでも私の考えである。

世の中には様々な方がいらっしゃる。
自己評価の(やたら)高い人も居れば、(逆に)過小評価の方もいる。
注意を呼びかけて、反省する方もいれば、逆ギレ反抗食ってかかる人もいる。
世の中いろいろだ。
まぁ、周りに迷惑をかけないよう頑張っていただきたい、ね。

さて、もう1冊よんだ。
「フリークライミング」(山と渓谷社)

こちらは2005年6月出版で北山真氏、新井裕己氏、杉野保氏の共著。
クライミング全般にわたって、写真入りで解説されている。
総合的な知識網羅、って意味ではコストパフォーマンスが高い。
持っていても損はないだろう。
P143に新井裕己氏がBMIについて書かれている。
一般人では20〜24が標準体型とされている。
クライマーの場合18〜22がよいと考えられているらしい。

さて、具体的に書くと、
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
例えば筆者の体重は57kg、身長166cm→1.66m
57÷1.66÷1.66=20.6
BMI=20.6で(ほぼ)標準?

また、理想体重の出し方は
仮に理想がBMI18なら・・・
理想体重(kg)=BMI18×身長(m)×身長(m)
筆者の場合:18×1.66×1.66=49.6kg
50kg以下なんて、ムリ!
いまのままでOKじゃ!

2007年9月17日(月曜)晴れ

「キウィおこばれ留学記」小林聡美(幻冬舎文庫)
面白さ
一般性 ニュージーランドに興味のある方か小林聡美ファンの方
マニア濃度 軽いエッセイ風で濃度は薄い
点数 70点
オススメ

小林聡美さんのニュージーランド留学記。
タイトルどおり。
留学と言っても1週間足らず。
本来文筆家ではないので、文章は薄味。
しかたがない。

2007年9月15日(土曜)晴れ

「オラ!メヒコ」田口ランディ・AKIRA(角川文庫)
面白さ
一般性 旅行好き、メキシコ好き、きのこ好きな方
マニア濃度 一般的な内容
点数 75点
オススメ

メキシコ旅行記だけど、目的はマジックマッシュルーム。
訪問した街は・・・
(1)メキシコシティ
(2)ウアウトラ・デ・ヒメネス
(3)オアハカ
特に、ウアウトラ・デ・ヒメネスが核心。
1955年、民族植物学者ワッソンは幻覚キノコをつかうシャーマンがいると聞き、マリア・サビーナを訪問。
何千年もの間マサテク族が封印してきた扉が開かれたのだ。
1938年分娩促進剤を研究中にリゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)を合成したアルバート・ホフマン。
ハーバードでLSDを研究していたT・リアリー、R・アルパートも訪問。
その後、ビートルズ、ストーンズ、ディラン、ザ・フーなど訪問。
当時の若者(ヒッピー)の聖地となる。
60年代ドラッグカルチャーとロックの原点。

きのこについて・・・
(P110転載)
幻覚を引き起こす有効成分は、シロシビンとシロシンなんだけど、
シロシビンとシロシンは分子構造が神経伝達物質のロトニンとよく似てるんで前頭葉の
セロトニン受容体がまちがって結合してしまう。すると脳の情報検閲をする視床下部が麻痺して、
膨大な情報が脳に流れこむんだ。無意識のいちばん底に眠った記憶まで呼び起こされることもある・・・

(以上、転載終了)

クライマーに関係あるのは次の文章・・・
(P108)
マサテク族のあいだで怪我や病気は古い自分が生まれ変わるときの前兆だと言われているわ。
無意識にしろ、そのメッセージを敏感に感じる能力があるから怪我をするのよ。

・・・ありがたい御言葉である。
メキシコは世界で一番自殺者が少なく、
世界で一番ハゲが少ないらしい。
すばらしい!

2007年9月10日(月曜)

「このマンガがすごい!」宝島社
面白さ
一般性 興味のない方は読んでもしかたない
マニア濃度 ごく一般的なマニア濃度
点数 75点
オススメ ▲一般的な傾向を知りたい方に

宝島社が毎年アンケート集計をしている。
どのマンガが面白いか、って。
つまり、「このミス」のコミック版だ。

「ベスト10」の「タイトル」だけ表にしたので、参考にして。
なお、2007年オンナ版のインタビューは豪華。
羽海野チカさん、よしながふみさん、東村アキコさん・・・。

【参考】
→「このマンガがすごい
筆者の2006〜2007のベストも書いたので参考にして。
ホントはエバーグリーン過去すべてに遡るベスト100、とか書きたいけど。
時間がない。
このHPを作製した時から考えてるんだけど、
相当な「思い入れ」と「思いこみ」があるので、
遅々として進まない。

2007年9月8日(土曜)

「天使などいない」永井するみ(光文社文庫)
面白さ
一般性 ミステリー短編なので、フツーに楽しめるでしょう
マニア濃度 電車の中で読んでも恥ずかしくないでしょう
点数 82点
オススメ
*今日から、上記のような表を作成する。
図書購入や図書館借りだしのヒントになれば幸いである。

初期短編集。
「隣人」よりも好み。
特に「別れてほしい」「マリーゴールド」の2編が良かった。
「別れてほしい」は2人の女性を中心に物語がすすむ。
いつも他人のものを欲しがる幼なじみ。
美紀子は何度も沙貴にカレを奪われる、苦い経験がある。
そして今回も、再びカレを奪われてしまう。
でも、それは・・・。
お互いの悪意が絡み合って良い感じ。
怖いねぇ。
「マリーゴールド」もストーリー展開がみごと。
ヒロインが通勤途上で「理想のビジネスウーマン」を見かけ、後をつけていく。
すると意外な側面が。
でも、ヒロインはそれも好ましく感じる。
ところが、それにはさらに「奥」があった。
心の揺れがみごと。
ミステリーとしてもgood。

「レター」「銀の墨」も良かった。
同じ初期短編集「隣人」より後味の良い作品が多い。

イメージ映像

2007年9月3日(月曜)曇りのち雨

「隣人」永井するみ(双葉文庫)

初期短編集。
永井作品は2種類ある。
業界ものと日常もの。
この作品集は日常もの。

身近な人たちを題材にしている。
登場人物は私やあなた、って感じ。
愛情→破綻→殺人のパターン、
でも、違和感がない。
充分ありうる設定。

感情の中でもっともパワーがあるのは愛情と憎しみ。
瞬発力と持続力の両方を併せ持つ。
(だから嫉妬はパワフル)
これに利害&打算が絡む。
愛情と憎しみは表裏一体。
殺人が起きても不思議ではない。
「洗足の家」がgood。
結構怖い。
納得のエンディング。
なぜか、カタルシスも。

イメージ映像


2007年9月1日(土曜)晴れ

「ビバ!私はメキシコの転校生」山崎まどか(偕成社)

山崎まどかさんは6歳の時、家族でメキシコに渡る。
最初、言葉が解らずとまどう日々。
「きょう、日本人の女の子がはいってきたのよ。でも、なーんにもはなせないの」、と同級生が家族に言う。
それから半年ぐらいたって、その子のお母さんが、
「ところで、あの日本人のおじょうちゃんはどうしてる?」
「しゃべってる、しゃべってる。私たちよかずーっと早口でしゃべりまくってる」

前半が、メキシコでの生活。
後半が、帰国してからの様子。
メキシコでの生活がいきいきと楽しく描かれているだけに、
帰国してからの、いじめの日々が残酷で悲しい。

2007年9月1日(土曜)晴れ

「楽園」(上・下)宮部みゆき(文藝春秋)


宮部みゆき作品、最新刊。
しかも、上下2冊。

上巻オビのコピーは・・・
「模倣犯」から9年−前畑滋子
再び事件の渦中に!
自宅の床下で16年間
眠り続けた少女の死体。
その死体を“透視”した少年の交通事故死。
親と子をめぐる謎に満ちた
物語が幕を開ける−


下巻のコピーは・・・
新たなる拉致事件も勃発、物語は驚愕の結末へ!
少年の目には何が見えていたのか。
少女の死は何を残したのか。
少女殺害事件の関係者たちに話を聞くうちに、
滋子は少女の背後にいた人物の存在に気づく。
子を想う親の愛の形を問いかける物語は、いよいよ佳境へ。


どうです?
おもしろそうでしょう?
「模倣犯」から9年−前畑滋子再び事件の渦中に!
・・・このコピーだけで即購入。

やはり、面白かった。
今年度ベスト3に入る。
(昨年10月、「名もなき毒」を読んだ時も、『今年度ベスト3』、って書いたけど)
でも、内容は「楽園」の方が重厚。
テーマが「子殺し」だから。
上巻はゆったりとした流れ・・・いったいどこに流れつくのか?、って感じ。
下巻は疾風怒濤の展開。
ハラハラする。
暗い内容にもかかわらず、最後にカタルシスを与えてくれるのはさすが。
オススメ!
読んでソンはないよ。

ひとつだけ、ことわっておく。
「模倣犯」以上の作品を期待してはいけない。
さすがに、あれ以上の作品を簡単に創作できない、と思う。
「模倣犯」がすごすぎなのだ。
それほど絶賛された作品なのだ。
著者自身も越えるのは大変かも。

PS(1)
あのとき、「模倣犯」にケチをつけたのは阿刀田高氏くらいだった、と記憶している。
阿刀田氏の「模倣犯」批判文は朝日新聞に掲載されたが、
それを読んで憤りを感じた。
「文句を言うなら自分で書け」、と。
わざわざ大新聞に掲載すること?
飲み屋でマニア同士話せば済む事じゃない?
「このミス」の覆面対談、とか。
反感を買うだけでしょう。

PS(2)
産経新聞に連載されていたので、最後の方に産経新聞へのヨイショが入っているのが愛嬌。

PS(3)
疑問が残る。
等君の描いた山荘のビンはどうなのか?

イメージ映像1
イメージ映像2

2007年8月26日(日曜)

「ドロップス」永井するみ(講談社)

なんか、フツーにいいよー。
文章うまいよー。
地味な内容だけど。
派手なシーンもないけど。
でも、いい感じ。
離婚や不倫抑止に役立つ実利性もあったりして。
以下、引用しよう。

家庭を持ち、子供が生まれて家族が増える。
そういう当たり前の時間を重ねていけば、
幸せというのは、全員プレゼントのようにもれなくもらえるものだと思っていた。


どうです?
これだけでも読む値打ちがあるってもんだ。
この作品は、結婚10年以上の(子供のいる)夫婦が(特に男性が)読むべきじゃない?
妻の心理がよく解るよ。
・・・って、私が感慨にふけっても意味ないか?

【参考】
→「永井するみ作品」

2007年8月25日(土曜)

「この本、おもしろいよ!」岩波書店編集部

おもわずため息。
どうしてこんなに面白い本が多いのか!
うれしいため息。

量を読まないと気が済まない。
ほんの少しの良書を落ち着いて読む、って方向には行かない。
面白い本は多い。
読んでも読んでも追いつかない。
人生折り返し地点を過ぎているというのに。
困ったものだ。
時間もないし。
となると、効率よく面白い本を見つけて読みたい。

2007年8月18日(土曜)

「夜想」貫井徳郎(文藝春秋)

宗教と救済がテーマ。
重い。
座って読んでいることが出来なくなった。
最後は立ち上がり、立ったまま読み続けた。
読んでいて鳥肌が立ってきた。

私の説明は不十分と思われるので、
書評ライターの大矢博子さんが文藝春秋のネットサイトに書かれている文章を読んで下さい。

夜想

2007年8月15日(水曜)

「ひまわりっ」(1)〜(4)東村アキコ(講談社)
「ゑびす銀座天国」東村アキコ(集英社)
「白い約束」東村アキコ(集英社)
「それを言ったらおしまいよ」よしながふみ(太田出版)
「月とサンダル」(1)(2)よしながふみ(方文社)
「彼は花園で夢を見る」よしながふみ(新書館)
「執事の分際」よしながふみ(白泉社文庫)
「愛とは夜に気付くもの」よしながふみ(リブレ)



「ひまわりっ」(1)〜(4)東村アキコ(講談社)

「きせかえユカちゃん」のあとがきページが独立して連載となった。
そらが「ひまわりっ」である。
集英社のあとがきが講談社の連載になるってのがすごい。
業界初、じゃないだろうか?
すなわち「健一レジェンド」だ。
回が進むに従いおもしろくなっていく。
「ユカちゃん」同様すべてのキャラが濃い。
副主任と秘書課のエビちゃんが好き。
この2人のコントが楽しい。

「ゑびす銀座天国」東村アキコ(集英社)

実を言うとあまり期待せずに読んだ。
よかった!
ギャグだけじゃない。
シリアスもうまいじゃないか!
「ユカちゃん」(8)に併録されていた「ドライアイス」の続編にあたる。
こちらも回を追うに従いおもしろくなっていく。
ドライアイス店の釣り好きおやじも、店員のヨッちゃんも実在感ある。
最終回のドライブ編が最高。
そのへんの小説よりよっぽどレベルが高い。
著者の実力を再確認した。
映像化してもいい画になる、と思うよ。

「白い約束」東村アキコ(集英社)
初期の短編集、3作。
初期はこんな作品も描いていたんですねぇ。
典型的な少女マンガ。
・・・思春期の男女をくっつけたり、告るかどうかで悩んだり、って話。
読む必要なかったかな、って思いながら読み始めるが、意外とよかった。
(1)「白い約束」フン、って感じで読んでいたら、最後に泣けた。(困ったものだ)クッキーボックスH14早春号。
(2)「ヒッチハイク」ちょっとしたことから家出をして、ヒッチハイク。クッキーH13.10月号掲載。
(3)「フルーツこうもり」これがデビュー作「ぶーけデラックス」H11新年号掲載。
以上3作品に、「私がネコ派になったわけ」あとがきマンガがプラス。
初期の作品集だけれど、デビュー作にして、すでに現在のキャラを垣間見ることができる貴重な作品。
東村アキコファンなら買って損はない。

【参考】
「東村アキコ作品」

「それを言ったらおしまいよ」よしながふみ(太田出版)
「月とサンダル」(1)(2)よしながふみ(方文社)
「彼は花園で夢を見る」よしながふみ(新書館)
「執事の分際」よしながふみ(白泉社文庫)
「愛とは夜に気付くもの」よしながふみ(リブレ)


このあたりになると、よしなが作品でもマニア濃度が高くなってくる。
私も少ししんどい。
「それを言ったらおしまいよ」と「月とサンダル」(2)はキツイ。
「彼は花園で夢を見る」は、まだメルヘン風。
文庫本「執事の分際」は「愛とは夜に気付くもの」と重複する。
「本当に、やさしい」の一部と「愛とは夜に気付くもの」の文庫化。
クロードとアントワーヌの話がまとまった。


2007年8月14日(火曜)

「花宵道中」宮木あや子(新潮社)

驚いた。
これがデビュー作なのか!
恐ろしいほどの完成度の高さ。
しばし絶句。

吉原遊郭が舞台。
読んでいて、生活を感じる。
まるで、自分が江戸時代にいる感覚。
これは相当巧いぞ。
構成もすごい。
連作長編となっていて、短編ごとに主人公が変わる。
第3話が第1話の裏ストーリーになってたりする。
関係がないと思っていた人物同士が関係あったり。
単純な××と思っていたら、裏にえぐい確執があったり。
脇役と思っていたら、次の短編で光が当たって、
この時の何気ない行動には深い意味があったのか、って解ったり。
どの短編も濃度が高い、高すぎるくらい。

スピリッツクラスの酒をストレートで飲んでる気分。
このすごさは読んで体験してもらうしかない。
圧倒的な情景と情感にひれ伏すのみ。
間違いなく傑作。

巻末に以下の言葉がある。
私たちの知らない吉原で、恋に泣いて、思いを遂げられないまま死
んでしまった遊女たちの魂が、少しでも慰められることを願います。


PS1
R−18文学賞受賞作品なので、
少し生臭い(汁っぽい)、と感じるかも。
そのあたりがハードルかな。

PS2
遊郭の姉妹制度を読んでいて
「マリみて」の姉妹制度を思い出した。

【参考】
宮木あや子作品

ブログもけっこうおもしろい。
# 2007/07/17 00:00 

☆宮木ログ

2007年8月13日(月曜)

「きせかえユカちゃん」(1)〜(10)東村アキコ(集英社)

ガハハ、これは笑った。
おもしろすぎ!
1975年生まれらしいが、知識は豊富。
なぜこんな事を知ってるの?、って古いことをギャグにしている。
解る人にはたまりませんっ、って感じ。
また、様々な「お約束」もパロディにしている。
すべてのキャラが濃いのも魅力。
また、中心となる小学6年ユカちゃんとみどりの凸凹コンビも最高!
とりあえず、一巻を読んでみて。
第4話「おはなみ」が好き。
ユカちゃんと泥酔した担任の定岡先生(通称貞子)が焼酎ビンを持ってピンクレディを熱唱するシーン。
もう笑ったよ。
このあたりで笑えないようなら、残りを読む必要ないでしょう。
この作品を読む必要もないでしょう。
感覚だから。

PS
泣かせるより笑わせる方が10倍難しい。
蛇足ながら付け加えておく。

【参考】
東村アキコ - Wikipedia

東村プロ公式Web - 東村プロダクション公式Web。

「東村アキコ作品」

2007年8月12日(日曜)

「大人のための文章教室」清水義範(講談社現代新書)
「こんな映画が、」吉野朔実(PARCO出版)

「大人のための文章教室」清水義範(講談社現代新書)
これはオススメ。
役に立つだけでなく、おもしろい。
さすが清水義範さん。
例えば、随筆について。
「枕草子」「徒然草」を代表作としてとりあげている。

まず、「徒然草」。
日本の知識人が世間を叱りとばし、要するに私を見ならえ、という調子に書いている
辛口評論の原型なのである。


次に「枕草子」
あれは、女性が書く随筆の原型なのである。
男の随筆は煎じ詰めると、私は利口だからみんな見ならえ、ということが書いてある。
それにたいして女性の随筆は結局のところ、私は感性が優れていてセンスがいいのよ、
ということが書いてあるのだ。


・・・どうです?
さすが、するどい。
参考になりますねぇ。
私も嫌みにならないよう自慢していきたい。

「こんな映画が、」吉野朔実(PARCO出版)
吉野朔実さんの映画紹介。
相当な量を観ておられる。(あたりまえだけど)
でも、あまり私の趣味と重ならない。
例えば『核シェルターに持って入る映画』ベスト10
1,嘆きの天使」
2,「エル・スール」
3,「ブレードランナー」
4,「ツィゴイネルワイゼン」
5,「ピアノレッスン」
6,「バッファロー’66」
7,「ラヴ・ストリームス」
8,「アラビアのロレンス」
9,「山猫」
10、「そして船はゆく」

・・・う〜む、私の趣味と異なる。
悪くはないんだけど。
そこで私も「映画ベスト40」、ってのを作ってみた。
見てみて。
→「映画ベスト40」

2007年8月7日(火曜)

本日は情報を羅列。

(1)書こうと思っていながら、書き込みが遅くなった。
今更、と思われるかもしれないが、芥川賞、直木賞について。
第137回芥川賞と直木賞、決定!(2007.07.18)

(2)話は変わる。
豊島ミホさんのブログで、興味深い話。
若い男子のための日常系エンタメ小説は可能か(7/24)
読んでみて。

(3)また、豊島ミホさんも書いている、
岩波書店「この本,おもしろいよ!」が要チェック。
夏の読書の参考になりそう。

(4)さらに話は変わる。
あの名作「サウスバウンド」が映画化された。
気になる。

映画サウスバウンド」公式サイト

(5)
映画 [BLOOD] - Official Web Siteもおもしろそう。

2007年8月5日(日曜)

「大奥」(1)(2)よしながふみ(白泉社)
「喪の女王」(7)須賀しのぶ(集英社)
「私の家は山の向こう」有田芳生(文藝春秋)


「大奥」(1)(2)よしながふみ(白泉社)
江戸・徳川政権大奥が舞台。
ただし、状況は異なる。
将軍は女、大奥には美男3000人。
これには理由がある。
伝染病により、男子の数のみ激減。
男女の役割が逆転し、将軍職も女性が継ぐことになる。
(1)巻は6代将軍家宣、7代家継、8代吉宗の大奥が時代背景。
婚姻制度が崩壊し、一部の富裕な女性のみ婚姻が許される。
物語は貧乏旗本と裕福な商家の跡取り娘の恋物語。
この貧乏旗本が「女人禁制男の城」大奥に奉公するところから始まる。
大奥での陰湿な男同士のいじめ、嫉妬、
このエンディングはみごと。
また、次巻にもつながるストーリー構成。
(2)巻は春日局の時代。
どのようにして将軍職が男性から女性に引き継がれたのか?
3代将軍家光の時代が舞台。
慶光院新院主・有功が跡目相続の御礼に江戸城に登城。
春日局により、還俗し小姓となるよう強要される。
史実とフィクションが交錯する。
よしながふみさんが「純愛」を描くとこうなる、って作品。
さすがに屈折している。
PS
思い出すのが「徳川の夫人たち」(吉屋信子)だ。
この作品をふまえて「大奥」を読むと(より)興味深い。
ただし、「徳川の夫人たち」で気に入っているセリフ・・・
「青海波を銀の地摺りに・・・」はなかったが。

PS
2006年『大奥』第一巻で第5回(2005年度)センスオブジェンダー賞特別賞。

「喪の女王」(7)須賀しのぶ(集英社)
シリーズ最新作。
次作が最終巻、らしい。
ほんとに残念。
いったいどんなエンディングが待っているのか?
いろいろ想像してみるけど、どれも違うような。
それにしても波瀾万丈とは、この物語のこと。
猟師の娘、皇太子候補、奴隷、小姓、海賊、皇妃、修道女・・・。
これはコスプレ活劇か?
次作が最終巻というのに、あっけらかんとした「あとがき」はどうだ?!

「私の家は山の向こう」有田芳生(文藝春秋)
テレサテンさんの伝記。
中国、台湾の現代史とともにテレサの真実が語られる。
テレサは台湾のスパイだったのか?
興味のある方は読んでみて。
PS
このところ車のBGMはテレサテンさんの曲ばかり。
まぁ、当然でしょう。

2007年7月27日(日曜)

「こどもの体温」よしながふみ(新書館)
「愛すべき娘たち」よしながふみ(白泉社)
西洋骨董洋菓子店」(全4巻)よしながふみ(新書館)


「こどもの体温」よしながふみ(新書館)
導入が巧い。
みごと!
さて、物語は父子家庭の酒井家が中心。
・・・とは言え、回によっては単なる狂言回しだったりもする。
中学生・紘一君の視点が貫かれているわけでもない。
でも、5話(+1話のおまけ)で調和がある。
良くできた作品集。
レベルは高い。

「愛すべき娘たち」よしながふみ(白泉社)

いままで、これほど巧いと感じたのは吉田秋生さんくらい。
つまり、この作家さんは、とんでもなく巧い。
(山岸凉子さんは別、御神体だから)
心理描写では最上位クラスでしょう。
描画力も伴っているし。

女性作家の作品は情緒で推す作品が多い。
良くも悪しくも。
(だから芥川賞とかの評価が「みずみずしい感性」、なんて書かれるのだ)
でも、論理もある作家もある
情緒+論理で敵なし。
今回のテーマは母親と娘・・・家族が中心になっている。
このテーマは昔、樹村みのりさんも取り上げていたけれど、時代背景もあって内容は硬かった。
さて、よしながふみ作品はどうか?
情緒+論理+本能の3段構え。
これはすごい!
特に第3話(前・後編)が秀逸。
このエンディングは意表をつく。
私も過去何年も、様々な作品を読んできたが、このエンディングは初めて。
フツー男女の話を描いたら、結末は××か××でしょう。
まさか、××とは!
(伏字ばかりでスマン)
第4話も重厚で好み。
短い中に3代にわたる女性を描いている。
すばらしい内容。

PS
この作品が一番一般受けするかも。
もちろんマニアの方にもOK。

西洋骨董洋菓子店」(全4巻)よしながふみ(新書館)
ドラマ化されてので有名?
作品は知っていたけれど、ドラマ化は知らなかった。
内容はマニア向け、と思われる。
でも、一般受けする部分もしっかり残している。
土台となる洋菓子描写がしっかりして、作品に安定感を与えている。
とりとめもないストーリーに見えるが、一貫性がある。
過去と現在が交錯する。
みごと!
どうして洋菓子なのか?
これも必然性があり、ストーリーの中で語られる。
洋菓子と過去の誘拐事件。
そして、現在に起こる殺人事件。
みごとなストーリー展開。

PS1
殺人事件や誘拐事件がメインではない。
縦糸ではあるが、すべてではない。
キャラどうしの絡み、枝葉末節のこだわりがおもしろい。
誤解を避けるため書いておく。

PS2
一般受けするように描いてくれているが、
ある程度の「読み手」でないと理解、あるいは面白さを感じ取れない、かも?
つまり読者の熟達度も要求される。
さて、同じよしなが作品「フラワーオブライフ」と比べるとどうだろう。
キャラ設定では、「フラワーオブライフ」オールスター豪華出演に及ばない。
かゆいところに手がとどく感覚、って言うか。
もし、初めてよしなが作品を読むなら「フラワーオブライフ」を薦める。
あるいは「愛すべき娘たち」も良い。

PS3
「よしながふみ作品での西洋骨董洋菓子店」評価は★★★★★ではなく★★★★☆になっている。
なぜか?
なぜ★半分少ないのか?
萌えキャラがいないから。

2007年7月25日(水曜)

本日は、ナカガイジムのコンペ。
久しぶりに参加しようかと思ったけれど、残業だった。
1ヶ月100時間超残業→80時間に減ったのはありがたい。
少しずつ楽になりつつある。
復帰は近い?
(でもないか)

帰宅後、ギルビーのジン(47.5%)を飲んだ。
私が今まで飲んだアルコールの中で2番目に度数が高い。
(ちなみに1番はドイツ・ハーメルンで飲んだ「ねずみ殺し」50度)
ジンを飲んだ後に、腕立て、腹筋、スクワット、ブリッジをする。
サケが効率よくカラダを駆けめぐる。
ストレートは喉の消毒にもなる。
この後、チンザノと混ぜてマティーニを作る。
う〜ん、うまい!
また、夏は炭酸で割ってフィズ系にしてもいいかも。

【参考】
チンザノ (企業) - Wikipedia
ロンドン・ドライ・ジンの正統派「ギルビー

PS
芭蕉の句「夢は枯れ野を駆けめぐる」が頭に浮かんだ。

2007年7月22日(日曜)

「愛がなくても喰ってゆけます。」よしながふみ(太田出版)
「ソルフェージュ」よしながふみ(白泉社文庫)
「希望」永井するみ(文藝春秋)



「愛がなくても喰ってゆけます。」よしながふみ(太田出版)
「フラワーオブライフ」でも感じた。
「料理にこだわりがあるな」、と。
(言い換えれば、食い物に執着してる)
この作品を読んで納得。
料理に関して蘊蓄が語られる。
そして料理と一緒に著者の「男性観」も盛り込まれている。
作中の著者らしいセリフを下記に引用する。
以下、T井、S原、Yなが、3人の会話。
T井「バカな女は嫌いだ。まあそれで後はしっかり者でやさしくて可愛い女なら誰でもいいよ」
S原「や、それT井さん絶対いないから!」
T井「何よ」
Yなが「それはですね・・・いつまでも少年のような部分もありつつ基本的にはちゃんと大人で
   いざというときに頼りがいがあって、ちょっとワイルドだけど
   普段はあたしのわがままもしょーがないなあって
   聞いてくれるよーなナルシストじゃないのに己の身なりに気を遣える男くらいに難しいのよ・・・」
S原「だから可愛い女はバカだし!しっかりした女はたいがいガンコで
   こっちの思う通りにはなりゃしませんって!」

以上、引用終わり。
どうですか?
こんなセリフがフツーに出てくるのが、よしなが作品の魅力。

「ソルフェージュ」よしながふみ(白泉社文庫)

短編集。
レベルが高く、濃度が高い。
BLなので読者を選ぶかも。
でも、泣けた。
(この作品を涙なしに読めるヤツいる?)
男性キャラも魅力だけれど、「津守」のキャラがいい。
ほんといいよ!
作品に幅と厚みをだしている。
これが実力、ってもんでしょう。


「希望」永井するみ(文藝春秋)

あらすじを引用する。
五年前に老人を次々と殺害した少年が、少年院から戻ってきた。母親や刑事、カウンセラー、
被害者の孫たちを巻き込んで、やがて起きる新たな事件―。著者会心の長篇エンタテインメント。

引用終了、(「BOOK」データベースより)
少年犯罪がテーマ。
いつもの著者らしく、テーマを深く掘り下げている。
さまざまな視点から多重構造で語られる。
さすがにテーマがテーマだけに、全体の色調は暗く重い。
しかし、このエンディングはカタルシスが無さすぎ。
どこに「希望」があるのか?
まいった。
イメージ画像

PS1
『WEB本の雑誌』『読書相談室』がある。
けっこう参考になる記事があるので紹介しておく。

PS2
紹介が遅れたけれど、フランス等ヨーロッパでは日本のマンガが大人気。
毎年コミックイベントが開催されている。
今年も盛況だった様子。
詳しくは下記のサイトを見て。
EuroJapanComic

2007年7月16日(月曜)-2

「フラワーオブライフ」(全4巻)よしながふみ(新書館)

(参考→フラワー・オブ・ライフ)

よかった!
面白かった!
平凡な学園ライフを描くことほど難しいことはない。
カレーライスやチャーハンでも、『作る人が作るとこうなる』、って見本。
料理(作品)って、素材(キャラ)と味付け(演出/ネーム)なのだ。
クラスメートの1人1人を丁寧に描き分けている。
(どのキャラも濃いし、親しみを感じる)
24年組以外でも読む値打ちのある作家が増えてきた。
佐々木倫子さん
羽海野チカさん
二ノ宮知子さん
そして今回の、よしながふみさんだ。
さっそく読んでみてください。
おもしろさを保証しましょう。

【参考】
第1巻 :2004 5月10日発行 
第2巻 :2005 6月10日発行
第3巻 :2006 4月25日発行 
第4巻 :2007 6月15日発行
→フラワー・オブ・ライフ
→よしながふみ

PS1
読む前に注意。
様々な「お約束」の上に物語がある。
知らなくても良いが、知っていた方が楽しめる。
また、よしなが作品はBLが多い。
今回は全面に出てないが、隠れテーマとしてBLを理解しておく必要がある。
→イメージ1
→イメージ2
→イメージ3
→イメージ4

PS2
吉田秋生さんの「楽園シリーズ」を思い出した。
レベルとしては同じくらい。
(つまりトップクラス、ってことだ)
「河よりも長くゆるやかに」も思い出した。

PS3
第一巻P124に名作として次の作品を挙げている。
解らない方のために説明しておく。
「カラスのごめん」→「ガラスの仮面」(美内すずえさんの大作。「花とゆめ」創刊号は、これと「アラベスク」第二部)
「イチゴフィッシュ」→「バナナフィッシュ」(吉田秋生さんの長編。アッシュには根強いファンがいる)
「トールの腎臓」→「トーマの心臓」(萩尾望都さんの名作。元祖BL?でも、「グリーン・カーネーション」がある)
「いただけない瞳」→「いたいけな瞳」(吉野朔実さんの作品・・・実は、読んでない)
「六つのエメラルド」→「七つの黄金郷」(これは山本鈴美香さん未完の大作。私もかつてMCで集めていた)

PS4
TV、映画等の映像化は難しいでしょうね。
本来のおもしろさが半減するかも。

PS5
全4巻のうち、最初の2冊はなじみの書店で購入。
後半2冊がなかなか見つからず、梅田まで出向いた。
グランドビル30階コミック専門店。
さすがに、ここにはあった。
よしなが作品のコーナーまであった。
・・・でも、BLコーナーだった!
(個人的には、このコーナーの前に立つことさえ抵抗を感じる)
なんとかならないか。
(ならないでしょうねぇ・・・)

2007年7月16日(月曜)

「さくら草」永井するみ(東京創元社)

これは力作。
以下、折り返し部分の宣伝文句。
プリムローズ殺人事件−
作害された少女たちが身にまとっていたのは、
ローティーンに絶大な人気を誇るジュニアブランド、プリムローズの服だった。
清純で高級感のあるデザインは、
プリムローズを身につけた少女の写真を売買する男たちをも生み出す。
亡くなった少女たちに果たして何が?
ブランドを守ろうとするゼネラルマネージャー、女刑事、
そして少女の母親、事件に揺り動かされる女たちを描く、
著者渾身の長編ミステリー。

以上、引用終わり。

ジュニアブランド業界、ってのが珍しい。
「ダブル」に匹敵する力作。
関連する人物により多重構造で事件が描かれる。
みごとな描写力。
このところ永井作品ばかり読んでいる。
私はカタルシスのある作品が好き。
でも、永井作品は必ずしもそうではない。
では、なぜ読むのか?
何が私の「趣味」を刺激するのか?

PS
永井作品のサブテーマは「不倫」か?
最初は、偶然、たまたま、と思っていた。
でも、そうではないようだ。
いままで読んだ作品の主要人物のほとんどが不倫をしている。
なぜ?

イメージ画像

【参考】
→「永井するみ作品」

2007年7月15日(日曜)

「歪んだ筺」永井するみ(祥伝社)
「欲しい」永井するみ(集英社)



「歪んだ筺」永井するみ(祥伝社)
ミステリ短編集。
複数企業の入ったインテリジェントビルを舞台に様々な事件が起こる。
登場人物もダブったりする。
深刻な事件から軽い事件まで。
著者は長編も巧いけれど、短編も思った以上の内容で楽しめる。
比較的初期の作品だけれど完成度は高い。
気合いを入れて読む作品じゃないけれど、
「あぁ、おもしろかった」、って感じで読み終わるよ。
身近な日常の職場を扱っているので刺激にもなる。
ただし、入手困難。
図書館で借りるのが近道。

「欲しい」永井するみ(集英社)
これは長編。
派遣業を経営するヒロイン。
たよりなげな新入社員のトラブルが発端。
こんな感じで普通に物語が展開するのかなー、って思っていたら急展開。
俄然ミステリらしくなってくる。
でも、永井作品の常として謎解きそのものが中心になることはない。
登場人物の造形が丁寧に描かれる。
派遣業、ホスト業、福祉の裏についても言及される。
このあたりが永井作品の魅力になっている。
これまで7冊読んだが、駄作はない。
今のところハズレなし。

2007年7月14日(土曜)

下記のページでコミックの試し読みができる。
あの羽海野チカさんの「ハチクロ」も載ってるぞ。

http://www.s-manga.net/author/index.html

2007年7月10日(火曜)

7月5日、日本語版の「Googleブック検索」がスタートした。
一度、試してみて。

【感想】
少なくとも、今の私には(あまり)必要ない。
興味ある作品が登録されていない。
登録されていても、モニター上で読もうと思わない。
内容検索は(今のところ)不要。
一般検索で満足。
『アマゾン』『図書館検索サイト』『ウィキペディア』で充分事足りる。
ただ、アマゾンは新刊情報に弱い。
例えば、7月23日出版予定の「ドロップス」はアマゾンでは出てこない。
(先月の新刊「ぽろぽろドール」を検索した時もそうだった)
ジュンク堂、紀伊国屋、ライブドア、楽天もダメ。
でも、e−honだと検索できる。
bk1でもOK。

【参考】
本の使い方とGoogle ブック検索

日本でもGoogleブック検索開始! さっそく使い勝手をチェックしよう

読書一般検索以外では、書評サイトと作家自身のブログはチェックしている。
どこをチェックしてるかは、リンクページを見てもらったら分かる。

PS
まったく話は変わる。
最近、下記の映像を気に入っている。
クライミングの【覚書】で紹介しようかと思ったが、
「はぁ?」、で終わりそうなのでやめた。
このページをチェックする方なら(少しは)共感してくれる?


2007年7月8日(日曜)

「ビネツ−美熱−」永井するみ(小学館)

エステが舞台。
文献、取材、消化、執筆、と作家としての資質を問われる4本柱。
きちんとクリアーしている。
それにしても「悪意」を描くのが巧い。
つい比較してしまうのが、同じミステリー作家・宮部みゆきさん。
(永井するみさんより1歳上)
昨年話題になった「名もなき毒」にも悪意のかたまりのようなやっかいな女性が登場する。
両者を比較すると同じくらいの表現力を感じる。
私の判断では実力同等。
・・・でも永井作品はベストセラーにならない。
なぜ?

以下、推測。
宮部作品のファンは男性が多い。
永井作品ファンは女性が多い。
ミステリーファンは圧倒的に男性が多い。
このあたりが理由か?
つまり、永井作品は男性受けしない(ような気がする)。
あまりに女性のイヤな面を克明に描写して男性をヒカせる。
今回の作品でも、それが言える。
でも、これから変わるかも?
「カカオ80%の夏」でいい感じだったから。

PS
あのエピローグは必要?
舞について書いてあるけど。
男性編集者がムリに書かせたのか?

→イメージ画像

2007年7月3日(火曜)

「ランチタイム・ブルー」永井するみ(集英社文庫)
「フレームオブマインド」今野緒雪(集英社)


「ランチタイム・ブルー」永井するみ(集英社文庫)
連作ミステリー短編集。
職場等、身辺に起こる謎が題材。
ミステリー色は薄い。
若い女性向けに、恋愛色を濃くして人生案内を兼ねた、って感じ。
著者の作品群の中でもトップクラス、とは思えない。
でも楽しめる。
80点くらい?
なお、7月1日付け【ぼちぼちクライミング】にて『フィトンチッド』、って言葉を紹介した。
ネタはこの作品から。
【参考】
→「永井するみ作品」
→永井するみ/著
イメージ画像

「フレームオブマインド」今野緒雪(集英社)

シリーズ最新作。
前作が気になる終わり方をした。
いよいよロザリオか?!、と期待した。
雰囲気を盛り上げるため、前作「あなたを探しに」を読み返してから、
今回の「フレームオブマインド」を読み始めた。
(う〜ん、我ながら気合い入ってるなぁ)
だのに、(嗚呼!)今回の作品って『番外編』じゃないか!
がっくり。
まぁ、楽しみが先に延びた、ってことで納得。
気分を変えて楽しんだ。
ツナギワザ芸も細かい。

2007年6月26日(火曜)

「カワセミの森で」芦原すなお(理論社)
「カラモランの大空」(全6冊)神坂智子(潮出版社)
「ロイヤルバレエスクールダイアリー」(5)(6)(7)(8)アレクサンドラ・モス(草思社


「カワセミの森で」芦原すなお(理論社)
理論社『ミステリーYA』シリーズの1冊。
ミステリーだけど、なかなか事件は起こらない。
でも楽しめる。
主人公が饒舌すぎる?
このあたり、好き嫌いが分かれるでしょうね。

「カラモランの大空」(全6冊)神坂智子(潮出版社)
マルコ・ポーロの伝記。
みごと!
なかなか映像再現できないよ、これは。
さすが、神坂智子さん。
それぞれ巻末についているコラム風取材メモが好き。
苦労して取材してますねぇ。
皆さんも図書館で見つけたら読んでみて。
オススメ。
PS
重版している様子がない。
残念なことだ。
連載した雑誌がマイナーだから?

「ロイヤルバレエスクールダイアリー」(5)(6)(7)(8)アレクサンドラ・モス(草思社
これにてシリーズ完結。
読みやすい文章なので、すぐ読める。
ちょっと物足りない?
「ドリーナシリーズ」の方がおもしろい?
でもけっこう読ませるよ。
欧米のティーンの現状を知ることができるし。
日本と変わらないか?

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 

話は変わる。
土曜日めずらしく梅田に出た。
(私は人混みが嫌い)
もちろん書店に行くため、しかたなく。
メインの書籍以外にも、辞典を3冊購入。
文章に迷いが多いもので。
間違った漢字を使って、恥をかきたくないので。
下記のとおり。

「例解慣用句辞典」創拓社出版
「似た言葉使い分け辞典」創拓社出版
「日本語知識辞典」学研


ブログを書いている方は多い。
他の方はどうなんでしょうか?
文章を一発で書いているのでしょうか?
公に掲示している文章。
『読みやすく、分かりやすい文章』を心がけている。
迷いながら何度も書き直したりしている。

実はこの文章も、既に葛藤がある。
「何度も書き直す」を「推敲」とするかどうか?
迷った。
この文章は子どもを想定して書いていない。
大人を対象にしている。
どの程度「平易な文章」にするか?
う〜ん。
迷う。

再び冒頭に戻る。
他の方はどうなんでしょう?、と。
ほっしーブログは面白いし、文章もうまい。
でも印象として、一発で書いてそう。
性格の違い?
能力の違い?

PS
6月25日付け【ぼちぼちクライミング【ぼちぼちクライミング】に一部手を加えた。
読みやすくなった?
違いが分かった?
良くなった?

2007年6月20日(水曜)

「神田川デイズ」豊島ミホ(角川書店)
「のだめカンタービレ」(18)講談社
「予言者ピッピ」地下沢中也(イーストプレス)


「神田川デイズ」豊島ミホ(角川書店)
豊島ミホさんらしい青春小説。
連作長編。
章が変わるごとに主人公も変わる。
前章で、脇役だった人が次章で主人公になったり。
共通して言えるのは、「サエない主人公のサエない大学生活」。
この手の作品を書かせると巧い。
自分の大学時代を思い出しながら読んだ。

「のだめカンタービレ」(18)講談社
のだめヨーロッパ編。
2度目のサロンコンサート。
しばらくヤマバがなかったので退屈していたけれど、今回は楽しめた。
作品の屈曲点になりそう。
のだめ気合いを入れて、サロンコンサートに臨んだ。
いい感じで仕上がっている。
PS
マニア向け、プリリンマスコット付き限定版(1100円)もある。
他の用事で書棚を閲覧していたら、本屋のオヤジが持ってきてくれた。
「出てますよ」、と。

「予言者ピッピ」地下沢中也(イーストプレス)
ロボットと自我、ってのは古典的テーマ。
でも、「予言」が加わることで興味深い展開となっている。
ロボット・ピッピは本来地震予知ロボット。
ところが、仲の良い友人の死を契機に、「暴走」を始める。
「プルートウ」のように話題にはなっていない。
書評にも取り上げられていない(と思う)。
マイナーな作品だから。
でも、一部マニアの間では評判になっている。
「プルートウ」に匹敵する内容、と(私は)判断する。

2007年6月12日(火曜)

「カカオ80%の夏」永井するみ(理論社)

YA(ヤングアダルト)を対象とした理論社の『ミステリーYA』の1冊。
永井するみさんのティーン向き作品。
(読む前から期待指数100%)
しかも、期待を裏切らない内容。
すばらしい。
女子高生ハードボイルドの誕生。
読む前は、「そんなモノが成立するのか?」、と半信半疑であった。
しかし、無理のない設定。
あり得るストーリー。
大人向けでも充分通用する。
さすが、永井するみさん。
最初は孤高を気取っていたヒロイン。
それがストーリーの展開と共に、自分の弱さに気づいていく。
人間関係の輪を広げ、様々な人に助けられながら、ストーリーが展開していく。
若者から老人まで。
それぞれが個性を持った脇役達。
お嬢様キャラ紀穂子も、モデルのミリも。
婆ちゃんの鈴木さん、榊さん、草笛さん。
エンディングもいい感じ。
もし、読者が現役の女子高生ならもっと夢中になれるでしょうね。
もっと感情移入できるでしょうね。
筆者のようなオヤジでも(かなり)面白く感じられたから。
映像化されても面白いし、すでに目を付けられてるかも?

参考イメージ

PS
書店でも、シリーズ中この作品だけ平積みされていた。
力を入れているのでしょう。
おそらく続編を望む声は多いと推察される。

2007年6月11日(月曜)

「夢のカルテ」高野和明・阪上仁志(角川)

ヒロインは他人の夢の中に入り込む能力を持っている。
数々の難事件を恋人の刑事と解決していく。
期待以上。
人物も丁寧に書き込まれている。
ストーリーに好感が持てるし、完成度も高い。

PS
でも、このシチュエーションって筒井康隆氏の「パプリカ」じゃないの?
それだけがひっかかる。

2007年6月10日(日曜)

「年に一度、の二人 」永井するみ(講談社)

図書館で予約済みだったので、すぐ入手できた。
「予感」があったから。
「ダブル」が面白くて他の作品を読みたくなるであろう、と。

さて、予備知識が少ない状態で読み始めた。
ミステリーと思っていたら、違った。
年に一度、の逢瀬を約束した男女2組の物語。
恋愛小説としては淡々と進行する。
不倫でありながら、どろどろしないのは香港が主要な舞台になっているせいか。
それぞれの人物造形は、さすがにしっかりしている。
多角的に語られる。
最後に、まったく異なる路線の2組の男女が交錯する。
P251、宗太郎が夏凛に言うセリフが余韻を残す。
ミステリーの仕掛けがなくても、読み応え充分。
後味もよい。

→参考イメージ
 
PS
「生活と覚書(クライミング編)」に「余力」について書いている。
なぜ唐突に「余力」?、と思われたでしょうか?
上記「年に一度、の二人 」の余韻と影響。
(私は読んでいる本の影響を受けやすいタイプ)
クライミングとは何の関係もない作品だけれど、
この「キーワード」にハマった。
なお、不倫を扱った作品なので、クライマーの方はムリして読む必要はない。
蛇足ながら付け加えておく。

PS2
ビリーワイルダーの「お熱い夜をあなたに」を思い出した。

2007年6月9日(土曜)

「ダブル」永井するみ(双葉社)

以前から名前は知っていた。
永井するみ、と言う作家を。
でも、これほどのレベルとは思わなかった。
本格ミステリーで面白いのは、宮部みゆきさんと、桐野夏生さんくらい、と。
これから永井するみさんは要チェック、だ。
おもな登場人物は2人。
雑誌記者の多恵。
妊婦の乃々香。
同じ20代後半、異なる道を歩んでいる。
2人が交わり、親しくなって、対立する。
ホテルでの対決シーンは圧巻。
迫力満点。
多恵の自宅での「あのシーン」も怖かった。
最後のページを読んだ後、タイトルの深い意味が見えてくる。
・・・それにしても乃々香のキャラは怖い。
これはオススメ。
一気読み。

→参考イメージ

PS
どうして「このミス」や「文春ミステリー」にリストアップされないのか?

2007年6月7日(木曜)

「テレプシコーラ」が手塚治虫文化賞受賞。
下記のとおり。

受賞者ら喜びのスピーチ 第11回手塚治虫文化賞贈呈式 

朝日新聞手塚治虫文化賞 

なお、詳細な理由は不明だが、二ノ宮知子のだめカンタービレ』が
一次選考で2位になりながら辞退している。 ←【ウィキペディアより】

さらにウィキペディアによると今まで辞退したのは下記のとおり。
  • 第5回 一次選考の時点で花輪和一刑務所の中』が最有力候補であったが、
  • 「自分はマイナー作家であるから」との理由で辞退した。
  • 第8回 やはり一次選考の時点で佐藤秀峰ブラックジャックによろしく』が
  • 2位以下を大きく引き離していたが、
  • 「マンガ執筆に専念したい」との理由により辞退した。
【おまけ】
花輪和一FANSITE 花輪大明神 へそひかり

2007年6月6日(水曜)

「世界の日本人ジョーク集」早坂隆(中公新書)
「きょうの私は、どうかしている」越智月子(小学館)
「千年の黙」森谷明子(東京創元社)
「夜よ泣かないで」香納諒一(双葉社)


「世界の日本人ジョーク集」早坂隆(中公新書)
日本人は世界で、どんなジョークネタにされているか?
★幸福論★
「人生における最高の生活とは?」
「アメリカで給料をもらい、イギリスの住宅に住み、中国人のコックを雇い、日本人を妻にすることさ」
「では、最低の生活とは?」
「中国で給料をもらい、日本の住宅に住み、イギリス人のコックを雇い、アメリカ人を妻にすることさ」
★鯨★
「アメリカ人が日本人に言った。
「鯨を食べるなんて絶対に認められない」
「なぜですか?」
「鯨は高い知能を持ち、豊かな感情を持つ生き物だ。かわいらしくて愛嬌もあるじゃないか」
「なるほど。では、これからアメリカ人を食べることにしよう」
★RとL★
日本人はRとLの発音を間違える。
・・・って言うか、区別がつかない。
だから、アメリカ人のジョークのネタにされる。
選挙(election)と勃起(erection)の発音を間違えるとマズイ。
「一番最近の選挙はいつでした?」
「今朝かな」
love とrubも間違えやすい。
「Do you have a lover?」(恋人はいる?)が、
「Do you have a rubber?」(コンドーム持ってる?)になる。
シリアスシーンの告白、
「I love you」が「I rub you」(私は君をこする)になる。
笑われないように。

「きょうの私は、どうかしている」越智月子(小学館)
観察力、洞察力もあり、文章表現も巧い。
でも、私の趣味ではない。
残念。

「千年の黙」森谷明子(東京創元社)
時代は平安朝。
中宮定子の愛猫が盗まれる。
ホームズ役は紫式部。
ワトソン役もいる。
ゲストで清少納言も登場。
読んでいて都大路を歩いている気分になる。
こういう作品を読むと幸せを感じる。

「夜よ泣かないで」香納諒一(双葉社)
ヒロインは唖者のホームヘルパー。
偶然、銃撃者の最期を看取ったことから、国家レベルの陰謀に巻き込まれる。
ワキを固めるキャラが充実している。
元ヤクザ組長の姐さん。
女格闘家とマネージャー。
プロの殺し屋。
ノンストップ、ジェットコースター状態。

2007年5月29日(火曜)

めずらしく音楽ネタ。
CDベスト盤を作ってみた。
以下のとおり。
1 天使を誘惑 黛じゅん
2 真夏の出来事 平山三紀
3 夜明けのスキャット 由紀さおり
4 人形の家 弘田三枝子
5 手紙 由紀さおり
6 いい日旅立ち 山口 百恵
7 異邦人 久保田 早紀
8 太陽がくれた季節 青い三角定規
9 モンテカルロで乾杯 庄野 真代
10 ひだまりの詩 ル クプル
Hidamari no Uta (Le Couple)
11 花嫁 はしだのりひことクライマックス
12 恋の季節 ピンキーとキラーズ
13 さよならだけは言わないで 五輪 真弓
14 飛んでイスタンブール 庄野 真代
15 ロマンス 岩崎 宏美
16 天城越え 石川 さゆり
17 プレイバックPart2 山口 百恵
18 人生いろいろ 島倉千代子
いかがでしょうか?
ピーナツ、南沙織、レベッカも抜けている。
フォーク系も少ない・・・赤い鳥、かぐやひめ、陽水、イルカ。
アリス、ゴダイゴも入ってない。
大御所・ユーミン、中島みゆきも無い。
作った時は大満足だったが、モレ多数有り。
90年代はルクプルしかないし。
2000年代なんて1曲もない。

2007年5月20日(日曜)

「喪の女王」(6)須賀しのぶ(集英社)

シリーズ最新刊。
いつも利用する書店になかった。
「入れなかった」、とのこと。
20冊を超えるシリーズなのでフォローする方も少ないのか?
しかし、いよいよ大詰め。
次巻7月末出版予定。
最終巻は秋。
この長いシリーズも、あと2冊。
もっと続いて欲しい。

2007年5月19日(土曜)

「家日和」奥田秀朗(集英社)

奥田さんの最新刊。
レベルが一定しているので、安心して読める。
ハズレ無し。
著者名だけで、即購入する作家の1人。
「家」と「人」がテーマ。
外へ出て働かないで在宅している方が主人公。
日本でユーモア小説はヒットしない、売れない、って言う常識を覆した。
ハラハラする展開に絶妙なエンディング。
読んで楽しい。
次作も読みたくなる。

2007年5月13日(日曜)

「ヒロインの日本史」梓澤要(KKベストセラーズ)
「西表島自然誌」安間繁樹(晶文社)

「ヒロインの日本史」梓澤要(KKベストセラーズ)
時代を彩った女性100人を一気に切る!、ってな感じ。
簡潔に要点がまとめられていて参考になる。
巻末付録「小説で読む日本史のヒロイン」も役に立つ。

「西表島自然誌」安間繁樹(晶文社)
表題どおりの内容。
イリオモテヤマネコ研究の第一人者安間氏の一般向け作品。
著者が学生時代に初めて訪問した沖縄、八重島諸島と西表島。
そこに生活する人々。
生息する動物たち。
読みやすい文章。
興味深い内容だ。

2007年4月28日(土曜)

「海街diary−蝉時雨のやむ頃−」(1)吉田秋生(小学館)

待ってました。
吉田秋生さんの最新作。
鎌倉を舞台にした3人姉妹の物語。
内容を書くとネタバレになってしまう。
それにしても絶妙にうまい。
この巧さ、尋常ではない。
特にP57〜P59。
情景描写、心理表現・・・
描き文字で音を表現していないのに音が聞こえてくる。

参考映像 

2007年4月26日(木曜)

「ちょっと危ない世界旅行」神坂智子(潮出版社)
「美人はいかが?」(全3巻)忠津陽子(朝日ソノラマ)


「ちょっと危ない世界旅行」神坂智子(潮出版社)
神坂智子さんの旅行記。
これらの取材が元になって、
様々な作品が生まれている。
読んでいて興味深いのはイスラム圏への旅行記。
いつか行ってみたい。
資料をしっかり読んで。
「アラビアンナイト」も読んでおきたい。

「美人はいかが?」(全3巻)忠津陽子(朝日ソノラマ)

この【覚書】を読んでいて気づいたでしょうか?
私は、白土三平さん、山岸凉子さん、吉田秋生さんのファン。
入手可能な限りすべての作品を購入所持している。
ストーリーは複雑で心理描写が巧み、線は丸くない・・・ってのが共通。
私の基本となる趣味である。
だが、上記に当てはまらないのに、私は忠津陽子さんのファンでもある。
何事にも例外はあるものだ。
忠津陽子さんの丸みをおびた、なめらかなペンタッチが好き。
一息に描いたとしか思えない顔の輪郭線。
丸く大きな目。
見ているだけで、うきうきしてくる。
ストーリーもキャラクターも21世紀現代作家作品と比較すると素朴。
セックスもバイオレンスもなく進行する。
でも、読んでいたら顔がほころび楽しい気分。

この作品は忠津陽子さんの代表作。
入手不可能と思っていたが、このたび朝日ソノラマより復刻された。
めでたくもあり、ありがたい気分である。
ちなみに筆者の所有している他の忠津作品は・・・
「ミリーただいま参上!」(集英社1973年初版・・・筆者所有本は1975年5版)
「お金ためます!」(集英社1972年初版・・・筆者所有本は1976年8版))
上記2作品のみ。
さらにどんどん復刻していただきたい。
集英社MC版は現在入手不可能だから。

2007年4月22日(日曜)

「エバーグリーン」豊島ミホ(双葉社)

やはりおもしろかった。
中学生だった2人は卒業式の日、10年後の再会を約束する。
はたして2人は夢を実現できたのか?
最初の約60ページが中学時代。
残り200ページが10年後の現代。
文章うまいよ、あたりまえだけど。
夢を実現できる人は少ない。
じゃあ、実現できなかったヤツはどうしたらいいんだ?
どうやって生きていくんだ?
再会のシーン・・・よかった。

PS
シンの今の彼女・奈月はアヤのこと、きっと気づいてる、と思うよ。
カンよさそうだから。
知ってて「プロフィール」見せた、と思うよ。

2007年4月15日(日曜)

「ヤスマ君、立ってなさい!」 安間繁樹(講談社)

タイトルどおり安間氏の自伝、小学校1年から6年生まで。
1944年大陸で生まれ日本に引き揚げ、静岡県清水市に育つ。
学校や塾をサボって、虫採り、魚採り、遊びの日々。
後に、東大大学院で哺乳動物生態学を専攻し、イリオモテヤマネコ研究の第一人者となる。
栴檀は双葉より芳し。

ところで、2004年に出版され重版された様子がない。
店頭での入手困難。
(私はなじみの書店を通して探してもらった)
図書館が一番入手しやすい。

2007年4月8日(日曜)

「T・E・ロレンス 全4巻」神坂智子(新書館)

タイトルどおり「T・E・ロレンス」の伝記。
伝記としておもしろいが、中東情勢の勉強にもなる。
イスラエル誕生のいきさつについても触れられている。
パレスチナ問題の鍵となる条約についても。
それにしても、著者はよく調べている。
相当な資料を消化し、中東にも出かけている。
紛争が収まったら、私も中東を訪問してみたい。
(しばらくムリか?)
神坂さんは、この後マルコポーロの伝記「カラモランの大空」を描き、
シルクロードシリーズへと進む。
いずれも書店店頭での入手困難。
重版していない様子。
質の高い作品なのに残念だ。
コアなファンは存在するようだが少数。
内容がマニアックで地味すぎるのだろうか?

PS
さらに神坂作品を読もうと準備中。
今回の作品は図書館で借りたが、
「カラモランの大空」はなんとか入手した。
まとまった時間ができたら読むつもり。
トマス・ハリスの新作も出たし。
今月末には吉田秋生さんの新作も出版されるようだし。
豊島ミホさんの新刊『神田川デイズ』も28日頃の出版予定だし。
他にも読む本があるし。
クライミングの練習もあるし。
仕事も忙しいし。
隠居したい気分。

2007年4月1日(日曜日)

「檸檬の頃」豊島ミホ(幻冬舎文庫)

おもしろい、よかった!
「夜の朝顔」もよかったが、これも同じくらいよかった。
「夜の朝顔」「永遠の出口」(森絵都)に匹敵する作品なら、
「檸檬の頃」「放課後の音符」(山田詠美)に匹敵する作品。
(ちょっとほめすぎ?)
でも、それぐらいの実力を感じる。
「ただものじゃないぞ」、って感じ。
東北の高校を舞台にした短編集。
全部で7編。
ハズレはない。
タイトルどおり「あまずっぱい」香りの「檸檬の頃」のエピソードの数々。
様々な登場人物が「語る」。
それぞれが微妙に関係している。
作中に登場する小嶋智が著者の分身と思われる。
映画化もされたので、一気に人気が出るかも。

今までの作品は、著者の経験や友人、同級生、身近な人が中心の物語。
今後はどういう方向で行くのだろうか?
「資料を集め、取材をして作品を書く」、って方向に行くのだろうか?
もしそうなら、そちらも興味がある。
作家であり続けるのは難しい。
今、25歳くらいのはず。
10年後はどうなっているのだろうか?
良質の作品を生産続けている、と私は信じている。

【参考】
 →映画公式サイト
先週末くらいからロードショウ公開。
今のところ関東方面のみの公開。
大阪に来るのだろうか?

【参考】(2)
画像→『檸檬の頃』

【参考】(3)
著者自身のブログ→告知板としま

2007年3月31日(土曜日)

「あなたを探しに」今野緒雪(集英社)

シリーズ最新刊。
お宝探しのイベント終了。
祐巳は瞳子。
志摩子は未知の一年生。
由乃はちさと。
それぞれの行動が描かれる。
歯車は動き出した。
瞳子の生い立ちと背景が描かれる。
次作でロザリオ授受か!?

疑問は残る。
どうしてイベント終了間際に「ドタバタ」と瞳子が駆け込んできたのか?
どうして大勢の前で、瞳子は「妹にしてくれ」と言ったのか?

2007年3月28日

「蒼のマハラジャ」(全10冊)神坂智子(角川書店)

急に神坂作品を読みたくなった。
ひさしぶり。
前回読んだのは、もしかして80年代?
「パンと懐剣」以来!
(このタイトルを見て「なつかし〜」、っておもった方・・・かなりのマニア)
今にして思えば、神坂さんって『異文化』と『歴史』が作品の根幹にある。
今回の「蒼のマハラジャ」もインドが舞台。
インドを中心に、イギリス、サウジアラビア、イスラエル、スイス、アメリカ・・・とスケールがでかい。
イギリス植民地支配、第二次大戦、インド独立、パキスタン分裂まで。
う〜ん、すごい。
よくこれだけの材料を消化して、娯楽作品にしたものだ。
すばらしい。

PS
絶版状態、古本屋をまわったが見あたらず。
入手困難。
図書館で借りた。

2007年3月26日

「女にこそあれ次郎法師」梓澤要(新人物往来社)

オビのコピーはこうである・・・
『一族の命運を担った戦国女性の生涯』
『遠江の国人領主井伊直盛の娘・祐。尼僧の身で
井伊谷の領主となり、井伊家を支えるが・・・。』


先日読んだ「恋戦恋勝」があまりによかったので他の作品も読みたくなった、のだ。
さすがに完成度では「恋戦恋勝」より落ちるがレベルは高い。
丁寧な文章で、物語は展開する。
特に良かったのは「桶狭間」の章。
今川方から語られた「桶狭間」を初めて読んだ。
たいてい勝者から語られるので。
ひじょうにリアルな描写に感心。
他の作品も(さらに)読んでみよう。
ただし、入手困難。

2007年3月25日

城山三郎さんが亡くなられた。
経済小説は何冊か読んだことがあるが、
自らの軍隊経験をもとにした戦争文学は未読。

下記の記事を参考にして下さい。
城山三郎さん死去 「落日燃ゆ」、経済小説開拓

2007年3月13日(火曜)

「虹色天気雨」大島真寿美(小学館)

登場人物が女性ばかり。
「マリみて」おばさんヴァージョンか?
たまに男性が出たらゲイだったり。
フェミニズムの次に来るのは「男性無用論」か?
(もちろん冗談、著者の意図は異なる)
内容は女友達の子供を預かるところから始まる。
女性同士の友情と連帯の物語。

2007年3月10日(土曜)

「アーサー・ラッカム」大瀧啓裕(エディシオントレヴィル)

別件で「アーサー」を検索したら、アーサー・ラッカムが出てきた。
急に、アーサー・ラッカムの絵が見たくなった。
19世紀を代表するイギリスの挿絵画家。
Kate Greenaway とともに日本にもファンが多い。
良いものは良い、ってこと。
この書籍すでに入手困難。
私は図書館から取り寄せて見た。
さらに入手困難なのは、アーサー・ラッカム挿絵の「グリム童話」。
昔、1970年代に何かの雑誌で「ちらり」と見たことがある。
ひじょうに味わい深い画だった、と今でも記憶している。
新書館から1980年代に、「ラッカム版・グリム」出版されたらしいが、現在は入手不可能。
ぜひ復刻していただきたい。

【資料】
グリム童話

【参考サイト】
アーサーラッカム Arthur Rackham
このHP格調が高く、美しい。
私もこのようなサイトを作ってみたい。(ムリ!)

2007年3月9日(金曜)

「夜の朝顔」豊島ミホ(集英社)

若いのにレベルが高い。
ひじょうに巧い。
小学校1年から6年までのエピソードが全7章連作長編、となっている。
「5月の虫歯」が書き下ろしでプラスされている。
(・・・この章、泣けるよ)
「理屈じゃない」、ってところをうまく突いている。
この作品に近いのは、名作「永遠の出口」(森絵都)でしょう。
まぁ、読んでみてよ。
おもしろさを保証しましょう。

【参考】(1)著者へのインタビュー
第55回 : 豊島 ミホさん

【参考】(2)著者自身のブログ
告知板としま

PS
豊島ミホさんの大学後輩(1学年下)が綿矢りささんである。
綿矢さんの方が美人でカワイイかもしれないが、
作家は外見ではない(たぶん)。
作品で勝負(と、思いたい)。
私の判断では、豊島ミホさんの方が実力ある。
はるかにおもしろい。

2007年3月8日(木曜)

「恋戦恋勝」梓澤要(光文社)
「羽の音」大島真寿美(理論社)
「ふたりはともだち」アーノルド・ローベル(文化出版局)
「ふたりはいつも」アーノルド・ローベル(文化出版局)


「恋戦恋勝」梓澤要(光文社)
これはよかった。
予想以上に良かった。
メジャーな作家ではないが、実力はすごい。
人物、ストーリー、時代考証、小道具の使い方、いずれも秀逸。
【内容】
「南総里見八犬伝」滝沢馬琴の家に嫁として入るが、夫に先立たれた路。
目の見えない舅・馬琴の口述筆記を手伝わされる・・・

滝沢馬琴が晩年、目が不自由になった、って話は知識としては知っている。
では、どうして息子の嫁が口述筆記することになったのか?
そのあたりが知りたくて取り寄せてみた。
う〜ん、これほどおもしろいとは!
タイトルからラブコメを想定してはいけない。
路さんや、滝沢家にかかわる人間模様。
深い切り込み、しかし重くなりすぎない。
後味も悪くない。
どろどろした感情を描きながら、である。
みごと、としか言いようがない。
日本の文壇も奥が深い、まいりました。

ところで、梓澤要さんの旧い作品のほとんどが絶版入手困難、となっている。
多島斗志之さん同様、実力派の作家なのに世間での人気知名度は低い。
残念なことだ。

「羽の音」大島真寿美(理論社)
先日読んだ「青いリボン」、「香港の甘い豆腐」、「ちなつのハワイ」、
これらと比較すると、「あっさり感」が低い。
感情がストレートすぎるような。
さらに、他の作品を読んで比べてみたい。

「ふたりはともだち」アーノルド・ローベル(文化出版局)
「ふたりはいつも」アーノルド・ローベル(文化出版局)

これは楽しい作品だ。
ほがらかな、明るい気分になる。
海外の作品だが、関西人のノリ。
登場するのはカエル君とガマ君の2人。
やりとりが、ほとんど漫才。
ホント、楽しいペアだ。
2007年2月25日(日曜)

「喪の女王」(5)須賀しのぶ(集英社)
「青いリボン」大島真寿美(理論社)
「香港の甘い豆腐」大島真寿美(理論社)
「ちなつのハワイ」大島真寿美(教育画劇)
「鉄コン筋クリート」松本大洋(小学館)
「ザ・ワイルドライフ・フォトグラフス」(ナショナルジオグラフィック)
「レンズは語る」(ナショナルジオグラフィック)
「日本の100年」(ナショナルジオグラフィック)
「ナショナルジオグラフィック傑作写真ベスト100」(ナショナルジオグラフィック)


「喪の女王」須賀しのぶ(5)
ストーリー失速せずに最終段階に向け、折り返し地点に到達か?
この長さで冗漫にならないのは立派。
完結したら、一気に再読したい。

「青いリボン」大島真寿美
「香港の甘い豆腐」大島真寿美
「ちなつのハワイ」大島真寿美

大島真寿美さんの作品は「家族」がテーマになっている。
様々な家族が描かれる。
壊れてしまったり、
壊れかけてたり、
変形してたり。
でも、読後感は良い。
他の作品も読んでみたい、って気にさせる作家。
この3作の中では「香港の甘い豆腐」が一番良かった。
ヒロインが豆腐を作って家族で食べるシーン・・・泣けた。

「鉄コン筋クリート」松本大洋
映画化された話題の作品。
ストーリーもよく、絵も味がある。
・・・でも、私の趣味ではない。
なぜ?
絵と絵のツナギ編集の問題か?

「ザ・ワイルドライフ・フォトグラフス」
「レンズは語る」
「日本の100年」
「ナショナルジオグラフィック傑作写真ベスト100」

ナショナルジオグラフィック社の写真集を図書館で借りて見た。
(一般の書店では入手困難)
取り寄せ購入しようと手続きしたが、「取引がない」、と断られた。
一般出版社とはルートが異なるようだ。
いずれも迫力ある歴史的グローバル写真集。
もし1冊購入するなら、 「ナショナルジオグラフィック傑作写真ベスト100」が良い。
他の本は写真の枚数が多すぎて圧倒される、のみ。
枚数が100枚に制限されているほうがじっくり見ることができる。

2007年2月9日(金曜)

本来なら、今は閑散期。
寒い時期はクライミング一段落、なのに。
読書に勤しむはず、なのに。

しか〜し、ナカガイジムが出来たこともあり環境が一変。
職場と自宅の中間に位置する立地条件の良さ。
つい立ち寄ってしまう。
酒飲みのおっさんが、「ちょっと一杯ひっかけて帰るか」、ってな感じ。
(私は環境に影響されやすい)
モチの低い人と登ると、もろ影響をうける。
下手な人と登ると、自分が上手い、と錯覚する。
(だから、自分よりモチの高い人や、上手い人と登るようにしている)
やはり環境って大事ですね。
人的環境、物的環境・・・あとは時間か!

以上、借りた本や、買った本が消化できず、
つい愚痴ってしまった。

さて、2月6日のアンダンテ日記
「ヴァーチャル日本語」 について書かれている。
興味深い話なので、読んでみて下さい。

2007年2月5日(火曜)

便利になった。
・・・図書館のこと、である。
ネット上で予約できる。
職場のパソコンからも予約できる。
自宅に近い指定の図書館での回収を依頼できる。
ネット上で、利用状況が確認できる。
「回送中」、とか。
「受取可」、とか。

今までは、図書館まで出かけて、「貸出中」とか「在庫なし」だと、がっくり。
時間と手間が省ける。
(その代わり、司書の方は大変忙しい、ご苦労様です)

そんなわけで、いきなり書店で取寄せ購入する前に、中身をチェックできる。
写真集や美術書は高価だし。
児童文学もすぐ読めるわりに、コストがかかる。
やっぱり、図書館は便利だね。
以下、図書館で(今回)借りた書籍。

書名
1 The Blue Day Book
2 香港の甘い豆腐
3 ザ・ワイルドライフ・フォトグラフス
4 Tomorrow

現在、予約&回送中は下記の書籍。
項番 状態 書名
1 受取可 レンズは語る
2 予約中 マジョモリ
3 回送中 地球家族
4 回送中 地球の食卓
5 受取可 ちなつのハワイ
6 予約中 ナショナルジオグラフィック傑作写真ベスト100
7 予約中 白雪姫

PS
まったく話は変わる。
ベッドを購入した。(2月1日に配達)
正価168,000円を130,000円に値引きしてもらった。
少し高価だが、1日の1/3を過ごす場所。
少し堅くなった感じ。
以前同様、よく眠れる。
(もともと眠りが深い)
生活とクライミングの基本は安眠か?

2007年1月28日(日曜)

「トゥルーデおばさん」諸星大二郎(朝日ソノラマ)
「ES」(3)惣領冬実(講談社)
「テレプシコーラ」(10)山岸凉子(メディアファクトリー)


「トゥルーデおばさん」諸星大二郎(朝日ソノラマ)
「スノウホワイト」より先に出版された。
こちらの方がよかった。
オビの文句はこうである。
「グリム童話」を諸星流にアレンジした
魅惑のブラックメルヘン作品集!!
「赤ずきん」「いばら姫」「ラプンツェル」
「ブレーメンの楽隊」ほか
計8編を収録!!

【参考】
→画像(1)
→画像(2)

「ES」(3)惣領冬実(講談社)
よく描けている。
おもしろい。
遺伝子操作がテーマだけど、
「YASYA」「イヴの眠り」に匹敵する内容。

「テレプシコーラ」(10)山岸凉子(メディアファクトリー)
出ました!
衝撃の第1部最終10巻。
オビの文句はこうである。

「踊れないわたしは・・・
何の価値もない・・・?」
「千花は苦しみから解き放たれるか?
六花の姉への思いは結実するか?」


最後の方がバタバタ感あり。
もっとゆっくり描いて欲しかった。
礼子先生との練習風景、とか。
何か「事情」があったのだろうか?

春から連載再開予定。
「アラベスク」第2部風を予想している。
内容は国内コンクールと「ローザンヌ」への練習か?
留学生活は第3部にもちこしか?
それとも第2部に含んでしまうのか?

あと気になるのが、アシさんとの人物描き分け共同作業、である。
主要人物は山岸凉子さん本人が描き、
その他の人物はアシさんが描く、っていう共同作業。
描画が(かなり)異なるので違和感を感じる。
人物はすべて山岸凉子さん本人に描いて欲しい。
風景は仕方ないにしても。
あるいはアシさんが努力して、
山岸凉子さんの線に近づけて欲しい。

さて、単行本でフォローされてる方は、
雑誌連載が止まっているから、
今のうちに追いついておこう。

2007年1月22日(月曜)

ブックレビューガイドbがリニューアルした。
内容充実。
満腹感間違いなし。
面白くて役に立つ、とはこのページのこと。

2007年1月18日(木曜)

文藝春秋から「はじめての文学」、ってシリーズが刊行される。
以下がその紹介の文。
・・・個性豊かな作家十二名が、自作のなかから、
「とりあえず、これから」と選び抜いた中短篇の極上アンソロジーです。

なかなかおもしろい企画、と思われる。

→文藝春秋|本の話より|PICK UP

2007年1月17日(水曜)

第136回芥川賞が決定された。
直木賞は該当作なし、とのこと。
私が2006年度私的ランキング1位に選んだ、
「一瞬の風になれ」@AB(佐藤多佳子)も候補になっていた。
(候補になっているとは、実は知らなかった)
佐藤さんの作品にしたら、ストレートすぎたか?
直球ど真ん中の青春スポーツ小説なので、伏線やキャラのひねりが足りなかったのか?
そのあたりが審査員にアピールしなかったのかも?
残念だ。

【参考】

第136回芥川賞は、
青山七恵氏の「ひとり日和」に
決まりました!!


第136回芥川賞と 直木賞の候補作品を
チェック!


2007年1月14日(日曜)

皆さん、明けましておめでとうございます。
更新せずにすみません。
タイに行っていて、留守をしていました。
帰国後は(しばし)惚けたのち、残業の日々。
クライミングと読書の日々は、いつ来るのだろうか?

「クリスクロス」今野緒雪(集英社)
「ピアノの森」L一色まこと(講談社)
「このミステリーがすごい!」宝島社
「一瞬の風になれ」@AB佐藤多佳子(講談社)


「クリスクロス」今野緒雪(集英社)
「マリみて」シリーズ最新刊。
いよいよバレンタインデー。
イベント「お宝探し大会」が始まる。
瞳子と祐巳の関係に目が離せない。
いったいどうなるのか?
(もちろん結果は解ってるんだけど)
それでも楽しく読めてしまう。
しかし、今回のオワリ方は酷である。
気になってしかたない。

「ピアノの森」L一色まこと(講談社)

シリーズ最新刊。
いよいよショパンコンクール。

「このミステリーがすごい!」宝島社
文春年末のベスト10と双璧をなす「このミス」。
【参考】
http://dvd.or.tv/Bookstore_Konomisu.html

「一瞬の風になれ」@AB佐藤多佳子(講談社)
待望の作品。
著者4年ぶりの長編書き下ろし作品。
ほんと待ちましたよ。
期待を裏切らない内容。
すばらしい。
2冊まで読んで、3冊目はタイ行き飛行機の中で読了。
あまりに集中して読んだので頭が痛くなった。
(クラビに到着しても2,3日頭痛が続いた)
2006年度私的ランキング1位、である。
2位は「名もなき毒」(宮部みゆき)かな?
【参考】
「一瞬の風になれ」 全3巻
ブックレビューガイドb
昨年2006生活と覚書へ